大角玉屋 代表取締役/あけぼのばし通り商店街 会長 大角和平さん インタビュー

「あけぼのばし通り商店街」とともに歩む「元祖 いちご豆大福」発祥の店「大角玉屋」/大角玉屋 代表取締役・あけぼのばし通り商店街 会長 大角和平さん

いまでこそ誰もが知る苺大福。誕生させたのは、1912(大正元)年から始業する老舗和菓子「大角玉屋」だ。つきたてのお餅の中に、甘い餡と甘酸っぱい苺の絶妙な組み合わせは、店主のこだわりが詰まった逸品。今回は、「元祖 いちご豆大福」を生み出した「大角玉屋」の三代目大角和平さんに、苺大福誕生秘話などについてお話を伺った。

祖父の代から3代目。一から立て直して今に至る

「大角玉屋」
「大角玉屋」

――まず最初に、お店ができた経緯などを教えてください。

大角さん:創業は1912(大正元)年。祖父の代から初めて私で3代目になります。うちはこの通りで戦前から営業していますが、当時からやっていらっしゃる店は今では珍しくなってしまいましたね。

大角和平さん
大角和平さん

――現在、三代目でいらっしゃるということなんですけど。

大角さん:私は4人兄弟なんですが、上の兄がお菓子作りに全く興味がない人でしてね(笑)。最後に残ったのが私ということもありましがた、もともと私はモノを売ることが好きだったので、迷うことなくこの店を継ぎました。

そのため、なんの迷いもなく学校を卒業したら、まずは他の店に修行に出ました。そして修行から帰ってきて、職人の立場で改めて自分の店を見つめ直した時に、その環境の差に驚きました。修行先では職人が何人もいて、大量のお菓子を作っていたのですが、実家では親が一人でこつこつとやっているわけですから。

それに店舗自体も年季が入っていたので、どうやって店を立て直して発展させようかという点はとても悩みました。壁紙を貼ったり、フェンスのペンキを塗ったり、そういったお店の環境作りも全部、一から自分でやったんですよ。

試行錯誤を重ねて誕生した傑作「元祖 いちご豆大福」

看板商品の「元祖 いちご豆大福」
看板商品の「元祖 いちご豆大福」

――こちらは、苺大福の発祥だと聞いております。

大角さん:お店を継いだ当初は「とにかくお店をなんとかしなければ!」ということばかり考えていました。「うちの看板商品はこれだ!」と、胸を張って言える商品がほしかったのです。

そんな思いを抱えていた頃、ちょうど1985(昭和60)年の正月のことです。毎年、新聞で一年の予想みたいなものが掲載されるのですが、そこに「今は洋菓子屋さんが圧倒的に多いけれど、今年あたりからは風向きが変わって和菓子の時代に入るのではないか」という予想が載っていたんです。でも、そのときはまだ他人事のようにその予想を眺めていました。

秋のイチオシ、栗大福
秋のイチオシ、栗大福

それから、そう日を置かない時に、ふとたまたま苺のショートケーキに目に入ったんです。苺のショートケーキって、洋菓子店の看板商品ですよね、シンプルで可愛らしくて、美味しくて。それで、「和菓子の看板商品って何だろう」と考えてみたときに、大福やどら焼きに苺を使ったらどうだろう?って思いました。それが発想の原点です。

でも苺は生ものですから、日持ちするものと一緒に加工してしまうとダメなんですよね。すぐに食べてもらわないと苺の鮮度が落ちてしまいますから。それなら、その日に食べてもらえるものは何だろう、と考えて大福が思い浮かんだんです。大福ってすぐに固くなってしまうので、お客様も買ってすぐ召し上がりますからね。

新宿区からの表彰状
新宿区からの表彰状

組み合わせもいろいろ試してみました。苺との相性を考えると求肥は少し物足りないので、やはり皮はお米からついたお餅。個性の強い苺には、それに負けないあずきの風味の強い餡、という風にして苺大福ができあがりました。

今でこそ定番ですが、当初は売り出すのも不安でした。パートの方に試食をお願いしたら、「本当に美味しいの?」って言われました(笑)。おっかなびっくり半信半疑でしたが、実際に食べてみたら「美味しいね!」って言ってくれました。

そこで意を決して、まず30個だけ作って店に出してみたら、30分もたたないうちに売りきれたんです!それならということで翌日60個出してみたら、それも30分くらいで売りきれました。そうやって日に日に数がのびていったんです、信じられなかったですね。

お客様の最初の食いつきは「珍しい」、でも「なんだろう?」と思って疑心暗鬼で食べてみたらおいしい、おいしいとその友達にも教えていただける。そうして口コミで徐々に広まって、ちょっと変わったものがあるぞと、マスコミにも出させていただきました。

和菓子づくりで大切なのは「基本通り」とそれを支える技術

季節の生菓子
季節の生菓子

――大角さんの和菓子に対するこだわりを教えてください。

大角さん:なによりもまずは「基本通り」です。基本通りに丁寧にできる技術が必要ということです。例えば、こんなものを作りたいと思ったときに、技術がないとどうすれば作れるのかがわからない。頭の中で想像したものを形にするには技術と経験が必要なんです。まず技術がある、そして材料があって、そこにセンスや思い入れが入っていって、世の中に出て喜んでいただけるものができあがるんです。モノを作って売るっていうのは、なんでもそういうことなんです。

――苺大福以外でおすすめの商品はありますか。

大角さん:苺大福と豆大福は定番でいつでもあるんですが、多くの生菓子はだいたい毎月種類が変わっていきます。今の時期は栗大福がおすすめです。

とにかく季節感は大切にしていて、おおまかに春夏秋冬に合わせるだけではなく、今はもっと細かく分けています。3か月間同じ商品では、お客様が飽きてしまいますからね。例えば、夏は6月、7月、8月とありますが、6月はちょうど春が終わって目に新緑が移るようになるので、笹や生姜を使ってちょっとさっぱり系にしてみたり。8月は真夏でとにかく冷たいもの。そして、少し秋っぽいものも。秋も9月と11月ではかなり違います、11月は初雪だとか初霜だとかなので、温かいお茶に合うお菓子になってきます。

「ブランデーどら焼」
「ブランデーどら焼」

――ほかにもおすすめはありますか?

大角さん:「ブランデーどら焼」というのが、どら焼きの皮の中にお酒をふんだんに染み込ませた、ブランデーケーキみたいなどら焼きです。試作段階ではブランデーの量をとても気にしました。お酒に強い方、弱い方どちらにも好んでいただけるように、また、もし食べて車を運転するときに飲酒運転だと言われない量にも抑えないといけない。どういう風に記載したらいいかもいろいろと考えました。でも、結局これも売り始めたら全く老若男女関係なく売れたんです。どら焼きも、安いお酒だとコクが出てこないけど高級なお酒だとまろやかになるんです。だから、一番いいお酒を使っています。

フジテレビで栄えた「あけぼのばし通り商店街」

――それでは商店街の歴史について教えてください。

大角さん:フジテレビがあった頃の賑わいはそれはすごかったです。テレビ局は昼も夜もないですから、スタッフさんはもちろん、タレントさんも夜食で店を行き来していましたね。フジテレビがお台場に引っ越してからは、だいぶ落ち着いた雰囲気になりましたね。

「あけぼのばし通り商店街」の入り口
「あけぼのばし通り商店街」の入り口

――今、商店街には何軒くらいの店がありますか。

大角さん:今は商店街自体で約90店舗近くのお店があります。フジテレビが移転して最初の1、2年は落ち込みましたが、それ以降は回復して、今は空いてる場所というのがないんですよ。

お店自体もずいぶん変わってきましたね。フジテレビの跡地にはマンションが建ちましたので若い世代の住民も増えました。それに時代の流れでもって、コンビニやスーパーも増えたので、個人の八百屋とか酒屋さんとかは一時期よりもぐっと少なくなりました。今一番多いのは飲食店、あとは、携帯電話屋さんや接骨院などのサービス業も増えています。

「あけぼのばし通り商店街」の街並み
「あけぼのばし通り商店街」の街並み

――商店街で行うイベントについて教えてください。

大角さん:夏の祭礼と売り出し、秋のハロウィンの3回です。近隣の学校のPTAの方々にも手伝ってもらったりしながら開催しています。ハロウィンはだいたい10月の最終土曜日に行っていて、毎年2,000人以上もの人がやってくる一大イベントになっていますね。スタンプラリーを企画して入り口から少し離れた店までもお客さんに足を運んでもらえるよう、工夫しながらやっています。

抽選なんかもそうで、ガラポンだったのを普通のクジにしたり、番号のついた宝クジにしたり。時代に合わせてどういうスタイルがいいか、常に試行錯誤しながらやっています。

若い人が入ってきたこともあって、メールマガジンの配信も始まりました。今どきは皆さんなんでもスマホで調べますからね、ホームページも初めて来たお客様がその場で調べたときに、なにか手がかりになればと思っています。

――商店街の今後の抱負はありますか。

今は賑わいのある商店街として認知していただいて、ハロウィンのイベントを中心に多くの方が訪れてくださいます。ただ、そこに甘んじていてはいけないと思うので、例えば今はイベントのない春になにか企画したり、今はまだ商店会の活動にあまり参加していない店舗の方にも積極的に参加していただいり。常にいろいろと趣向を凝らしてお客様が訪れたくなるような商店街作りをしていかなければいけないなと感じています。

――最後にこの街の魅力について教えてください。

「あけぼのばし通り商店街」は昔ながらの商店街という雰囲気ですが、新宿区ですからね、足の便はとにかく良いですよね。どこへ行くにも30分あれば行けてしまいます。あとはとても平和ですね。昔、防犯カメラの設置案が出たんですが、どんどん話が大きくややこしくなってしまって、でも最終的にそんな物騒な街じゃないからいらないだろうって(笑)。安心して暮らせる街だと思いますよ。

3代目
3代目

大角玉屋/あけぼのばし通り商店街

代表取締役/会長 大角和平さん
所在地:東京都新宿区住吉町8-25
電話番号:03-3351-7735
※この情報は2016(平成28)年10月時点のものです。

「あけぼのばし通り商店街」とともに歩む「元祖 いちご豆大福」発祥の店「大角玉屋」/大角玉屋 代表取締役・あけぼのばし通り商店街 会長 大角和平さん
所在地:東京都新宿区住吉町8-25 
電話番号:03-3351-7735
営業時間:9:00~19:30
http://www.oosumi-tamaya.co.jp/index.htm..