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6畳間の小さな雑貨店

百水(ひゃくみず)

千石の交差点から国道17号線を少しだけ巣鴨側に歩くと、左手に「千石本町通り商店街」のゲートがある。この先は地元民御用達の商店街となっているが、ゲートのすぐ横を見ると、築50年は経っているであろう、レトロな2階建てアパートがある。ここの一室を使って営まれているのが、6畳間の小さな雑貨店「百水」(ひゃくみず)だ。

レトロなアパートの2階で営業している「百水」
レトロなアパートの2階で営業している「百水」
アパートの階段
アパートの階段

「百水」が営業しているのは木金の夜と、土日祝日の午後だけ。目に入りやすい場所にあるが、営業時間の短さと“入りにくさ”から、「気になっているけれど、まだ行けていない」という人も多いことだろう。

夜、暗くなってからのアパートの階段はかなり暗い。そこを「えいっ」と奥へと進んでいくと、「百水」と書かれた灯籠が半開きのドアに掛かっている。ここまで来たらもう、おそるおそる声を掛けながら、入るしかない。

「百水」の入口
「百水」の入口
欧風オーナメント
欧風オーナメント

玄関で迎えてくれたのは、かわいらしい欧風マリオネット。さらに中に入ると、なごやかな笑顔の店主、山崎佳代さんが「いらっしゃいませ」と歓迎してくれる。平日は会社員として普通に働いているため、こんな営業形態になっているそうだ。

「百水」の店主 山崎佳代さん
「百水」の店主 山崎佳代さん

山崎さんがこの店を持ったのは10年ほど前。もともとは画材店で働きながら、雑貨の仕入れなどをしていた時期もあったそうで、「いつか雑貨の店をやりたい」という夢を抱いていた。その夢に趣味である海外旅行を掛け合わせて、「旅行先で見つけたかわいいものを買ってきて売る」というスタイルに行き着いた。

置いている海外雑貨は、以前に行った旅行先で買ったもの、旅行先で知り合った人から送ってもらったもの、ちょっと気になっている国から個人輸入したもの、国内で見つけた「ときめいたもの」などさまざま。「自分がいいな、欲しいなと思ったものを、自分でも買おうと思えるような値段で置いている感じですね」と山崎さん。

店主の山崎さんが旅行先などで「ときめいたもの」を置いている
店主の山崎さんが旅行先などで「ときめいたもの」を置いている
ステーショナリーや食器類
ステーショナリーや食器類

海外に行った時には観光のかたわら、現地の蚤の市や古物店を訪ねまわり、帰りには大きなスーツケース一杯に宝物を詰めて帰ってくるという。これまで世界のあちこちに行ったが、特に好きなのは東欧や北欧方面。この時にもラトビア、ノルウェー、ウクライナなどから届いた雑貨や食器、テキスタイルが置かれていた。台湾には定期的にイベント出店のため出掛けていて、商品を売った分空いた隙間に、現地の楽しい雑貨たちを入れて帰ってくる。こうして集めたものが並ぶ6畳間は、さながら「山崎ワールド」だ。

商品は日々変わり、常設商品は文具類やスポンジワイプ、めがね拭きなど一部のみ。この時にはほかに、ラトビアやノルウェーから仕入れた食器、イングランド製のバターメルター、ウクライナから送ってもらったピンバッジ、台湾で買ってきた干支オブジェ、知人を伝って仕入れた余り物のスペイン産タイルなどが扱われていた。

ウクライナから輸入したピンバッジ
ウクライナから輸入したピンバッジ
スペイン産タイル
スペイン産タイル

また、美術系の学校を出ていることから、アーティストやクリエイターが知人に多い山崎さん。絵本作家、漫画家、刺繍作家など知り合いからの委託商品もけっこう置いてあり、キラリと光るアーティスティックな品にも出会える。中でも人気なのはキノコのスツール。サイズ、色の組み合わせ、ファブリックをセミオーダーできる仕様になっているそうだ。

触り心地のよい「きのこ椅子」はファブリックをセミオーダーできる
触り心地のよい「きのこ椅子」はファブリックをセミオーダーできる
目に留まる「ひげのおじさん」ポチ袋は、山崎さんの作品
目に留まる「ひげのおじさん」ポチ袋は、山崎さんの作品

繊細な刺繍が施されたアクセサリー類は、知人の刺繍作家さんの作品。オートクチュールに使われるリュネヴィル刺繍という技法で、上品さが際立っていた。片隅にひっそり置いている「ひげのおじさん」のポチ袋は、山崎さん自身の作品ということだ。

山崎さんが最近特に気に入っているのは、ノルウェーのフィッギオ社の陶磁器。珍しいデザインのものを見つけるとついつい仕入れてしまうという。この日置いてあったのは手札サイズのチーズプレート。「ちょっと高めですけれど、一目ぼれして買っちゃいました。この可愛さは日本にはないですよね」と嬉しそうに説明してくれた。

山崎さんお気に入りの「チーズプレート」
山崎さんお気に入りの「チーズプレート」

また、この冬にはラトビアの知人からウールのマフラーを仕入れた。「寒い国のものだから、すごくあったかいんですよ」と、自身も毎日巻いているほど、お気に入りの逸品だ。

ラトビアのあったかストール
ラトビアのあったかストール
山崎さんの知人の作品や絵本なども置いている
山崎さんの知人の作品や絵本なども置いている

ここ数年はコロナ禍で海外に行けず仕入れに苦労したということだが、「今年はまた海外に行って、現地で仕入れをしたい」と意欲を燃やす山崎さん。2023年の後半以降には、より充実した商品展開になっていることだろう。そしてその売上をもとにまた旅をして、私達に知られざる“世界のカワイイ”をおすそ分けしてくれるはずだ。

「最初は谷中に店を持ちたいと思って探したんですけれど家賃が高くって。たまたまここに手ごろな部屋があって、自由に改装できたのでここにしました。千石ってぜんぜん知らない街だったんですけれど、今では大好きです」と山崎さん。この地域にある小さなお店を開拓して回るのが、オフの時間の過ごし方だという。

山崎さん手書きのご近所マップ
山崎さん手書きのご近所マップ

「千石ってちょっと裏に入ると、ケーキ屋さんとかフレンチとかピザ屋さんとか、素敵なお店がけっこうあるんですよ」と、お気に入りの店を書き入れた地域マップ作り、お店の一番目立つところに掲げている。もちろん「百水」も、そんな“隠れ家”の一つである。

オシャレな雑貨に出会える隠れ家的な空間
オシャレな雑貨に出会える隠れ家的な空間

百水(ひゃくみず)
所在地:東京都文京区千石4-46-7 千石アパート201
営業時間:18:00~20:00(土・日曜日、祝日12:00~18:00)
定休日:月~水曜日
https://hyakumizu.jimdofree.com/
https://www.instagram.com/hyakumizu/




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