【文化・緑】良き日本の文化・自然環境が残された魅力ある住宅地
池上は「池上本門寺」の門前町として発展した歴史を持つ。「池上本門寺」は鎌倉時代に日蓮が入滅した場所に建つ。日蓮は入滅する直前に武士の池上宗仲の屋敷に滞在しており、日蓮の入滅後、池上宗仲が約7万坪の土地を寄進し、堂が建てられたことが始まりという。江戸時代には紀伊徳川家の祈願寺となるなど大名にも信仰を集め、大伽藍も整備されている。現在も多くの人々が参拝に訪れ、とくに「お会式」は約30万人の人出を集める。
池上は東京都心に近いことから、古くから住宅地として人気を集めていた。とくに池上から馬込のエリアには、歌人の川端茅舎や日本画家の伊藤深水をはじめ、多くの文人や画家など文化人が移り住んだ。
「池上本門寺」の西側に広がる「池上梅園」も日本画家の伊藤深水の自宅兼アトリエだった場所だ。1978(昭和53)年に大田区に移管されたのちに梅が植えられ、都内有数の梅の名所として親しまれるようになった。梅は大田区の区花でもあり、毎年2~3月頃には園内の370本(白梅150本、紅梅220本)、30種余りの梅の木に花が咲き、訪れる人を楽しませる。
また、園内には元外務大臣政治家・藤山愛一郎がかついて所有していた茶室「聴雨庵(ちょううあん)」、伊東深水のアトリエを設計した設計家・川尻善治が所有していた茶室「清月庵(せいげつあん)」が移築されており、茶道や句会などの催しなどでも利用できる。
現在の「池上」駅の南側には1906(明治39)年から1910(明治43)年まで「池上競馬場」もあり、レース開催時には社交の場としても賑わっていたそうだ。「徳持ポニー公園」はかつてこの付近に「池上競馬場」があったことから名づけられたもので、「池上競馬場」について記した説明版が建てられている。
「池上本門寺」というシンボルに抱かれ、広大な緑地に隣接する池上。歴史や緑を訪ねて散策すれば、池上の街はより趣深く感じられるだろう。