足立区新田学園
新田地区の中心にある「足立区新田学園」は、新田地区の子どもたちが集まる「施設一体型小中一貫教育校」として2010(平成22)年に開校した。小学生約1,200名、中学生約300名、合計約1,500名46学級の子どもたちが、近接するふたつの建物に分かれ、日々勉強に勤しんでいる。
今回はこちらの2代目学校長として、日々ふたつの校舎を往来しながら奮闘している、加藤隆司先生にお話を聞くことができた。
足立区新田学園
学校長 加藤隆司先生
明るく美しい2つの校舎に1,500人の子どもたちが集う、都内随一のマンモス学校「足立区新田学園」の魅力に迫る!
まず、学園の沿革についてお聞かせください。
本校のルーツは、60年の歴史を持つ「新田小学校」と、50年の歴史を持つ「新田中学校」にあります。もともとは、それぞれもっと環七通りに近いところに校舎があったのですが、平成22(2010)年に小中一貫教育校となり、ここに校舎ができました。小中一貫教育校としては、足立区で2番目の学校となります。
基本的に前の小中学校を受け継いでいまして、学園内も小学部と中学部に分かれ、小学校で一度卒業式をして、中学校で入学式をする、という仕組みになっています。
最初は第1校舎だけで開校されたそうですが、なぜ、第2校舎を造られたのでしょうか?
校舎については、おっしゃる通り当初は第1校舎の建物だけでした。しかしながら、地域の学齢児の増加にともない、3年前の4月から第2校舎が開設されました。もともとは施設一体型の一貫教育校として始まったのですが、結果的にはふたつの校舎に分かれてしまったという次第です。
人口増加で、児童・生徒の数は低学年ほど多いという「ピラミッド型」なんですね。
そうです。現在、本校の生徒数は小学生がおよそ1,200人、中学生がおよそ300人です。年間に数十人単位で転出入があり、地域には学齢を迎える子どもも多く、生徒数はさらに増えていくという状況です。
学級数については、昨年度は9年生が2学級、8年生から6年生が3学級、その下は、5、5、5、6、7となっていましたが、2015(平成27)年度は3学級の9年生を頭に3・3・5・5・5・6・7・8という普通学級と1学級の特別支援学級の合計46学級のピラミッド型の学級構成になっています。やはりハートアイランドを中心とした新田地区に、若い世代の人口が急激に増えたということでしょう。
学園全体の教育目標について教えてください。
本校の教育目標は、「自ら学ぶ人」「共に生きる人」「健やかでたくましい人」という三本柱からなっています。いわゆる「知・徳・体」の3つに沿った目標です。これに沿って、学校経営をしています。
本校は校舎が2つに分かれているという設備的な特徴がありますが、校舎を越えて高学年が低学年のお世話をしたりする機会を取れるように、交流活動を心がけています。
大きな校庭は第1校舎にあるのですが、第2校舎でも屋上部分などのスペースを有効活用し、人工芝の「広場」をいくつか設けて運動の場を確保しています。第1校舎の校庭は、150メートルトラックが取れる他にテニスコートが使えます。地方に比べ決して大きくはないのですが、頂いているスペースを最大限に活用して、身体を動かす機会を多く取れるように、ということも心がけています。
「1期」「2期」「3期」と、9年間を3区分しているとのことですが、これはなぜでしょうか。
これは創立時にいろいろ検討して決めました。基礎学習や習慣の定着、基礎生活習慣の定着を重視した小1から小4までの「1期」、思春期に入ってくる時期である小5・6、中1を「2期」、自分の進路を真剣に考える時期ということで、中2・中3を「3期」というように発達段階を考慮しています。
当然、学制の関係で6年生で小学校の卒業式は行いますし、そこが小・中の区分にはなっているのですが、2期から第1校舎に移るということで、1期と2期が、本校ではひとつの区切りになっています。ですから、第2校舎では4年生が「1期のリーダー」として活躍してくれています。
どちらの校舎もたいへん新しく立派な建物ですが、特徴的な設備があれば教えてください。
どちらの校舎も、真ん中に光採りの吹き抜けがありまして、教室も廊下も、窓が広く取られています。
また、バリアフリー化されていて車いすでも支障なく活動できるようになっています。特別教室を含め「全教室冷暖房完備」というのも、足立区としてはまだ少ないことかと思います。
体育館は他の小中学校と比べると倍の大きさになっています。第2校舎にも普通の大きさの体育館があります。プールも両校舎にあります。
校庭や中庭、広場全面に人工芝が敷かれていることも、足立区では先進的な取り組みでした。人工芝は水はけが非常に良いですから、雨が降っても雪が積もっても、すぐに使えるというのは大きな長所かと思います。ですから子どもたちは雨の後でも沢山遊んでいますし、転がるということも、全然嫌がりません。
あとは、屋上には太陽光発電の設備も入っています。校舎の電力の一部はこちらから供給しています。発電している電力量は、廊下のモニタに表示されるようになっています。
教室の数は今後も足りるのでしょうか?増えすぎてパンクするということはありませんか?
今後の新1年生についても、おそらく7~8クラスが続くと予想しています。お陰様で第2校舎にずいぶん多く教室を作っていただきましたので、教室数は十分に余裕があります。小学校が全学年8学級になったとしても、大丈夫です。
ただし行事をこなす時には、工夫が必要になってくるでしょう。
小学部の全校遠足は全校では動きが取れなくなってきたので2つに分け、2回行っています。さらに社会科見学などではバスを2グループに分けて巡回経路を変えるなど、かなり細かい工夫が必要になります。
一貫校ならでは、大規模校ならではのメリットとは、どんな点でしょうか?
小学生と中学生が同じ空間で生活していることで、登下校で一緒になったり、学校内でもお互いの様子を日常的に見られますので、お互いを思いやる、優しい心持ちが育ちやすい環境になっていると、常々思っています。上級生は下級生に対してとても面倒見がいいですし、仲もいいです。
一貫校の一番のメリットというのは、学習面の他に、このような心理的な面にあると私は思っていますので、その良さを今後も無くさないように、心がけていきたいと思っています。
教員との関係についても、長所があります。小中学校が別々ですと、小学校を卒業すると、小学校の先生とはあまり顔を合わせないですよね。
しかし本校の場合は、5・6年生の担任と、中学の先生は同じ校舎の同じ職員室に居ますし、中学に入ってもまた同じ校舎に通ってきますから、卒業しても前の担任の先生に会うわけです。いいことをすれば、小学校の先生にも褒めてもらえますし、逆の時には、怒られるわけです。これだと、子どもは頑張り甲斐があります。
教員間での生徒情報の引き継ぎについても、小学校時代からの活躍を中学校の先生が見聞きしていますから、スムーズです。教員の情報交換が密になれば、中学校の生活指導、進路指導も連携が取りやすいです。
区内一の大規模校として、今後取り組んでいきたいことは何でしょうか?
確かに本校は、小・中を合わせた規模ですと、足立区はもちろん、都内でも一番大きな規模の公立学校になると思います。
本校としては特に奇をてらうのではなく、今までも学校教育目標に掲げてきたことを、コツコツと実践していきたいです。当たり前に、きちんとした教育活動をすれば、いい子たちが多いですから、必ず成果がついてくると思っています。
最後に、新田エリアの子育て環境について、意見をお聞かせください。
新田地区はハートアイランドで有名ですが、一方では古くからの街並みもありまして、そこにも地域愛を強くお持ちの方が沢山お住まいになって、学校に対しても、非常に愛情を持って接してくださっています。こういった方々に見守られ、支えられている学校があるということでも、本当にいい街だなと思います。
ハートアイランド周辺に関しては、新しいマンションが建ち並び、若いご家庭が多いわけですが、教育に熱心なご家庭が多いですし、そういった教育熱が、学校全体の学力向上にもつながっているかと思います。
そしてこの古い街の方と、新しい街の方が、学校がハブになることで、子どもを介してつながってもらえたら、古い街と新しい街、双方の持っているいい部分が溶け合って、今でも素晴らしい街が、さらに良い街になっていくのかな、と思います。
※2015(平成27)年4月実施の取材にもとづいた内容です。 記載している情報については、今後変わる場合がございます。
今回お話を聞いた人
学校長 加藤隆司先生
足立区新田学園
所在地:東京都足立区新田3-34-2
電話番号:03-3913-6665
http://www.adachi.ed.jp/adshin-j/