地域に根差した文化情報発信地「緑文化小劇場」
緑文化小劇場館長 寺脇慎介さん、副館長 後藤初美さん
地下鉄桜通線「徳重」駅2番出口からすぐのところにある「緑文化小劇場」。446席と文化劇場としては市内最大級のホールにスタンウェイピアノも有するなど、小劇場とは思えないスペックを持った施設だ。0歳の子どもでも楽しめる親子コンサートや、JAみどりやさい朝市と同時開催する「朝イチ!コンサート」など、緑区の地域特性に合わせた事業を次々と企画している。今回は施設を管理・運営する名古屋市文化振興事業団の館長寺脇慎介さんと副館長後藤初美さんにお話しを伺い、取り組んでいる文化事業とそれを通して見えてきた緑区の魅力について教えていただいた。
スタンウェイピアノを有する大規模ホールが自慢
――劇場の概要と設備面について教えてください
「緑文化小劇場」は、名古屋市文化振興事業団が管理する施設で、市内に15カ所ある小劇場の一つです。客席数が固定椅子446席、車椅子スペース4席分あるのですが、市内の文化小劇場は350席がベースになっているのに比べ、こちらの施設の規模は大きくなっています。
「徳重」駅を出てすぐとアクセスも良く、雨に濡れることなくホールまで来ていただくことができるのもメリットです。車で利用される方も多い地域ですので、施設の前には48台停めることのできる駐車場も用意させていただいております。
もう一つのアピールポイントはスタンウェイピアノが入っていることです。また、舞台には反響板が設置されているので、音楽催事の時、豊かな音を楽しむことができる造りになっています。
ホールの横にある練習室の利用も多く、しっかりとした防音設備があるため、フラメンコや太鼓の練習など、他では振動や騒音でNGになることも多いジャンルのお稽古場所としても活用されています。
小さいうちから音楽に親しむ環境を!0歳から楽しめる親子コンサート
――力を入れて取り組んでいらっしゃるのは、どのような事業でしょうか
緑区は市内でも平均年齢が最も若いエリアで、子育て世代も多いので、特に親子向けの事業に力を入れています。親子を対象とした公演を「ゆめみどり」と名付けシリーズ化しており、子ども向けのライブをやってくれる出演者を全国から探して企画を立てています。0歳や1歳の子どもをホールに入れて楽しむことができる音楽イベントは珍しいので、毎回チケットの売れ行きもよいことから支持されているシリーズなのだなと実感しています。公演時は練習室を授乳室として開放し、ロビーにキッズスペースも設けさせていただいていますので、親子で安心して来ていただくことができます。
――そのほか、目玉公演などはありますか?
毎年11月に全国的に活躍しているミュージシャンを呼んでライブを行っています。今年は緑区出身のシンガーソングライター藤田麻衣子さんを迎えての凱旋ライブが決まっています。2016(平成28)年のアピタ・ピアゴ「ママポケットランドセル」のCMソングに起用されるなど、注目度が高いシンガーなので、東京からもチケットの申し込みがあるなど、チケットはすぐに売り切れてしまいました。
過去には、スタジオジブリ制作映画『かぐや姫の物語』の主題歌を歌った二階堂和美さんが、「二階堂和美with Gentle Forest Jazz Band」というジャズバンド形式でライブを行ったり、その前はPia-no-jaCさんにも公演をしていただきました。
緑区の歴史や文化を題材にした公演も大切に
――緑区ならではの事業はどのようなものがありますか?
徳重地区は緑区の中でも比較的新しいエリアなのですが、南の方には東海道の宿場町であった鳴海や重要伝統的建造物群保存地区の有松といった歴史のある地域もあります。そこでは舞踊などの伝統芸能をされている方も多いため、地域の団体と連携して毎年、舞踊や邦楽の定例公演を行っています。開館の年から行っている事業で、毎年実施しています。出演者も200人くらいになる大きなイベントです。
――酒蔵コンサートというものを開催していらっしゃるとお聞きしました
緑区には酒蔵で有名な大高地区があります。そこにある「山盛酒造」の酒蔵を使ってライブを年に2回行っています。1ドリンク付のチケット制で蔵元のお酒も楽しむことができるので、みなさん夜まで楽しんでいただいています。酒蔵の雰囲気とお酒の力も相まって、とても魅力的な雰囲気となります。
劇場では、年間約30本の公演を行っています。スタンウェイピアノがある施設ですので利用の6割が音楽系イベントなのですが、子ども向け人形劇、伝統芸能、映画上映などの企画も立てています。また、「劇団みどり」という、緑区発の地域劇団を立ち上げて2013(平成25)年より年1回の公演などを行っています。「劇団みどり」には「みどり演劇塾」というものがあって、生徒を募集して、演劇レッスンも行っています。演劇塾の発表会も行いますが、受講後、研究生として「劇団みどり」に所属し、舞台に立つこともできます。
夏には、JAみどり徳重支店「やさい朝市」と同時開催で「朝イチ!コンサート」というのも行っています。朝市を見つつ、隣のホールでコンサートを見てもらうという企画です。入場無料の1時間弱の公演なので、赤ちゃんから大人まで気楽に楽しんでもらえるコンサートです。朝からたくさんの方にお越しいただき、お買い物とライブを楽しんでいらっしゃる様子は見ているこちらも嬉しくなる光景です。
――ホールは個人での利用もできるのでしょうか?
ホール及び練習室は個人での利用もしていただけます。ピアノ教室の発表会などで利用される方もいらっしゃいますし、本格的に音楽をされている方がコンクールに向けての練習で利用される場合もあります。
――参加型のイベント等はありますか?
歌集を見ながらみんなで楽しくうたう「歌声ひろば」、子ども向けの科学実験などが参加型のイベントになります。あとは子ども向け公演の終演後に人数限定でバックステージツアーも行っています。舞台の真裏で照明や音響の説明を聞きながら見て回り、普段は職員しか行くことができない調整室や調光室などにも行くので、付き添いの大人の方でも随分楽しんでいらっしゃいます。
新旧が混在する緑区は住みよい街
――徳重の街にはどんな魅力がありますでしょうか?
「徳重」駅は地下鉄桜通線の始発・終着駅として開業した駅で、それに合わせて新しい街が広がっている地域なので、明るくて賑やかなイメージがあります。「ヒルズウォーク徳重ガーデンズ」は若いお客さんや小さいお子さんも多く、とても活気があります。同じく駅隣接の「ユメリア徳重」には「緑区役所徳重支所」や「名古屋市徳重図書館」といった公共施設、そして私どもの「緑文化小劇場」もあるので、文化・教育の面でも発展している地域なのではないかと思います。
一方で、有松地区や鳴海地区は歴史がある地域なので、新旧のものが混在している街でもあります。両方の良い面を吸収できるので、とてもいい街なのではないかと思っています。私どもも、そんな緑区で地域の方に開けた文化情報発信基地のような存在になれればうれしく思います。ロビーはいつもオープンになっており、「緑文化小劇場」で行う事業のパンフレット等もたくさん置いてあります。気軽に足を運んでもらって、様々な情報をキャッチしてもらえればうれしいです。
今回、話を聞いた人
名古屋市文化振興事業団 緑文化小劇場
館長 寺脇慎介さん、副館長 後藤初美さん
※掲載の情報は2017(平成29)年10月のものになります。
地域に根差した文化情報発信地「緑文化小劇場」
所在地:愛知県名古屋市緑区乗鞍2-223-1
電話番号:052-879-6006
開館時間:9:00~21:30
休館日:月曜日(月曜日が祝休日の時はその直後の休日でない日)、年末年始(12月29日~1月3日)
http://www.bunka758.or.jp/scd13_top.html