厚木ハム

厚木ハム

厚木の名産品のひとつとして知られる「厚木ハム」は、もともと厚木市内で養豚業を営んでいた会社が母体となっている「厚木ハム」という会社が作る食肉加工品ブランド。会社名に「ハム」という名称を使ってはいるが、その主な商品はドイツ風の腸詰めやソーセージの類。私達が「ウインナー」と呼んでいるものだ。ハムはそこに付随している商品の1ラインにすぎない。

厚木ハム

養豚場からハム&ソーセージ店になった道のりには、ちょっとした歴史があるのでまず触れておきたい。経営母体としての厚木ハムの正式名称は「株式会社しまざき牧場 厚木ハム」。現在ソーセージ職人として代表を務める嶋崎洋平氏の父が始めた会社で、創業当初はブリーダーを主業とした小さな養豚業者だったという。洋平氏はその牧場の息子として生を受けた。子供時代から養豚を手伝ってきた洋平氏だったが、大学に進学して経済学部で学び、就職後は実家の職業からは離れたいと考えていた。一方で、父は養豚の傍らで自社の肉を使った加工品を手がけ始めており、その名を「厚木ハム」として売り出していた。ところがようやく軌道に乗り始めた時に、当時のハム職人が突然の退職。作り手を失った「厚木ハム」ブランドは風前の灯となったそうだ。

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「長年の夢であった」というハム作りが頓挫した父を見て、当時大学生だった洋平氏は家業を継ぐことを決意。食肉加工に関しては何も経験は無かったが、「愛情をかけて育てた父の豚を、とびきり美味しく食べてほしい」という気持ちはだれよりも強かった。それからは知り合いの精肉店で知識を吸収し、日本のハム作りにおける第一人者である斎藤重信氏のもとに弟子入り。本場ドイツのソーセージ、ハム作りを徹底的に学んだという。

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洋平氏はその修行の期間に、ドイツ食肉加工品コンテスト「SUFFA」(ズーファ)に2005年、2006年と2年連続で出品。2年連続で最年少グランプリを受賞し、個別の品にも数多くの賞を受賞した。さらに修行の集大成として、2007年には世界最高峰のコンテスト「IFFA」にも出品、こちらでも数々の品が金賞を受賞したとともに、国際ランキング第3位に輝いた。日本人としてはコンテスト史上初受賞という快挙で、当時の新聞などでも話題になったそうだ。

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世界に技術を認められ、洋平氏は満を持して厚木ハムブランドの復活に着手。2010年には新たな店を構えることで、本場ドイツと同じ生産環境を用意した。こうして作り始めた“新生・厚木ハム”は、知名度こそまだこれからだが、いずれ「厚木にこの品あり」と言わしめる銘品となることだろう。

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さて、話は前後してしまったが、具体的な商品の説明も加えておきたい。洋平氏が最もお薦めするのは、「個人的にも思い入れが深い品なんですよ」と話す白いウインナー「ヴァイスウルスト」。売価は2本で550円、イートインの場合は2本で800円となる。

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これはドイツ、ミュンヘン地方で普通に食べられている伝統的なウィンナーで、沸騰させ火を止めた湯に10分ほど浸し、皮を剥いて食べるというのが作法。本場では豚肉と牛肉をミックスして豚の腸に詰めるそうで、師である斎藤氏からもそのように指導されたが、洋平氏は実家が養豚専門であるというこだわりから「オールポークで作り上げる」という決意のもと試作を重ね、コンテストに出品したものだ。この“亜流”とも言える日本人のソーセージは本場の舌にも好意的に迎えられ、3度に出したコンテストすべてで受賞を果たした。その柔らかでふくよかな美味しさは、是非ご自身の舌で味わってみて欲しい。

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その他にも数々のソーセージが並んでいるので、購入に先立ってまず食べてみることもお薦めする。一度に何種類かのソーセージを盛ってくれる「ウインナー盛り合わせ」(980円)などは、価格も手ごろで色々な味を試せるので、まず最初に訪れたら是非試していただきたい。付け合せもたっぷりで小腹を満たすにも十分なボリュームだ。イートインは現在週末のみとなっているが、いずれは平日にも対応する予定ということなので楽しみにしたい。

厚木ハム

店で扱っているハム、ソーセージの種類は26種類。腸詰め13種類、切り売りソーセージが7種類、ハムが6種類という内訳だ。ケースの後ろ側に見える円筒形のものも、ハムではなくソーセージの一種だ。日本人のイメージではソーセージ=腸詰め、ハム=円いものだが、それは間違った認識。ソーセージはミンチ肉、ハムは肉塊そのものが主原料となっているもので、製法自体はそれほど変わらない。この円筒形のソーセージはカットしてグラム売りしており、中にハムが入っているもの、パプリカなど野菜類が入っているものなどテイストはさまざま。料理やスープに使ってもいいし、ビールやワインと合わせても抜群の相性なので、是非こちらも注目してほしいところだ。

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なお、この店で扱っているのは自社牧場で肥育しているSPF豚の肉のみ。SPF豚とはきれいな環境で育てられる上質な豚肉のことで、その環境の実現のために「しまざき牧場」の本体である牧場は山形・蔵王などに移転され、より清冽な水と空気のもとで育っている。店内では生肉の販売も行っているので、“肉屋さん”感覚で訪れる地元の常連さんも多いそうだ。

厚木ハム

「厚木ハム」という名前からハム店として認識されがちで、贈答のシーズンには「ハムを贈りたい」という注文が多くなるそうだが、この店の“本命”はソーセージだろう。ここを訪れた日には、まずソーセージの知られざる魅力を体験してほしいものだ。

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数々の受賞が与えてくれた自信と誇りを胸にしながらも、「まだまだ途中。これからが勝負です」と、謙虚に意気込みを見せる嶋崎洋平氏。厚木の地が生み出した“ドイツが認めたソーセージ”は、一度味わったらクセになってしまう味となるに違いない。

厚木ハム
所在地:神奈川県厚木市及川1142-1 
電話番号:046-243-4186
営業時間:10:00~18:00
定休日:月曜日
http://www.atsugiham.jp/