手作りの洋服があったあの頃のように、ボタンを通して人と人が繋がる温もりを提供したい/ギャラリー立松ボタン 立松俊行さん・孝子さん


ギャラリー立松ボタン
立松俊行さん・孝子さん

手作りの洋服があったあの頃のように、
ボタンを通して人と人が繋がる温もりを提供したい。

名古屋市営地下鉄東山線「中村日赤」駅より徒歩7分の場所にある「ギャラリー立松ボタン」。もともとはボタン卸問屋を営んでいたご夫妻が、より多くの人にボタンの魅力を知ってもらいたいと4年前に、個人顧客向けにリニューアルオープンさせた店だ。入口の扉を開けた瞬間目に飛び込む、宝石のようにディスプレイされたボタンの数々。店ではそんなボタンを使ってのアクセサリー作成や洋服リメイクなどを提案してもらえ、その手軽さゆえ、ハンドメイド好きならずともオリジナルのひと品を作ってみたくなる魅力がある。今回は、古き良き街で、ボタンの新たな魅力発信に力を注ぐ立松ご夫妻にお話しを伺った。

まず始めに、創業の経緯を教えてください。

ギャラリー立松ボタン
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先代が創業者で、まもなく開業70年になります。戦前、父は大阪の船場にあるボタン問屋に奉職していたのですが、戦争の混乱期を経て、出身地である名古屋に戻ることになり、自分の店を持ったのだと聞いています。ちょうど生活様式が西洋化してくる頃で、一宮を中心に「ガチャマン景気」と言われるほど、その頃は街のあちこちに洋裁店が溢れかえっていました。

1970年代頃までは洋服は買うものではなく、作るものでした。近所にはどこにでも洋裁の得意な人がいて、お願いして作ってもらったものです。まだまだ街には人のつながりがあって暖かかった頃です。

ギャラリー立松ボタン
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ボタンもそんな時代においては重要アイテムのひとつでした。今は、針と糸を持つことも少なくなり、服は使い捨てるものになりつつあります。こうした時代にこそ、手作りの温かみというか、本当に豊かな生活を取り戻してもらいたいと思っています。そんな中、ちょうど4年前、ボタン卸問屋を営む一方で、一般顧客に向けた販売も始めることにしたのです。事務机や什器などが並ぶ卸問屋の1階を改装し、若い方でも気軽に入って来てもらえるように、ちょっとおしゃれな雑貨店のようなディスプレイに変えて、ボタン専門店にリニューアルしました。

品揃えについて、イチオシや特徴を教えてください。

ギャラリー立松ボタン
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ボタン専門店と聞いてみなさんがどんなものをイメージされるか分かりませんが、オーソドックスな使い方を想像される方も多いのではないでしょうか。そういった方には特に見てもらいたいのですが、当店では、素敵なボタンをアクセサリーとしても楽しめるようにご提案しております。美しいイヤリングやネックレス、男性には、ネクタイピンやカフスといった使い方もできます。

ギャラリー立松ボタン
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長年続くボタン卸問屋としての在庫は、数千種類、数万個です。樹脂ボタンはもとより、メタルボタン(金属ボタン)・ウッドボタン(木製ボタン)・シェルボタン(貝ボタン)・ダイヤボタン・ガラスボタン(スワロフスキークリスタル/チェコガラス)・革ボタン・チャイナボタンなどを取りそろえています。当店のボタンのいいところは、こんなに素敵なデザインなのに、卸問屋価格で大変リーズナブルに提供させていただいている点です。

ギャラリー立松ボタン
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ボタンは安いもので1つ100円とか200円から。イヤリングやネックレスへの加工もお店で承っており、トータルで1,000円程度から作ることができます。その手軽さと、たくさん揃ったボタンの中からインスピレーションを働かせて世界にひとつだけのアクセサリーを作る楽しさにハマる方も多いんですよ。

実際にどんなお客さんがやってくるのでしょうか。

ギャラリー立松ボタン
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ボタン専門店とうのが珍しいのか、全国からお客さんがいらしてくださいます。ホームページを開設しているので、そこでチェックしてくださり、わざわざ東京や北海道からお来しくださった方もいたんですよ。「名古屋」駅からは歩くと少し距離がありますし、この辺りは小売店が密集する新大門商店街の通りから一筋離れていますが、わざわざ足を運んでくださる方がいらっしゃいます。

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「名古屋」駅周辺にはデザインスクール・ファッションスクール・服飾学院・裁縫教室が多いので、そういったところの生徒さんたちや、独自のオブジェを制作しているアーティストの方などの来店も多いですね。あとは、発表会で着る衣装の装飾をボタンで作りにいらっしゃる方、最近は、若いサラリーマンで、大事なプレゼンの前にカフスボタンや、シャツのボタンをオリジナルのものに取り換えにいらっしゃるというパターンも増えました。

対面販売で心掛けていらっしゃることありますか。

ギャラリー立松ボタン
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お店にいらっしゃる方は、ほかでは手に入れることのできないアイテムを作りたいという方が多いんです。例えば、ステージ衣装を作りたいけど、一般的なアクセサリー店ではあまり派手なものが売っていないからどうしよう…といった相談にいらっしゃる方もいらっしゃいます。私たちの強みは、お客様の要望に叶うボタンを倉庫から探してくることができる点です。また、色彩コーディネーターの資格もございますので(奥様の孝子さんが有資格者)、その服に合うボタンのアドバイスもさせていただいています。

最近は、ファストファッションが盛行しており、安価にシンプルな洋服を買うことができるようになったのですが、そういった服を当店に持ち込んでいただければ、ちょっとボタンを変えるだけで、オリジナリティ溢れた、ワンランクアップの洋服に変身させることも可能です。ご自分のお衣裳などで、何か“もうちょっとこうしたいな”という思いがある場合、ぜひ、当店にご相談いただければと思います。

お店周辺の街の魅力を教えてください。

ギャラリー立松ボタン
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利便性がいいところでしょうか。「名古屋」駅までは徒歩圏内で、ちょっとお茶をしに行ったり、デパートにお買い物に行ったりするのも簡単ですし、地下鉄東山線「中村日赤」駅も近いので、それに乗れば栄方面にもすぐ出ることができます。地下鉄だけでなく、名古屋、栄方面まで出るバスも通っていますし、周辺は平坦な道ですので、お子様がいらっしゃる方やお年寄りでも自転車でわりと簡単に都心まで出ることもできます。

ギャラリー立松ボタン
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周辺にはスーパーマーケット、医療機関、美容院といった生活していくうえで欠かせない施設も充実しているので、暮らすには安心なのではないでしょうか。また「名古屋」駅西方面は、駅の東方面の繁華街と比べて、地元密着型の飲食店も多いので、リーズナブルにお食事をすることも可能です。一方で、味噌煮込みうどんの「山本屋総本家」やラーメン屋の「萬珍軒」など、名古屋を代表する店の本店が実は多いエリアだったりもするので、名古屋の味を存分に楽しめるのではないでしょうか。

中村区は歴史も古く、史跡も多く残る街ですが、近年は「名古屋」駅前を中心に怒涛の開発が続いています。街で過ごしていて、変化を感じることはありますか。

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豊臣秀吉の出身地としても有名で、秀吉に関する地名なども多く残っているエリアです。その一方で、最近は再開発が進み、マンションがたくさん建って、若い世代の流入が多くなっている印象です。そういった影響か、古くから続く商店街にあったお店の若い世代が、新しい感覚でお店を始められる方も増えてきました。例えば、自分が生まれた古いお屋敷を改装してパンやケーキを売っていらっしゃるお店や、古くからの着物屋さんが新しい感覚で若者向けに販売を始めるなど、面白い店が増えてきた印象です。昔からある街の雰囲気を残しつつも、若い人たちが、徐々にバージョンアップさせていってくれています。

将来的には「リニア中央新幹線」も乗り入れが決まっているなど、加速度的に便利になっていくことが予想されます。街の未来に期待することを教えてください。

ギャラリー立松ボタン
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昔ながらの商店街に若い感覚が入ってきつつあるというお話をしましたが、さらにセンスアップされればいいなと思っています。歴史があるエリアでもあるので、その部分もきちんと残しつつ、新しいモノも受け入れることができる懐の深さがある街になれば、もっと活気が出てくるのではないでしょうか。「リニア中央新幹線」がきっかけとなり、これまで機会がなかった方たちも気軽に駅西方面にいらっしゃるようになると嬉しいですね。他地域から名古屋にいらしゃる際の玄関口として、おもてなしの精神を持ち、名古屋の良さを発信していける地域でありたいです。

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今回、話を聞いた人

ギャラリー立松ボタン

立松俊行さん【写真右】・孝子さん【写真左】
所在地:名古屋市中村区名楽町2-14
電話番号:052-482-3148
URL:http://www.tatematsubutton.com/

※2015(平成27)年11月実施の取材にもとづいた内容です。 記載している情報については、今後変わる場合がございます。

手作りの洋服があったあの頃のように、ボタンを通して人と人が繋がる温もりを提供したい/ギャラリー立松ボタン 立松俊行さん・孝子さん
所在地:愛知県名古屋市中村区名楽町2-14 
電話番号:052-482-3148
営業時間:10:30~19:00
定休日:木曜日、第3・4・5日曜日
http://www.tatematsubutton.com/