子どもに任せ、街とともに育てる。 信頼が繋ぐ本駒込の幼稚園とは。/文京区立本駒込幼稚園 園長 加納京子先生


文京区立本駒込幼稚園 園長 加納京子先生

子どもに任せ、街とともに育てる。
信頼が繋ぐ本駒込の幼稚園とは。

江戸時代は武家屋敷、明治以降は要人たちの邸宅が並んだという人気の住宅地・文京区本駒込。南北線を使えば飯田橋まで7分、山手線なら池袋まで8分と通勤の負担がない都心のオアシスは、実は人情味溢れる下町のような温かさが今なお残る街でもある。今回は「神明都電車庫跡公園」に隣接し、「本駒込図書館」の中にある「文京区立本駒込幼稚園」の園長・加納京子先生にお話しをうかがった。

さっそくですが、幼稚園の概要を教えてください。

文京区立本駒込幼稚園
文京区立本駒込幼稚園

「文京区立本駒込幼稚園」は、来年で創立40周年になる幼稚園です。自然体験や体を動かす遊び、さまざまな人との関わりを通して、心と体で「体験すること」を大切にしています。保育に携わる先生たちも、子どもの主体性を大切にし、自分から遊び・学ぶ姿勢を引き出す保育を心がけています。

「やってみたい」という好奇心や意欲というのは、人間の基盤になるもの。幼稚園教育とは、これから大きく育つ子どもたちの柔らかい芽を植える行為そのものだと考えています。

「体を動かす遊び」とはどのような遊びでしょうか?

文京区立本駒込幼稚園
文京区立本駒込幼稚園

体育の授業を特に設けるというのではなく、大きな積み木を運んだり、ヒーローごっこで走り回ったり、自分の好きな遊びのなかにかなりの運動が含まれています。子どもは自分が面白いと思ったことは、繰り返し行うので、長く体を動かすようになります。

実は2006(平成18)年に東京学芸大学の研究チームが発表した論文に面白いものがありました。専任の指導員による体育の授業を設けている幼稚園と、自由な遊びを中心にした幼稚園の園児の体力を比較したところ、自由遊びを徹底している幼稚園の子どもたちの方が体力・持久力共に高かったという結果です。体育や運動の時間、と限定してしまうと苦手意識のある子どもは委縮してしまったり待ち時間が長かったりと、結果としてずっと遊んでいる子の方が運動量が多いということのようです。

このように子どもの好きな遊び、自主的な遊びは非常に大切なことです。大人たちはそれを邪魔しないように心がけなければいけません。

「子どもの自主性を大切にする保育」とは具体的にはどのようなことですか?

文京区立本駒込幼稚園
文京区立本駒込幼稚園

子どもは自分で選んだ遊び・学びには非常に集中して取り組み、飽きません。それをコントロールしようと思わないようにすることです。

例えば毎年12月上旬には「みんなの発表会」という学芸会のような行事があります。劇の内容やセリフなどは基本的な部分は担任の先生が決めるのですが、細かな部分に関しては子どもに相談し、最終的には子どもたちが考えながら作っていきます。もちろん先生はサポートも修正もするのですが、子どもとしては「自分たちで作った」「自分たちで決めた」という気持ちになり、その達成感・充実感は非常に高くなります。

もしこれを先生が全て決定し、それに沿って子どもを動かそうとしたら、恐らく子どもたちは集中力もやる気も半減するでしょう。先生も混ざって皆で考え、皆で取り組む、そういう姿勢で毎日の保育を行っています。先生たちにとっては、力量を試される大変な仕事だと思いますが、本当にやり甲斐がある仕事です。

そんな先生方には日常的にアドバイスなどはされるのですか?

文京区立本駒込幼稚園
文京区立本駒込幼稚園

先生方には「悩むのが当たり前、そして悩むことが大切」と伝えています。常に自分の保育を振り返り、反省し、真摯に取り組むことが何よりも大事。ですから、先生方が悩みを一人で抱え込まないように一番気を配ります。会議や研修といったかしこまった場でなく、日常的に話せる環境にしています。

また年1回実施している園内研究では、「知りたいこと」「弱い部分」をテーマに据えています。外部から講師をお呼びしたり、お互いの保育を見合って意見を言い合い、より強化するように心がけています。公立幼稚園は、転勤によって様々な園で保育経験を積めるので先生方がしっかり育つこと、研修の機会が多いので先生の教育がゆき届いているなど、質の高い保育が提供できるのが特徴だと自負しています。

預かり保育もされているとうかがいました。

文京区立本駒込幼稚園
文京区立本駒込幼稚園

定員25名までですが、14時~18時までお子さんをお預かりしています。この預かり保育の導入で、お仕事を始められた方が増えたようですね。現在働いているママさんが18名。7名の空きがありますので、上のお子さんの学校行事や美容院などのリフレッシュのための一時保育としても利用されているようです。

通園されているお子さん、保護者の方々はどんな方が多いのでしょうか?

文京区立本駒込幼稚園
文京区立本駒込幼稚園

保護者の方々に愛されて育ち、素直で子どもらしい子たちばかりです。自己肯定感が強く、人に対しても厚い信頼感を持っています。公立の幼稚園に通わせている保護者の方は、幼児期にたくさん遊ばせのびのびと過ごさせたいと考えている方が多いように感じます。公立幼稚園の特徴をよく理解して入園させて下さっているので、園の行事などにも非常に協力的です。

例えば段ボールや新聞紙などのリサイクル品を保護者や地域の方が協力して園に集め、1年間で集めたお金で周年行事の時に人形劇団を呼んでいます。園のために何かしようと動いてくださる方が多く、有難く感じています。こんな方々ですから、新しく転入されてきた方にも非常に温かく接して下さり、皆さんすぐに馴染んでいますよ。

保護者が参加する行事などはありますか?

文京区立本駒込幼稚園
文京区立本駒込幼稚園

毎年3学期に行うもちつきは、お母さんたちが火の番から調理まで、ほぼ全員参加で行う行事です。また年3回土曜日に開催している「かるがもデー」は、有志のパパたちが子どもたちと遊ぶ日。ミニ運動会やカレーパーティなど、普段なかなか幼稚園に来るチャンスのないパパたちが、子どもたちと交わる貴重な機会になっています。

地域との連携はどのようにされていますか?

文京区立本駒込幼稚園
文京区立本駒込幼稚園

保護者と同じく、地域の方々もこの幼稚園を大切にしてくださっています。古き良き時代のご近所付きあいのような雰囲気とでもいいましょうか。園が困っているとすぐに救いの手を差し伸べてくださいます。

「文京区立本駒込幼稚園」の良いところは、地域の方々との繋がりが深い点。隣にある公園を子どもたちが定期的に清掃するのですが、その時もよくお声掛けをしていただきます。地域で子どもを育て、やがてその子どもが成長して地域を育てる。本駒込はそんなサイクルが自然とできている街。2代で本園に通っている親子の方も多いので、きっと「帰りたくなる場所」なのだと思います。

最後になりますが、駒込の街の魅力を教えてください。

駒込東公園
駒込東公園

地域の方々の温かい人情、お世話好きのお人柄、それが一番の魅力です。この地域に対する地元の方々の愛情が、子育て中の世代には心強いのではないでしょうか。子どもは一人では育てられません。周囲の協力や温かな目があれば、子育ては楽しくなり子どもにも良い影響があると思います。

文京区立本駒込幼稚園
文京区立本駒込幼稚園

今回、話を聞いた人

文京区立本駒込幼稚園
園長 加納京子先生

住所:文京区本駒込4-35-15
電話番号:03-3821-3822
URL:http://www011.upp.so-net.ne.jp/honkoma-kg/

※記事内容は2013(平成25)年12月時点の情報です。

子どもに任せ、街とともに育てる。 信頼が繋ぐ本駒込の幼稚園とは。/文京区立本駒込幼稚園 園長 加納京子先生
所在地:文京区本駒込4-35-15 
http://www.bunkyo-tky.ed.jp/honkoma-kg/