自由な校風を重んじる進学校

制服を持たない中学校/横浜市立青葉台中学校 森博昭校長先生


「青葉台」駅から南北に伸びる、駅前商店街の通り。そこからわずかに坂を上った場所にある「横浜市立青葉台中学校」は、創立40年余りという、街の発展とともに生まれた比較的新しい中学校である。高い学力水準、落ち着いた校風、さかんな学校行事など、さまざな特徴を持っている学校だが、一番の特徴と言えば、創立以来「制服を持たない中学校」を維持していることだという。学校の教育目標に掲げている言葉は、「自由と規律」。この言葉が目指す生徒像とは、一体どのようなものなのだろうか。今回はこれらの話題を含めながら、学校の特徴と青葉台地域の魅力について、校長の森博昭先生にお話を聞いた。

学校長の森博昭先生
学校長の森博昭先生

――まず、青葉台中学校の概要と沿革について教えてください

森先生:本校は1973(昭和48)年の開校で、今年で46年目になる中学校です。それ以前からあった「田奈中学校」と「谷本(やもと)中学校」の間に新しくできた学校で、2校それぞれから生徒が集まるという形で開校しました。校舎は当初から同じ建物を使っております。

東急田園都市線自体が、開校の少し前に開通した比較的新しい路線ですので、青葉台の街の発展に合わせて人口が増え、それに合わせて造られた学校と言えるかと思います。

青葉台中学校
青葉台中学校

――学校の特徴や、特徴的な活動があれば教えてください

森先生:「青葉台中学校」と言えば、まず一番の特徴としてよく挙げられるのは「標準服が無い」ということです。これは横浜市内でも数校しか無い特徴で、取り組みとして、横浜市でもいちばん早かったのではないかと思います。

開校当時、ふたつの学校から生徒が来ましたので、「標準服をどうするか」という話し合いが持たれたそうです。生徒会や保護者の会合なども含め、2年かけて議論を行い、その結果「子どもの服装は基本的に保護者が責任を持ったうえで、子ども自身が、その日にどういう中学生らしい服装をするかを考え、判断する」ということに決まりました。当時、私服の中学校というのは非常に珍しかったですから、全国からも沢山視察に来られたそうです。

「私服」という言葉には、「なんでもいい」というイメージがありますから、派手なものを着てくる子などを想像されるかもしれませんが、本校の場合は、全くそういうところはありません。一人ひとりの子どもがしっかりと考えて、季節やその日の状況に合わせた服装をしてくるということが定着しており、本校の生徒の様子を語るうえで、一番の特徴だと思っています。

学校の教育目標は「自由と規律」ということで40年間やっていますが、これだけシンプルな教育目標もなかなか無いのではないでしょうか。「自由」と「規律」は一見相反するように見えますが、この言葉が教育目標になっていることで「バランス感覚」がつねに問われ、培われているのかと思います。そのバランス感覚の象徴が、私服と言えるかと思います。

私服の中学校
私服の中学校

――特徴的な学校行事がありましたら教えてください

森先生:伝統的に合唱に非常に力を入れています。横浜市内ではどの学校にも合唱コンクールがありますが、本校は特に、子どもたちも非常に熱心に取り組んでいる学校です。「上級生が去年あんなに凄い歌を歌ったんだから、今年はそれを超えていこう」という伝統、風土があります。10月の合唱コンクールの時期になれば、廊下を歩きながら歌っている子もよく見かけますし、学校中が歌声に包まれています。ここ数年はコンクール会場に「みなとみらいホール」を使っていますが、立派な建物に見劣りしないような歌を、生徒たちも歌ってくれています。

9月の体育祭も非常に盛り上がるイベントです。伝統的に「大縄跳び」の種目があり、これも「歴代の一番跳べた回数を超える」ということを目標にしながら、非常に熱心にやっています。時間制限の中で跳びますから、記録を破るのは大変なのですが、実は今年もまた「183回」という新記録が生まれました。こういったものも、先生に「やらされる」のではなく、生徒が自主的に取り組んでいます。

数多くのトロフィー
数多くのトロフィー

――国際交流事業もさかんと聞きました。どのような交流をなさっているのでしょうか?

森先生:青葉台は帰国子女の方が多い土地柄で、インターナショナルな感覚が子どもたちの中にも根付いていますので、海外との交流については、機会があれば積極的に行うようにしています。数年前にはオーストラリアの学校と交流をして、向こうからも生徒が来ましたし、こちらからも何人かの生徒がオーストラリアに行きました。

今年度も横浜市の姉妹都市であるフランスのリヨンから、修学旅行の子どもたちが本校に来まして、交流を行いました。フランス語を喋れる子はほとんどいないわけですが、最後にはお互いにハグを交わすぐらいに仲良くなっていましたね。

国際交流事業も盛ん
国際交流事業も盛ん

――学習面に関して、特に力を入れて取り組んでいることがあれば教えてください

森先生:公立校ですので学校独自というものは特にありませんが、「知識偏重ではない学習」に力を入れているところです、子どもたちが主体的に学習に関わり、お互いに討論や対話をする中で、力をお互いに高められるような学習方法を取り入れるように努めています。

本校の生徒は「よく話を聞く」という、小学校から培われている素晴らしい風土がありますので、話し合いの中で自分の意見をしっかりと言って、相手の意見も尊重して、という部分があり、こういった学習は非常にやりやすく感じています。

掲げられている学校教育目標
掲げられている学校教育目標

――小中連携の取り組みついて教えてください

森先生:小中連携でいちばん大きなものは、「ふれあいコンサート」というものでしょうか。小中それぞれから、毎年指定された学年が中学校の体育館に集まって、お互いに歌を聞かせ合うというコンサートを毎年行っています。具体的には、「青葉台小学校」、「榎が丘小学校」、「鴨志田第一小学校」の子が本校に来る、という形の交流です。ほかにも、中学校の陸上部の生徒が小学校に行って、市の体育大会に向けた朝練の指導にあたったり、反対に小学校の子どもたちが中学校に来て、部活動の見学や体験ということも行っています。

もちろん、小中の教職員同士の交流の機会も多く、頻繁に授業の交流や研究などもしていますし、校長同士も仲が良いですから、ランチミーティングなどもよくしています。

交流の機会も多い青葉台中学校
交流の機会も多い青葉台中学校

――小中連携に関して、教職員の皆さんで共有している認識は何でしょうか?

森先生:当然、9年間を通した小中一貫の目標というものは色々と設定しているわけですが、その大きな部分としては、「心身ともに健康で、お互いを認め合える、いのちを大切にする子どもを育てよう」ということがありまして、それが共通認識となっています。そのうえで、自分から進んで学ぶ姿勢を持って、地域を大切にして、地域とともに生きていくことができる子どもというのが、私どもが目指している生徒の姿です。

青葉台中学校の校門
青葉台中学校の校門

――保護者や地域の方々との関わり、連携などについてお聞かせください

森先生:横浜市内でもかなり早い段階から「学校運営協議会」を立ち上げており、地域の方が学校の運営に関わっていただく仕組みが整っています。主に本校に進学する2つの小学校の学校運営協議会と一体となった、3校での学校運営協議会として組織されており、これは横浜市内でも非常に珍しい形です。この協議会を通して、地域の方に幅広く学校の運営にも関わっていただいているのが、本校の大きな特徴かと思います。

連合自治会の結束力も非常に高く、地域主催のイベントも多いですし、学校が地域のイベントに出向く機会も多いです。先日も地域の「ふれあい運動会」が中学校を会場にして開催されましたし、「ジョイントコンサート」についても、地域の、特に青葉台中の卒業生の方が中心になって企画してくださって、地域の方が本校で歌声や演奏を聞かせてくださったり、反対に地域の方に生徒の演奏を聞かせたり、という交流をしています。

また、「地域清掃」という形で、年に2回、本校の生徒と地域の方で一緒に清掃活動もしていますし、地域の夏のお祭りにも、部活動の子たちがお神輿を担いだり、夜店に出店をしたり、吹奏楽部が演奏を披露したりと、いろんな形で参加しています。

また、中学校を会場にして、地域の方が街づくりについて語り合う座談会も開かれておりまして、生徒も保護者も地域の方も、みんなが一緒になって、街のことを考える機会となっています。

青葉台中学校の廊下
青葉台中学校の廊下

――最後に、青葉台エリアの魅力について教えてください

森先生:本校は駅からも徒歩圏内にある学校ですが、非常に落ち着いた環境にある学校です。生活の場としても、駅前には整然とした街並みがあり、必要なものはそこで揃いますから、何不自由の無い街だと思います。

また、公園も多く、「桜台公園」を筆頭に、本校の周りだけでもいくつもの公園がありますから、子育て中の方にはもちろん、ペットを飼われている方にも暮らしやすい環境だと思います。

青葉台は、地域の方々による「見守る体制」がしっかりとしている地域ですし、都心までわざわざ出なくても、幼児教育から大学教育までをエリアの中で完結できますから、子どもを連れて引っ越して来られた方でも、安心して長く住まうことができる街だと思います。

学校長の森博昭先生
学校長の森博昭先生

横浜市立青葉台中学校

校長 森 博昭 先生
所在地:横浜市青葉区青葉台二丁目25-2
電話番号:045-983-1062
URL:http://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/jhs/aobadai/
※この情報は2017(平成29)11月に取材した内容を2019(令和元)年7月に再編集したものです。

制服を持たない中学校/横浜市立青葉台中学校 森博昭校長先生
所在地:神奈川県横浜市青葉区青葉台2-25-2
電話番号:045-983-1062
https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/scho..