小規模校のよさを最大限に活かし子どもたちを育む「文京区立大塚小学校」/文京区立大塚小学校 加藤憲司校長先生
文京区らしい落ち着いた住宅街に校舎を構える「文京区立大塚小学校」。全校児童170名余りというアットホームなこの学校は、学年を超えて子どもたちの仲が良く、先生たちは全児童を把握してきめ細やかな教育に取り組んでいる。体験活動にも力を入れ、2017(平成29)年度は「オリンピック・パラリンピック教育アワード校」として東京都教育委員会から顕彰された。「地域あっての学校」と語る加藤憲司校長先生に、小規模校のメリットを活かした取り組みや地域との連携についてお話を伺った。
子どもたちが本物に触れられる機会を作る
――まずは学校の歴史、特色を教えてください。
1920(大正9)年に前身の「東京市立大塚尋常小学校」が創立しました。戦災で焼失しましたが、1954(昭和29)年に同じ地で「文京区立大塚小学校」として再開し、今年度で開校63年目を迎えます。昨年度から行われてきた校舎快適性向上工事の完成が間近で、教室や廊下、トイレなどが一新されて校内がたいへんきれいになりました。
一番の特色は全校児童176名の小規模校であることで、そのメリットを最大限に活かした教育活動が行われています。1年生から6年生まで子どもたち同士は非常に仲が良く、教職員もすべての子どもたちをよく理解し、地域・保護者の方たちもあたたかく子どもたちを見守ってくださっています。子どもたちを中心に、地域と家庭、学校の役割分担のバランスがよくとれているからこそ、本校の児童は元気で明るく、子どもらしい子どもたちでいられるのだと思います。
――小規模校ならではの教育活動として、どのようなものがありますか?
本校は区内小学校で唯一の「オリンピック・パラリンピック教育アワード校」でもあり、オリンピアンやパラリンピアンを招いての体験・交流活動に熱心に取り組んでいます。また、東京都の「日本の伝統・文化教育推進校」の指定を受け、落語教室や茶道教室といった子どもたちが日本文化に直に触れられる機会をたくさん設けています。その他にも、下水道出前講座や点字・白杖歩行体験など、年間を通してじつにさまざまな体験活動を行っています。大規模校だと講師をお呼びするのに様々な調整などが大変ですが、小規模だと小回りが利いていろいろな活動に取り組みやすい。その良さを活かして、子どもたちが本物に触れられる機会をたくさん作っていることが、本校の大きな特長です。
ボランティアマインドの育成や障害者理解を重視
――「オリンピック・パラリンピック教育アワード校」顕彰の経緯をご紹介ください。
東京都が考える「オリンピック・パラリンピック教育」には、競技をするだけでなく、観る・学ぶ・支えるなど、幅広い内容が含まれています。体験活動を重視する本校では、オリンピアンやパラリンピアンの招待に力を入れ、特にパラリンピアンとの交流を通してボランティアマインドの育成や障害者理解に取り組んできました。都がオリンピアンやパラリンピアンを学校に派遣する、「夢・未来プロジェクト」実施校の指定も受けています。
例えば、今夏はリオパラリンピック日本代表であるパラ卓球の岩渕幸洋さんをお招きし、トップアスリートならではのお話をしていただきました。また、実際に子どもたちと一緒にプレーをしていただきました。岩渕さんは実業団トップクラスの卓球部に所属し、障害に負けず非常に前向きに努力されてきた方なので、そういう方の話を直に聞けたことは、子どもたちにとって大きな意味があったと思います。
また、海外から大勢のお客様をお迎えする上で、子どもたちに日本のことを知ってもらうための伝統文化教育にもしっかりと取り組んでいます。例えば、落語は語りから物語をイメージしたり楽しんだりするという、日本の誇るべき文化。毎年、大塚小出身の噺家をお招きして4年生にその世界を体験してもらっています。
このように、体力向上だけでなく、ボランティアマインドの育成や障害者理解、伝統文化教育など、幅広い取り組みが評価されたのではないでしょうか。2020年は学校を挙げて、これまでお呼びした選手全員を応援したいですね。
スクールガードや図書館ボランティアが活躍
――地域や保護者の方々との協力や連携についてご紹介ください。
学校支援地域本部にはさまざまな場面でご協力をいただいていて、そのひとつがスクールガードです。PTAや地域の方たちとも連携し、集合場所で子どもたちに声を掛けるなど、登校時の見守りをしてくださっています。本校は地域班で登校していますが、1年生と6年生が手をつないで学校へ向かうというほほえましい光景が見られます。
また、学校支援地域本部が募集した図書館ボランティアの方たちが、中休みに図書館で本の読み聞かせをしてくださっています。子どもたちもとても楽しみにしていて、集中して聴きいっています。もともと、本校は読書に力を入れていて、「小石川図書館」から司書を派遣してもらい、友達に教えてあげたい本をはがきに書く「読書郵便」や、本に登場する食べ物を給食に出す「図書給食」などを実践しています。
その他、地域のネットワークを活かした地域人材の紹介や、オリンピック・パラリンピック教育の講師のコーディネートなどでも、学校支援地域本部にご尽力いただいています。「親子3代大塚小です」というご家庭も多く、地域の方たちが非常に協力的でたいへんありがたいです。
――学校周辺の教育施設との連携はあるのでしょうか。
区が進める幼保小中連携において、本校は「久堅保育園」と「千石西保育園」、「文京区立窪町小学校」、「文京区立第一中学校」と連携をしています。保育園とは、本校の体育館を運動会にお貸ししたり、入学前の5歳児に小学校体験をしてもらったり、入学後は園でやっていた保育教育を取り入れながら少しずつ授業に慣らしていくなど、いわゆる「小1プロブレム」を乗り越えられるように、小学校教育へのなめらかな接続を目指して連携をしています。
一方、第一中学校とは今年度から3年間、区の小中連携教育実践モデル校に指定されています。その中で、今年度は陸上記録会の練習場所として第一中の土のグラウンドをお借りし、保健体育科の専任教員から技術的な指導をしてもらうことができました。今後は、数学の先生に出前授業に来てもらうなど、様々な形で連携をしていく予定です。
――校長先生が思う、学校周辺の魅力をお聞かせください。
私は今年4月に本校に赴任して文京区の学校は初めてですが、周辺に「教育の森公園」や「小石川植物園」があり、都心でありながらすごく緑に恵まれた場所だなと実感しています。ラジオ体操発祥の地といわれている「大塚公園」も学区内にあり、夏休みは子どもたちが元気に地域の方とラジオ体操を行っています。1年生と2年生が「大塚公園」併設の「みどりの図書室」へ公共施設の使い方を勉強に行ったり、春と秋は「小石川植物園」へ遠足に行くなど、さまざまな施設が徒歩圏内にあることは学校にとって大きなメリットがあります。学校周辺は落ち着いた住宅街で、治安がとてもよく、通学も安心です。何より、子どもたちをしっかり見守ってくださるあたたかい地域だと思います。
文京区立大塚小学校
校長 加藤 憲司先生
所在地:東京都文京区大塚4-1-7
URL:http://www.bunkyo-tky.ed.jp/otsuka-ps/
※この情報は2017(平成29)年10月時点のものです。
小規模校のよさを最大限に活かし子どもたちを育む「文京区立大塚小学校」/文京区立大塚小学校 加藤憲司校長先生
所在地:東京都文京区大塚4-1-7
電話番号:03-3946-3421
https://www.bunkyo-tky.ed.jp/otsuka-ps/