再開発事業によりJR「熊本」駅周辺エリアの魅力を発掘・創造する/九州旅客鉄道株式会社 事業開発本部 熊本開発プロジェクト 担当部長 中村さん


熊本県の陸の玄関口であるJR「熊本」駅。2018(平成30)年には新駅舎がオープンし、在来線の高架化など、利便性の高いエリアへと整備が進められている。2020(令和2)年現在、新しい駅ビルの建設や駅前広場の拡張などさらなる再開発が進行中で、今後のさらなる発展に期待が集まる。今回は、再開発事業の一端を担う九州旅客鉄道株式会社が「熊本」駅やその周辺エリアにかける想い、事業の詳しい内容や今後の展望などについて担当者の中村さんからお話を伺った。

「熊本」駅ビルと駅前広場 完成予想図(提供:九州旅客鉄道株式会社)
「熊本」駅ビルと駅前広場 完成予想図(提供:九州旅客鉄道株式会社)

「住みたい、働きたい、訪れたい」と思われるまちを目指して

――まずは、今回の「熊本」駅周辺エリアの再開発が始められた経緯について教えていただけますでしょうか。

中村さん:もともと九州新幹線の全線開業と合わせて、「熊本」駅の在来線の高架化事業、駅周辺エリアの土地区画整備事業などの計画がありました。同時に、熊本県や市が、駅周辺エリアを「副都心」と定めたまちづくりを開始したのをきっかけに、我々としても「熊本」駅をその拠点としてもう一度整備したいと考えたのが始まりです。そこで駅ビルを中心に、オフィスやホテル、駐車場を一体的に整備していく計画が立ち上がり、駅前のまちを新たに創り直すくらいの気持ちで事業に取り組んでいます。

――再開発前と比べて、駅はもちろん、周辺エリアもきれいに整備され、住みやすいまちになりましたよね。

中村さん:我々は九州各地で様々な開発事業に取り組んでいるのですが、九州一円で共通の軸としているのが「住みたい、働きたい、訪れたい」と思ってもらえるまちづくりです。今でこそ「熊本」駅新幹線口側は住宅が建ち並ぶエリアになっていますが、以前は鉄道の車両基地があり、それを別の場所に移転して、一帯を土地区画整備事業で道路を広くしたり、住宅用地として整備したりと地道に計画が進められてきました。車両基地が残っていた頃と比べると、とても住みやすい環境になったと思います。

駅の利用者数は150%強、周辺エリアの人口は約18%も増加

「熊本駅北ビル」とバスターミナル 完成予想図(提供:九州旅客鉄道株式会社)
「熊本駅北ビル」とバスターミナル 完成予想図(提供:九州旅客鉄道株式会社)

――次は、九州新幹線が開業して以降、「熊本」駅周辺エリアがどう変化したかお聞かせください。

中村さん:九州新幹線が博多から鹿児島中央までの区間を全線開業したのは2011(平成23)年の3月でした。熊本県に新幹線が開通したのも同じ時期で、駅の利用者数を見ると、まだ新幹線が通っていない2009(平成21)年度が約9,960人、当時九州圏内の駅でいうと13番目の利用者数でした。しかし驚くことに、新幹線が通ってからの2018(平成30)年度は約15,357人と、前年比150%強くらいに増えています。現在も利用者数は毎年伸びており、今では九州で7番目です。

――在来線の高架化も完了しているとお聞きしました。それによってどんな変化がありましたか。

中村さん:長く取り組んできた在来線の高架化事業は、2018(平成30)年の3月にようやく完了しました。以前は線路でまちが分断されていたと言っても過言ではないでしょう。しかし今回の高架化によってまちが平面でつながったことで、東西で行き来がしやすくなった上、交通の便も良くなり、渋滞緩和にもつながっています。また、これまでは駅ホームの東西は地下通路で行き来していたのですが、高架化のおかげでスムーズに乗り換えできるようにもなりました。

――人々の暮らしに関する変化はどうでしょうか。

中村さん:「熊本」駅周辺では2011(平成23)年から2019(平成31)年にかけて開発エリアの人口が約18%も増加しているそうです。九州新幹線の開通、まち並みの整備に加え、今では住宅地も次々と開発されているのが理由と考えられます。「熊本」駅エリアは、県や市、我々も含めて一体となった整備を進めていて、熊本の陸の玄関口として変貌を遂げつつあります。建設途中の駅ビルやオフィスビルも2020(令和2)年、2021(令和3)年にかけ続々と開業する予定ですし、これからさらに住みやすいまちになるだろうと思います。

熊本駅ビル・熊本駅北ビル・熊本駅西ビルがもうすぐ開業予定。

「熊本駅ビル」(左)、「熊本駅北ビル」(右) 完成予想図(提供:九州旅客鉄道株式会社)
「熊本駅ビル」(左)、「熊本駅北ビル」(右) 完成予想図(提供:九州旅客鉄道株式会社)

――先ほど話題にあがりました、熊本駅ビルや熊本駅北ビル、熊本駅西ビルについて各施設の特徴、すでに決まっているテナントなどありましたら教えていただけますか。

中村さん:「熊本駅ビル」は九州圏内であれば「博多駅ビル」に次いで2番目の規模になります。1階から7階に商業施設、8階にウェディング会場、9階から12階がホテルという構造です。正式に公表しているテナントですとシネマコンプレックスとウェディングのみですが(2020(令和元)年1月時点)、ファッションや雑貨関係は最新のテナント、人気や流行に沿ったものを幅広く揃える予定です。飲食や食品関係では熊本県の特産や名産はもちろん、今まで熊本にはなかったグルメのお店なども揃えたいので、いろいろなテナント様とご相談しているところです。また、駅ビル内にはスーパーマーケットを入れる予定です。以前より駅利用者や周辺の住民から、「普段使いができるスーパーが周りにない」という声が届いていますので。この機会に駅ビルで毎日お買い物していただけたらうれしいです。若者からご年配の方、ファミリー、と幅広い世代の方にご利用いただける構成にしようと思っています。普段の買い物からレジャーまで、様々に利用いただければと。

――「熊本駅ビル」だけでもかなりの規模になるわけですね。では、「熊本駅北ビル」と「熊本駅西ビル」の構成やテナントはどうですか。

中村さん:「熊本駅北ビル」は1階から3階が商業店舗、4階から12階がオフィスビルになります。こちらには大型店舗の入居を予定しています。また、「熊本駅西ビル」は4階建のオフィスビルです。ほかのビルと比べて規模は少し小さめですが、1階が商業施設、2階から4階がオフィスになるイメージです。なお、「熊本駅北ビル」は2020(令和2)年の12月、「熊本駅西ビル」は2021(令和3)年の春に開業予定です。

広々とした憩いの場。市内への交通拠点にもなる駅前広場

白川口側からの夜景 完成予想図(提供:九州旅客鉄道株式会社)
白川口側からの夜景 完成予想図(提供:九州旅客鉄道株式会社)

――複数の駅ビルの開発が注目されていますが、そのほかにも建設途中の施設はありますか。

中村さん:九州は車社会なので、新幹線や在来線、市電、バスなどの利用のほか、車で駅までいらっしゃる方は多いです。そのため、3ヶ所に約2,100台分の立体駐車場を建設しています。500台分の立体駐車場はすでに整備済で、1棟は2020(令和2)年の3月に、あと1棟も整備予定です。

白川口の駅前広場の再整備も進めています。今よりさらにきれいで広々とした空間になる予定です。「熊本駅ビル」の玄関口には大屋根を作るので、雨の日でもイベントができますし、屋根の上は庭園にする予定なので人々が集える憩いの空間にもなるでしょう。さらに、広場を震災時の防災拠点として活用する構想もあります。

――駅前広場にはバスターミナルもあるようですが、そちらの再整備などはいかがでしょうか。

中村さん:駅前広場の再整備事業にはバスターミナルも含まれています。県内最大級の商業施設「SAKURA MACHI Kumamoto」内にあるバスターミナルをメインに、市では「熊本」駅前をバスの「サブターミナル」という位置付けとしたいようです。再整備が終わる頃には、市電、バス、タクシーなどの交通機関が揃うわけですから、「熊本」駅はこれまで以上に交通の利便性が高い駅になるはずです。

九州の中心都市として、「熊本」駅周辺のさらなる発展を創造していく

――今の開発計画がひと段落した後、その先のプランは何かあるのでしょうか。

中村さん:今まではどちらかというと公共的な下地づくりがメインでした。ですので、2018(平成30)年に高架化が完成してからは、その下地に彩りを加え、まちにさらなる機能を追加する時期に入っていると言えます。我々が駅ビルやオフィス、住居などの開発を進めているのもその一環で、駅や周辺エリアの魅力は今後さらに高まっていくでしょう。まちづくりはあくまで「人」が主役です。今のところまだ明確な計画はありませんが、諸々の商業施設が完成し、人が集まりだしたら、利用者の反応を見ながら、どうすればより過ごしやすく、便利になるのか、ソフト的な部分についての取り組みを展開することも大切かなと思っています。

――今回の再開発事業が一通り完了したあとの「熊本」駅には、どのような役割を期待しますか。

中村さん:熊本県は地理的には九州の中心都市です。「熊本」駅から「博多」駅までは新幹線で最速約32分、「鹿児島中央」駅までは約43分。「新大阪」駅までも約2時間57分と、アクセスのいい便利な位置にあることがわかります。さらに、熊本市は政令指定都市にも指定され、人口規模としても九州の中では第3の都市です。そういった点からすると、生活や観光だけでなく、商業・ビジネスの拠点としても可能性が眠っているのかなと。「熊本」駅前の再開発を通して、熊本県の魅力を磨くお手伝いができればと思っています。

――最後に、これから「熊本」駅周辺エリアに暮らしたい方に向けてメッセージをお願いします。

中村さん:「熊本」駅には在来線や新幹線、市電やバスが集まっていてアクセスはいいですし、今回の再開発事業でまち並みも綺麗に、新しく大型の商業施設も建ちます。「住みたい、働きたい、訪れたい」と思ってもらえるまちづくりを進めておりますので、ぜひ一度足を運んで体験してみてください。

――ありがとうございました。

九州旅客鉄道株式会社
九州旅客鉄道株式会社

九州旅客鉄道株式会社 事業開発本部 熊本開発プロジェクト

担当部長 中村さん
所在地:福岡県福岡市博多区博多駅前3-25-21
電話番号:092-474-2414
URL:https://www.jrkyushu.co.jp/
※この情報は2020(令和2)年1月時点のものです。

再開発事業によりJR「熊本」駅周辺エリアの魅力を発掘・創造する/九州旅客鉄道株式会社 事業開発本部 熊本開発プロジェクト 担当部長 中村さん
所在地:福岡県福岡市博多区博多駅前3-25-21 
https://www.jrkyushu.co.jp/