さいたま市立常盤中学校 校長 山下先生

古きと新しきを重んじ、子ども達の気づく力を育てる/さいたま市立常盤中学校(埼玉県)

1947(昭和23)年開校、70年以上の歴史をもつ埼玉県さいたま市にある『さいたま市立常盤中学』。市の文教エリアに所在する1校として教育に力をいれる一方、部活動やコンクールといった活動でも年々成果を挙げ、文武両道の精神を貫く街の伝統校です。今回は、校長に着任し本年で4年目となる山下誠二先生に、目指す学校づくりのために実施している取り組みや環境づくりについてお話を伺いました。

さいたま市立常盤中学校
さいたま市立常盤中学校

学校は、子ども達が自ら気づく力を育てることが大切

――まずは、学校の沿革や特徴について教えてください。

2017(平成29)年には70周年を迎えた伝統校
2017(平成29)年には70周年を迎えた伝統校

山下校長先生:『さいたま市立常盤中学校』は、「浦和」駅周辺から「北浦和」駅、「与野」駅を含む広範囲にわたる学区に位置し、2019年現在、1年生8学級、2年生7学級、3年生9学級、そして特別学級の生徒総勢884名の大規模な学校です。また、1947年設立の70年以上の伝統ある学校ですが、伝統を引き継ぎつつも、新しい常盤中を作らなければならないという意識の下、学校づくりを行っています。

――教育目標と目標を達成するための取り組みについては、いかがですか。

山下校長先生:教育目標は、「心豊かな中学生」「自ら学ぶ中学生」「活力あふれる中学生」ですが、私はあまり教育目標に触れないんですよ。結局学校って、目標だらけになってしまうんですよね。目標を作るよりも、気づき力を高めて「元気に登校」「笑顔で下校」できればいいのではないかと思うんです。「気づき力」というのは、例えば、「靴のかかとを揃えましょう」と言った時に、自分の靴だけじゃなくて他の生徒の揃っていないかかともそっと揃えてあげる、そういった気づく力です。社会に出ても、そういったことこそが実際には通用しますしね。

靴のかかとそろえは、緊急時の安全確認にも役立つという
靴のかかとそろえは、緊急時の安全確認にも役立つという

また、先生方には、生徒達に「靴が揃ってないよ」ということは絶対に口に出さず、黙って揃えてあげてくださいと伝えています。そこで本人が自分から気づくことが、「気づき力」を育むことになると考えているからです。

――そうした取り組みを実践するために、先生方へはどのような指導を行っているのでしょうか。

山下校長先生:例えば、通知表を子ども達に渡す時に「頑張れ」ではなく、この子が頑張ったことを何か1つ、言葉に出して渡してください、マイナスイメージのついてしまう言葉ではなく、できるだけいいことを伝えてくださいと先生方には話しています。また、そういう会話を通して、先生が自分を見てくれている、自分が認められているという意識を子ども達がもつことも大切です。実は、「先生、先生」と近寄ってくる子ども達はそんなに心配ではないんです。その後ろにいる子ども達を、先生方がいかに見ることができるかだと思います。

生徒や先生との日々のコミュニケーションが、信頼を築いていく
生徒や先生との日々のコミュニケーションが、信頼を築いていく

保護者にとっても風通しのよい環境づくりを

――子ども達を通して、保護者との連携も重要になってきますが、保護者とのコミュニケーションはいかがですか。

山下校長先生:話しやすい雰囲気を作ることや、話せる機会を作ることを大切にしています。親御さんの中には、例えば、自分の子どもに病気や障害があるといったことを隠したがる方が一般的には結構いらっしゃるようです。本校では毎年、新入生の保護者説明会を1月に行っているのですが、その時に私は、「お子さんのことで何か不安があれば、入学する前に相談に来てください」とはっきりお伝えしています。事前に配慮すべき内容が分かっているのと分かっていないのとだと、子ども達への対応の仕方が全く変わってしまいます。その情報をこちらが知っておくことで、4月当初からしっかり対応をとることができます。

また、そうした取り組みが、保護者の間で口コミのように伝わり、「この先生、話聞いてくれるよ。あなたも相談に行ってみたら?」という雰囲気が作られていくんです。学校の垣根というのは意外と高いので、その垣根を低くしてあげないと本音は出てこないと思います。

この学校には、保護者会はありましたが学級懇談会がありませんでした。ですので、昨年からそれを始め、今年も4月に学年ごとの全体会をやってから学級懇談会をやりました。会での保護者の自己紹介の時、私は単純な自己紹介ではなく、自分のお子さんのいい所をアピールしてくださいと保護者の方々に言うんです。そうすると、担任も覚えやすいし、顔もお互い覚えます。LINEなどのやり取りではなく、こうして直に会って話をするということが非常に大事だと思います。今、そうした懇談会をなくす学校も多いですが、本校ではそれを復活させました。

生徒一人ひとりの活躍と学校の実践的取り組みが生み出すもの

――続いては、学校の活動について教えてください。2017年に市の駅伝大会で優勝するなど、貴校は部活動やその他の活動が盛んなことでも定評がありますね。

数々のトロフィーや賞状が並ぶ校内
数々のトロフィーや賞状が並ぶ校内

山下校長先生:そうですね。体育系も文化系も複数の生徒が活躍しています。昨年は、サッカー部が新人戦は市で7位と苦戦しましたが、県大会では決勝まで行き、埼玉スタジアムで試合をしました。決勝では負けてしまったものの、市で7番のチームが県大会で準優勝まで行けてしまうなんて、中学生の力は未知数ですよね。

また、平成30年度に女子サッカー部を発足させました。市内では、原山中学校に次いで、二枚目の学校です。6月の市の中学校総合体育大会では、初めて女子の部が実施されます。さいたま市は、市長も女子サッカーの聖地として考えていますので、今後が楽しみです。

平成30年度に新しく発足した女子サッカーチーム
平成30年度に新しく発足した女子サッカーチーム

山下校長先生:文系の部では、吹奏楽部には個人で日本一になった生徒もいますし、科学部がロボットコンテストの全国大会へ、そして手芸部がお弁当作りコンクールで全国大会へ行ったりもしました。それから部活ではないですが、将棋の団体戦で東日本大会に出たり、チアリーディングで世界大会に行った子がいたり、いろいろな生徒がいます。

校内の各所には才能豊かな子ども達の美術作品が
校内の各所には才能豊かな子ども達の美術作品が

山下校長先生:こうした活躍が生まれていることもあり、今までは個人的にクラブ活動でどこかへ行くとなると欠席扱いだったのですが、それを欠席扱いではなくしました。学校側は、子ども達を応援してあげる立場じゃないといけないと思います。悪いことをやっているわけではないですし、中体連でやっている大会と同じ扱いにしましょうということで、今年市内一斉にそのような対応に変えました。

――教育面での活動や取り組みとして、他校と連携していること等はありますか。

山下校長先生:安全委員が小学校へ行き、自転車のマナー教室をやっています。自転車通学者が多い仲町小学校という学校があるのですが、本校2年生の安全委員、基本的にはその中の仲町小の卒業生が小学校へ行って、自分たちで作ったパワーポイントの資料などを使いながら安全指導を行っています。また、小中一貫教育の研究の一環で、体育、美術、音楽、家庭科の先生方が基本的には週に1回小学校へ行き、授業を行っています。

こうした取り組みの良い点は、中学校の生徒や先生が小学校へ行くことで、小学生が中学校にあがってきた時に「知っている先輩、先生がいる」と安心感が生まれることが大きい点ですね。

――そうした取り組みを通して、どのような学校を作りたいか、山下校長の目指す学校像をお聞かせください。

山下校長先生:校長がいらない学校が、私の理想ですね。トップがいる組織もいいとは思いますが、ある程度やったら任せるというのもいいのではないかなと思います。その方が、一人一人が考えて動き、より集団がまとまるのではないかと思うからです。いろいろな校長の先輩方に、校長は最後の砦という意味で「校長は、後ろを振り向いたら誰もいないんだよ」と言われるのですが、私の場合はありがたいことに、振り返ったら先生方がたくさんいらっしゃるので、とても助かっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。玄関という学校での一日が始まる場所での“気づく力”。ひとりひとりの生徒が他人を思いやる心を育む教育方針は、今後の人間性を形成するうえでとても重要なことだと感じます。マイナスではなくプラスのポイントを必ず挙げて通知表を渡す、という試みも子どもたちのモチベーション向上につながりそうです。気づきも、本人が気づくまでそっとしてあげるという柔軟な教育方針の『常盤中学校』から、山下校長先生のお話でした。子どもたちを見守りながら育んでいくことが、自主性にもつながっているのだとおもいます。これから、さいたま市への転居や移住をお考えの方の参考になれば幸いです。

さいたま市立常盤中学校
さいたま市立常盤中学校

さいたま市立常盤中学校

校長 山下誠二先生
所在地:埼玉県さいたま市浦和区針ヶ谷4-1-9
URL:http://tokiwa-j.saitama-city.ed.jp
※この情報は2019(令和元)年5月時点のものです。

古きと新しきを重んじ、子ども達の気づく力を育てる/さいたま市立常盤中学校(埼玉県)
所在地:埼玉県さいたま市浦和区針ヶ谷4-1-9 
電話番号:048-831-3189
http://tokiwa-j.saitama-city.ed.jp/