地産地消の食材を用いた給食や里山体験活動など地域ならではの魅力的な取り組み/川西市立川西北小学校(兵庫県)
1954年(昭和29年)の8月に、川西町・多田村・東谷村が合併し、自然環境に恵まれたベットタウンとして開発された兵庫県川西市。能勢電鉄妙見線「滝山」駅から徒歩4分という場所に「川西市立川西北小学校」があります。同校では、「学びあい」を軸に、子ども同士が互いに影響を与え合う教育を行っています。そんな「川西市立川西北小学校」の日々の教育活動や再開発が進む街の魅力について、伊豆校長先生にお話を伺いました。
――まずは、学校の沿革・概要についてお聞かせください。
伊豆校長先生:「川西市立川西北小学校」は1954(昭和29)年の開校です。現在、地理的には川西市の中心に位置するのですが、川西町だった当時は川西町の北にあったことから「川西北小学校」と命名されました。一番多いときは生徒1,000人を超えるマンモス校でしたが、2021(令和3)年度は1~2年が3クラス、3~6年が2クラス、全校468名の生徒が在籍しています。校舎が一文字のように横に長く、廊下が直線で150mもあります。教室はすべて日当たりの良い南側にあり、グランドの水はけが良いのが特徴です。
教育目標は「ぬくもりのある学校」
――伊豆校長先生がこちらに赴任されて来られたのはいつですか?
伊豆校長先生:2020(令和2)年度に赴任してきました。校長として教育の中心に子どもを置き、子どものためになる教育を展開していきたいと考えています。その基本になるのがやはり授業で、特に「学びあい」を大切にしています。周囲にいる大人や先生から刺激を得るものも大切ですが、子ども同士はお互いに刺激を与える存在です。その思いは「ぬくもりのある学校~一人ひとりを大切にし、その可能性を伸ばし、心豊かでたくましい子どもを育てる」という学校教育目標にも反映しています。この「ぬくもりのある学校」という学校教育目標は、子どもたちもとても気に入ってくれています。
――教科教育において、特色のある取り組みや力を入れていることを教えてください。
伊豆校長先生:兵庫県は3年生で環境体験学習、5年生で自然学校を柱とした教育を行っています。さらに、川西市では4年生で「にほんの里100選」に選ばれている黒川での里山体験活動も行っています。本校では、小学校の東側にある川に入って水生生物を観察する体験学習も実施。採取した生物を観察して、その川の特徴を知ることで、環境に対する意識が育まれると考えています。川西市は自然環境が豊かなので、そういった面を教育に生かしているわけです。
――学習面での特徴的な取り組みがあれば教えてください。
伊豆校長先生:朝8:30~8:45の15分間を主に漢字の学習を行う「いちごタイム」、昼休み・清掃後の13:45~13:55までの10分間を主に計算の学習を行う「たけのこタイム」と名付けて、国語と算数の基礎学力向上に取り組んでいます。短い時間ですが、子どもたちは真剣に漢字や計算の反復練習に取り組んでいますよ。
また、2020(令和2)年12月には川西市すべての小・中学校で、1人1台タブレット端末が配布され、本校においてもタブレットを使った調べ学習やプレゼンテーションに取り組んでいます。インターネットを使って検索できるようになり、短時間でより詳しく調べることができるようになりました。跳び箱の授業で、動画撮影した自分のフォームを見て、どこが悪いのか見直すことも行なっていますよ。週末にタブレットを持って帰って、ペーパーレスの宿題をするなどの取り組みも開始しています。
地産地消の食材を使った自校給食が特徴
――ホームページの日誌に「給食室より」からのコメントが掲載されていますね。食育という点で力を入れている取り組みなどがありますか?
伊豆校長先生:川西市は給食が自慢なんです。最近は給食センター式の学校が増えていますが、川西市の16小学校すべてが自校給食を導入しています。お米を中心とした米飯給食で、ほぼ毎日ごはんが出てくるのも特徴です。川西市の栄養士ができる限り地産地消の食材を使って、メニューを作っていて、出来立てを提供してくれるので、とてもおいしいですよ。季節の行事や文化に合わせた食事も提供してくれます。6年生の給食最後の日に、お祝いのお赤飯が出たんですよ。こういった取り組みは、食育の面でもとても良いことだと思っています。
――「キセラ川西」の再開発により、生徒数や学校の取組に変化はございましたか?
伊豆校長先生:「キセラ川西」が開発されたことは本校においても大きな変化です。ほかの地域から人が流れてきたことで、少子化でありながら今後10年程度は、生徒数は減らないと予測されています。子どもの数が増えると、やはり人と関わる機会が多くなりますし、さまざまな活動を豊かに行うことが可能になるので、教育の面でも大きな魅力ですね。
コロナ禍で導入したオンライン朝礼や集会
――新型コロナウイルスの影響で、学校独自で新しく始めた試みがございましたら教えてください。
伊豆校長先生:プラス面としてはICT(PC、タブレットなど情報通信機器)が入ったことでZoomを使った朝礼や集会などが実施できるようになりました。全校生徒を体育館に集めるのは控えたほうがいいという判断で、教室ごとにZoomで朝礼を行っています。私の話もZoomを通して教室で聞くというスタイルですね。毎年、6年生を送る会は体育館で行っていましたが、今年は各教室でZoomを使って開催しました。
もちろんマイナス面もあります。そのひとつは給食で全員前を向いて無言で食べていることです。本来であれば、班で向かい合って「おいしいね」といった会話をしながら食事を楽しむのですが、今はできない状況です。授業も1列ごとに机を並べて行っています。隣の人と話したり、困っていたら助けたり、分からないことを教えあったりすることはとても大切なので、早く元の環境に戻せたらと願っています。
――校長先生は教育では何か大切だとお考えですか?
伊豆校長先生:知・徳・体という3つのバランスのとれた力を育てていきたいですね。今は基礎学力の重要性が問われていますが、最初に求められるのは「体」だと考えています。体をまず作らないと豊かな心は育ちません。また、人権教育も重要です。本校でもいろいろな子がいるということを肌で感じ、LGBTや多様性についても、理解を深めていく取り組みを行っています。私自身、毎日校内を少なくとも2周はして、授業を見たり、顔つきの気になる子の様子を見たりしています。子どもたちは人懐っこいので、よく話しますよ。
――近隣の中学校との連携はありますか?
伊豆校長先生:「中一ギャップ」を無くすために、6年生が中学校に行って体験授業をしたり、部活参観をしたりしています。ただ、残念ながら、今年はコロナの影響で全部無くなってしまいました。
地域と生徒との協力活動やボランティアについて
――小学校と地域との関わりには、どのようなものがありますか?
伊豆校長先生:この周辺には、昔からここに住んでいる地域の方がたくさんいらっしゃいます。自治会も多く、コミュニティの活動も非常に盛んです。本校のグランドや体育館を使って、地域の祭も年に4回ほど開催されています。昨年はコロナ禍でしたが、秋祭だけ開催されました。もちろん子どもたちも参加するので、本校が地域活動の核になっていると感じています。「学校安全協力員」というボランティアの方が子どもたちと一緒に登校してくれたり、交差点などにも立ってくださったり、子どもたちを見守ってくださっています。
また、運動会などの大きな行事の際は、校門に立って不審者が校内に入るのを防ぐといった役割も担っていただき、とても感謝しています。また、地域の方が中心に、折り紙やドッジボール、英語、将棋の放課後学習教室も行なってくれています。また、子どもたちからの地域の参加としては「ぬくもり活動隊」として、地域の方と一緒にゴミ拾いなどを行っています。
――伊豆校長先生が感じる、地域の魅力を教えてください。
伊豆校長先生:「豊富な自然」と「便利さ」のバランスが良い地域だと思います。公園や文化・体育施設も多く、いろいろな活動に取り組める環境が整っているところが魅力ですね。近くにある五月山には、6年生の手を引いて1年生を連れていく遠足も行っています。「五月山動物園」が近くにあるのも魅力ですね。歩いて行けるところに、動物園があるってすごいなと思います。また、「キセラ川西」に総合病院を建築中ですので、住民サービス面でのより一層の充実にも期待しています。
――最後に、今後の展望についてお聞かせください。
伊豆校長先生:小学校は地域の核になる存在。子どもたちがそこで学んで外へ羽ばたいていっても、また戻ってこられる「ふるさと」のひとつになればいいなと思いますね。そういう意味でも、地域との連携を深め、地域を大切にしていかなければならないと考えています。さまざまな活動に取り組んでくださっている地域の方々も高齢化が進んでいるので、次の世代にバトンをつないでいただくことも期待しています。
川西市立川西北小学校
伊豆校長先生
所在地 :兵庫県川西市丸の内町7番1号
電話番号:072-759-3880
URL:http://www.kawanishi-hyg.ed.jp/kawakitapo/
※この情報は2021(令和3)年4月時点のものです。
地産地消の食材を用いた給食や里山体験活動など地域ならではの魅力的な取り組み/川西市立川西北小学校(兵庫県)
所在地:兵庫県川西市丸の内町7-1
http://www.kawanishi-hyg.ed.jp/kawakitap..