認定NPO法人 びーのびーの 石原 里美さん、港北区地域子育て支援拠点「どろっぷ」副施設長 舘 裕香さんインタビュー

地域の子育てを心強くサポートする/港北区地域子育て支援拠点 どろっぷ(神奈川県)


「どろっぷ」外観
「どろっぷ」外観

大倉山商店街の途中にある「どろっぷ」は、横浜市内の各区に設置されている「地域子育て支援拠点」のひとつ。就学前の子どもとその保護者が、平日の昼間であればいつでも、自由に訪れられる場所として開放されている。いわゆる「児童館」が18歳までを対象としているのに対して、ここは主に0~3歳の未就学児が対象なので、訪れるのは小さなお子さんを連れた方ばかり。同じ境遇だからこそ悩みや不安を語り合ったり、スタッフが見守る中でさまざまな活動を行ったりと、思い思いの時間を過ごす場所だ。また、区内のあらゆる子育て支援サービスを繋ぐハブとしての役割も担っている。今回はこの「どろっぷ」の運営を港北区から委託されている「認定NPO法人 びーのびーの」のスタッフ石原里美さんと、「どろっぷ」副施設長として日々子どもたちと向き合っている舘裕香さんのおふたりに、施設の特徴と大倉山エリアの魅力についてお話を聞いた。

親子で楽しく過ごせる「おやこのひろば」
親子で楽しく過ごせる「おやこのひろば」

――まずは、地域子育て支援拠点「どろっぷ」について、概要を教えてください。

舘さん: ここは港北区の施設で、主に0歳から3歳の未就学児のお子さんと、そのご家族が過ごす場所です。運営を、私たち「認定NPO法人 びーのびーの」が行っております。利用料はかからず、火曜日から土曜日まで、常設で開いており、隔月に1回だけ、日曜開館もしています。「児童館の乳幼児版」だと思っていただければ、イメージしやすいと思います。 基本的には親子で自由に過ごしてもらう場所なのですが、その中で、様々なプログラムを行ったり、お庭で遊んだりしています。ひろばでの一時預かり事業も行っています。

――運営法人の「認定NPO法人 びーのびーの」では、どのような活動をされているのでしょうか?

石原さん: 「認定NPO法人 びーのびーの」は2000(平成12)年に設立した法人で、最初は菊名の「おやこの広場びーのびーの」からスタートしました。2006(平成18)年に、横浜市で最初に区の地域子育て支援拠点の運営を委託され、その後、綱島に2つ目の拠点「どろっぷサテライト」ができ、 その2か所を運営しています。このほか、「びーのびーのガイド」という港北区の幼稚園・認定こども園・保育園ガイドも作っています。これは毎年発行しており、書店やネットで販売をしています。港北区の幼稚園と保育園の情報を、最新号では225園、園に通う保護者の声や、最新の園の情報を提供しています。ほかにも認可保育所や、地域で交流できるスペースの運営も行っています。

「びーのびーのガイド」
「びーのびーのガイド」

――「どろっぷ」の利用方法を教えてください。

舘さん: 利用は無料ですが、初めて来館された際は、まず登録をしていただきます。横浜市以外にお住まいの方でもご利用いただけますので、遠くのお友達同士での利用も可能です。特に予約なども必要ないので、自由にいつでも来ていただいて大丈夫です。 利用時間についても、特に制限はないですし、午前午後と時間も分かれていないので、1日過ごす方もいれば、2~3時間の方など、活用方法は皆さんそれぞれですね。

石原さん: ただ、今はコロナの関係で入館者数を制限していて、混んでいる時には、少しお庭で待っていただくということもあります。

舘さん: 混雑状況は、どろっぷHPで確認できます。活動状況はインスタグラムでも見ることができるので、どんな場所なのかイメージを持てると思います。

――「どろっぷ」の利用者数と、施設の特徴を教えてください。

舘さん: 現在は入館制限の関係で1日に60~70組くらいですが、通常は、1日100組くらいの利用がありました。ひと月に換算すると、本来は2000組くらいということになります。綱島のどろっぷサテライトも同じくらいの利用があります。

お庭で水遊びを楽しむ子どもたち
お庭で水遊びを楽しむ子どもたち

石原さん: 施設としては、庭があるのが特徴だと思います。夏は今日のように水遊びができ、子どもたちが思いっきり遊べます。お母さんも、家ではなかなか水遊びをさせられないけれど、ここだったら広い庭で、安心して水遊びをさせられるようです。

舘さん: あとは「人」です。地域の多様な方々に支えられています。お庭に小さな畑があるのですが、この畑は90歳のおじいちゃんが手入れをしています。花壇も、シニアのボランティアさんが手入れをしてくださって、「0歳から90歳までが集う場所」になっています。この点も「どろっぷ」ならではの特徴だと思います。

多世代の人のつながりが生まれる
多世代の人のつながりが生まれる

石原さん: 夏休みなどは特に、学生さんのボランティアや実習生もたくさん来るので、本当に老若男女、いろんな方々が集う場所になっています。まさに「地域みんなで子育てをする」という形を実践している、地域の子育て支援拠点です。

― 訪れる方は、リピーターの方がほとんどですか?

舘さん: いえ、新規の方もかなり多いです。毎日何組かは必ず新規利用があります。もちろんリピーターには、毎日来るような方もいらっしゃいます。今は、皆さん譲りあって利用してくださっています。よく耳にするような、「グループができているから行きにくい」という雰囲気はないです。初めての方も安心して来られると思います。 2階にある研修室で、2カ月から4カ月の第1子向けのプログラムや助産師さんと子育てのアレコレを相談できるようなプログラムなどありますので、是非参加していただきたいです。

― 年齢によって利用するゾーンは分かれていますか?

舘さん: ゆるやかなコーナーは設定しています。ただ基本的には、いろいろな月齢の子たちが交ざりあうことが、刺激があり、良いことだと思っています。 だから、誰が誰の子を見ているかわからないような状況もけっこうあります。みんなで助け合って、ひろばを作っている感覚がありますね。

石原さん: 昔は、ちょっと外に出たら、近所の人たちがみんなで一緒に子どもを見ていてくれる、という場面もあったと思うのですが、今は核家族化でそういった場面も少なくなっています。でも、そういう状態が、ここでは見られるかなと思います。

――プログラムについて教えてください。

舘さん: 毎日毎日、何かのプログラムをやっているということではないんですが、予約制のプログラムから、飛び込み参加できる簡単な座談会、講座まで、様々なプログラムを行っています。いろいろありすぎて、具体的な紹介は難しいのですが…。インスタに日々さまざまな情報を上げていますので、ぜひ見てみてください!

― 先ほどもお話にあった、初めての方向けのプログラムとは何でしょうか?

舘さん: 今ちょうど、2階で開催しているのですが、「あっぷっぷ」というプログラムです。主に生後2か月から4か月までの、第1子のママたちが集まって、座談会をするというものです。まず初めに、スタッフと一緒に手遊びをして緊張がほぐれた後、ママたちを中心に座談会をします。同じ月齢の赤ちゃんを持つママたちが集まって授乳や寝かしつけなど話題は様々にあがります。同じ悩みをみんなで共有することで、私だけではなかった、と皆さん安心するようです。そして次の利用につながっていきます。最初の出会いの場として利用する方も多いです。

子育てママの交流の場となる「あっぷっぷ」
子育てママの交流の場となる「あっぷっぷ」

――地域の方との関わりや、地域の方と一緒になって行うイベントなどはありますか?

舘さん: イベントは、毎年「どろっぷデー」というお祭りを、地域の方と一緒に行っています。この時には、地域にある作業所や町内会などと連携して、連合町内会の人たちは、わたあめや手打ちそばの露店を出したり、作業所の方は小さな店舗を出したり、という形で楽しんでいます。会場はここの近くにある、太尾防犯拠点センターです。

― 日常的にも、地域の方とかかわる機会は多いですか?

舘さん: そうですね。お庭の管理とか野菜作りもそうですけれど、この施設のお掃除も、地域のシニアの方にお手伝いをいただいています。本当に、地域の方に支えられていることを日々実感します。

石原さん: もちろん、区の施設ですから区役所と連携していますし、区内の子育て支援に関わっている人たちと綿密に連携をとっています。「ココアプリ」というアプリを使って、定期的に情報を発信しています。 そのための「編集会議」も毎月開いていますので、その時には保健師さん、子育て支援者、主任児童委員といった、子育てを支援している地域の方に集まっていただいて、そこでも情報共有をしています。

みんなで種から育てる「どろっぷの畑」
みんなで種から育てる「どろっぷの畑」

――「ココアプリ」について詳しく教えてください。どのように、どんな内容の配信をしていますか?

石原さん: イベントの情報はもちろんですが、区で行っている健診の情報、地域でさまざまな活動を行っている方のこと、サークルの情報など、本当に幅広く、子育てに関わる情報を発信しています。 そういう情報って、いざ集めようと思うと大量にあって大変なのですが、「ココアプリ」では情報を年齢で区切って発信していますので、とても使いやすいと思います。

子育て情報を豊富に発信している「ココアプリ」
子育て情報を豊富に発信している「ココアプリ」

舘さん: 港北区は地域の活動がすごくさかんな地域なので、サークルとか、公園あそびの会など、本当に数が多いです。私たちでも把握しきれないくらい。「ココアプリ」で発信する情報は、会議で内容を確認していますので信頼できる情報です。

石原さん: 「ココアプリ」は、専門学校の学生さんたちが作ったので、すごく使いやすいと思います。

舘さん: 「ココアプリ」は妊婦さんから使えます。お子さんが生まれてからではなくて、妊娠したら、まずは「ココアプリ」に登録してほしいです!

石原さん: この施設自体も、妊娠中の方から利用できる場所ですから、出産前から気軽にいらしていただきたいです。来るのが大変という人は、電話で相談することもできます。

舘さん: まずは来ていただければ、遊ぶところもあるし、相談もできる場所です。迷ったらいつでも来てみてください。または電話していただければと思います。

――どろっぷ独自の「自主活動」というものがあるそうですね。これは何ですか?

ママたちの「やりたいこと」が貼られたボード
ママたちの「やりたいこと」が貼られたボード

舘さん: ママたちが「やりたいこと」をボードに付箋で書いて貼ってもらいます。それをスタッフが「実現できそうなものは実現させよう」と動いているものです。サークル的なものですね。 最近では、ニットカフェとか、ソーイング講座などを始めました。他にはバイオリンを弾ける方とピアノを弾ける方で組んで、コンサートも実現しました。

石原さん: 私たちから「これをやりましょう」という形で提案をするのではなくて、利用者がやりたいなと思うことを提案して、一緒にやる人をスタッフが集って始めます。私たちはそのお手伝いをします、という立ち位置です。

― どういうきっかけで始まったのでしょうか?

舘さん: スタッフも利用者のニーズを正確に掴むのは難しいことなんです。利用者にとっての「やりたいこと」って、日々変わっていくと思うんです。そういうギャップがあるので、「今」やりたいと思っていることは「利用者に聞けばいいのでは」と考え、始めたものです。

石原さん: ここには本当にいろいろな利用者さんがいて、様々な専門知識を持っている方がいるので、「自主活動」はそういう能力を存分に生かしていただけるような場にもなっていると思います。

たくさんの絵本に触れることができる
たくさんの絵本に触れることができる

――利用者から聞いた、「どろっぷのココがいい!」という声を教えてください。

舘さん: いつでも広場が開いていて、日々何かしらのプログラムがあって、最近では一時預かりも始めたので、これも大変好評です。そして、「幅広い月齢の子どもたちが元気に遊び、親だけではないボランティアなどの多世代の交流が行われる」というのが、一番の魅力のようです。だから何度も来てくださるんだと思います。

石原さん: 今はコロナ禍なので、家でお子さんとふたりだけで過ごしている方も多いと思うんです。そういう時に、ここに来て、誰かと話をしたり、誰かにちょっとだっこしてもらったりして、そういうことで、「すごく安心した」とか、「実家に帰ってきたみたいな気持ちになった」という声も、よく聞いています。

和室でゆったり過ごせる「相談室」
和室でゆったり過ごせる「相談室」

――近隣の中学校との連携イベントも、積極的に行っているそうですね。詳しく教えてください。

舘さん: 中学校の家庭科の授業の一環として、「ふれあい体験」というものがあります。こちらの利用者の親子に協力してもらって、中学生が赤ちゃんとふれ合います。生徒には、赤ちゃんを抱っこしてもらったり、妊婦ジャケットを着用して妊婦体験をしてもらったりしています。

―― この体験で、双方にとってどのようなプラスがありますか?

舘さん: 実際にここで会った中学生が、数年後に学生ボランティアとしてここに戻ってきてくれたこともあります。今は赤ちゃんに触れたことがないまま、出産や子育てをする人が多いので、彼らが赤ちゃんと触れ合うことで、大人になった時の見通しが立てやすくなる、という点はあると思います。 また、「受験でピリピリした心が癒された」とか、「周りに優しくなれた」、「自分も小さいころ、こんなに大事にされてたんだ、ということに気づけた」という感想も聞いています。そしてお母さんたちも、中学生とふれあって、「中学生ってこんなに素直なんだな」と感じ、自分の子育て体験談を中学生に話すことで、気分転換になるようです。自分の子どもがいつか通うであろう中学校の雰囲気を感じることができ、小さな交流ですけれど、双方にとっていいことが、たくさんあるんですよ。

――中学生以外にも、学生さんと関わる機会は多いそうですね。どのような関わりがありますか?

舘さん: 毎年夏に「ボラリーグこうほく」というものがあります。港北区在住・在学の、中学生・高校生・大学生に向けて募集をしているもので、子育てサロン、子育てひろば、公園遊びなどの場に学生さんたちに行ってもらい、いろいろなボランティア活動をしてもらっています。 今年はコロナ禍ということで、40人くらいに絞っているのですが、例年はもっとたくさんの学生さんがボランティアに来ます。大学生がいちばん多いですが、最近は特に、中学生と高校生の参加も増えています。ここでの体験を通して、保育系の大学に進むことを決めた、という方もいるみたいですね。

石原さん: 開設当時の利用者(お子さん)が学生さんになって来てくれた時はうれしいですね。

――今後のビジョンについて教えてください。

舘さん: いちばん注力していきたいのは、「常に子どもの笑顔とお母さんの笑顔を絶やさない」ということですね。いま私たちができることにアンテナを張って、楽しい子育てができるといいな、と思っています。

石原さん: 「子どもがまんなか」というのが私達のコンセプトなので「その時の状況に合わせて、何をすべきか」ということを問いかけながら、これからもやっていきたいですね。

コンセプトは「子どもがまんなか、みんなで子育て」
コンセプトは「子どもがまんなか、みんなで子育て」

――最後に、子育てをする街としての、大倉山エリアの魅力を教えてください。

石原さん: 港北区は横浜市の中でも特に子育て家庭が多い区ですが、それはなぜかといえば、「子育てに便利なところ」だからだと思います。「どろっぷ」のような施設もあるし、街ぐるみで子育て家庭に温かい雰囲気がありますし、この大倉山に関しては、緑が多くて、畑もあります。鶴見川の両側は遊歩道になっており、素晴らしい環境が揃っていると思います。そういう環境が、実際に子育てをしていく中で、魅力的なんだと思います。 あと、地形ですね。大倉山から綱島の辺りは、横浜では珍しい平坦な所なんです。だから、自転車でいろいろなところに行けますし、ベビーカーでも生活がしやすいと思います。行動範囲が広ければ、保育園を探す時にも少し広い範囲を見ることができて、選択肢が広がると思います。 それから横浜市全体として、幼保小の連携、小中の連携に力を入れているので、「地域で子育てをする」という視点がすごく大きいと感じています。その「つながり」の拠点となるのがこの「どろっぷ」だと思っているので、今後もここから、地域と子どもたちをつなげていけたらいいな、と思っています。

舘さん: 私も、緑が多いというのはすごく感じております。幅広い世代が住んでいて、バランスがいい街ですよね。 もちろん交通も便利で、東京にも横浜にも行きやすいし、お子さんがいる場合は、沿線に私立の学校も多いので、私立に通わせやすい環境もあると思います。そもそも港北区全体が文教エリアなので、公立も含めて、教育施設のレベルは高いですね。あと個人的には、大倉山の商店街が大好きなんです。とても活気があるんですよね。子育て世代向けにハロウィンのイベントや四季折々のお祭りを行っています。地域をあげて様々な取り組みを行っているので、歩いているだけでとても元気がもらえる素敵な街だと思います。

港北区地域子育て支援拠点「どろっぷ」
港北区地域子育て支援拠点「どろっぷ」

港北区地域子育て支援拠点「どろっぷ」

認定NPO法人 びーのびーの 石原 里美さん
港北区地域子育て支援拠点「どろっぷ」副施設長 舘 裕香さん
所在地:神奈川県横浜市港北区大倉山3-57-3
電話番号:045-540-7420
URL:http://www.kohoku-drop.jp/
※この情報は2021(令和3)年7月時点のものです。

地域の子育てを心強くサポートする/港北区地域子育て支援拠点 どろっぷ(神奈川県)
所在地:神奈川県横浜市港北区大倉山3-57-3 
電話番号:045-540-7420
開館時間:9:30~16:00
休館日:日・月曜日、祝日、年末年始、特別休館日
https://www.kohoku-drop.jp/