本町のライフスタイルを魅力的に“デザイン”する/本町商店街振興組合(宮城県)
仙台市青葉区本町二丁目に広がる「本町商店街」。昔ながらの商店街が今なお賑わいを保つ仙台市街地において、「仙台」駅前のアーケード商店街とはまた異なる魅力を感じるエリアだ。
『本町デザインムーヴメント』をコンセプトとして、ユニークなイベント開催や積極的な情報発信など、独自性のある商店街や周辺地域のブランディングを行う「本町商店街振興組合」を訪ね、その取り組みや今後の展望、本町エリアの住みやすさなどについて、理事長の湯澤一也さんにお話を伺った。
寺町から家具の街、そして若者が訪れる商店街に
――「本町商店街」の歴史・、現在の本町商店街の概要をお聞かせください。
湯澤さん:「本町商店街」のある本町二丁目やこの周辺一帯の歴史は、古くは慶長6年(1601)年の伊達政宗の仙台開府に始まり、当時は「定禅寺」や「満願寺」など複数の寺院が立ち並んでいましたが、1637 (寛永14) 年に寺の一部が移されて侍町になったのを機に「元寺小路(もとてらこうじ)」と呼ばれるようになりました。
幕末の頃には、職人町や門前町、そして武士の屋敷などで構成される町に変わり、明治維新後は商人の町へと姿を変えていきました。明治時代からは家具や表具を扱うお店が多く出店し、“家具の街”としても知られるようになりました。
「本町商店街 振興組合」の設立は1993(平成5)年9月、さまざまな企業や店舗など39の組合員が加盟しています(2022年7月時点)。現在は大手予備校があることなどから、若い方々の集まる街になっており、おしゃれな古着屋、飲食店、美容室などが点在しています。
地下鉄南北線「広瀬通」駅だけでなく「仙台市役所」や「宮城県庁」にも近い商店街ですが、大通りに面していないため、大きなアーケード街にはない独特の味わいを感じていただけるのではないかなと思います。
――商店街にはどのようなお客さんが多く来られるのでしょうか?
湯澤さん:目的を持たずに見て歩くだけでも楽しい商店街ですが、目当ての飲食店やサロンを目指してやってくる若い方が多いといった印象です。通行量は土・日よりも平日の方が多いですね。現在も人通りがあるように感じられるかもしれませんが、コロナ以前より2割程少ないため、早く本来の賑わいが戻ってきてほしいと願うばかりです。
『デザインムーヴメント』を掲げて取り組む、多彩でユニークなイベント企画
――「本町商店街」ならではの取り組みなどもご紹介いただけますか?
湯澤さん:「本町商店街」の理念として『デザインムーヴメント』を掲げています。“デザイン”というのは、ある問題を解決するために思考・概念の組み立てを行い、それをさまざまな媒体に応じて表現するというのが本来の意味で、我々もそれを踏まえて、画一的な価値観にとらわれず、1人ひとりの美意識・感性をデザインし、心豊かな価値観とともに、ゆとりのあるライフスタイルに貢献する活動を心がけ、商店街の魅力発信や独自のコミュニティー作りを行っています。昨年には経済産業省・中小企業庁が、全国の商店街から選定する「はばたく商店街30選」にも選ばれました。
――具体的にはどのようなことをされているのでしょう?
湯澤さん:継続事業の一つとして、宮城県北部にある涌谷町(わくやちょう)と連携して、米づくり体験を行う「本町ファーム」という事業を行っています。田植えに始まり、草刈り、稲刈り、精米、そして販売まで、自分たちの手で関わりながら生活の基盤である「食」を通じてライフスタイルを見つめ直すことや、活動を通じてより多くの方に本町と涌谷町について知ってもらうことなどを目的に取り組んでいます。
お米の品種が「ひとめぼれ」だったところからブランド名は「恋する二人」です。本町2丁目にある「専門学校 デジタルアーツ仙台」で、当組合の理事の1人が講師をしていたご縁から、学生にパッケージデザインをしてもらいました。
――ほかにもさまざまなイベントを開催しているようですね。
湯澤さん:本町には4つの町内会があるのですが、町内会のメンバーと当組合のメンバーとは仲がよく、イベント開催をはじめ、何かするときの団結力は大変心強いものがあります。
イベントについては、その場だけ盛り上がって終わりというのではなく、まちの活性化を含め、後々にもいい影響をもたらすものにしたい、というのが我々の考えにあります。過去に開催したイベントの1つに「ムーンライトマルシェ」があります。これは5つのライブ会場を用意して、まちを歩いていたらどこからともなく音楽が聞こえてくるというもので、秋の夕暮れ時に開催したこともあって実に幻想的な時間でした。
また、建物を解体後、次の建設工事が始まる前の一時的な空地を利用した「本町ビアガーデン」も面白かったですね。中央に立てられたシンボルツリーが、アートで飾られていく過程を見ながらビールを飲むといった趣向のイベントでした。
ほかにも「本町ビュッフェ」があります。一口に言うとスタンプラリーですが、飲食店だけでなく物販店に協力してもらい、1,000円以上の利用でカードにスタンプが押されます。カードがスタンプで埋まると店先に飾られた花を取り、それが抽選の引き換え券の代わりになるというものです。花を持って歩く人がまちにたくさんいたら面白いかもしれないというふとした思いつきが形になったイベントです。
――商店街の今後の展開については、どのようにお考えでしょうか?
湯澤さん:ありがたいことに、現在の本町エリアは、商店街をふくめて“面白い街”と思っていただけているように感じます。しかし何もしなければ、すぐに“昔は面白かった街”になってしまいますから、積極的な情報発信を続けながら、イベントを含め、今後も面白いアイデアを形にしていくことが大切と考えています。
本町ならではの暮らしを楽しむ
――地元の方視点で、本町エリアの魅力や暮らしやすさについてはいかがでしょうか。
湯澤さん:地下鉄「広瀬通」駅が近く、またターミナル「仙台」駅にも歩いて行けます。足元にはこの「本町商店街」があり、個性的なお店が集まり散策も楽しめます。また、中心部に「錦町公園」があるのは大きな財産ですね。観桜スポットとしても有名ですし、イベント会社を通すのではなく、実行委員会を組織して開催する夏祭りは生歌・生演奏による盆踊りが人気です。
また、なだらかな坂道がある地形のおかげで景観に変化が生まれ、それが街に奥行きをつくっているように感じます。便利さ、面白さ、そして快適さにあふれた街だと思います。
――最後になりますが、これから新しく本町エリアに住む方々にメッセージをお願いします!
湯澤さん:住民が増えるということは、商店街を歩く方が増えることでもありますから我々としても大歓迎です。生活圏に商業施設は数多く存在しますが、そこまで行かなくても本町には魅力的なお店がたくさんありますから、「本町に住む」ことの楽しさ、面白さをぜひたくさん感じていただけると嬉しいですね!
本町商店街振興組合
理事長 湯澤 一也さん
所在地:仙台市青葉区本町2-1-8 3F 株式会社広瀬ビル内
電話番号:022-221-4141
URL:http://s-honcho.com/
※この情報は2022(令和4)年9月時点のものです。