明治34年創立の山の手の伝統校/横浜市立旭小学校 校長 伊藤博夫先生
横浜市立旭小学校
校長 伊藤博夫 先生
明治34年創立の山の手の伝統校
「日常生活に生きる」学びを実践
広大な「三ツ池公園」に隣接する風光明媚な住宅街、北寺尾エリア。その高台にあって、明治34年創立の伝統校として地域に愛されてきたのが、「横浜市立旭小学校」だ。子どもたちの個性を尊重するとともに体験を核とした教育活動を経営方針とし、自己肯定感や学習意欲を高める教育を実践している。伊藤博夫校長先生に、体験学習の詳細や文教地区でもある地域との交流についてお話を伺った。
「横浜市立旭小学校」の歴史や教育目標について教えてください
明治34年開校で、今年度で創立113年目となります。海抜36mと、鶴見区で一番標高が高い台地にあるのですが、昭和になってからこの場所に移転してきました。周囲は「橘学苑中学校・高等学校」「白鵬女子高等学校」「聖ヨゼフ学園」「神奈川県立鶴見高等学校」など、たくさんの学校がある山の手の文教地区です。児童数は特別支援学級を含めて計25クラスの720人。少しずつ増加傾向にあり、ここ数年は700人ぐらいを維持しています。
学校教育目標は横浜市が定める「知・徳・体・公・開」に基づいて、「あかるく さわやか ひとみきらきら あさひっ子」を掲げ、「(知)進んで学習に取り組み、粘り強く学び続ける子」「(徳)正義を重んじ、感謝の気持ちを大切に、正直に生きる子」「(体)心と体の健康に向かい、自分や人の生命と体を大切にする子」「(公)地域と豊かにかかわり、共に生きる子」「(開)様々な体験を通して、社会性の基礎を培い、変化に対応できる子」を育てることを目指しています。
机上の学習だけでなく、体験学習を重視していることが大きな特徴で、子どもたちが地域へ出ていく機会をたくさん設けている学校です。
とても長い歴史のある学校ですが、卒業生や地域とのつながりも深いのでしょうか?
私でちょうど25代目の校長となりますが、昔はおひとりで20年ぐらい校長をされた方がいらっしゃったそうです。また、校長室には歴代のPTA会長の絵が3枚飾られていて、そのうち1枚は有名な画家の木下孝則さんの作品です。校長OBや昔の卒業生が今も学校に関わってくださり、PTAの役員も入って「旭会」というOB会を組織し、年1回総会を開いています。
敷地内には、地域の方々が学校を建てるためにお金や土地を寄付してくださったことを記した石碑や、昭和に入ってから寄付された当時の正門が立っています。また、昔は農村地帯だったため、学校でヤギなどいろいろな生き物を飼っていたらしいのですが、その慰霊塔も敷地内に残っています。こういったところから歴史が感じられる一方で、屋上にはソーラーパネルが設置されているなど、近代的な面も兼ね備えている学校です。
日頃、子どもたちと接する中で、大切にしていることなどはありますか?
今の子どもたちは個性豊かなので、画一的に接するのではなく、個性を尊重しています。また、教育は教室の中だけで行っていても、社会性や公共性が育たず、子どもたちの関心意欲も沸き立ちません。そこで、本校の特徴としても申し上げましたが、体験学習や校外学習を大いに取り入れて学習を進めるべきだと、教職員と一体となって取り組んでいます。
先日も4年生がマンホールのデザインをして、自分たちで鶴見区役所に売り込んだところ、そのうち6つが正式に採用され、実際に学区内に設置していただくことになりました。そうなると、子どもたちも下水道や上水道について俄然、関心が湧きますし、依頼の仕方や電話の掛け方、目上の人への敬語の使い方など公共性が身につきます。「日常生活に生きる」学習は新学習指導要領のキーワードのひとつですが、これを体現していかなければと思っています。
旭小学校ならではの授業や行事などがありましたら教えてください
国語授業の一環として年1回、4年生を対象に落語教室を開いています。子どもたちにぜひ本物を見せたいと、落語家さんをお招きして噺を披露していただき、扇子や手ぬぐいの使い方を教えてもらっています。
6年生になると、4泊5日で新潟県の妙高へ宿泊体験学習へ行きます。これだけ長い日程で行くのは、横浜市内の小学校でも本校だけです。源流探検や夜の森の中を歩くナイトウォーク、星の観察、木の枝を削ってのマイスプーン作りなどで、豊かな自然と触れ合います。長期の日程なので、3、4泊目には喧嘩が起きますが、それもひとつの体験。イライラを我慢することを覚える、相手を傷つけないという勉強になります。また、食事の後片付けや洗濯物など、すべて自分たちでやらなければいけないので、家庭のありがたさがわかることも、宿泊体験のよいところです。子どもたちからは、「親がどれだけ自分のためにしてくれているのかがよくわかった」という感想をもらいますが、とても貴重な体験だと思います。
今の子どもたちは横のつながりではよく遊びますが、縦では遊びません。そこで、異学年交流にも力を入れていて、各学年2人ずつで1つのグループを作り、全校遠足へ行っています。グループごとに出発しますが、6年生は1年生と手をつなぎ、5年生は2年生の面倒を見てあげてと、まるで兄弟のようですよ。
「旭っ子サマースクール」という行事もありますが、どのようなことをするのでしょうか
全学年を対象に夏休みの4、5日間に行うプログラムで、教員が子どもたちの学習の面倒を見ています。ふだんは教員主体で子どもたちに教えていますが、この時は子どもたち自ら宿題や自分が足りないと思う課題をそれぞれ持ち寄って勉強し、わからない時は手を挙げて教員から教えてもらいます。
また、本校は水泳も盛んなのですが、午前中は学習、午後は水泳という形で、サマースクールと並行して10日間、水泳にも取り組んでいます。泳げる子も泳げない子も全員が参加しています。
小中一貫教育も盛んなようですが、小・中学校間でどのような取り組みをしていらっしゃいますか?
本校は「横浜市立寺尾中学校」の学区にあたり、小学生が中学校の授業を見学したり、中学生が小学校で職業体験や金管バンドクラブの指導をするなど、子どもたちの交流に取り組んでいます。
職業体験では、あえて卒業生ではなく、他校から寺尾中へ進んだ中学2年生を各学年に1人ずつ受け入れて、小学生と給食を食べたり、休み時間に一緒に遊んだり、授業ではサポート役として運動場を整備してもらうなど、1日「教師」体験をしてもらいました。中学生からは「これからは小学生にもっとやさしくしてあげたい」、本校の児童からは「中学生は怖いと思っていたけれど、話をしてみたら、そうじゃなかった」といった感想がありました。特に5、6年生は中学生と年が近いだけに甘えられず、かえって怖いというイメージがあったようですが、1日中接していると親近感を覚えたようで、お互いによい交流ができたなと思います。
たくさんの高校に囲まれた文教地区なので、小中だけでなく、小高の連携も盛んです。橘学苑の演劇部が劇を見せに来てくれたり、同じ学区内にある白鵬高校とは地域を介していろいろな交流がありますが、なるべくこうした機会を多く設けようと思っています。鶴見高校とは、高校生たちがアフリカの子どもたちへ洋服を送る活動で協力しています。本校の保護者は協力的なので、呼びかけると、段ボール10箱分ぐらいの洋服はすぐ集まってしまうんですよ。
「まちと共に歩む学校懇話会」もユニークな取り組みですね。
寺尾地区の自治会長や地域の協力者さんたちを招いて、子どもたちのあいさつや自転車の乗り方など、学校の現状についていろいろな評価をしていただいています。それだけでなく、PTAや地域の方たちと一緒に子どもたちの防犯安全のために地区ごとに見守りで立ってくださるなど、いろいろな面でバックアップしてくださっていますね。例えば、1、2年生が公園へ春を探しに行く時なども、付き添いが担任と副担任だけだと危険がありますが、地域の方が見守ってくだされば安全です。また、課外学習で子どもたちが商店街へ行く時なども、懇話会の方がお話を通してくださったりと、何かあればすぐ力を貸してくださいます。
子どもたちが地域と触れ合う機会がたくさんあるそうですが、どのような活動がありますか?
金管バンドクラブは4年生から6年生の子どもたち30人ぐらいが所属していて、地域主催のミュージックフェスティバルなどへよく参加しています。それから、PTAが主体で子どもたちのために開いてくださっている「あさひっこまつり」という祭りが11月にあります。「旭会」のOBや地域の方たちも協力し、学校を会場にパソコンやけん玉などいろいろなコーナーを設けて子どもたちを1日招待してくださり、とても盛り上がります。校長室の天井に飾ってある凧は、初期のあさひっこまつりの時にPTAの方が作ったものですよ。
最後に、北寺尾エリアの魅力についてお聞かせください
まずは文教地区であること。また、「三ツ池公園」「二ツ池」など、全校遠足で子どもたちを連れていけるような自然や公園に恵まれています。それから、いい意味での人間関係の密度の濃さ、温かい心が感じられますね。例えば、北寺尾エリアは交通量に比べて交通事故が少なく、本校では私が赴任してから2年間、1度も起きていません。理由のひとつは地域の方がよく目配りしてくださっているからで、学校主催のものとは別に、地域主催で自転車教室を開いてくれています。卒業生がパトロールもしてくれていて、“おらがまちの学校”みたいな連帯感が残っている地域です。ですから、子どもたちがちょっと地域で悪さをすれば、すぐ連絡がきて指導できるよさもあります。近くの「横浜市 寺尾地区センター」の祭りへも、子どもたちは喜んで出かけていきますよ。
利便性も良く、学校のすぐ前のバス停から「鶴見」駅へ7、8分で行けますし、新横浜や綱島へも20分ほどで出られます。バスの本数も多いですね。商店街もあって、5年生の総合学習の時間では、お煎餅屋さんや畳屋さんにお世話になっています。学区内には『東海道中膝栗毛』に登場するお饅頭を売っているお店もあるんですよ。便利でありながら、そうした古くからのお店や職人さんが残っていらっしゃる地域です。
校長 伊藤博夫 先生
横浜市立旭小学校
所在地:神奈川県横浜市鶴見区北寺尾4-25-1
TEL:045-581-4178
URL:http://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/es/asahi/
※この情報は2015(平成27)年時点のものです。
明治34年創立の山の手の伝統校/横浜市立旭小学校 校長 伊藤博夫先生
所在地:神奈川県横浜市鶴見区北寺尾4-25-1
電話番号:045-581-4178
http://www.edu.city.yokohama.lg.jp/schoo..