創立140年を超える地域密着型の伝統校/八王子市立第一小学校 校長 金井尚志先生
八王子市立第一小学校
校長 金井尚志先生
創立140年を超える地域密着型の伝統校。
数々の取り組みのもと、地域で子どもたちを育む。
甲州街道・横山町交差点の北側に位置し、甲州街道と浅川に挟まれた市街地の多くを学区に含む「八王子市立第一小学校」は、2012(平成24)年に140周年の節目を迎えた、八王子市内でもっとも古い小学校のひとつ。地域との関わりが特に深い学校としても知られ、近年は商工会議所と連携したさまざまな取り組が注目を集めている。今回は校長の金井尚志先生を訪ね、お話をうかがった。
まず、学校の概要についてお聞かせください。
本校は2013(平成25)年で141周年になる学校でして、八王子市内で最も古い小学校のひとつです。学制が敷かれた後、すぐ開校したということですね。それ以前からも、学校前にある「八幡八雲神社」の寺子屋として「横山学舎」というものがありまして、そこに始まっています。
2014(平成26)年1月現在で410名の児童が在籍しておりまして、児童数はここ数年、大きく変わっていません。学区は北が浅川、南が甲州街道、西が国道16号、東が駅前通りに囲まれた範囲となります。 児童の中には、親御さんも含めて3世代、4世代にわたって通われているという方も沢山いらっしゃいますので、「地域に根づいた学校」という点が特徴かと思います。
教育目標と、目標に向けた実践例についてお聞かせください。
教育目標としては「健康な子」「進んで学ぶ子」「心豊かな子」ということを掲げていまして、それに加えて、「地域で育ち、地域で生きる子の育成」という点も重視しています。
「健康」については、朝に体育集会という形で行ったり、縄跳びや持久走についても、積極的に取り組んでおります。運動会ももちろん大きな行事ですが、2月にも、「持久走記録会」というものがありまして、浅川の土手で記録会をしています。
ほかには、「さわやかカレンダー」というものがありまして、これは、毎日の手洗い、歯磨き、朝ごはんなどの生活習慣を、期間を決めてチェックしてみようという取り組みでして、子どもたちはもちろん、保護者の方にもご協力をいただいているという状況です。
「心豊かな子」という点については、ひとつは、毎週の校長講話の中で、子どもたちの心の成長をうながすような講話を意識してしておりますし、ユニークなものとしては、各教室に「あったかことばの木」というものを作っています。
これは各教室の掲示板等に模造紙を貼って作っているものですが、子どもたちが「あの子が言った言葉が心に響いたな」と思ったら、その言葉を自分で書いて、「木」に貼っていくんですね。
「地域で育つ子」という点では、どのような取り組みがあるのでしょうか。
「地域との関わり」というのは、本校の大きな特徴のひとつになっているものですが、「地域と一緒に何かをする」というよりも、「子どもたちが地域に出て行く」ということでやっておりまして、そこに地域の方が関わって下さるという形が多いです。
面白いものですと、最近、新聞にも紹介していただいた「キッズショップ」という事業がありまして、これは地域の商工会議所との連携の中で行っているものです。6年生の活動になりますが、子どもたちがどんな「お店」を出したいかを話し合って、それについて、自分たちで事業計画を考えて、商工会議所から実際にお金、現金を借りてくるんですね。
これを元手に、地域のお店から商品を仕入れて、販売して、利子と一緒に返却して、利益が出ればその使い道について、子どもたちでまた話し合うというものでして、まさに「商売」そのものを体験するわけです。これは商業がさかんな八王子らしい、ユニークな取り組みかと思います。
この「キッズショップ」は2005(平成17)年度からスタートしたもので、本校から商工会議所に話を持ち込んで始まったものなんですが、商工会議所の方にも本校の卒業生が多いものですから、スムーズに話が進んだそうです。
本当のお金を借りて、利子を付けて返すという体験ができる学校というのは、ほかにはまずないと思います。毎年すぐに完売してしまうお店がほとんどですから、後半に保護者の方が買える時間というのも設けているんですが、「売り切れてしまって買えなかった」という声も沢山聞きます。たまたま通りがかった通行人の方が、お金を払って買ってくださるんです。
街中にある花壇についても、「八王子市立第一小学校」の子どもたちが管理しているそうですね。
駅前通りから甲州街道までの間に「シンボルロード」という道がありまして、そこの花壇を、本校の5年生が花を植え、管理をしています。水やりについても、子どもたちが花壇の近くのお店に水をもらいに行って、水をやっています。夏休みなどにはお店の方が代わりにやってくださったりもしていますね。これも、商工会議所の中にある「ファッション都市協議会」との関わりでやっているものです。
また、シンボルロードと甲州街道が交わったところに銅像があるんですが、その下の花壇については、4年生が同様に管理をしていまして、こちらは、国道事務所との関わりで行っているものになります。3年生については、学校の前に花の鉢植えを飾りまして、近隣の方に喜んでいただいています。
歴史ある学校ならではの「伝統」があれば教えてください。
ひとつとしては、『あかごま』という毎年出している文集がありますね。こちらは2014(平成26)年で63号になる文集なのですが、全員の作文が載りますので、6年間で6回掲載されることになります。毎年、子どもたち全員に配っているものですね。
校長室には第3号からあるんですが、3年に1回、学校行事の「展覧会」の時には歴代の『あかごま』を並べて、手にとってもらえるように展示しますので、子どもと一緒に来た保護者の方が、「これ、お父さんが書いたんだよ」なんて指したりするんですね。これは何とも印象的な光景でした。
あとは、「一小音頭」というものがありまして、これは運動会などで、全校の児童はもちろん、保護者も交えて踊るものとなっています。来てくださった保護者の方も、地域の方も、みなさん踊れるんです。それだけ地域に密着している学校なのだと思います。
職員全員で共有しているポリシー、校長先生が目指している将来の学校像について教えてください。
学校の経営方針としましては、私がこの学校にいる間は「安心、安全な学校づくり」ということをテーマにしたいと思っています。これはハードな面だけではなくて、ソフトの面でも、という意味でして、子どもたち、教職員、保護者、地域、みんなが「安心・安全な学校だね」と思えるような“学校づくり”をしてほしいと、職員には絶えず言うようにしています。
また、「子どもたちにきちんと学力を身につけさせる」ということが、学校の大きな役割ですから、「そのためには何をすれば良いのか」ということを、教員がそれぞれ考えながらやってほしい、ということも言っています。
最後に、この地域の魅力についてお聞かせください。
本校の学区内というのは、旧くからお住まいの方々と、新しく来られた方々が混在をしている地域でして、昔から地域と学校との関わりが非常に強いですから、「安心して預けられる学校がある」という点は、ひとつ大きな魅力かなと思います。
環境の面では、都心から近い割には自然環境に恵まれていますし、公園も多くありますし、交通の便も良いですし、子育てにはとても向いている場所かと思います。あと、時間の流れがとてもゆったりとしていますよね。都心とは全然違う時間の流れがあります。それが一番の魅力なのかもしれません。
今回、話を聞いた人
八王子市立八王子第一小学校
校長 金井尚志 先生
住所:東京都八王子市元横山町2-14-3
電話番号:042-642-0851
URL:http://hachioji-school.ed.jp/dai1e/
※記事内容は2014(平成26)年2月時点の情報です。
創立140年を超える地域密着型の伝統校/八王子市立第一小学校 校長 金井尚志先生
所在地:東京都八王子市元横山町2-14-3
電話番号:042-642-0851
http://hachioji-school.ed.jp/dai1e/