地域の核としての「学校」作りを行う伝統校

都心の「住民力」。地域の核としての「学校」作りとは/千代田区立麹町小学校 校長 淺川宏先生


千代田区立麹町小学校 校長 淺川宏先生

都心の「住民力」。地域の核としての「学校」作りとは

皇居から国会議事堂をぐるりと取り囲む通学区域。「千代田区立麹町小学校」は東京の中心地に位置する公立小学校だ。しかし周辺エリアでは近年マンション建設が増えており、人口も増加中。そんな千代田区麹町で過ごす子どもたちは、一体どんな学校に通っているのだろうか。麹町小学校の実情について、校長の淺川宏先生にお話を伺った。

「麹町小学校」は20年前に「永田町小学校」と統合されていますが、それ以前にも長い歴史を持つ小学校であると伺っています。

麹町小学校インタビュー
麹町小学校インタビュー

前身の「麹町小学校」が開校したのは1875(明治8)年、「永田町小学校」は1905(明治38)年に開校しています。「永田町小学校」の学区域は議員関係者の方が多い場所でしたが、児童数が非常に少なかったので、公共施設適正配置構造によって現在の形になりました。

「麹町小学校」には現在382名の児童が通っていますが、近年はマンション建設が進んでいるので児童数は微増しています。「麹町小学校」の場合、学区外の児童は全体の1割もいません。今年1年生は82名が入学しましたが、学区外の児童は5名だけです。

学区外の児童が少ないのは、やはり地元の子どもが増えたからでしょうか?

麹町小学校インタビュー
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そうですね。校舎は10年前に建設されましたが、1学年2クラスを想定した作りになっているんです。2013(平成25)年度は学校内だけでも70名以上の新入生がいて、学区外の児童が加わって82名でした。文部科学省では「35人学級制度」を実施しているので、今年は1年生のみ3クラスになっています。

千代田区は長年、定住人口の増加に取り組んでいますが、2013(平成25)年は25年ぶりに5万人台を回復しました。そのための施策として、子どもたちの教育支援に力を入れています。例えば学童クラブも、千代田区では小学校6年生まで在籍することが可能です。当学校では「麹町幼稚園」も併設されており、100名の子どもたちが通っています。

子どもたちを支える環境だけではなく、設備も充実しているように感じます。

麹町小学校インタビュー
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千代田区内の小学校は、校舎が古い一部を除いてほぼ温水プールを所有しています。当学校は授業数の関係により、プールの授業は10月までしか行いませんが、学校によっては1年中プールの授業がありますね。当学校のプールは床が稼働式になっていることが自慢です。例えば低学年がプールを使用した後に高学年が使用する際は、ボタン1つで水深を変えてしまいます。夕方からは一般開放もしているんですよ。

ちなみに一般開放しているのは、プールだけではありません。学校が終わった夜6時よりランチルームや音楽室、図工室など、いろいろな校内の施設を一般開放しています。ですから地域の方が自由に行き来できる環境が整えられています。もちろん不審者対策も行っており、部外者が教室部分には入れないよう、一般開放している際には教室にシャッターを閉めています。

「麹町小学校」は教室がオープンスペースになっていたり、全校生徒が一緒に給食を食べる「ランチルーム」があったりと、非常に面白い試みをされていますね。

麹町小学校インタビュー
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「ランチルーム」は全校生徒が一緒に、一斉に給食を食べます。一斉に「いただきます」をして「ごちそうさま」をする。もちろん先生も一緒です。ですから先生はしっかり時間を守って、授業を延ばしたりしないように心がけています。

「オープンスペース」の教室は近年導入する小中学校が増えています。一見他のクラスの声が聞こえて集中できないと思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。ほかのクラスからお互いに見られているという緊張感が出ますし、集中力もかえって高まります。

確かに「麹町小学校」は非常に学習への取り組み意欲が高く、学力も高いと伺っています。そのほかに学力を維持する秘訣はありますか?

麹町小学校インタビュー
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授業を充実させたいということで、学校の評価制度を取り入れることで指導法を工夫・改善できるようにしています。5、6年生の児童や保護者を対象に、教科ごとに「学校の授業はどのくらいわかっているか」というアンケートを取るんです。子どもたちの意見がダイレクトに100%的を射ているかというと、必ずしもそうでもないことはあると思いますが、子どもたちに自己評価をさせると、自分自身を見つめなおします。そこが大切なのです。

「麹町小学校」は区役所の出張所も併設されていますよね。

麹町小学校インタビュー
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千代田区は近年校舎の建て替えの際に図書館を併設したり、あるいは研究所や支援センターといった区の施設を兼ねて、一つの建物の中に入れるケースが増えています。その目的はやはり地域住民の方にとって、“学校”が一つの生活拠点になること。

例えば先日、区が「社会を明るくする運動」として、「麹町中学校」や「大妻中学高等学校」などいろいろな学校が集まり、「麹町小学校」から「上智大学」まで新宿通りをパレードしています。やはり地域密着には“学校”が重要なキーになるんですね。8月に地域のお祭りもありますが、学校が会場となっていて、校庭にいろいろなお店が出る予定です。

一般的には地域活動が活発というイメージがあまりない街だと思うのですが、街の方々と一体になって活動されているのですね。

麹町小学校インタビュー
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PTA活動は非常に盛んですよ。例えば千代田区では「見守り隊」といって、PTAが保護者全員を割り振ってパトロール活動をしています。ただ交通安全週間に役員だけが出るのではなく、全員で安全を確保する取り組みをしているんです。

あと面白いのは夏休みのラジオ体操。普通は地域の町会が主催していることが多いと思いますが、麹町小学校の場合は主催している団体が同窓会なんですよ。在校生はもちろん卒業生から親世代、おじいちゃんおばちゃんまで、毎回200名前後の地元の方が参加しています。普通中学生くらいの子はあまりラジオ体操に参加しないと思いますが、うちの卒業生はみんな来るんです。それだけ学校に対する想いが強いんですね。

都心にあるという特殊な環境にある学校ということで、どんな学校生活を送っているのかイメージが沸きにくかったのですが、いい意味で裏切られました。

麹町小学校インタビュー
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確かに都心にある小学校なので、周りの環境は多少特殊です。例えば「国会議事堂」や「警視庁」など、普通の学校が6年生の社会科見学ででまわるようなところを、うちは低学年で見学してしまいますから。とはいえ基本的に、子どもたちの生活は普通の小学生とまったく変わりません。すぐそばには国の重要機関が立ち並びますが、一本道を入ると人間味あふれる地域の顔があります。本校の位置する町会をはじめ、街の人々が親しみをもって生活し、多くの人を受け入れる温かい雰囲気がある。

自然環境も整っていて「北の丸公園」がすぐそばにあります。議員会館の横には「清水谷公園」もあり、1年生が出かけていきますね。区内の学校は校庭が狭いところが多いですが、公園が併設されているところも多いんですよ。だから意外に自然に触れることはできますし、子どもにとっていい環境が作られていると思います。

麹町小学校インタビュー
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今回、話を聞いた人

千代田区立麹町小学校 校長 淺川宏先生

2012(平成24)年に神田地区の小学校より赴任。千代田区での教員生活は10年目を数える。

所在地:東京都千代田区麹町2-8
電話番号:03-3263-7337
http://www.kojimachi-e.ed.jp/

※記事内容は2013(平成25)年7月時点の情報です。

都心の「住民力」。地域の核としての「学校」作りとは/千代田区立麹町小学校 校長 淺川宏先生
所在地:東京都千代田区麹町2-8 
電話番号:03-3263-7337
http://www10.schoolweb.ne.jp/swas/index…