「トカイナカ」で開校する施設一体型小中一貫校、「和泉市立南松尾はつが野学園」の新たな取り組みとは/和泉市教育委員会事務局 隅埜哲弥さん、有住守さん
大阪府南部に位置する和泉市は、都会の便利さと自然の豊かさを併せ持った「トカイナカ」というコンセプトを打ち出している。その和泉市のなかで最も「トカイナカ」を実感できるといわれるのがはつが野エリアだ。そんな和泉市はつが野に、2017(平成29)年4月に開校する「和泉市立 南松尾はつが野学園」は小中一貫教育を行う9年制の施設一体型の学校。義務教育学校としては泉州地域で初めてとなる公立の施設一体型の小中一貫教育学校。緑多い恵まれた環境のなかに佇む、開校直前の「南松尾はつが野学園」で、そのユニークな教育理念について、和泉市教育委員会学校教育部 指導室の隅埜(すみの)さん、教育総務室の有住さんにお話を伺った。
新たなる”深化”への第一歩
――「南松尾はつが野学園」は和泉市初の「施設一体型小中一貫教育」の学校ということですが、こちらについて詳しく教えてください。
隅埜さん:「南松尾はつが野学園」は2017(平成29)年4月1日に開校する、小・中9年間を一貫して教育を行う施設一体型学校ということになります。学校種に関しても従来の小学校、中学校という形ではなく義務教育学校となり、「南松尾はつが野学園」が泉州地域で初めての義務教育学校になります。
――学校新設の経緯について教えてください。
隅埜さん:新設の経緯としては、はつが野地域の開発によって、近隣にある「青葉はつが野小学校」「南池田中学校」が生徒数増加によって過大規模となり、またこれからも同様に増加が予想される状況です。一方、これも近隣である「南松尾小学校」「南松尾中学校」は児童数の減少により全学年単学級という現状があります。新設する学校は現在の「南松尾小学校」「南松尾中学校」とはつが野四丁目、五丁目、六丁目までを校区とする義務教育学校としてスタートします。
――そもそも小中一貫教育とは、どのような制度でしょうか?
隅埜さん:どの市町村でも様々な小中一貫教育という理念はあるのですが、和泉市の場合をお話させて頂きます。同一の小学校・中学校区域をひとつの学園としてとらえ、義務教育の9年間を一貫性・連続性のある教育として行っていくということです。和泉市ではこれまでも小中連携という方針自体は10数年前から実施してきたことであり、小中一貫教育の理念はこれまで行ってきた小中連携と全く別のものというわけではありません。今回は施設を一体化することによって生まれるメリットなど、和泉市がこれまで行ってきた小中一貫教育をさらに発展・充実させることができるということです。
「9年間」という新たなプロセス
――施設を一体化することによって生まれるメリットとは、具体的にどのようなことがありますでしょうか?
隅埜さん:従来の小中連携では、教職員どうしの意見交換会・勉強会などを行って、義務教育9年間の見通しの良い教育の在り方を模索・実行してきました。例えば世間でもよく言われる「中一ギャップ」解消の取組みなどです。施設が一体化すれば、常日頃から教職員同士のコミュニケーションを図れるので、育ちと学びを見通した継続・連続した学習指導・生活指導が行えます。区切れのない子ども理解と指導ができることが大きなメリットです。また、児童・生徒にとっては、1年生から9年生まで、同じ施設内でそれぞれのステージから交流を持ち、互いの成長を見つめ合うことができ、豊かな心を育てることができるようになると考えられます。
――学校行事などはどのように運営していくのでしょうか?
隅埜さん:基本的に主要行事は9年生までの全体が合同となって実施します。文化祭、体育祭、始業式・終業式、授業参観、児童生徒集会、道徳公開授業などです。これまでの小学校(前期課程)・中学校(後期課程)の括りであった入学式・卒業式は、初年度の1年生時と最終の9年の時に行うのは当然ですが、従来の小学6年生では「前期課程修了証書授与式」、中学一年次にあたる7年生になる際には「後期課程進学式」というものを設ける予定です。
――一貫教育によって学習の進度や内容は変わるのでしょうか?
隅埜さん:学習内容については国が定めている学習指導要領の枠内で進めますので、これまでの小学校6年と中学の3年の枠組みを変えるものではありません。ただ、6・3制(前期課程・後期課程)の良さは残しつつ、4・3・2制(ファーストステージ・セカンドステージ・ファイナルステージ)の区切りを中心に目的に応じたフレキシブルな意味のある区切り設定で子どもたちを育てます。施設一体校としての特徴を活かすことは重要ですので、同じ施設内にいる教員だからこそできる一貫指導は進んでいくと考えています。
例えば、教科の専門性をもつ後期課程の教員が、前期課程(5、6年生)で授業を行うなど、教科担任制をこれまでより幅広く実施するであるとか、前期課程を担当する教員が、後期課程の学習指導に積極的に関わることもできます。
――施設の特徴や魅力について教えてください。
有住さん:校舎の配置は前期課程と後期課程の生活エリアを明確に区分しながら、校舎から体育館・プールまでの導線を滑らかにつながるよう配置しています。プールは1年生から9年生までの身長差を考慮して、最大深度をレーンで区分して安全性にも配慮を行っています。また、多目的室や屋上庭園など、異学年が交流できるスペースも設けられています。ランチルームでは給食を通じた交流や食育を学ぶことができるように考えられるとともに、地域開放として、地域の人たちの交流の場としての活用も可能となっています。
2階にある図書室は、一部が3階部分に続く吹き抜け構造で作られていて、開放的な読書空間になっています。また、吹き抜けの壁には和泉市内産材である「いずもく」を利用し、あたたかみのある空間を作っています。体育館は床にクッション性のあるシートを採用していて、学校行事や地域開放だけでなく、もしもの時の防災拠点としての役割まで考慮したものとなっています。
豊かな環境で育まれる”将来の柱”
――「南松尾はつが野学園」がある和泉市はつが野エリア周辺の街の魅力、おすすめ場所があれば教えてもらえないでしょうか。
有住さん:和泉市は「トカイナカ」というコンセプトを打ち出しておりまして、これは大阪都心や「関西国際空港」への都会へのアクセスの良い都会の良さと、緑あふれる田舎の良さを併せ持つということです。その中でも、特にここ、はつが野は最もトカイナカらしさを感じてもらえるエリアではないかなと思っています。大型のショッピング施設も充実していますし、泉北高速鉄道「和泉中央」駅や阪和自動車道「岸和田和泉インター」にも近く、交通のアクセスにも恵まれています。ショッピングやピクニックも気軽に楽しめる豊かな生活が実現するエリアなのではないかと思っています。また「和泉・久保惣ミュージアムタウン」という構想エリア内に入っています。エリア内では、おしゃれな飲食店や雑貨店などのクーポンも付いた情報誌「和泉・久保惣ミュージアムタウンマップ」を発刊しており、多くの人に足を運んで楽しんでいただけるようになっています。
隅埜さん:和泉市では”文化芸術科学ふれあい体験事業”で和泉市内の小学校6年生の全ての子どもたちが「和泉市久保惣記念美術館」を見学し、本物の芸術に触れる機会を持っています。国宝2点、重要文化財29点をはじめとする日本と中国の古美術を中心に浮世絵版画、西洋美術などを含む約11,000点の貴重な作品を所蔵している美術館で、近くの方だけでなく是非多くの人に来て観ていただきたいおすすめの場所です。
和泉市教育委員会事務局 学校教育部
指導室 指導主事 隅埜哲弥さん
教育総務室 総括主幹 有住守さん
所在地 :大阪府和泉市府中町2-7-5
TEL :0725-41-1551
※この情報は2017(平成29)年3月時点のものです。
「トカイナカ」で開校する施設一体型小中一貫校、「和泉市立南松尾はつが野学園」の新たな取り組みとは/和泉市教育委員会事務局 隅埜哲弥さん、有住守さん
所在地:大阪府和泉市はつが野6-45-1
電話番号:0725-51-7162
http://www.city.osaka-izumi.lg.jp/school..