文教都市、国立で住民の生活を支える「nonowa国立」の魅力/nonowa国立 加藤啓太さん
中央線の三鷹~立川間高架化事業の完了に合わせてスタートした、「中央ラインモールプロジェクト」。「nonowa(ののわ)」とは、そのプロジェクトの一環として、武蔵境、東小金井、武蔵小金井、西国分寺、そして国立の5駅に整備された駅舎直結型商業施設のことだ。これらは2012(平成24)年の「nonowa西国分寺」を筆頭に順次オープンし、「nonowa国立」は2015(平成27)年4月に「EAST」が開業。2016(平成28)年4月に「WEST」がオープンして、全面開業となった。「nonowa国立」に秘められた思いとは何か。今後この街はどう変わっていくのか。今回は「nonowa国立」の開発を担当した、株式会社JR中央ラインモールの加藤啓太さんにお話を伺った。
緑と、街と、人とが、集いあえる場所
――まず「nonowa国立」が開業に至った経緯について教えてください。
加藤さん:まず、東京都の「連続立体交差事業」というものが最初にありまして、これに沿って、中央線は「国立」駅を含む、三鷹~立川間の高架化が順次完了しました。それを契機に沿線価値を総合的に向上させ、「中央線沿線に住みたい」と思っていただけるブランドへ育てようという狙いから、「中央ラインモールプロジェクト」というものがスタートいたしました。
このプロジェクトは、具体的には「新しく生まれた高架下スペースを、今後どうやって有効に街づくりにつながる活用をしていくのか」ということを考えるもので、統一したコンセプトのもと、一体的に開発し、新たな施策にもチャレンジしていくため、新しく「株式会社JR中央ラインモール」が設立されました。
この会社を設立してから、国立については徐々に開発計画を進め、2015(平成27)年の4月に第1期として「nonowa国立EAST」をオープンしました。その1年後の今年、2016(平成28)年4月24日に、2期として「nonowa国立WEST」のオープンを迎えることができました。
――「nonowa」は今回の高架化区間、5ヵ所の駅で開業されていますが、全体のコンセプトとして「緑×人×街 つながる」というテーマを掲げていらっしゃいますね。この意図するところを教えてください
加藤さん:今回の高架化区間というのは、東京都心から30分もかからないという通勤の利便性の高い住宅街でありつつ、非常に緑が豊かなエリアという性質がありますので、「緑と、街と、人とが、それぞれ集いあえるような開発をしていきたい」という思いが込められています。
――店舗数はどのぐらいでしょうか?また、他駅にも「nonowa」はありますが、国立ならではの特徴は何でしょうか?
加藤さん:「EAST」については12店舗、WESTについては25店舗が入っております。合計で37店舗の施設になり、店舗の数としては最も多い施設です。
具体的には、国立は昔から文教都市ということで、非常に文化や教育に関して、アンテナが高い方が多く住まわれているので、文化や教育要素を発信できるよう店舗で表現しています。また、高所得者層が多いエリアでもあるので、「上質」という部分も意識してます。
個性豊かな店舗の魅力が光る
――「EAST」と「WEST」は、それぞれどのような特徴があるのでしょうか?
加藤さん:「EAST」については、メインの改札側ということで「街の顔」にもなるものですから、日常的に使いやすく、かつ、文教都市のエッセンスを採り入れながら、雑貨を中心に揃えています。対して「WEST」のほうは、より日常使いしやすい「食品ゾーン」として構成していまして、惣菜、スイーツ、生鮮三品など、バラエティ豊かな利便性の高い構成にしています。
――ターゲットとしては、どのような層を想定しているのでしょうか?
加藤さん:施設全体としては、国立は30代から40代の方が多いので、その年代の方をメインに据えて考えています。ただし、駅の利用者ということで考えますと、非常に幅広い層の方が利用しますので、あらゆる年代の方に使いやすいようにと居住者、駅利用者の双方ともに考えています。
――おすすめの店舗について教えていただけますか。
加藤さん:先ほども話に上がりましたが、文教都市ということが国立の街のイメージであり、ほかでは見ない希少性の高い店、文化や教育的な一面を感じられる店など、そういうところに注目していただきたいですね。
例えば、「EAST」の中の「PAPER WALL(ペーパーウォール)」という本屋さんでは、本と雑貨を複合的に紹介しておりまして、売り場の一部を使って、ワークショップなどのイベントも定期的に行っています。また、隣には同店が経営しているカフェがあり、買った本を読みながら、ゆっくり時間を楽しむことができます。こうしてライフスタイルの中に、気軽に本を取り入れていただけるような店舗も、国立だからこそ可能なのだと思います。
また、同じくEASTの中に「KONCENT(コンセント)」というお店がありますが、主にデザイナーさんとコラボした商品をご紹介しています。そういった商品はやはり、非常にデザイン性が高いですし、実用的にも適っていまして、この街の客層にもマッチしているのかな、と思います。
「WEST」では、地元の洋菓子店、「レ・アントルメ国立」がお薦めです。こちらは地元では長く愛される有名店なのですが、駅から少し離れた場所にあります。じつは「nonowa西国分寺」の開発の頃から出店のお誘いをしていました。その際、「国立の時には出店しましょう」というお話をいただき、今回、ようやく実現できたというものです。特に手土産としてご利用いただいております。
希少性という点だと「Brioche Dorée(ブリオッシュドーレ)」さんでしょうか。こちらはフランスで約300店舗展開されているパン屋さんでして、今回はベーカリーカフェとして出店をいただいております。中央線初の店舗ですし、都心でもまだほとんどないお店ですから、お客様にも喜んでいただいています。パンはテイクアウトもイートインもできますし、カフェは23時まで営業していますから、仕事帰りに寄ってワインやサングリアなどを楽しまれる方もいらっしゃいます。
今後の街づくりの展望
――今後、「中央ラインモールプロジェクト」はどのように進んでいくのでしょうか?
加藤さん:駅ご利用のお客様の利便性を上げるためにつくった「nonowa」ですが、ほかにも、地域の方のコミュニティをつくれるような仕掛けや、街を知るきっかけになる情報発信、駅間を散策できる歩道「ののみち」の整備などを進めて地域の皆さまに集い愛される施設を目指していきます。
――「WEST」の開業に合わせて「スイクルポート」が設置されたそうですが、こちらについて教えてください。
加藤さん:「スイクル」とは「Suica」と「サイクル」の造語でSuicaを使ったシェアサイクルのことです。ポートというのはその設置場所を指し、今回、「WEST」の先の高架下に設置されました。実際の利用にはSuicaが必要になってきますが、登録なしでもビジター利用として、1日500円で自転車が利用できるので、たとえば街の観光にご利用いただいたり、ちょっと離れた場所にある公園に出かけたりと、いろんなシーンでの利用が可能です。
また、学生さんも多い地域ですから、定期利用で通勤通学に利用される方もいらっしゃいます。
登録制とはなりますが、1時間ごと100円という気軽なプランもありますので、国立の街を知るために、気軽に利用いただければ嬉しいですね。ポートについては「nonowa」のある武蔵境、東小金井、武蔵小金井、国立の4駅にあります。「nonowa」エリアの交流が活性化することに期待しています。
――「nonowa国立」の開業は、今後、既存の商店街にも大きな影響や経済効果をもたらすと思われますが、商店街との連携体制はどうなっているのでしょうか。連携組織や事業などがあれば教えてください。
加藤さん:地元の商店会、商工会の皆さまと、EASTの開業前に「くにたち活性化協議会」というものを立ち上げておりまして、開業に合わせて、街の活性化のためのイベントを企画してきました。
その協議会には、私どもはオブザーバーという立場で毎回出席し、「nonowa国立」2期オープンの2016(平成28)年4月に協議会主催イベント「街めぐりフェスタ」が開催されまして、これは地域の方との連携が形になったものとして、ひとつ大きなものと言えるかと思います。
この時には「くにたちパスポート」というクーポン付きの冊子を、nonowaでお買い上げいただいた方を対象に配布して、その冊子を持って商店街のお店に行けば、いろいろな割引やサービスを受けられる、というものでした。2日ですべて配布が終わってしまうほどの人気で、その後の反響も非常に大きなものがありましたので、今後も街ぐるみで、回遊できるイベントを継続して行っていければと考えております。
――今後、駅や駅前はどう変わっていくのでしょうか?また、国立の街はどのように変化していくと思われますか?
加藤さん:私どもが目指す国立の街の将来図、ということですと、やはり、国立は文教都市ということで街並みが守られている街ですので、この景色や雰囲気を大切にしながらも、我々の商業施設が利便性を訴えながら、街の個々の商店さんや、そこに暮らす人々も、一緒になって光っていけるように、たとえば先ほどの回遊イベントなどもそうですが、街全体を盛り上げていけたら、と思っております。
――最後に、加藤さんが感じられている、国立の街の魅力についてお聞かせください。
加藤さん:駅員の敬語の言い回しや、ポスターの表記など、基本的なことに関するご意見をいただくことが多く、地域の皆さまの「街を良くしよう」という気持ちがすごく高いんだと感じています。
ですから、そういう中で育つお子さんや、来街者は、非常にマナーが良い方が多く、ここに住みたい、お子さんを育てたい、という方が多いのも納得ができます。
街並みのことについて言えば、やはり、桜の時期に学園通りを見渡した時の美しさは格別です。この風景がずっと残っていくような街になるように、私たちもより良い街づくりのために、尽力したいと思っております。
株式会社JRラインモール「nonowa国立」
チーフ 加藤啓太さん
所在地 : 東京都国立市北1-14
URL:http://www.nonowa.co.jp/kunitachi/
※この情報は2016(平成28)年7月時点のものです。
文教都市、国立で住民の生活を支える「nonowa国立」の魅力/nonowa国立 加藤啓太さん
所在地:東京都国立市北1-14-1
営業時間:店舗により異なる
https://www.jrccd.co.jp/nonowa/kunitachi..