多様な教育研究と金管バンドが盛ん/さいたま市立大谷場小学校 三上良正校長先生


「さいたま市大谷場小学校」は、来年創立65年目を迎える歴史のある小学校。毎年さいたま市からの委嘱を受け、研究授業に取り組む熱心さが、先生たちの意識を高め、結果として授業の質の向上につながっているという。教育・文化・芸術に造詣の深い地域にある小学校の日々の取り組み、子どもたちの様子について、校長の三上良正先生にお話をお伺いした。

授業の基本の流れを身に付けた先生たちによる質の高い授業

校舎
校舎

――学校の沿革についてお教えください

三上校長先生:本校は1954(昭和29)年に「浦和市立大谷場小学校」として開校し、今年で64年目を迎える歴史のある学校です。2001(平成13)年に浦和市・大宮市・与野市が合併してさいたま市となったことで、「さいたま市立大谷場小学校」となりました。「~ひとみが輝く子~ かしこく・やさしく・たくましく」を教育目標に、日々教育活動をしております。

入学式(大谷場桜)
入学式(大谷場桜)

――特色のある取り組みなどはありますでしょうか?

三上校長先生:さいたま市教育委員会などから、ほぼ毎年研究委嘱を受け、研究と実践を積み重ねている教育研究の盛んな学校であることです。「研究授業」は子どもや保護者たちからすると、「県内外の教育関係者が見学に来る授業」というイメージしかないかもかもしれませんが、教職員がその科目を研究し実際に授業を行うことで、導入(子どもたちの心を掴み)→展開(実際の授業を進め)→まとめ(振り返りまとめる)の流れが身に付き、その教職員の授業レベルは格段にアップします。先生の技術が上がることは授業の質向上を意味しますので、子どもたちの基礎学力にも直結する非常に意義のあることです。
本校では2013~2014(平成25~26)年度は国語、2015~2016(平成27~28)年度は算数、2017(平成29年)年度は生徒指導と教育相談の研究を行っています。小学校では教育活動のメインである教科・行事・生活の指導はほぼ全て担任に任されていますので、保護者対応や教育相談も先生の個別の対応力が求められます。だからこそ今年は生徒指導と教育相談に関してケーススタディなどを通して、教職員一同で研究を深め、生活指導力・教育相談力をアップさせていきたいと考えています。

校内の様子
校内の様子

コミュニケーション力向上のための 「人間関係プログラム」の実施時期にも工夫

――人間関係プログラムに関してもお教えください

三上校長先生:さいたま市が教育特区の認定を受け、子どもたちのコミュニケーション能力の育成と自己開示・自己表現が安心してできるクラスづくりを目指して実施しているものです。具体的にはゲームやエクササイズなどに取り組み、そのなかで自分の意見を言ったり、相手の気持ちを推し量ったり、基本的なコミュニケーションのトレーニングをします。そして「表情」「話し方」「声の大きさ」「目線」など言葉以外のスキルなども学びながら、誘いを上手に断ったり、伝えにくいことを伝えたり、さらに一歩進んだコミュニケーション法を学びます。
最後には「評価」ではなく、頑張れたかどうかを確認し、次に活かせるようにつなげます。このプログラムは各学期ごとに6時間ずつ行うようになっていますが、新学期や夏休み明けなど、子どもたちが「クラスに馴染みにくいな」「学校に行きづらいな」と感じやすい新学期に集中させて行うように工夫しています。何気ないことのようですが、このプログラムを行った後は目に見えて子どもたちの様子は変化し、クラス全体が和やかで穏やかな雰囲気になります。都市化、情報化、核家族化など子どもたちをめぐる環境も時代と共に変化し、コミュニケーションが苦手な子どもが増えているように感じます。人との交流が楽しい・コミュニケーションが楽に取れるということは、基礎学力を支える人間としての大切な資質です。やはりコミュニケーションは勉強するものではなく、実際に話して交流してみて前進するものなので、本校ではこの時間を有効に活用していきたいと思っています。

三上校長先生
三上校長先生

――金管バンドの活動も盛んだとお聞きしました

三上校長先生:4月から3月までの1年間で発表する機会が年8回と、とにかく演奏回数が多いのが特徴で、特に9月の運動会ではドリルといって演奏しながらフォーメーションの動きを発表するので、夏休み中は暑い中、屋外で練習をして運動部のような雰囲気ですね。音楽が得意でない児童が「苦手意識を克服したい」と金管バンドに参加することもあり、音楽に対する取り組み方が変化して成長している様子を見ると、音楽の力・子どもの持つ力の強さを感じます。
毎年「グリーンコンサート」という育成会主催の演奏会があるのですが、今年から「さいたま市立大谷場中学校」の吹奏楽部との合奏に挑戦しています。実は吹奏楽と金管が一緒に演奏するのは楽譜の書き換えが非常に困難で、ただ同じ曲を一緒に弾けばよいという単純な話ではないんです。今回は本校と中学校の顧問が奮闘して楽譜を書き直し、やっとのことで実現しました。実際にその音を聞きましたが迫力があって本当に素晴らしく、とても感動しました。本校の生徒の約8割が「さいたま市立大谷場中学校」に進学することもあり、多くの金管バンド経験者が吹奏楽部に入っているので、先輩後輩たちが久しぶりに同じ曲を演奏している姿を見て感慨深い思いがしました。

グリーンコンサート(育成会主催)大谷場中と合同演奏
グリーンコンサート(育成会主催)大谷場中と合同演奏

地域の方々に支えられている季節行事

――地域のみなさんと連携して取り組んでいらっしゃることなどはありますか?

三上校長先生:本校では、土曜日や月曜日の校外授業に地域の方々の参画を得て、子どもたちの自主的な学習やスポーツ、文化活動、地域との交流活動等の取り組みを行っています。具体的には、ダンスや歌、そろばん、パソコンなど体験的な授業を年間33回ほど行っています。
また自治会とは別に「育成会」というものがあり、本校卒業生や元PTAなど近隣のさまざまな年齢の方が所属しておられるのですが、こちらの方々も学校の教育活動に積極的に関わってくださいます。例えば1月のかるた取り大会や凧揚げ、3月の人間雛など、季節の行事の多くはこの育成会の方々が取り仕切ってくださるんです。凧揚げに使用する凧はチャレンジスクールの中で地域の方に教わって子どもたちが手作りしたものですし、場所も校庭では狭いだろうと、近くの「浦和競馬場」の芝生部分を借りて伸び伸びとあげさせてもらっています。
3月の人間雛では、立候補した子どもたちから15人程度が選ばれ、内裏雛や三人官女、五人囃子などの装束を実際に着て、お雛様になるというものです。このときは育成会の方々に加え、教職員たちも手伝って大掛かりなイベントになりました。私も教師人生は長いですが、ここまで地域の人たちが子どもにいろいろな体験をさせてくださるというのは珍しいと思います。これはやはり地域の力、「地域で子どもを育てよう」という思いの強さの表れだと思い、非常に有難く感じています。
また、金管バンドのコンサートでも育成会主催のものがありますし、学校内の見守りということで地域ボランティアの方々は毎日学校に足を運んでくださいますし、まさに学校と地域が一体になって教育活動をしているという感じです。

岩槻木目込み人形作り体験授業
岩槻木目込み人形作り体験授業

――保護者や子どもたちはどのような雰囲気でしょうか?

三上校長先生:学校まで歩いていらっしゃると分かると思いますが、本校は閑静な住宅街にあり、そういった環境から通う子どもたちが多いせいか、素直で明るい児童が多いと感じます。校長の私にも笑顔で話しかけてくれますし、屈託がなく堂々とした雰囲気です。本校は地域に根ざした信頼される学校を目指しているので、自然とそのような子どもたちに育っていくのだと思います。
同時に運動も頑張る子が多く、毎年6年生が学校代表として出場するバスケットの大会では先日、南区Aブロック大会で優勝、昨年はさいたま市のサッカー中央大会では女子の部で優勝もしました。何に対しても一生懸命なところは、まっすぐで素直な気質がそのまま出ていると思います。
もともとこの辺りは「東京帝国大学」への登竜門であった旧制高等学校や現在でも日本有数の進学校である「埼玉県立浦和高校」などを有する文教エリアです。また「関東大震災」後は震災被害がほとんどなかったことから、県内外から人々が移住し「鎌倉文士に浦和画家」と言われたほど、文化・芸術コミュニティが発達し造詣が深い地域性があります。そのせいか教育には熱心な土地柄であり、保護者の方々も非常に協力的で学校に対しても関心が高いと思います。

校内のグラウンド
校内のグラウンド

――小学校周辺エリアの魅力についてお教えください

三上校長先生:毎年凧揚げに利用させてもらっている「浦和競馬場」は、実は開催日以外は一般に開放されて自由に入ることができる場所です。私も散歩に訪れることがあり、びっくりするほど広くて清々しくて気持ちのよい場所です。昔は競馬場というとあまりよいイメージがなかったかもしれませんが、今はあらゆる所に警備員さんが配置され、掃除や見張りがしっかりなされていて逆に子どもたちの様子も見てくださって安心なくらいです。この周囲にはオープンな気風があって、近隣の方々も子どもたちも保護者の方々も明るい雰囲気です。
小学校から「浦和」駅までは徒歩17分程度、「南浦和」駅までなら8分程度と利便性の高い立地で、都心までも30分足らず。都内への通勤や通学も負担は少ないと思います。静かなのに便利な街というのも大きな魅力ですね。

こいのぼり
こいのぼり

さいたま市立大谷場小学校 校長 三上良正先生
さいたま市立大谷場小学校 校長 三上良正先生

さいたま市立大谷場小学校

校長 三上良正 先生
所在地:埼玉県さいたま市南区南浦和1-18-3
電話番号:048-882-2555
URL:http://oyaba-e.saitama-city.ed.jp
※この情報は2017(平成29)年9月時点のものです。

多様な教育研究と金管バンドが盛ん/さいたま市立大谷場小学校 三上良正校長先生
所在地:埼玉県さいたま市南区南浦和1-18-3 
電話番号:048-882-2555
http://oyaba-e.saitama-city.ed.jp/