「いちがお」で地域とともに育つ小学校

「いちがお」で地域とともに育つ小学校/横浜市立市ケ尾小学校  校長 落合孝先生

地域とともに育ち、育てられて38年。
「いちがお」型の教育を実践しながら、自ら学び、考え、生涯勉強を続ける子どもを育てる「市ケ尾小学校」

青葉区役所近くにある「横浜市立市ケ尾小学校」は、この地域が大規模に宅地分譲された時代に、人口増に対応して新設された小学校で、2016(平成28)年で開校から38年目。地元の人々と積極的に関わり合いながら、地域とともに育ってきた学校である。そしてここ数年は、この学校の卒業生の子弟が通い始めるなど、いよいよその地域密着型も第2フェーズに入っており、さまざまな新たな取り組みも始まっているという。

今回は学校の教育内容や施設の特徴をはじめ、先生方の思い、これまでの地域との関わり合いと、これからの新しい取り組みなど、多方面についてのお話を、校長の落合孝先生にうかがった。

横浜市立市ケ尾小学校
校長 落合孝先生インタビュー

横浜市立市ケ尾小学校
横浜市立市ケ尾小学校

市ケ尾小学校とは

――まず、「横浜市立市ケ尾小学校」の概要について教えてください。

本校は1978(昭和53)年に開校しまして、今年で38年目となる学校です。一般学級が22学級、個別支援学級が4学級で、児童数は現在725名です。区内を見回せば、中規模より少し大きい学校というところでしょうか。学区はいわゆる東京のベッドタウンでして、都内にお勤めの保護者が多く、教育熱心なご家庭が多い地域です。青葉区全体としては、児童数は微減傾向ですが、本校の学区については、横ばいか少し増える傾向にあります。

特徴としては「地域とともに歩んできた学校」ということがまずあるかと思います。学区内には多くの町会など、住民の方の組織がございますが、そういった街の人々の考えや活動が、この小学校を軸として一つに融合され、一つのエネルギーになってきた。そういう特徴を持った地域であり、小学校でもあるかと思います。

子どもたちについては、とても落ち着いた子が多く、課題や質問に対しても、積極的に取り組む子が多い学校です。3年前からは「あいさつ運動3カ年計画」として、全校の児童が順番にあいさつの呼びかけに参加する取り組みを行っており、毎日、子どもたちの元気なあいさつの声が響く学校です。

教室の様子
教室の様子

廊下には生徒の作品が展示されている
廊下には生徒の作品が展示されている

――教育方針について教えてください。

教育方針については、横浜の未来を担う子ども像として、「人を思いやる優しさと 豊かな感性をもった子ども」という言葉を掲げております。また、「市ケ尾小学校」の「い」は「いきいきと活動する子」、「ち」は「地域の中で育つ子」、「が」は「がんばりぬく子」、「お」は「お互いを思いやる子」ということで位置づけておりまして、それに沿って教育実践にあたっています。

 「いちがお」型の教育を実践
「いちがお」型の教育を実践

具体的なところでは、「体験的な学び」の機会を大切にしながら、子ども自身が体験を通して「学ぶことは楽しい」と思えるように、そこから、生涯学び続けようという気持ちを持ってくれるように、教育活動を展開していきたいと考えています。

私は、これからの社会は「知識基盤型社会」になっていくと考えています。その中では、小学生の学びについても、「生涯にわたって、自らが進んで、楽しみながら学びを深める」という視点で考えることが必要だと思っています。子どもたちが自分の周囲の身近な事象に目を向け、課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、判断し、解決する。そのような力を育んでいきたいですね。

校章
校章

 

――学校の施設など、ハードの面で特徴的な部分を教えてください。

私は校長になって7年目ですが、着任した翌年の2011(平成22)年5月に、それまでグラウンドの一角を占めていたプレハブ校舎が解消され、2階建ての新校舎に移ることができました。これは従来からある4階建ての校舎と、以前は離れの形になっていた「通級棟」をつなぐ校舎としても機能していますので、通級指導教室(以下通級)とのつながりがより一層深められるようになりました。新校舎については、一般の学級と音楽室などの特別教室が入っています。

元気な声が響く校内
元気な声が響く校内

この通級には学区外からもお子さんが来られていて、区内でも最大規模の通級となっていますので、校舎が一体化したことを機に、今後も教職員相互の交流などの機会を増やし、設置校としての特色を発揮していきたいと考えています。

なお、本校の通級は、「まなび」と呼んでいる情緒の学級と、「きこえとことば」と呼んでいる難聴と言語の学級の2つがありまして、特に「まなび」については青葉区唯一の設置校です。こちらも、本校の大きな特色の一つになっているかと思います。

畳に座って本を読めるスペースもある
畳に座って本を読めるスペースもある

地域の中で育まれる独自の取り組み

――「市ケ尾小学校」ならではの独自の取り組みや教育活動があればお聞かせください。

独自ということですと、地域を生かした校外学習がまず挙げられるかと思います。1年生は学校の中の探検をしているんですが、2年生からはそれを拡大して、近隣にある、子どもたちが普段遊んでいる公園などについて、公園をどういう方が管理しているのか、どんな工夫がされているのか、みんなが気持ちよく過ごすためにはどう使えば良いのか、といった点について、子どもの視点から調査をし、考察し、発表をして、さらにお互いに疑問に思った点を議論し、解消していくという授業を行っています。地元の商店街の方に、この街の良さについてもインタビューします。

学校のある横浜市についても学ぶ
学校のある横浜市についても学ぶ

3年生も同様で、今度はスーパーマーケットを訪問させていただき、仕事の特色や地域とのかかわりについて説明を受ける学習があります。その内容をまとめて、発表するという授業もあります。4年生は鶴見川で自然環境について調べたり、学区内に位置する区役所や消防署に出かけたりして、積極的に街の活動に参加する姿勢を育てています。こうしてなるべく「地域の財」を取り入れながら、子どもたちに体験し、考え、発表するという機会を提供しています。

また、そういう形で視点が育ってきますと、5年生や6年生になって、県や国について調べるようになっても、産業や歴史、社会環境など、広範な課題についても、自ら課題を探し、解決していくという力がついてきます。そこから将来的に「学習を自分で組み立てる」という子になっていってくれれば、と願っています。

東京見学など校外学習にも力を入れている
東京見学など校外学習にも力を入れている

もうひとつ、本校が独自に特に力を入れているものに、「キャリア教育」があります。6年生では修学旅行とは別に「東京見学」という日があって、その時には国会議事堂や、豊洲の「キッザニア」に行っているのですが、その前段階ではいろんな仕事(職業)の内容や、それに就くための能力や資格などについて調べて、発表なども行います。「キッザニア」は“おさらい”のためという位置づけです。そういった機会も利用しながら、楽しみながら、キャリア教育にも取り組んでいます。

また、ここ数年は特に「安全教育」に積極的に取り組んでおりまして、地震などの災害から、「自分で身を守れる子」に育てるということも、強く意識しています。

――そのほかの校外学習や修学旅行について教えてください。

宿泊を伴う校外学習は4年生から上で行っていますが、4年生は秋に愛川(神奈川県)に1泊で行っています。愛川と横浜は水道でつながっていますので、ダムや上水について学ぶというのが一つですね。このほか、藍染めなどの伝統工芸体験や、ロッジで1泊するという、集団生活について、体験します。5年生では富士五湖の西湖に行っていまして、カヤックの体験など、自然体験を中心に活動します。6年生は日光への、2泊3日の修学旅行です。

――「市ケ尾小学校」ならではのユニークな行事があれば教えてください。

「高学年コンサート」というのが、一つ独特なのかと思います。青葉区では各校の4年生が一堂に集まって音楽会を行っていますが、その後、そこで音楽に対しての興味関心が中断してしまうのは残念だということで、本校では5、6年生が合同で、保護者の方や地域の方をお招きして、合唱と合奏の発表会を行っています。これは学校ではなく子どもが主体で企画するもので、子どもたちが自主的に練習を行い、作り上げていくものですので、非常に意義のある活動だと感じています。

このほか面白いものですと、3年生が、地域にある古いお堂で行われている「十夜講」を見学させていただいています。こういった歴史的な行事や伝統芸能に触れることで、地域をより深く理解してもらえれば、と考えています。

体育的なものでは「イチリンピック」という行事がありまして、これはフリスビーを使ったドッチボールのような競技で、勝ち抜き戦を行っています。

 

もっと「ふるさと」に密着した存在に

――地域の方との交流や協力関係などについて教えてください。

本校では「はまっ子」の活動も盛んでして、地域の方にも何かとお世話いただき、学校・PTAが連携して運営されています。正しくは「はまっ子ふれあいスクール」という名前で、基本的には学校がある日の放課後に、子どもたちが校内で集まって、一緒に過ごすというものですが、その中で地域の方が開くさまざまな講座や教室もありまして、「はまっ子」のスタッフや地域の方が講師になって教えてくださっています。

「はまっ子」主催のイベントも幾つか行われていまして、たとえば、冬には「もちつき大会」があるわけですが、この時には地域の方が用意してくださった、本当に全部昔ながらの、薪とかまどを使ってもち米を炊き、臼と杵でもちをつく、ということを楽しんでいます。このほかPTAが中心となったもので、クリスマスのリース作り、味噌作りといった行事もありますし、毎年1月の初めには、上市ケ尾町内会の方が、獅子舞で教室を訪問して下さったりもします。本当にいろいろな方に支えていただいています。

はまっ子活動も盛んである
はまっ子活動も盛んである

日常的に地域の方が関わってくださっているものだと、ほかに、読み聞かせ活動もそうでしょうか。保護者の方が入る場合もあるのですが、この地域でずっと読み聞かせに取り組まれている「おはなしワールド」という団体さんによく入っていただきまして、国語の授業の中で、読み聞かせを行っています。また、古墳公園側の門の脇に花壇がありますが、こちらも、地域の環境ボランティアの皆さんが植えてくださっているものです。

読み聞かせの時間もある
読み聞かせの時間もある

――地域の方との交流について、新たな取り組みも始めらているそうですね。

開校から40年近くになりますので、保護者の方の中にも、「市が尾小学校」の出身だという方が増えてきました。この街を「ふるさと」とする方が増え、いよいよ、成熟した街になってきているということを、日々感じています。

ですから、そういう愛着の気持ちについて、学校としてしっかりと受け止めていく時代になったと常々思っておりまして、保護者の方、地域の方が気安く学校に来られて、子どもたちの前で、ご自分の体験だったり、職業でされていることを、子どもたちに伝えられるような、そういった機会を作っていきたいと考えています。

地域とのつながりを大切にしている
地域とのつながりを大切にしている

この学校の周りには、畑も残っていますが、一番多いのは住宅地です。住んでいる方も、どこかにお勤めなさっている方が多いわけです。ですから、そういったお勤めの方々からも、ご家庭でご自分のお子さんに伝えるだけではなく、市ケ尾小の多くの子どもたちに、何か、(それぞれの仕事の中での)経験等をお伝え頂けることはできないものかと、現在仕組みづくりを考えているところです。

地域の方々にとって、この小学校が単に「なつかしい」という存在ではなく、ここに来て、何か関わりを持って、地域への貢献を実感しながら、いい時間を過ごすことができれば、それが一番理想的な、地域の小学校の姿なのではないかな、と思っています。

――校長先生が子どもたちと関わるうえで大事にされていることや、「こんな子どもに育ってほしい」といった思いをお聞かせください。

大切にしているのは、「相手意識」です。「相手がどう考えているのか」ということを思いやって行動できる子を育てたいと思っています。表面上の薄っぺらい気持ちで行動するのではなく、自分と相手が違う考えを持っていたとしても、相手のありのままを認めて、気持ちを思いやりながら、一緒に頑張ることができる、それぞれを応援することができる。そんな子どもに育てたいと思っています。

学習面についても、子ども同士の「学び合い」がベースになると考えていますので、「相手意識」をもとにしっかりした人権意識をもって、相手が伝えようとすることをよく聞いて、そのうえで自分の意見をまとめ、伝えられる。そんな方向性で教育活動を行っています。

私が個人的に気をつけているのは、「成果が出たら褒める」ということです。学校以外の場所でも、子どもたちが何かで意義のある賞をとった場合には、校長室で表彰をして、「よく頑張った」と声をかけています。時には全校の前で表彰することもあります。

私は、日常的に無理なく取り組めるようなことでも、やり方によっては、子どもの“感動の芽”になりうるのではないか、と考えています。ですからつい見過ごしてしまいがちな、些細な出来事についても、「それは貴重な体験だったね!」「とても素晴らしい発見をしたね!」という具合に、積極的に声をかけ、価値づけるということを大切にしています。そうすることで、心がときめくような、いつまでも大切にしたい「レジェンド」に変わっていくことができれば、それは素晴らしいことですからね。

――最後に、この市ケ尾エリアの魅力について教えてください。

教育に関心の高い街でもある
教育に関心の高い街でもある

この地域は住宅地として開発された地域ですから、整った町並みの中に小さい公園が点在していたり、道路も広く、歩道もなどもきちんと整備されているなど、そういう意味では、子育てをしやすい街なのではないかな、と思っています。ただ、それは決してハードの面だけではなく、ソフトの面も同じです。

市ケ尾地域にお住まいの皆さんは、教育に対して非常に熱心な方が多いということを感じています。本校の授業参観には、毎回教室に入りきれないぐらいの方が来られますし、アンケート等にも非常に協力的で、建設的な意見をしっかり書いていただいていますので、学校でそういった声を参考にしながら、より良い教育活動につなげていくという、良いサイクルができています。そういった面も含めて、教育に対する意識が成熟しており、子育てをされる方には、特におすすめできる地域だと思っています。ぜひ沢山の方にお越しいただき、お住まいいただければ幸いです。

横浜市立市ケ尾小学校  校長 落合孝先生
横浜市立市ケ尾小学校 校長 落合孝先生

今回お話をうかがった方

横浜市立 市ケ尾小学校

校長 落合孝先生

「いちがお」で地域とともに育つ小学校/横浜市立市ケ尾小学校  校長 落合孝先生
所在地:神奈川県横浜市青葉区市ケ尾町1632-1 
電話番号:045-973-5722
https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/scho..