沼津市役所危機管理課インタビュー

沼津市役所危機管理課 課長 榊原和浩さん


沼津市に限ったことではなく、全国どこでも自然災害に見舞われる可能性があると言われる日本。美しい海岸線を有する沼津市は、他市町村の例に漏れず自然災害への対策に余念がない。“危機事案の発生で人的被害を出さない”をテーマに掲げ、防災・減災に尽力している危機管理課を訪ねた。

沼津市役所
沼津市役所

――沼津市の危機管理課では、どのような活動をされているのでしょうか。

危機管理課が掲げる最大の目標は、“危機事案の発生で人的被害を出さない”という一言に尽きます。そのための活動は危機管理指針に基づいて行われ、3つの事案に分けて対応しています。1つ目は、地震・津波・大雨といった自然災害の対応で、これについては沼津市地域防災計画において基本的な対策を定めています。2つ目はテロ行為や武力攻撃などへの対応で、3つ目は、それ以外の危機事案――たとえばインフルエンザといった感染症などの対応――となります。また、平常時における対策としては、沼津市地震津波アクションプランに基づき、避難施設・避難路の整備や、防災訓練・防災講座・出前講座などの啓発事業のほか、自主防災会への補助金交付なども実施しています。

危機管理センター、災害時にはここで対策にあたる
危機管理センター、災害時にはここで対策にあたる

――津波対策に関してですが、ハード面とソフト面の両輪で取り組まれているそうですね。

まずハード面についてですが、4基の津波避難タワーと避難マウントの設置、そして人口の高台として築山を整備しました。津波による浸水が予想される各地域には186の津波避難路を設け、津波避難ビルとして197ヵ所を指定。避難ビルには手摺や照明を設置するための補助金を交付しています。また避難所には、非常食だけでなく毛布、簡易トイレなども備蓄しています。

ソフト面に関しては、地域ごとに津波ハザードマップを作成したり、災害時の避難行動を考えるワークショップも開催しています。どこへ逃げるのか、またどのように逃げるのかを専門家にアドバイスをもらいながら、市民とともに協議を行っています。

ハザードマップは市のホームページからも閲覧できる
ハザードマップは市のホームページからも閲覧できる

――耐震工事に補助金を出していると伺いました。

1981(昭和56)年以前に建てられた木造住宅の所有者とその居住者に対し、沼津市では無料耐震診断を実施しています。補強工事が必要と判断されたら80万円、高齢者のみ、また障害者との同居世帯については100万円をそれぞれ上限として補助金を出しています。さらに解体費用や家具の固定、また道路沿いのブロック塀の改修や撤去工事の費用についても補助があります。

水門の様子を映すモニター
水門の様子を映すモニター

――防災リーダーの育成も行っているそうですが、市民の方々は、どのように防災と関わっているのでしょうか。

沼津市内には、自治体を母体とする地域住民による自主防災会が組織されています。自主防災会はあくまでも任意の組織ですが、組織率はほぼ100%です。さらに大きな組織として28の連合自治会があり、それぞれに防災指導員1名がいて、自主防災会の体制づくりや、訓練の指導をしています。ちなみに防災指導員というのは、防災に関する研修会や講習会に参加し、知識や技術を身につけてもらった方々で、安全の確認や防災知識の普及に貢献しています。

危機管理課が作成・周知している「沼津市 地震・津波対策マニュアル」(表紙)
危機管理課が作成・周知している「沼津市 地震・津波対策マニュアル」(表紙)

――市民の防災意識に関する印象についてはいかがですか?

自然災害に限ったことではありませんが、大きな出来事でも時間とともに記憶が薄れていくのが常。しかし、東日本大震災の発生後、熊本や鳥取でも大きな地震が起きたため、市民の防災意識は高い状態を保っているように感じます。大規模な総合防災訓練・地域防災訓練・津波避難訓練に加え、地域の特性を踏まえた各種訓練によって、その意識をさらに高めてもらえればと思っています。

――各家庭でできる対策はありますか?

やはり、防災に関心を持つことが何よりだと思います。家具の固定や、窓ガラスにフィルムを貼るなどして、家庭内に安全な場所を確保することも大切です。また、いざというときに備え、各家庭で話し合ったり、連絡方法を決めておいたりすることも安心に繋がります。

――言うまでもないことですが、非常食の用意も大切ですね。

そうですね。長期保存が可能な非常食は、割合に価格が高いので、保存期間は短くなりますが、一般のレトルト食品、缶詰、カップ麺、飲料水などの計画的な購入・消費をおすすめしています。まずは、7日分の水と食料を用意し、さらに言うとカセットコンロがあれば、食料の選択の幅が拡がります。

取材にご対応頂いた職員の方
取材にご対応頂いた職員の方

――今後、より力を入れていこうと考えていることはありますか?

防災講座や出前講座などの防災教育活動を通じて、これまで以上に市民の防災意識を高めていけたらと思います。地震や津波だけでなく、洪水や土砂災害への対策も含め、専門家のアドバイスをもらいながら市民とともに取り組んでいけたらと思っています。

――最後に、市民へのメッセージをお願いします。

普段やっていないことは、いざというときにもできません。自治会や職場で実施される防災訓練に継続して参加することが大切です。また、自分の命は自分で守るという“自助”。そして自らの地域、周りと力を合わせて守る“共助”が大切です。我々は、“公助”により、しっかり支えていきたいと思います。

沼津市役所
沼津市役所

沼津市役所危機管理課

危機管理課長 榊原和浩さん
所在地 :静岡県沼津市御幸町16-1
電話番号:055-934-4803
URL:http://www.city.numazu.shizuoka.jp/shisei/office/ichiran/jimuhoka/kikikanri.htm
※この情報は2017(平成29)年5月時点のものです。

沼津市役所危機管理課 課長 榊原和浩さん
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