妊娠・出産期から子どもが自ら歩き出す若者期まで“切れ目ない支援”を提供する八王子市/八王子市役所(東京都)
2022(令和4)年度に学童保育所の待機児童ゼロを達成し、「子育てしやすいまち」としてますます注目を集めている八王子市。妊娠・出産期から子どもたちが自ら歩き出す若者期まで“切れ目ない支援”の体制を整えるほか、行政だけではなく市民や企業、大学などと一体になって取り組む子育て支援の輪が魅力です。
今回は八王子市役所を訪ね、子育て支援の取り組みの概要をはじめ学童保育所や給食など、子育て世代にとって注目すべき点についてお話を伺いました。
“切れ目ない支援”の体制を整える八王子市の子育て支援
――まず子育て支援の取り組みの概要について教えてください。
小野さん(子ども家庭部子どものしあわせ課): 本市では、八王子市子ども・若者育成支援計画「ビジョン すくすく てくてく はちおうじ」(https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/kosodate/011/001/p026425_d/fil/kowakekeikaku.pdf)という、2020(令和2)〜2024(令和6)年度の5年間の計画にもとづいて様々な取り組みを進めております。本日はその中から八王子市ならではの特色ある取り組みについてご紹介いたします。
まず一つ目は「子ども☆ミライ会議」です。子どもたちの声をまちづくりに生かす取り組みで、20年ほど前から実施しています。小学5年生から高校生の子どもたちが、「自分たちの住んでいる街はどうやったら良くなるか」ということをテーマに、ワークショップなどで議論を重ね、その意見を市長や教育長に提案して意見交換を行うものです。子どもたちにとっては自分たちの意見を市が真剣に聞いてくれたということがひとつの経験になり、活動を通して地元への関心も高まり、郷土愛を深めることにもつながっていると思います。
二つ目は「八王子市幼児教育・保育センター」です。令和3年2月に多摩地域で初めて設置されたのですが、市内に200以上ある保育園や幼稚園などの教育・保育施設に対して専門的な指導や助言、サポートを行う役割を担っています。
三つ目は「保・幼・小連携の推進」です。「小1プロブレム」という言葉をお聞きになったこともあるかと思いますが、小学校に入学したとたん生活の変化にギャップを感じて落ち着かなくなってしまうことがあります。子どもたちがスムーズに進学していけるよう、本市では一早く、小学校の先生と保育園・幼稚園等の先生が連携して「小1プロブレム」の解消に向けた取り組みを進めています。
もうひとつ、「企業・大学等の参加による子ども・子育て支援」も本市ならではの特色だと思います。八王子はよく「地元愛の強いまち」といったイメージで語られることが多いのですが、行政だけではなく企業や大学にも「八王子の子どもたちのために」という思いで活動されている方々がたくさんいらっしゃいます。市内には21の大学等があり、全国でも有数の学園都市なのですが、夏休みや春休みなどには大学主催で子ども向けのイベントが開催されます。大学などの教育機関が身近にあるという環境は八王子独自かなと思います。
施設ごとにいろいろな特色のある「子育てひろば」
――計画の重点のひとつに位置づけられている「子育てひろば」についても教えてください。
小野さん: 「子育てひろば」というのは概ね0歳から3歳未満のお子さんとその保護者を対象にした施設で、無料でご利用いただけます。親子でゆっくり過ごせて、専門のスタッフがいる場所では子育てに関する相談も気軽にできるので、ご利用されている方からは大変好評です。
八王子市の「子育てひろば」は大きく6種類ありまして、子ども家庭支援センターに併設の「親子ふれあい広場」をはじめ、市内に5ヵ所ある「親子つどいの広場」、保育園や児童館にも子育てひろばがあるほか、地域の方々が主体となって運営している「地域の子育てサロン」もあります。
親子ふれあい広場の1つ、「親子ふれあい広場クリエイト」は「くりちゃん広場」という名前で親しまれていて、「八王子」駅北口から徒歩5分ほどの場所にあり、気軽に立ち寄ることができます。
「子育てひろば」は月曜日から土曜日に運営されているところがほとんどですが、「くりちゃん広場」は年末年始と毎月第1火曜日(第1火曜日が祝・休日の場合、第2火曜日が休館)を除いて毎日開館しているので、平日、土日を問わず多くのご家族が訪れます。また、地下が市営駐車場なので雨天でも利用しやすいと評判です。
コロナ禍は緊急事態宣言で休館した時期もありますが、現在は感染対策を徹底した上で通常通り運営しています。入館時の検温、手指消毒はもちろん、毎日12時30分から13時30分の間は清掃と消毒を行っています。
親子でストレッチ、工作などのイベントや講座が開催され、常連の方、はじめていらっしゃった方も一緒になって親子が楽しそうに過ごしています。
小学生の放課後の居場所づくり、保護者は安心して就労できる環境が整う
――学童保育所の待機児童がゼロになったという発表があったそうですが?
天野さん(生涯学習スポーツ部放課後児童支援課): 切れ目ない支援ということで言いますと、「学童保育所」や「放課後子ども教室」も重要な取り組みのひとつです。保護者の方が安心して就労できる環境を整えるため、八王子市としては施設の整備や学校の教室活用などをして対策を進めて来ました。その結果、令和4年4月時点で学童保育所の待機児童がゼロになったため、先日記者会見で発表させていただきました。
――他にも放課後の居場所づくりに関して注目すべき取り組みはございますか?
天野さん: 2020(令和2)年度から2021(令和3)年度末にかけて、「市立第三小学校」の近くにある「本立寺(ほんりゅうじ)」というお寺さんが、待機児童を対象にして境内の客殿を貸してくださいました。メディアでも現代版寺子屋というかたちで取り上げていただいたのですが、地域の子どもたちを思う気持ちが伝わる八王子らしい取り組みでした。
また全国から様々な問い合わせや反響があったのは、夏休み中の子育て支援として取り組んだ昼食提供です。夏休みの連続する5日間にわたって「学童保育所」で過ごしているお子さんたちに学校の調理室で作った昼食を提供しました。献立は給食と同じく栄養士の方が考えているのですが、普段提供できないような冷たいデザートや子どもたちに人気のミートソースなど、また副菜で栄養バランスをとるなどして、子どもたちのことを考えながら様々な工夫が盛り込まれています。
落合さん(生涯学習スポーツ部放課後児童支援課): 本市では「学童保育所」のほかに、放課後の校庭などを利用して自由に遊べる場を提供する「放課後子ども教室」を実施しています。今後は「学童保育所」と「放課後子ども教室」が連携し、放課後の子どもたちが健やかに育ち、生きる力を育んでいく学びの場として、地域の方々による学習補助や多様な体験活動を提供する出張体験講座をより一層充実させていきます。
地元の特産品を使った手作りで美味しい給食の提供に取り組む
――昼食と言えば、八王子市の給食は美味しいと評判のようですが?
安齊さん(学校教育部学校給食課): 手作りで美味しい給食を提供することを大切にしているのはもちろんですが、地元の特産品を使った献立も大切にしています。地産地消の推進として「八王子しょうが」や「パッションフルーツ」など地元の食材を使ったり、年に1度は八王子市産のお米をいただいたりしています。
また「八王子ラーメン」や「八王子ナポリタン」など、地元のご当地グルメも献立に取り入れていて、八王子の伝統や文化、特産品や産業のことを知ってもらう良い機会だと思っています。給食を通して八王子のことを知って、八王子のことをもっと好きになってもらえると良いなと願っています。
八王子市の学校給食や食育の取り組みは市のHP(https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/kyoiku/003/007/index.html)にもまとめておりますので、興味のある方はぜひご覧ください。また小学校の給食時間に流している八王子市食育ソング「いただきます」の動画もあります。歌詞の中には食を大切にする心やお子さんたちに身につけて欲しい願いが込められているのでぜひ聞いてみてください。
市民・事業者・行政が一体となって開催した「はちりんピック」
――市内で開催される子ども向けのイベントなどはございますか?
小野さん: 2021(令和3)年11月に「はちりんピック」というイベントを開催しました。1日限りのイベントでしたが、お天気にも恵まれて予想していた人数を大きく超え、5,000人近くの来場者がありました。(感染対策を徹底したうえで開催)コロナ禍で子どもたちは思いっきり体を動かして遊ぶことができていなかったんだなとあらためて気づかされました。
「はちりんピック」では市民団体の力も借り、ラグビーやフットボール、ボッチャなどオリンピック・パラリンピックの競技を体験していただいたほか、「子育て応援企業」による出展など市民・事業者・行政が一体となって開催しました。
イベント情報につきましては、2021(令和3)年3月に開設した「八王子市子育て応援サイト」(https://kosodate.city.hachioji.tokyo.jp/index.html)からもご覧いただくことができます。市が主催するイベント以外にも、地域の方が主体となったイベントも数多く開催され、地域も一緒になって子育て家庭を応援しているという雰囲気を感じていただけるかなと思っています。
生活スタイルに合わせて選べる交通手段や自然に恵まれた環境も魅力
――各種制度の充実を感じましたが、その他に、環境面での八王子市で子育てをすることの魅力はいかがでしょうか。
小野さん: それぞれの生活スタイルに合わせていろいろな交通手段が選べることが魅力の一つだと思います。JR中央線や京王線を利用して都心に行くこともできますし、横浜線を使えば町田、横浜方面にもアクセスできます。車では、中央道で長野、山梨方面に行けますし、圏央道で北関東から、湘南方面にも気軽に行くことができます。
お休みの日に子どもを連れて山梨にフルーツ狩りに行ったり、冬になれば雪山でスキーを楽しんだり、夏は湘南へ海水浴に行ったりすることもできます。フットワーク軽くいろいろなところに行けるので、子どもに様々な体験をさせてあげることができるのではないでしょうか。
――「八王子」駅周辺で子育てに役立つスポットはありますか?
小野さん: 「八王子」駅から車で10分くらいのところに「都立小宮公園」という場所がありまして、私が好きなスポットのひとつです。八王子らしい自然いっぱいの公園で、子ども用の遊具もありますし、山の地形を生かした遊歩道もあって、子どもと一緒に落ち葉をかき分けながらガサガサ歩くのも楽しいですね。八王子市内には公園が数多くあるので、お住まいの地域でお気に入りの公園を探していただければ良いかなと思います。
それぞれの人がその人らしい生活スタイルを探究できる八王子
――今後、八王子市に移り住む方に向けてメッセージをお願いいたします。
小野さん: 八王子市には「あなたのみちを、あるけるまち。八王子」というブランドメッセージがあります。高尾山の多彩な登山ルートになぞらえて人生もそれぞれの人にとってぴったりの道を選べることができるということをあらわしています。八王子というフィールドで大切なご家族と一緒にいろいろな楽しみ方を見つけていただければと思います。ぜひお待ちしております。
八王子市役所
子ども家庭部子どものしあわせ課 小野さん
生涯学習スポーツ部放課後児童支援課
(学童保育所担当) 天野さん
生涯学習スポーツ部放課後児童支援課
(放課後子ども教室担当) 落合さん
学校教育部学校給食課 安齊さん
所在地:東京都八王子市元本郷町3-24-1
電話番号:042-620-7391
URL:https://www.city.hachioji.tokyo.jp/shisei/001/001/008/014/p009768.html
※この情報は2022(令和4)年4月時点のものです。
妊娠・出産期から子どもが自ら歩き出す若者期まで“切れ目ない支援”を提供する八王子市/八王子市役所(東京都)
所在地:東京都八王子市元本郷町3-24-1
電話番号:042-626-3111
開庁時間:8:30~17:00
閉庁日:土・日曜日、祝日、年末年始(12/29~1/3)
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/