都内でも数少ない「IB(国際バカレロア)」のプログラムを実践している学校/ケイ・インターナショナルスクール 初等部校長 ケビン・ヨシハラ先生
清澄白河駅近くにある「ケイ・インターナショナルスクール」は、3歳から18歳まで、多国籍の子どもが通うというインターナショナルスクール。生活にも学習にもほとんど英語を用いているのは他のスクールも同様だが、注目を集めているのは、都内でも数少ない「IB」(国際バカロレア)というプログラムを実践している学校という点だ。IBの中でも、初等(幼稚園~小学校中学年)は「PYP」、中等(小学校高学年~高校1年)は「MYP」、高等(高校2・3年)はDPと区分されているが、この3つ、つまり幼・小・中・高の一環教育を行っているのは、首都圏では「ケイ・インターナショナルスクール」だけ。そのため、この学校通わせるために、清澄に引っ越して来るというファミリーもあるという今回は初等部の校長を務められているケビン・ヨシハラ先生にお話をうかがった。
スクールにはどのような国籍、年齢、環境の生徒が在籍しているのでしょうか?
スクール全体では約600名、50カ国の国籍の生徒が在籍していまして、海外から日本に赴任されてきたご家族のお子さん、日本国内で国際結婚をされていらっしゃるご家族のお子さん、それ以外にも、一般の日本人の家族のお子さんだったりと、家庭環境はさまざまです。スクールとして、一つの国籍の子どもが30%を超えないように規定していますので、どの国籍に偏っているということはありません。
日本国籍の生徒ですと、帰国子女の方、海外に転勤予定の方、将来は海外で進学したい、という方が多くなっています。日本国籍の生徒は、全体の20%から30%の間ぐらいです。
学校の「社会的役割」はどんなところにあるとお考えでしょうか?
学校のミッションに「文化的社会的に多様な背景をもった意欲的な子どもたちに、安全で人をはぐくむ環境の中で、質の高い教育を提供し、国際社会に貢献する、人格的に秀でた有能な若者を育成することである」ということを掲げていますとおり、「グローバルに活躍できる有能な社会人を送り出す」ということが使命だと考えています。
これからの時代には、やはり「IB」(国際バカロレア)で学び、DP(ディプロマ)を取得した生徒が必要になってくると思います。「IB」で学習をすることで「地頭」のある子が育ちます。知識に偏っているのではなく、「地頭」のある子こそが、社会に対して有益な人間になると考えています。
生徒と接するにあたって心がけている事はありますか?
学業の面だけではなく、エモーショナルなことも教えられるように、また、そういった先生がいる環境にできるように、学校として心がけています。もちろん「安全・安心」な環境を生徒たちに提供することも大切に考えています。
あとは、「子どもたち一人一人の事をよく理解する」(understand each student)ことも重視しています。子どもたちの得意なこと、まだ出来ていないこと、全部をちゃんと理解したうえで、それぞれに合った指導をしていくことが、生徒の力を伸ばす秘訣だと思います。一人一人、生徒の学び方というのは違いまして、同じようには教えられませんから。
指導言語として英語を使っているということですが、日常会話もすべて、英語になるのでしょうか?
授業については、全部を英語で行っています。「第2言語」として日本語も学んでいますが、その授業以外は全部英語です。
インターナショナルスクールですから、「母国語が英語じゃない」という生徒も多くいまして、そういう子にとっては、第一言語は母国語で、第2言語が英語で、第3言語として日本語を学ぶということになります。
ですから母国語が同じ同士であれば母国語で会話をしますし、休み時間などは母国語を禁止にしていないので、自分の快適(comfortable)な言葉で話しています。日本人同士であれば日本語だし、日本人と英語以外の母国語の子であれば、英語になりますね。つねに、いろんな言語が飛び交っています。
入学にあたって、英語に精通していることは必須でしょうか?
英語の学力については年齢に応じた基準がありまして、当然ですが、学年が上がれば上がるほど、入学時に必要な英語力は高くなってきます。
個人差がありますが、英語で授業をする幼稚園や、放課後に英語で授業をしているアフタースクールに行くなどしていないと、ネイティブでない限り難しいと思います。3歳と4歳以外は、試験段階で水準に達していないと入学ができません。逆に3歳と4歳の子に関しては、英語をほとんど話せなくても大丈夫です。
具体的な入学タイミングを明示されていませんが、何歳から入る子が多いのでしょうか?
IBに触れるのはもちろん早ければ早い段階のほうが良いとは思いますが、それは本人の意志や、保護者の事情もそれぞれですので、一概には言えません。日本人のご家庭ですと、たとえば保護者の方自身が、「大学生になってから海外に行って苦労したので、もっと早い段階から英語に親しんでいれば苦労せずに済んだ」という方もいます。
小さい子は保護者の方の意志で入学される方が多いですが、上の子はもう自分の意志という方も多いですし、入学のタイミングは本当に皆さんバラバラで、「何歳から」「何月から」というものは特にありませんので、いつでも空きがあれば入っていただけます。学年によってはフルになっている学年もありますので、詳しくはお問い合わせください。
カリキュラムの特徴について教えてください。
小学校だと、PYP(Primary Years Programme)に沿ってやっています、これはInquiry-basedといって、先生たちが問いかけるような形のカリキュラムになります。
一方的に先生が教科書通りに教えていくのではなくて、先生がその時のトピックス(話題)に対して質問をして、いろいろ投げかけて、そのことに対して生徒からの意見を聞いて、さらに先生のほうでそれを発展させていく、相互のやりとりによって学びを深めるというものです。それがGrade5(小学校5年生)までのカリキュラムです。
この間はBig ideaが勉強のベースになっています。日本語で言えば、コンセプトとか、概念ですね。勉強をするにあたって、「どうしてこうなっているか」ということを、つねに考えるんです。そしていろんなパースペクティブ(視点)から考えてみるんです。どうしてこうなったか、これからどうなっていくのか、ということを、子どもたちに考えさせます。「情報を与える」だけではなくて、「情報をもとに考えさせる」という勉強です。
Grade6以降はどのようなカリキュラムになるのでしょうか。
Grade6以降のMYP(Middle Years Programme)もPYPと同じ考えが基礎にありまして、それにプラスして、Knowledge(知識・学識)をどんどん付けていく、という部分が入っていきます。
日本の学校がやっているような、暗記をさせて、憶えていくというやり方だけではないんですね。もちろん暗記も必要な部分はあるんですが、そこにKnowledgeを付けていくことが大事になります。そのためには、先生との対話だけではなくて、生徒同士のディベートも大切なものになってきますので、生徒同士で討論をしていくという形もとっていきます。
それから、PYPではできるだけ様々な科目と統合して教えているんですね。たとえば、数学と結びつけながら、アート、音楽、体育、社会科など、いろんなものを一緒に教えています。
日本の「総合的な学習の時間 」のさらに発展版だと思っていただければ良いかと思います。総合学習だと、調べた結果を発表して終わりになってしまいがちですが、PYPでは、それをScienceやArtでExpress(表現)します。
たとえば数学でShape(図形)をやっていたら、Tessellation(モザイク模様)というアートと関連させて学びますし、エッシャーという有名なだまし絵のの作品なども、なぜ不思議に見えるのか、という事を、数学と結びつけて考えます。アートと数学を一緒に学んでいるんですね。
Science(理科)で天気のことを勉強した時などですと、Langageの授業と結びつけて、Typhoon(台風)という言葉を使った詩を作ったりしますし、気温をチェックしてグラフを作ったり、数学とリンクさせることも簡単にできます。そうすると、どうして数学を勉強しているのか、生徒たちも気づくんです。「どうして学んでいるのか、どのようにして学ぶのか」ということが、いつも根底にあるんですね。
あとは、MYPになると、担任ではなくて、各教科の専門の先生が専門の科目をそれぞれ教えるようになります。高校1年生までの期間が、このようなMYPに沿ったカリキュラムになります。
その後「DP」というカリキュラムになるそうですが、これは何でしょうか?
高校2年生、3年生に相当する2年間はDP、正しくはDiploma(ディプロマ)というプログラムになります。これは高校の卒業認定のようなプログラムになりまして、世界中どこの大学にも入学資格が得られるというものになります。かなり高いレベルでの、高校卒業資格ということですね。これを取得することが最終目標になります。
DPを取得することで、海外の大学に進み易くなるのでしょうか?
本校の卒業生は、国内の大学よりも海外の大学に進学する子のほうが多いですから、そういうことになりますね。日本国内ですと、英語で授業を行う大学がそれほど多くはないという事情もあります。日本語で授業を行なう日本の大学に行った子もおりますが、それは稀です。
進学率について教えてください。
現時点では、ほぼ100%が大学に進学しています。厳密には、卒業してすぐには大学に行かない子もいますし、兵役がある国などもありますので、完全に全員ということではありません。詳しくはホームページを確認していただければと思いますが、昨年度は35名のクラス1クラスが卒業生だったんですが、そういう中で、国内外の有名大学にも進学しているという状況です。
実はDPを取得するのメリットのひとつは、受験勉強と言われる、大学受験のための特別な勉強を学校の授業以外にしなくてもいいということなんです。ほとんどの大学がDPの点数と、書類審査だけで合格が決まるんですね。日本でも、ほとんどの大学でDP枠があります。
在学中に海外に転勤などになった場合、どうなるのでしょうか。
毎年必ずそういう生徒はいますが、やはりこのIBプログラムをやっているファミリーは、ほかの国に行ってもIBの学校に行かれる方が多いようです。もちろん行った先の国によっては、普通の学校に入っていただいてもまったく問題は無いと思います。
ケビン先生は清澄白川にお住まいということですが、この地域の良さは何でしょう?
やっぱり電車だととっても便利ですよね。大江戸線と新宿線で直接新宿や渋谷に行けますし、近くに錦糸町もありますから、簡単に何でも買えますし、レストランも多いです。浅草も近いし、幕張にも行きやすくていいです。外国人はIKEAとかCostcoとか、けっこう行っていますから。
私は、やっぱり子どもがいますから、東京のほかの地域と比べると、公園がとっても多いのがいいですね。子どもたちと週に何回も公園に行っています。プールやコミュニティセンター、スポーツセンターなども、沢山あります。お薦めの公園は木場公園です。すごく広いし、イベントもよくやっています。
ここはセントラルトーキョーにも近いのに、子どもを育てるために、すごくいい環境が揃っていると思います。あとは、下町の雰囲気で、人がとっても親切ですね。外国人もいっぱい住んでいますよ。
今回、話を聞いた人
ケイ・インターナショナルスクール
初等部校長 ケビン・ヨシハラ先生
ケイ・インターナショナルスクール
所在地:東京都江東区白川1-5-15
電話番号:03-3642-9992
URL:http://www.kist.ed.jp/ja/node/87
国際バカロレアについて(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/
※記事内容は2013(平成25)年10月時点の情報です。
都内でも数少ない「IB(国際バカレロア)」のプログラムを実践している学校/ケイ・インターナショナルスクール 初等部校長 ケビン・ヨシハラ先生
所在地:東京都江東区白川1-5-15
電話番号:03-3642-9992
国際バカロレアについて(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/
https://www.kist.ed.jp/ja