ブーランジェリー ボヌール / 店主・豊永博さん
「鵠沼海岸」駅を出て、商店街沿いに少し海のほうへ。3分ほど歩いて左に曲がると、踏切の脇に小さなパン屋さんがある。ここは「ブーランジェリー ボヌール」。商店街のはずれにありながらも、日々多くのお客さんが訪れる大人気のパン屋さんである。 この店の主、豊永博さんは平塚に生まれ育った準・地元っ子。この辺りにはビーチバレーを楽しむために、学生時代からよく通っていたということだ。パン職人を目指し始めたころから、「いつかは地元に、できれば大好きな鵠沼海岸に、小さなお店を持ちたい」と願い続け、それが叶ったのが2011(平成23)年のこと。それからの日々は大好きなパンと家族と海に囲まれ、幸せな日々が続いているという。 今回はそんな豊永さんに、お店のことやパンのこだわり、鵠沼海岸エリアの魅力などについて、いろいろとお話を聞いた。
――豊永さんはなぜ、パン職人を目指したのでしょうか?
きっかけは、実は、「コックコートが着たかった」というだけなんです(笑)。子どものころから“ものづくり”が好きだったというのはあると思いますけれど。だから初めはケーキとパンで、どっちにしようか悩んでいて。何となくパンになった、という感じですね。専門学校を出てからは「ドンク」というパン屋さんで10年ぐらい、「ポンデザール」っていうパン屋さんでも、3年ぐらいやっていました。
――「ボヌール」という店名には、どんな思いが込められているのでしょうか?
フランス語で「幸せ」って意味がある言葉なんですね。だから、「幸せのパンやさん」っていうイメージです。お客さんが来て、うちのパンを食べて、笑顔になったらいいな、とずっと思っていて、そういう思いを込めて名前にしました。
――外観も店内も、とてもかわいらしいお店ですね。L字型のカウンターなど、ちょっと変わったディスプレーも素敵です。
ありがとうございます。実は、このカウンターも自分で作ったんですよ。実家が大工をやっているので、父にも手伝ってもらいながら、ほとんど全部、自分達でやったんです。
パン屋さんって、普通は段のある棚じゃないですか。でも、自分は段差がある棚じゃなくて、何と言うか、ぱっと見渡せる感じが良かったんですよ。だからこういう形になっています。レジの台なんかも、角は自分でやすりをかけて丸くして作ったんですよ。
――駅から少し歩き、目立ちにくい場所ですれど、それも狙っていたところなのでしょうか?
そうですね。地域の方に利用していただきたいので、住宅地の近くがいいな、と思っていました。今も実際、8割ぐらいの方はご近所の常連さんですね。週末のお客様については、遠くから来られる方や、観光客の方も多くいらっしゃいます。
――おすすめのパンには、どんなものがあるのでしょうか?
一番売れるのは、やっぱり、食パンですね。ベースになる食パンは2種類あって、普通の食パンと、「フランス食パン」というものです。この「フランス食パン」は、いわゆる、「ハードブレッド」と呼ばれているもので、小麦粉、塩、水だけで作っています。普通の食パンのほうについては、黒米が入ったもの、胚芽が入ったもの、レーズンが入ったものなど、いくつかのバリエーションもご用意しています。
――先ほど、ママ友同士で来て、「塩パン」を買われていたお客さんがいましたね。こちらも人気なのでしょうか?
うちの塩パンがすごく好きなお客さんがいて、多分その方の知り合いの方々だと思います。塩パンって、ふつうのお店だとロール状にしているのが多いんですけれど、うちはオリーブオイルを仕込んで、ちょっと違う感じの塩パンになっています。塩も、フランスのゲランドの塩を使っているので、美味しいですよ。
――バゲットも、とても人気の商品ということですね。
そうですね。うちにはベーシックなバゲットのほかに、フランス産小麦と秋田の「白神こだま酵母」という天然酵母を使った小ぶりなバゲットがありまして、それがパン好きの方に好評いただいています。天然酵母なのでちょっと硬いんですけれど、噛めば噛むほど味が出てくるような、そんなバゲットです。
――ほかにも力を入れている商品があれば教えてください。
取材などでよく取り上げていただけるのは、「クロワッサン」でしょうか。うちのクロワッサンは塩麹が入っているので、それが珍しいみたいなんですね。 しょっぱいだけじゃない、塩麹ならではの旨味をパンの中に出したかったので、塩の代わりに、という感じの量で、けっこう入っています。これも塩味に円みがあるというか、旨味もしっかり感じられて、面白いクロワッサンになっていると思います。塩以外は普通の素材なので、食感はパリパリ、バターもたっぷりです。
あとは、「チャバッタ」なんかも隠れた人気商品ですね。国産小麦100%でやらせてもらっています。小麦の香りが良いですから、そのままオリーブオイルをつけて食べてもいいですし、サンドイッチにしても良いですし、いろんな使い方ができると思います。ハード系よりも少し柔らかいハード系なので、日本人に意外と合うパンですね。
――素材や品揃え、提供の方法など、全般的にこだわっている部分について教えてください。
まずは、「手作り」ということでしょうか。フィリング(中に詰めるあんやクリームなど)類も全部、自家製です。だから「安心、安全」ということも言えるとは思っています。
あとは、「品数をたくさん置く」ということですね。午前中になるべく全部焼き上げて並べるようにしていて、お客さんが来た時に、沢山のパンの中から選んでいただけるように、ということはいつも心がけています。種類は日にもよりますが、だいたい100種類はあると思います。定番以外にも、日替わりパンや、季節によって入るものもありますから、種類は多いほうだと思います。
――それだけの種類を全部一人で作るというのは、すごく大変ですよね。
朝は、3時半ぐらいからやっていますよ(笑)。夜はだいたい7時頃まで店にいます。でも、大変だと思ったことは一度も無いです。パン作りって本当に楽しいですからね。一から十まで、自分の目で見て、さわって、ものができあがってくるのが、何とも言えない楽しさなんです。多分、ほかの人には分からないかもしれないですけれど。
――お客さんはどんな方が多いでしょうか?見ていると、女性の方が多いようですが。
今日は女性が多めですけれど、実は、うちの店は珍しくて、男女比が半々ぐらいなんですね。週末には特に、男性のほうが多いということも多いです。週末に来る男性の方は、マラソンの後に寄ったりとか、散歩がてらちょっと来る、という感じが多いですね。それは自分でも、意外だと思っているところです。もちろん、平日は女性が多いですし、お子さんを連れた方も多いです。
――すべて手づくりで、添加物も使わないパンとうことで、お子さんにも安心ですね。
そうですね。安心して召し上がっていただければと思います。あと、特にお子さん向けというわけではないんですが、アレルギーに対応したパンがありますので、それを目当てにわざわざ来られるという方もいらっしゃいますね。たとえば食パンについても、「フランス食パン」は卵・乳製品を使っていませんし、「白パン」もそうですね。やさしい味なので、小さなお子さんも食べやすいと思います。
――海岸がすぐ近くなので、海辺で食べるという人も多いのでしょうか?
いらっしゃるんですけれど、自分たちは、「鳥に食べられちゃうからやめたほうがいいよ」って言っています(笑)。でもやっぱり、けっこういらっしゃいますね。気持ちいいですから。
――ズバリ、鵠沼海岸エリアの魅力とは何でしょうか?
昔、都内にも住んでいたことがあるので、余計に感じることかもしれませんが、まず、「空気」が全然違いますね。それに人もみんな、ゆったりとしています。休みの日なんかは確かに人も車も多くて、混むんですけれど、都内の混み方とは違って、ごみごみしていないし、せかせかしていないんです。そんな、ゆっくりとした時間の流れがあるのが、いいところですね。
ブーランジェリー ボヌール
店主 豊永博さん
所在地 :神奈川県藤沢市鵠沼海岸2-1-8
TEL :0466-31-0330
営業時間:8:00~19:00
定休日:火曜、第1・第3水曜
※この情報は2016(平成28)年6月時点のものです。
ブーランジェリー ボヌール / 店主・豊永博さん
所在地:神奈川県藤沢市鵠沼海岸2-1-8
電話番号:0466-31-0330
営業時間:8:00~19:00
定休日:火曜、第1・第3水曜