千代田区立千代田小学校 校長 浅岡寿郎先生 インタビュー
次世代を生き抜く子どもたちを育てる“思考力と判断力”を養う教育
1993(平成5)年の開校より24年目を迎える「千代田区立千代田小学校」。商店街やオフィス街に囲まれたJR「神田」駅より徒歩4分の場所に位置する同校は、都心部にありながらも下町情緒あふれる地域のあたたかい眼差しに見守られ、素直で明るく元気な子どもたちの笑顔に満ちています。今回は2015(平成27)年度より校長を務める浅岡寿郎先生に「千代田区立千代田小学校」の特色と学校周辺の地域の魅力についてお話を伺いました。
小規模校の良さを生かした「千代田区立千代田小学校」
Q.まず、学校の概要、特色について教えてください。
「千代田区立千代田小学校」は1993(平成5)年の開校より24年目を迎えます。「千桜小学校」、「神田小学校」、「神竜小学校」の合併により誕生した学校で、3校の伝統と実績を受け継いだ歴史のある学校です。
児童数は2016(平成28)年6月現在、特別支援学級2クラスを含め全10クラス227名です。学校の規模としては小規模校という位置づけになりますが、縦割り班による全校遠足や、少人数クラスの導入によるきめ細やかな指導など、小規模校ならではの良さを生かした教育を実践しています。千代田区が独自に採用した区講師も7名在籍し、ティーム・ティーチングによる授業も行われています。
また、学区域が広く、大手町や丸の内のビジネス街、有楽町の商店街や日比谷公園のあたりまで含まれるのも学校の特色のひとつです。ほとんどの児童は「神田」駅周辺の旧神田区から通学しています。
2015(平成27)年度に校長に着任して2年目を迎えますが、正門の向かいに咲く満開の桜とモダンな校舎が印象的で、素直で元気ないわゆる“神田っ子”の集まる明るい雰囲気が学校の特色だと思います。
“地域を支える「人づくり」地域と共に育つ「学校づくり」”を経営方針に
Q.今年度の教育目標、経営方針についても教えてください。
2016(平成28)年度の教育目標には「やさしく・かしこく・たくましく・未来を築く・千代田の子」を掲げ、教職員・保護者・地域とがひとつになって“チーム千代田小”として連携し、子どもたちの成長のためにある学校として、質の高い教育活動に取り組んで参ります。
また、学校経営方針には“地域を支える「人づくり」地域と共に育つ「学校づくり」”を掲げ、これまで以上に地域と連携した学校運営を進めて参ります。
具体的な取り組みのひとつに「千代田小 学びのスタンダード」を実施いたします。確かな学力を身につけるために必要な「学習意欲の向上」と「学習規律の確立」を目指した取り組みで、たとえば姿勢良く座ること、名前を呼ばれたら「はい!」と返事をすることなどが含まれます。また、ご家庭でも翌日の授業に必要な学習用具を準備したり、宿題や家庭学習に取り組んだりと基本的なことではありますが、児童一人ひとりの実態や発達段階に合わせた指導を行います。
“思考力と判断力”を養うことの必要性
Q.千代田区教育委員会研究協力校としての取り組みについてもお聞かせください。
昨今、子どもたちを取り巻く社会情勢も大きく変動し、10年後の未来を想像することも難しい世の中になってきています。今ある職業も数十年後にはその半分ほどが無くなってしまうとも言われていますし、知識の詰め込みだけでは生き残っていけない時代に直面しています。
そこで、本校では、去年から2年間「千代田区教育委員会研究協力校」の指定を受け、「『考え』『広げ』『深める』児童の育成 ~考える力を育む授業づくり~」 と掲げて校内研究に取り組んでいます。
たとえば、算数においては三角形の面積を求める「底辺×高さ÷2」という公式を覚えるだけではなく、答えを導くために、子どもたちがどのように学ぶかというプロセスを教師が意識して工夫して教えます。また、ペア学習やグループ学習など友だちと協力し合って答えを導く恊働性も欠かせない要素のひとつで、自分ひとりで考える時間、友だちと考える時間など、適切な指導を適切なタイミングで行うことによって、子どもたちの“思考力と判断力”を養うことにつなげていきます。
また、タブレットやデジタル教科書などのICT機器を活用することも取り組みのひとつで、校内研究を通じて教職員の指導力のスキルアップにもつなげていく予定です。
他にも、1年生から6年生まで発達年齢に応じた「俳句教育」を得意とする先生が本校にいることも強みであり、基本的な句のつくり方から句会の開催まで、俳句教育にも取り組めるようになりました。このように教師個々人のもつ専門性を発揮しておたがいにOJTで学び合うことも教職員全体のスキルアップを図るひとつの方法だと考えています。
地域に根ざした学校づくり
Q.地域のつながりについてお聞かせください。
学校周辺の神田エリアは、学校運営に対する地域の協力体制がしっかりしていて、また子どもたちへの眼差しもあたたかく、地域の皆さまに見守っていただいているのを感じます。
学区域には30近い町会が存在し、地域の安心・安全に貢献してくださっています。朝夕の登下校時に“見守り隊”として街角に立ってくださる方のなかには、80歳を超えてもなお協力してくださる方もいて大変ありがたく感謝しています。
また、地域・保護者・教職員が中心になって組織する「学校運営連絡会」も定期的に開催し、学校運営に対する助言や改善点などのご指摘をいただきながら、地域に根ざした学校運営に努めています。
地域の伝統文化を知る手がかり「神田祭」、人情に厚い“神田っ子”
Q.地域の魅力についてお聞かせください。
地域の魅力としては、学区域には商店街からビジネス街までさまざまな特色をもった地域があるため、ひと言では言い表せませんが、学校周辺の地域に限って言えば、「神田駅前商店街」や「須田町問屋街」、古本屋さんやスポーツ用品店が建ち並ぶ神保町も近く、賑わいのある街に囲まれています。
私も若いころはスキー用品と楽器を求めて足繁く通った街でもあり、当時の思い出も鮮やかに毎日わくわくしながら学校に通っています。
また、千代田区には「神田明神」があるのも魅力のひとつで、2年に一度開催される「神田祭」はまさに日本を代表する伝統文化のひとつです。昨年はちょうど遷座400年を迎え、全国からの観光客も多く大変な賑わいでした。
学校の取り組みとしても、地域の伝統文化に触れられる貴重な機会と捉え、学校経営方針でも掲げた“地域を支える「人づくり」地域と共に育つ「学校づくり」”に生かそうとさまざまな企画を検討しています。2020 オリンピック・パラリンピックの開催も控えておりますし、スポーツはもちろん日本の伝統文化を通じて日本の魅力を知る手がかりにしたいと思います。
この地域では夏まつりの時期を迎えると、縁日や盆踊りなど毎週どこかの町会でイベントが開催され、大人も子どもも地域のお祭りで一緒に楽しむ光景が広がります。子どもたちを楽しませよう、大切にしようと願う大人たちの意識が脈々と受け継がれているようで、まさに“神田っ子”と呼ぶに相応しい人情に厚い地域の皆さまに魅力を感じています。
不易流行という言葉がありますが、近代的な発展を遂げる街の中には、今も変わらぬ江戸情緒と人情があふれ次世代へと発展し続ける可能性に満ちた地域だと思います。
今回、話を聞いた人
千代田区立千代田小学校
校長 浅岡寿郎先生
千代田区立千代田小学校 校長 浅岡寿郎先生 インタビュー
所在地:東京都千代田区神田司町2-16
電話番号:03-3256-6768
http://www.chiyodaku-chiyoda-e.ed.jp/