独自の授業研究で学力向上と、文武両道を目指す/岡崎市立竜海中学校 加藤勝巳先生
自然が残る丘の上に建つ「岡崎市立竜海中学校」。気持ちの良い環境で授業を受けている生徒は、50年以上続く「わかる学習指導」の研究で培われてきた学習方法によって基礎学力を定着させている。また、部活動で優秀な成績を収めるなど、運動部、文化部、どちらも一生懸命に活動している。文武両道を目指すために、生徒はどのような学校生活を送っているのか、校長の加藤勝巳先生にお話を伺った。
歴史と伝統の中で育まれてきた、生徒主体の学校づくり
――学校の概要について教えてください。
加藤校長:戦後、教育改革のスタートとなる1947(昭和22)年4月に開校し、2017(平成29)年度に創立71年目を迎えた歴史と伝統のある学校です。1960(昭和35)年には全校生徒数が1762名となり、大規模校となったため、翌1961(昭和36)年4月に「城北中学校」を分離新設し、現在の校区となりました。生徒は主に「六名小学校」、「三島小学校」、「竜美丘小学校」の3小学校から入学してきます。現在の生徒数は885人とピーク時よりも減少していますが、新しい住宅も増えているので、今後は徐々に生徒数が増加していくのではないかと予想しています。
――学校の教育目標について教えてください。
加藤校長:校訓は「進取創造」で、「正義と真理を愛する心身ともに健康で自主的な人間の育成をめざす」を教育目標に掲げています。生徒は自主・自立を大切にしながら、生徒会執行部が中心となって、体育大会・文化祭・新入生歓迎レクなどの行事を企画・運営しています。2015(平成27)年度の後期生徒会執行部が「あたりまえ五か条」を作成し、「礼儀・整理整頓・給食当番・掃除・時間」の規律に全校で取り組んでいます。
「わかる学習指導」の研究から導いた学習法を実践
――学力向上のためにしている取り組みはありますか。
加藤校長:本校では、1963(昭和38)年から「わかる学習指導」の研究を継続しています。生徒の将来を展望しながら学ぶ力を高めるとともに、基礎学力定着のため教職員が一丸となり、一生懸命取り組んでいます。毎年、開催している授業研究協議会には300名を超える教育関係者に参加していただいており、公開授業と教科別研究協議会により、教員の指導力向上のための研修を行っています。
――具体的に、どのような学習をしていますか。
加藤校長:研究会から生まれたオリジナルの「竜中ワーク」があり、生徒は繰り返し取り組んでいます。3年生の数学と2年生の英語の授業は少人数指導を取り入れておりますし、2015(平成27)年度からは「チャレンジ 竜海式Active Learning」をテーマに授業実践を行っています。アクティブ・ラーニングの中に、持続可能な社会づくりの担い手として生徒を育てる「ESD」の視点とコミュニケーションを取り入れた教科学習を行い、生徒自身の主体的な学びをさらに確かなものにしたいと考えています。
――伝統的に行なわれている「CMT」という時間もあるそうですが、どのような時間でしょうか。
加藤校長:「わかる学習指導」が始まった1963(昭和38)年に、生徒の自主性を育てるために、30分間の「MT(ミドル・タイム)」を行っていました。これが形を変えながら受け継がれ、現在は、その日に行った5教科の授業内容を想起し、ノートに再現するという「再現法」を取り入れた「CMT(コミュニケーション・ミドル・タイム)」を実践しています。「CMT」とは、1日の終わりに15分間の時間をとり、少人数グループで学習の振り返りをする時間です。お互いに意見、交流を図った後、個人でノートにまとめることで、学びを確かなものにしていきます。
文武両道で部活動も活発、地域交流も盛ん
――竜海中学校は部活動での活躍も目覚ましいですね。
加藤校長:本校は文武両道を目指しています。2017(平成29)年度は多くの生徒が県大会や東海・全国大会で活躍しました。特に陸上部の女子が県大会で総合優勝、熊本で開催された「全日本中学校陸上競技選手権大会」では、女子400メートルリレーで優勝しました。また、駅伝部は男女ともに西三河地区予選を勝ち抜いて県大会出場、男子は準優勝しました。
吹奏楽部は「日本学校合奏コンクール全国大会」で銀賞、合唱部も「中部日本決勝大会」で優良賞を受賞しました。このように、過去をさかのぼっても、多数の部活動が数々の大会で優秀な成績を収めています。さらに、優勝を目指すだけでなく、吹奏楽部や合唱部が地域の福祉施設などで訪問演奏をするなど、人の心に寄り添う活動もしています。
――他校との交流はありますか?
加藤校長:「竜盲交流」と呼んでいますが、1979(昭和54)年から「愛知県立岡崎盲学校」と交流をしています。七夕やクリスマスなどの行事で、演奏交流をしたり、アイマスク着用の歩行体験をしたりしています。歩行体験で感じたことや、盲学校の中で工夫されていることについては、交流したクラスが全校に報告をしています。また、「六名小学校」の6年生と本校の1年生が英語の合同授業を行い、みんなで楽しく英語に慣れ親しんでいます。
――PTA活動も盛んだとお聞きしました。
加藤校長:毎年、12月に開催する「長距離継走大会」では、終了後に食べるおしるこを用意していただいており、生徒も楽しみにしています。校庭に置いてあるベンチは「おやじの会」が施設で不要になったものを引き取り、生徒がデザインしたペインティングとコラボして設置したものです。今年の夏は玄関前の池の清掃を行うなど、精力的に活動していただいています。ほかにも、年3回の「制服リサイクルバザー」を開催したり、文化祭で「PTA食品バザー」を行ったりするなど、多くの行事にPTAの皆さんが関わってくださっています。
幅広い選択肢がある生徒の進路
――進学についてはいかがでしょうか。
加藤校長:公立の高校はもちろん、交通の便が良いことから私立校を目指す生徒もいます。運動部の活動が盛んなので、スポーツの力を伸ばすための高校を選ぶ生徒もいて、進学先はさまざまです。また、本校の特徴として、校区内に「愛知教育大学附属岡崎中学校」、「愛知県立岡崎高等学校」、「光ヶ丘女子高等学校」など教育施設が多数集まっています。すぐ近くには「自然科学研究機構」があり、研究員のお子さんも地域の学校に通学している状況です。そのため、教育に関心のあるご家庭が多いように感じます。「東岡崎」駅周辺には学習塾もたくさんあるので、学習環境が充実している雰囲気があります。
「竜海中学校」に愛着をもつ加藤校長
――加藤校長は普段、どのように生徒と接していらっしゃいますか。
加藤校長:私は、2000(平成12)年から5年間、生徒指導担当として本校に赴任していました。その後、2012(平成24)年に教頭として再び赴任、そのまま2015(平成27)年から校長を拝命したという縁で、本校にはとても愛着があります。生徒には「謙虚」に、そして「誠心誠意」を念頭に接しています。中でも生活の基本である「挨拶」は特に大切にしております。「率先垂範(自らが行動して模範を示すこと)」を教職員にも生徒にも勧めているので、生徒会が作成した「あたりまえ五か条」の第一条に挨拶のことが書かれていたことも嬉しく感じています。
そして、これから自分の人生を模索しながら歩んでいく生徒には、可能な限り「実物」を見たり、「本物」を体験したりしてもらいたいと考えています。本校では年に何回か、卒業生を招き、自分の夢の実現について語っていただく機会を設けています。先日は、城西高校チアリーディング部のみなさんに全国レベルの演技を披露してもらい、夢に向かって頑張る先輩のメッセージを聞くことができました。努力したことが見事に報われるときもあれば、そうでないときもあります。先輩のメッセージには、そうした様々な思いが込められていました。
――学校がある地域の特徴や加藤先生お気に入りの場所がありましたら、教えてください。
加藤校長:かつて、生徒数が増加したことからも分かるように、1975(昭和50)年頃から校区にマンションや一戸建ての宅地が増えてきた地域です。しかし、縄文時代の真宮遺跡や徳川家康公にまつわる寺社など、名所旧跡が存在する歴史ある地域でもあります。私も家康公ゆかりの「六所神社」や「龍海院」はよく訪れています。学校の北と西には乙川と矢作川が流れ、「岡崎公園」、「東公園」、「南公園」などの自然も豊富。本校は小高い丘の上に立っているので、プールから南西の方角を見渡すと、岡崎市内を見下ろす風景が見られます。自然、交通、教育といった環境が整っているので、暮らしやすい地域ではないでしょうか。これからますます子育て世帯が増え、本校も賑やかになっていきそうです。
岡崎市立竜海中学校
校長 加藤勝巳先生
所在地 :愛知県岡崎市明大寺町字栗林48-1
電話番号:0564-51-4538
URL:http://www.oklab.ed.jp/weblog/ryukai/
※この情報は2017(平成29)年12月時点のものです。
独自の授業研究で学力向上と、文武両道を目指す/岡崎市立竜海中学校 加藤勝巳先生
所在地:愛知県岡崎市明大寺町字栗林48-1
電話番号:0564-51-4538
http://www.oklab.ed.jp/weblog/ryukai/