ご担当者インタビュー

あらゆる世代が安心・安全に暮らせて、新旧の住民が交流する街づくりを目指す「北鈴蘭台」駅前エリア。その期待度と今後の展望とは?/「北鈴蘭台」駅前再開発プロジェクト(兵庫県)


三ノ宮エリアに最短22分でアクセス可能な好立地にある、神戸電鉄「北鈴蘭台」駅。その駅前のエリアでは、昭和40年代に誕生した神戸市内最大級の市営住宅「市営桜の宮住宅」の老朽化に伴い、市営住宅の建て替えと余剰地に新たな住宅や施設を生み出す事業が2015(平成27)年にスタートした。

そして2020(令和2)年3月には、『ジークレフ神戸北鈴蘭台コミュニティガーデンズ』の分譲を開始。現在は、建て替え事業2期工事も着々と進行中で、街の佇まいは大きく変化を遂げようとしている。

この再開発事業は、神戸市の公営住宅における初のPFI事業(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ:民間資金等活用事業)による市営住宅の建て替えで、行政と民間が連携しながら開発と街づくりを進めている。今回は、本プロジェクトを管轄する神戸市建築住宅局住宅整備課と、本事業を契機としたまちづくりのコンサルタントを担う市浦ハウジング&プランニング、そして本事業区域内に新たに誕生する分譲地エリアの開発・販売を行っている神鋼不動産、それぞれの担当者にお集まりいただき、「北鈴蘭台」駅周辺再開発のコンセプトや目指す街づくりについてお話を伺った。

神戸市 建築住宅局 住宅整備課 の辺見徹さん(左)と山本真帆さん(右)
神戸市 建築住宅局 住宅整備課 の辺見徹さん(左)と山本真帆さん(右)

「北鈴蘭台」の街づくり構想を踏まえた再開発プロジェクト

――「北鈴蘭台」駅前再開発プロジェクトの概要について教えてください。

辺見さん(神戸市 住宅整備課): 北鈴蘭台には、1969(昭和44)年から建設が始まった神戸市内最大級・総管理戸数2,299戸の市営住宅「桜の宮住宅」がありました。完成から約50年が経過し、老朽化が進んでいましたので、平成22年度に「市営住宅マネジメント計画」の中で建て替えを行うことが決定しました。神戸電鉄「北鈴蘭台」駅に近く、規模の大きな建て替え事業ということで、単に建て替えを行うだけでなく、街づくりの観点も踏まえたものにしていくための再開発プロジェクトが立ち上がったという経緯です。

――この地域は、電車アクセス面では都心に出やすく便利なエリアですよね。

辺見さん: 神戸市北区エリアの鉄道は、神戸電鉄が中心。神戸電鉄さんが沿線の開発を進めていたエリアに、神戸市が市営住宅を建てたという経緯があります。都心へスムーズにアクセスできるベッドタウンとして、駅前を中心に開発が進み、約半世紀にわたり人々の暮らしを支え続けてきました。

――そうした街の歩みもふまえて、今回の北鈴蘭台エリアでの新たな街づくりではどのような点を重視されていますか。

辺見さん 建設当時、市営住宅には若い世代のご家族が多く住まわれていましたが、年数が経つにつれて、住民の方も高齢化し、施設も老朽化が進んでいました。市営住宅を建て替えることにより、もちろん建物や設備自体は新しいものになるのですが、住民の高齢化という問題は残ります。建て替え事業の余剰地に分譲地エリアを作ることによって、新たに若い世代が入居することが可能になりました。古い団地の再生にはこういった動きが重要だと考えています。また市営住宅にも新規の方々に入っていただけるように、子育て世代向けの間取りなども増やしています。

神鋼不動産株式会社 『ジークレフ神戸北鈴蘭台コミュニティガーデンズ』所長の森脇大介さん(右)、同社技術部の仲嶋健祐さん(左)と木村勇太さん(中)
神鋼不動産株式会社 『ジークレフ神戸北鈴蘭台コミュニティガーデンズ』所長の森脇大介さん(右)、同社技術部の仲嶋健祐さん(左)と木村勇太さん(中)

――神鋼不動産さんと市浦ハウジングさんは、この再開発プロジェクトにどのように参画されているのでしょうか?

森脇さん(神鋼不動産株式会社): 我々の事業は、2015(平成27)年からスタートしました。まず市営住宅に住んでいる方の住み替えや、市営住宅を建て替えるオールドタウン対策の建設工事に着手し、続いて『ジークレフ神戸北鈴蘭台コミュニティガーデンズ』第1期住宅の分譲を開始したのが2020(令和2)年3月です。北区は「都心へのアクセスが良く便利だが、その魅力を伝えきれていない」という印象のある地域でした。私たちは神戸の会社で社員も北区に住んでいる者もおり、このエリアの将来的なポテンシャルも実感していたので、今回の再開発プロジェクトに名乗りを上げさせていただきました。

森田さん(株式会社市浦ハウジング&プランニング) 私たち市浦ハウジング&プランニングは、道路をはさんで北側の建て替え事業第2期の設計会社として参画し、「桜の宮まちづくりプラットフォーム」をご提案させていただきました。

株式会社市浦ハウジング&プランニング 大阪支店 計画室長・プロジェクトリーダーの森田恭平さん(左)と 計画室の松本友惟さん(右)
株式会社市浦ハウジング&プランニング 大阪支店 計画室長・プロジェクトリーダーの森田恭平さん(左)と 計画室の松本友惟さん(右)

より魅力的な地域にするための「桜の宮まちづくりプラットフォーム」

――「桜の宮まちづくりプラットフォーム」について詳しく教えてください。

森田さん: 大規模な開発事業ですので、街が出来上がったときに「これで終わり」とならないために、地域の事業者、住民、新たに入居する方々が交流し関わり合える仕組みや機運を作りたいという思いがありました。北鈴蘭台をより魅力的な地域にするための集まりとして、「桜の宮まちづくりプラットフォーム」を立ち上げ、少しずつ活動しているところです。先日は、神鋼不動産さん主催の防災イベントを、「桜の宮まちづくりプラットフォーム」のメンバーと連携しながら開催しました。「桜の宮ふれあいのまちづくり協議会」という住民組織の方々や、鈴蘭台にある「神戸親和女子大学」の学生さん、駅前で建替え中の「コープこうべ」さん、北区を活動拠点にしているクリエイターチームといったプラットフォームをきっかけに出会った人々が一緒になって開催しました。みんなで集まってまちづくりについて議論しつつ、目に見える形としては、このようなイベントを開催したり、「北鈴つづく通信」を発行したりしています。

松本さん(株式会社市浦ハウジング&プランニング) 年に3回発行している「北鈴つづく通信」では、プラットフォームの活動やメンバーを紹介しています。各戸配布や駅に置くなど、みなさんに協力いただき、地元の方が手に取れるようにしています。プラットフォームの現在のメンバーは事業者の方が多いですが、今後は住んでいる方をもっと増やしていきたいと思っています。通信ではお店の方やさまざまな活動をされている住民の方へのインタビューなども紹介していますが、“北鈴”への愛情が深い方が多く、プラットフォームの活動にも協力的です。通信を通じて出会った方々とコラボしたイベントなどが“つづく”ようにと考えています。イベントサポーターやボランティア募集への問い合わせも増えてきており、これから住民の方々との活動をさらに拡げていけそうな手応えを感じています。

年3回発行の「北鈴つづく通信」でエリアの魅力やイベント情報などを発信
年3回発行の「北鈴つづく通信」でエリアの魅力やイベント情報などを発信

――このような大掛かりなプロジェクトはめずらしいのではありませんか?

森田さん: 私たちもいろいろなお仕事をしていますが、規模が大きいだけでなく、北鈴蘭台の場合は、市営住宅の建て替えというハード面の事業が先行して、そこからソフト面の街づくりプロジェクトを面的に拡げていくという初めてのパターンです。

森脇さん: この再開発事業に取り組んでいるなかで、北鈴蘭台に住んでいる方々からも「街がどんどん良くなっている」という声が上がっているので、このプロジェクトは街づくりに貢献していると実感していますね。

街の魅力や分譲地の特長を語る森脇さん
街の魅力や分譲地の特長を語る森脇さん

実際にお住まいの方の声や今後のコミュニティづくり

――『ジークレフ神戸北鈴蘭台コミュニティガーデンズ』ならではの特長や力を入れているポイントなどを教えてください。

木村さん(神鋼不動産株式会社) 土地取得の観点から「駅近の新築戸建」というものが少ない中で、108区画の分譲地というのは、関西圏でも大型な物件になっています。一番近い区画では駅から3分です。また立地条件だけでなく、コミュニティ形成に注力していること、長く安心して住んでいただける省エネ性や長期優良住宅であること、という部分も他の物件との違いですね。また、若年世代や子育て世帯を念頭に街づくりを行っており、実際に小さなお子さんがいるご家族が多く入居されています。

新たに造成された分譲地の美しい街並み
新たに造成された分譲地の美しい街並み

――物件名にも「コミュニティ」とありますが、どのようなコミュニティづくりを目指していますか。

森脇さん: 住まわれる方々が「つながり」を持って、仲良く・快適に・長く暮らして頂きたいと思っています。また、その「つながり」を持って頂きやすいよう、分譲地の中心に共用施設である「コミュニティハウス」を建設しました。ここでは、万一の災害時にも防災倉庫を設けていますので、みなさんで助け合って頂ける環境を整えています。

分譲地内「コミュニティハウス」は、住民なら原則無料で利用できる
分譲地内「コミュニティハウス」は、住民なら原則無料で利用できる

――現在、住宅整備はどの程度進んでいるのでしょうか。また実際に購入されたご家族の声を教えてください。

森脇さん: 108区画のうち70戸程度がすでに完成しています。ご購入者様には、駅まで徒歩3~4分という好立地と100戸以上という街並みや規模感に加え、土地面積が45坪以上あるゆとりなどの点を好評いただいています。また、3000万円半ばから購入いただける価格感も評価いただいております。整備された街並みの中に、同世代の方が多く住まわれているということも評価していただき、最終的に購入に至ったという方が多いように感じています。成熟した街と比べ、ここでは入居者様が同時期に新しい暮らしを始めるため、コミュニティが形成しやすいとのお話もいただいております。

若い世代から高齢者まで暮らしやすい街をつくる

――第2期建て替え事業の開発のコンセプトや、住居・街並み・街づくりにおけるこだわりなどをお聞かせください。

森田さん 2期の設計でいえば、800戸の建て替えを一度に行うPFI事業というのは日本の中でも最大規模です。桁違いの大きさという部分は大きな特徴ですね。その規模を生かした街づくりとして、高齢者の方ができるだけ坂道を登らなくていいように、大規模な造成工事を行い、団地内を通り抜ける平坦なプロムナードをつくります。また入口にはゲート広場を作り、市営住宅の入居者以外の地域の方々もそこで活動したり、イベントをしたりできる、新しい交流やにぎわいが生まれるような仕組みを考えています。実現すれば、公営住宅事業の中ではかなり画期的な取り組みですね。市営住宅建て替えは2023(令和5)年に完了、沿道ゾーンは2022(令和4)年から順次完成する予定です。

山本さん(神戸市 住宅整備課) 子育て支援を充実させるために、「神戸市立桜の宮保育所」がこの事業に合わせて民営化した形で建て替えられます。また、駅前の商業施設として地域に長く親しまれてきた「コープこうべ」さんが 2022(令和4)年春にリニューアルオープンしますし、さらに沿道利用ゾーンにも、飲食ができる施設やクリニックなどができる予定です。若い世代の方々が生活しやすいよう環境を整備する計画をしています。

各事業者が手を取り合って街づくりに関わっている珍しいケース、と語る森田さん
各事業者が手を取り合って街づくりに関わっている珍しいケース、と語る森田さん

豊かな立地環境も活かし、将来に向けて大きく変わるまちへ

――本プロジェクトの整備完了後に、期待される街の変化や街づくりへの思いをお聞かせください。

森田さん 地域にお住まいになっている方々にアンケートをとったところ、街に対する思いや不満など、さまざまなご意見をいただくことができました。いただいたご意見を参考に、今後「プラットフォーム」の中で、より具体的にこの街のコンセプトを詰めていこうと検討しているところです。ここはベッドタウンですが、もう少し北へいくと農業が盛んです。おいしいお野菜がたくさんあり、地産地消に近い住宅地なのですが、飲食店がとても少なく、「食」の部分で不満を感じている住民の方は少なくありません。一方で、プラットフォームのメンバーである「みんなのごはん」さんがフードバンクの活動を始められたり、「桜の宮ふれあいのまちづくり協議会」さんがカレーをふるまう食事会を開催されていたり、「食」をキーワードに人をつないでいく活動の芽はありますので、うまく拡げていきたいと思っています。

三宮から近いにも関わらず、空気がきれいなエリアということもあり、健康のためにここに移り住んだという方もいらっしゃいます。空気もきれいで、地元の野菜も食べられて、近隣を散歩することで坂道が多くて足腰も強くなる(笑)、住んでいるだけで健康になる街というのは、このエリアのいいところです。そういった部分をどんどん伸ばしていけたらと思っています。

――神戸市として北鈴蘭台という街に期待することを教えてください。

辺見さん 以前からこのエリアにお住まいの方も、新たにお住まいの方も、新旧の住民の方々がうまく交流されて、人と人とのつながりを大事にできるような街になってほしいと思っています。

分譲地の設計コンセプトや街並みについて語る仲嶋さん
分譲地の設計コンセプトや街並みについて語る仲嶋さん

――最後に、北鈴蘭台にすでにお住まいの方やこれから新しく住まわれる方々に向けてメッセージをお願いします。

森脇さん: 北鈴蘭台エリアは、これからも街が大きく変わっていきます。ここは自然も多いですし、都心とは違った魅力があり、子育て世代の方が安心して暮らすことができる環境が整っています。『ジークレフ神戸北鈴蘭台コミュニティガーデンズ』では、長く安心して住んでいただくことができる長期優良住宅を建てていますので、ぜひ、この街の一員になってもらえればと思います。

仲嶋さん(神鋼不動産株式会社): 写真や動画では伝えきれない魅力がこの街にはたくさんあるので、ぜひ一度、現地に足を運んでもらいたいですね。そして、当社が自信を持っておすすめする建物そのものも体感していただければと思っています。

「北鈴蘭台」駅前再開発プロジェクト関係者の皆さん
「北鈴蘭台」駅前再開発プロジェクト関係者の皆さん

神戸市

建築住宅局 住宅整備課 事業計画係長 辺見徹さん
建築住宅局 住宅整備課 事業計画係 山本真帆さん

神鋼不動産株式会社

ジークレフ神戸北鈴蘭台コミュニティガーデンズ所長 森脇大介さん
技術部 技術グループ 課長 仲嶋健祐さん
技術部 技術グループ 木村勇太さん

株式会社市浦ハウジング&プランニング

大阪支店 計画室長・プロジェクトリーダー 森田恭平さん
大阪支店 計画室 松本友惟さん

※この情報は2021(令和3)年12月時点のものです。