校長 関口 景子先生 インタビュー

学校運営をあらゆる側面からサポートする、地域のあたたかい眼差しに見守られた「川口市立本町小学校」


明治6(1873)年の開校より144年目を迎える歴史と伝統のある「川口市立本町小学校」。平成22年度に完成した新校舎では、およそ1,000人にのぼる子どもたちがともに学び合い、地域のあたたかい眼差しに見守られながら充実した学校生活を送っています。今回は2017(平成29)年4月に校長として着任した関口景子先生に、「本町小学校」の特色と地域とのつながりについてお話を伺いました。

川口市立本町小学校 関口景子校長先生
川口市立本町小学校 関口景子校長先生

市内でもっとも歴史のある創立144年目を迎える「本町小学校」

――まず学校の歴史や概要について教えてください。

「川口市立本町(ほんちょう)小学校」は市内に52校ある小学校のなかでももっとも歴史のある学校で、1873(明治6)年に開校いたしました。いわゆる昔の寺子屋のようなかたちからスタートして今年度で144年目を迎えます。
現在の校舎は2010(平成22)年度に全面建て替えを行ったものです。学校規模は駅に近い市街地の学校としては大きく、28学級952名の子どもたちがともに学校生活を送っています。
もともとこのあたりは鋳物づくりの中心地だったのですが、工場が郊外に移転するのに伴いその跡地に高層マンションが建てられ、児童数も急増しここ数年は1,000人規模で推移しています。

川口市立本町小学校
川口市立本町小学校

2017(平成29)年4月に校長として着任したのですが、都心部に近い駅前学校ならではの雰囲気を感じ、子どもたちが都会的だなという印象を受けました。また各ご家庭も教育に熱心な方が多く、学校教育にも協力的で有り難いなと感じています。
たとえば学校で行う保健指導で虫歯があるお子さんには治療をしましょうというお手紙を出すのですが、親御さんがすぐに病院に連れて行ってくださって治療率を見ても大変高く、学習以外の面でもいろいろな側面で協力をいただけることに感謝しています。

社会科を通して子どもたちの考える力、思考力を育む

――特色ある取り組みについてもお聞かせください。

来年の2018(平成30)年度に全国の小学校から先生が集まり社会科に関する研究発表を行う全国大会「第56回全国小学校社会科研究協議会研究大会」の会場校に指定されています。
その関係もありここ数年は社会科を中心に研究発表に取り組んできたのですが、単に社会科の教科を学ぶというよりも、社会科という教科を通して子どもたちの考える力を育てるということに取り組んでいるのが本校の特色のひとつです。

川口市は古くから社会科に熱心に取り組む地域でありまして、「川口プラン」という社会科を中心にした教育カリキュラムを全国に発信したことでも知られています。
社会科に関する取り組みはさまざまで、本校では3年生で行う市内各所を巡る社会科見学を踏まえ、4年生になると校外学習として川越に行き、街の歴史や「なぜ蔵づくりの街並がいまも残っているのか?」など、班行動で現地を歩きながら勉強させていただいています。

社会科教育の掲示物
社会科教育の掲示物

また川口といえば鋳物の街として全国にも知られていますが、地元の鋳物工場にご協力いただいて3年生のときに鋳物工場の見学をさせていただきます。安全に配慮して全員ゴーグルを着用したうえで見学するのですが、川口ならではの貴重な体験だと思います。
見学した後に工場の方にご来校いただいて、アルミ鋳物の実演と鋳物の制作体験までしていただいています。校庭に道具一式を持ち込んでいただく大がかりな取り組みですが、子どもたち自身がお気に入りの型にアルミを流し込み作品を仕上げる鋳物体験は本校ならではの取り組みだと思います。

学校運営のあらゆる側面をサポートしてくれる「学校応援団」

――地域や保護者との連携についてお聞かせください。

本校には学校運営に協力してくださる保護者の皆さまをはじめ、工場見学を受入れてくださる鋳物工場や食育指導に協力をしてくださる地域の料理店など、駅前という環境と今の時代感覚からは想像できないほど地域と密接につながっている学校なんだということに気がつき驚かされました。
まず「学校応援団」という保護者を中心とした組織があって、学習のお手伝いや校外へ出る際の安全確保の付き添いなど、延べ人数で数えると相当数の方にご協力いただいています。「学校応援団」のなかには卒業生の保護者の方もいて、「得意分野なのでお手伝いしますよ!」と積極的に参加してくださる方もいます。

2010(平成22)年度に建替えられた校舎は広々としたオープンなつくり
2010(平成22)年度に建替えられた校舎は広々としたオープンなつくり

毎年5月の半ばくらいに「学校応援団募集のお知らせ」というお手紙をすべての保護者に向けてお渡ししているのですが、活動の内容は多岐に渡り、読み聞かせボランティアや家庭科のミシンかけ、音楽の授業のお手伝いや調理実習、英語活動、校外学習のときの安全確保のための付き添いなどさまざまです。

また「学校応援団」とは別に「あおぎり応援団」という組織もあるのですが、子どもたちからすればおじいちゃん、おばあちゃん世代の4名の方にご協力いただき、下校時の安全確保で見守り活動をしていただいています。雨の日も風の日も学校がある日は毎日活動をしてくださり、学校としても大変有り難く感謝しています。

子どもたちから「あおぎり応援団」の皆さまへのお礼のメッセージ
子どもたちから「あおぎり応援団」の皆さまへのお礼のメッセージ

さらに児童のお父さんが中心になって活動する「おやじの会」の活動も熱心で、7月の「そうめん流し」や、11月の最後の日曜日に開催する本のお祭り「本祭り」など、楽しい催しを企画してくださいます。

家庭科専科が配置された市内でも数少ない食育指導への取り組み

――食育指導の取り組みについてもお聞かせください。

本校のホームページにも「本町小の食育」として食育指導の取り組みについて詳しく取り上げていますが、本校は家庭科専科を配置している市内でも数少ない学校のひとつで、栄養教諭の先生をはじめ各学年に1名いる計7名の先生がチーム食育部として食育指導を進めています。
具体的な取り組みとしては、“ひとり調理実習”というのを実践しているのですが、献立を考えるところから材料を用意して、食材を切ったり、焼いたり、煮たりして調理する過程をすべてひとりで行います。
調理実習では班を編成して複数名で協力してひとつの料理を仕上げるのが一般的ですが、なかには一度も包丁を持たずに卒業してしまう生徒もいますし、最初から最後まで全部ひとりでやりきる調理実習に取り組んでいます。

広々としたランチルーム
広々としたランチルーム

たとえばテーマを設けて「じゃがいもを使った料理」とすれば、ポテトサラダを作ったり、マッシュポテトを作ってみたり、自分で考案した献立に説明を加え、写真とともに「私の料理実践」としてランチルームの前に掲示しています。
本校の食育は知識を深める座学もそうですが実践力をより重視していて、自分で献立を考えてひとりで作れる力を6年生で結実させることを目標にしています。子どもたちにも「卒業するときには誰でも簡単な料理は作れるようになろうね」と伝えています。

「私の料理実践」の掲示
「私の料理実践」の掲示

また本校の食育指導にご理解のある地元の料理店にもご協力をいただいており、5年生の総合学習で「日本の食を調べよう」というテーマがありまして、出汁のとり方や和包丁と洋包丁の違いについて学んだり、和食ならではの切り方を披露いただいたりとさまざまなお話をしていただきます。また給食のメニューを一緒になって考えてくださったりすることもあり大変助かっています。

“連携協力校”として幼・小・中の一貫教育に取り組む「舟戸学園」とともに

――幼小中の連携について、具体的にどのような活動を行っているのでしょうか?

川口市には幼・小・中の一貫教育に取り組む通称「舟戸(ふなと)学園」と呼ばれる場所があり、「舟戸幼稚園」「舟戸小学校」「南中学校」の幼小中の学校がひとつの敷地内に設置されています。
本校も「南中学校」の学区域に指定されているため、“連携協力校”というかたちで「舟戸学園」が実践している幼小中の連携に交えていただいているという状況です。
具体的な活動としては、夏休みを利用して小学校でステップアップ教室という補充授業を開催し、そこに中学生が来てくれてそれぞれの学年の課題について教えてくれるというものです。
また2学期の半ばくらいに本校の6年生が部活動の見学で南中に行かせてもらったり、金管バンドは南中の吹奏楽部の練習に参加させていただく機会もあります。

あたたかい目で子どもたちを見守ってくれる地域の魅力

――学校周辺(通学区)の地域の魅力をお聞かせください。

この地域の魅力は、タワーマンションがそびえる駅前の都会的な地域ではあるのですが、新しく移り住んできた新住民の方だけではなく、親子3代、4代で本校出身というご家庭も多く、昔からのつながりも大切にする地域だと思います。
地域の方があたたかい眼差しで子どもたちを見守ってくれていることを感じますし、褒めるだけではなく、子どもたちの行動でちょっと気になることがあれば注意してくださったり、学校に「あれは危ないよ」とか「あれはまずいよね」とかきちっと伝えてくださいます。広い意味で子どもたちを育ててくださる良い地域だなと思います。

校外に向けた掲示から地域との密接さがわかる
校外に向けた掲示から地域との密接さがわかる

川口市立本町小学校 関口 景子校長
川口市立本町小学校 関口 景子校長

川口市立本町小学校

校長 関口 景子先生
所在地:埼玉県川口市本町2-4-6
URL:http://www.sch.kawaguchi.saitama.jp/honcho-e/
※この情報は2017(平成29)年11月時点のものです。

学校運営をあらゆる側面からサポートする、地域のあたたかい眼差しに見守られた「川口市立本町小学校」
所在地:埼玉県川口市本町2-4-6 
電話番号:048-222-2101
http://www.sch.kawaguchi.saitama.jp/honc..