地元の魅力と街の変化を活かし国分寺を盛り上げる/「国分寺駅南口商店会」会長 松本栄作さん
「国分寺」駅周辺には北口側、南口側にそれぞれ長い歴史を持つ商店街が広がっている。その中でも南口は「国分寺駅南口商店会」として広範囲の商店がひとつにまとまり、国分寺で最大の商店街として知られてきた。 夏の「納涼盆踊り大会」や、冬の「チャリティライブ」など、数々のイベントを主催しているほか、 地元のJAや大学と連携し、ユニークな取り組みにも協力して、国分寺の街を盛り上げている。
今回はこの「国分寺駅南口商店会」の会長である松本栄作さんのお店「天松」を訪ね、商店会の特徴と、国分寺の街の魅力についてお話を伺った。
約140店が加盟する国分寺を代表する商店街
――「国分寺駅南口商店会」の歴史についてお教えください
松本さん:私は「天松」の三代目ですが、二代目の時に商店会ができたと聞いているので、おそらく70年くらいの歴史があると思います。うちは先々代、祖父の時代に国分寺に来て、はじめは理髪業を営んていました。その当時は、南口にほとんど店はなくて、手つかずの土地が広がっていたそうです。それが戦後になって商店街ができ、店も増えていったんです。北口では、もう少し先に商店街ができていたようです。
南口商店会は現在約140会員ほどが加盟しています。北口の商店会が合併して法人化を進めているので、今は北口のほうが大きな商店街になりましたが、もともとは南口商店会が国分寺市内でいちばん大きな、店舗数の多い商店街でした。
松本さん:また、1989(平成元)年に駅ビルがオープンして、そこには「セレオ」と「マルイ」が入っているんですが、 実は、そちらも南口商店会の会員です。これも2店舗というカウントなので、140会員ということになっていますが、実際はそちらのテナントの数も入れると相当な数になると思います。
こういった、大型店と一緒にやっている商店街というのも、特徴かもしれません。大型店が出店するとなると、シャッター商店街になってしまうんじゃないかと心配する風潮があると思うんですが、私たちは「一緒に手を組んでやりましょう」というスタンスでやってきて、すごくいい関係ができていると思っています。
街の四季を盛り上げる2つの大きなイベント
――「納涼盆踊り」と「チャリティライブ」について、詳しくお教えください
松本さん:「納涼盆踊り」は毎年7月下旬に開催しています。2日間行うイベントで、1日あたり350食のお菓子を子どたちに用意していますが、両日とも、10分もかからないうちに終わってしまうほどの方に来場いただいています。子どもたちが毎年楽しみにしてくれているのはうれしいことですね。
「納涼盆踊り」会場には飲食のブースも7つくらい立ちますが、それも全て、地元の若手の飲食店が出店してくれているもので、手作り感があり、いい味が出せていると思います。国分寺市の商工会の女性部、JAの婦人部、地元の金融機関の方などが、踊り子さんとして毎年参加してくれていて、皆さんも地元の夏の風物詩として楽しみにしてくださっているようです。地元らしさとか手作り感を出しながら、毎年踊ってくださっています。この「納涼盆踊り」が、年間でいちばん大きなイベントになります。
松本さん:もうひとつ、「チャリティライブ」というイベントも開催しています。毎年12月23日に駅前の敷地を借りて行っていて、今年で11回目になります。地元の小学校、高校性、大学生など、全部で5、6団体の合唱団やバンドなどに演奏を披露してもらっていますが、当然「チャリティ」ですから、募金を募ることが目的になっています。集まったお金は国分寺の社会福祉協議会を通じて、災害の被災者に寄付しています。最初のうちは「何かやってるの?」くらいの反応だったのですが、最近は「今年もやっているのね」という感じで、足をとめて見ていただける方が増えています。
地域で連携・協力して国分寺を盛り上げる
―このほか、商工会として地域のほかの組織や一般の人々と連携している取り組みはありますか?
松本さん:やはり地元あっての商店街だと思っていますから、町会とはよく協力しています。たとえば、9月には本町の「八幡神社」で例大祭が行われますが、その時にもお手伝いをしていますし、北口の商店街と協力して国分寺の活性化のための企画もいろいろ行っています。
その企画のひとつが「ぶんじバル」です。これは、国分寺の飲食店をいろいろ食べ歩いてもらおうというもので、数枚綴りのチケットをあらかじめ買っていただいて、そのチケットで、各お店で飲食をしてもらう、というものです。これまでも何度か定期的に行っています。あとは、JAさんとの協力で、国分寺の野菜を使った「トマトフェスタ」や「うどフェスタ」というのも開催しました。
松本さん:最近特に盛り上がっているのは、商工会の主催で、「東京経済大学」の学生さんにお手伝いいただいている、「こくべじ」でしょうか。これは地元の食材を使ったメニューを地元の店で食べてもらって、地域を盛り上げていこう、という企画です。
これとは別に「こくめし」というものも「東京経済大学」と協力して行っていて、こちらは「テーマ食材」を決めて、それに沿って各店がオリジナルのメニューを作るという企画です。たとえば、前回のテーマは「お茶漬け」でしたが、店ごとにいろいろなメニューが考えられて、非常に面白い企画だと思いました。これも南北の商店街が協力している企画で、今後は国分寺全域に、いろいろなテーマで、広げていきたいなと思っています。
―いろいろなお店が集まっている南口商店会ですが、商店主さんはどんな方が多いという印象ですか?
松本さん:もちろん、まだまだ現役で活躍されている先輩方もたくさんいらっしゃいますが、飲食に限らずいろいろな業態で、20代や30代の若い事業主の方の店が増えてきています。とくにこの数年で、すごく若返りをしているな、と感じています。
新たな住民も増加する中で、変わらない街の良さを継承する
―松本さんは生まれも育ちも国分寺ということですが、国分寺の「昔から変わらない魅力」と、「新しく生まれた魅力」について、それぞれ、どのようにお感じですか?
松本さん:変わらない魅力では、緑の多さですね。国分寺市は「緑の街」とも言われていて、都内では練馬に次いで農地の割合が多いところらしいのですが、確かに、商業エリアの駅周辺からほんの5分も歩けば田畑もあるんです。そのギャップが面白いですよね。国分寺は地元の農家さんが頑張っていますし、直売所も色々なところにあり、地元の新鮮で安心な食材が気軽に手に入る環境は魅力的だと思います。
北口で行われた再開発によって、新しい駅前の姿が生まれ人口も急増しました。それにともなって南口でも街を歩く人が増えて、今後どれぐらい経済効果があるかはまだ分かりませんけれども、少なくとも新しい賑わいが既に生まれてきていると感じます。
―駅前の大規模な再開発で、駅の南北を結ぶ自由通路もできたことによって、人の流れが変わったと感じますか?
松本さん:南口側でも、商店街を歩く人が増えていると感じます。大きな変化としては、以前よりも海外のお客さんにも多く来店いただくようになりました。そういう変化は肌で感じています。再開発で今までと異なる世代やライフスタイルの人たちも住まれるようになって、街を歩く人々の雰囲気にも多様性を感じますね。
賑わう駅に隣接する強みを活かし、「国分寺の自然と文化の玄関口」を目指したい
―他のエリアにはない、国分寺ならではの個性や魅力とはどのような点でしょうか?
松本さん:先ほども触れましたが、国分寺は「緑の街」なので、野菜などの農畜産物が今も作られているんです。それがいちばんの個性だと思います。国分寺市が主となって、JA、商工会、観光協会と一緒になって取り組んでいる「こくベジ」については、国分寺で始まって、今はまわりの国立、府中、小金井、小平などにも広がってきていますし、この取り組みを通して、新しい「農と商のつながり」や、「農と福祉の連携」といったものが生まれてきていると思っています。
そういう、ひとつのものから、いろんな広がりが生まれているのが、国分寺らしさであり、面白いところだと思いますので、ほかの「ぶんじバル」や「こくめし」も、いずれ輪が広がっていけばいいなと思っています。
今後、国分寺がどのような街になってほしい、していきたいと思いますか?
松本さん:「国分寺駅南口商店会」としては、駅前には「殿ヶ谷戸庭園」がありますし、ちょっと坂の下に行けば「お鷹のみち」もあって、そこを通って「武蔵国分寺跡」にも行けますから、この「南口商店会」を“国分寺の自然と文化の玄関口”として、いろんな方面にアピールしながら、商店街を盛り上げていきたいと思っています。
また、「国分寺」駅はJR線と西武線が通り、大変便利で、乗降客数も多い駅なんです。そうした人の流れを回遊させ、駅だけでなく駅周辺の街にももっと足を運んでもらうことに重点を置いて、地域を盛り上げていきたいです!
国分寺駅南口商店会
会長 松本栄作さん(日本料理店松 店主)
国分寺市商工会:http://sci-kokubunji.jp/
こくベジ :http://www.kokuvege.jp/
ぶんじバル:https://bunjibal.com/
こくめし:https://twitter.com/kokumeshi_tku
※この情報は2019(令和元)年9月時点のものです。
地元の魅力と街の変化を活かし国分寺を盛り上げる/「国分寺駅南口商店会」会長 松本栄作さん
所在地:東京都国分寺市南町3
http://kokubunji.shop-info.com/10/