まだまだ進化する「小杉駅周辺地区」と大規模土地利用転換が注目の「西加瀬地区」/川崎市まちづくり局
川崎市中原区では、1990年代からスタートし、引き続き大規模な再開発やまちの整備事業が進行し、今後のさらなる発展が期待される「武蔵小杉」駅周辺エリアに加え、2017(平成29)年に三菱ふそうトラック・バス工場敷地の約10ヘクタールの土地が大和ハウス工業に売却された「西加瀬地区」における大規模な土地利用転換計画も注目されています。
そこで今回、川崎市役所まちづくり局を訪ね、「小杉駅周辺地区」を担当する拠点整備推進室・担当課長の武藤さんと、「西加瀬地区」を担当する地域整備推進課・課長の小池さんに、詳しくお話をお聞きしました。
「小杉駅周辺地区のまちづくり」のこれまで
――まず、「小杉駅周辺地区」について再開発の経緯や現在までの進行状況について改めて教えて頂けますでしょうか?
拠点整備推進室 武藤さん:このエリアのまちづくり構想については、40年程前から進められてきたものです。今でこそ交通の要所である武蔵小杉エリアですが、かつての小杉駅周辺一帯には、戦前から集積した企業の大規模なグラウンドや工場などが多くありました。1990年代に入り、それらが郊外に移転していく流れとなり、駅周辺に大規模な土地が空くことになったため、これらの土地を適切に有効活用すべく、川崎市が「都市計画マスタープラン」に基づき計画的なまちづくりを行うことになったのです。 もちろん現在の用途地域において、民間事業者が独自の開発をすることは可能ですが、各土地をそれぞれの思いや方針で開発を行っていくと、駅周辺の街としての発展の足並みがバラけてしまうため、地区計画などを定め計画的なまちづくりを誘導することで、民間事業と、周辺道路や公共施設、駅前広場なども併せた開発・整備を行ってきました。
――「小杉駅周辺地区のまちづくり」のコンセプトとはどのようなものなのでしょう?
武藤さん:「武蔵小杉」駅周辺を川崎市の「広域拠点」の一つとして位置づけ、玄関口としての役割、都市拠点としての役割を果たすために、“歩いて楽しいまち”、“環境共生型のまち”、“豊かに暮らせるまち”の3つを基本コンセプトとしています。簡潔に言うと、公共施設を再整備・改善し、商業・業務・文化交流・医療・文教・都市型居住など、街の様々な機能を駅周辺に集積させることで、“歩いて暮らせるコンパクトな街”にするというものです。
都市計画に基づいた大規模な再開発・整備がもたらした、街の変化や新たな魅力
――現在、まちづくりの経過・進捗はどのようなフェーズになるのでしょうか?
武藤さん:着工が早かった駅の南側エリアの開発事業は概ね完了し、複数の高層マンションや商業施設などが開業し、周辺の生活利便や賑わいも定着してきました。現在は、北側エリアで高度医療・福祉施設や教育施設、住宅の開発や、駅前広場の整備などが進んでいます。
――これまでの事業によるエリアの発展や変化はどのように評価されていますか?
武藤さん:単純に「今だけ」いい街をつくるのであれば、流行りものを取り揃えたりすることでいいかもしれませんが、まちづくりは持続性があるものではないと意味がないと考えています。その点で、行政、商業、業務、医療、空地などの都市機能がバランスよくとれた街が形成されていることは評価できると思いますし、民間の再開発事業に併せて、段階的・計画的に道路などの都市基盤を整備したり、公共性の高い土地利用の整備などもできていると思います。
具体的な数値を挙げますと、2005(平成17)年と、2018(平成30)年の比較で、小杉駅周辺地区の延床面積が、33万㎡から130万㎡と、約4倍に増加しています。これについて、住宅が増えただけではないかと推測をされる方も多いのですが、実際は住宅は約半分程度で、商業や業務、公共施設などが残りの半分を締めており、バランスの良い配置が成されていると言えるかと思います。また、同年比較で、商業等の事業所数は約30%増加、従業員数は約50%増加。駅乗車人員も7.9万人程増加しています。現在同地区の居住人口は1.8万人増加しているので、居住者の駅利用だけでなく、街の魅力が向上したため外からの利用者が呼び込まれていると考えられます。商業の発展、賑わいのある街の形成という面でも川崎市を牽引する進化を遂げていると言えるのではないでしょうか。
持続性と競争力のある街へ。交通混雑の緩和やソフト面の充実など、まちづくりも新たなフェーズへ
――今後のまちづくりの課題や対策についてはいかがでしょう?
武藤さん:利用者増加による、「武蔵小杉」駅や周辺の混雑に対しては、JR東日本と一緒に協議を行いながら改善に努めています。具体的には、現在、JR横須賀線のホーム増設を、2023(令和5)年度に使用開始予定で進めております。また、ホーム増設後、新改札口の開設を計画しており、駅構内及び駅周辺の道などの混雑分散・緩和を図ります。東急「武蔵小杉」駅南口の公園「こすぎコアパーク」について、通行利便性と広場自体の魅力向上のための再整備計画も進行中です。また、子育て世帯の居住者のさらなる増加に備え、新しい大規模マンション建設の際には保育施設も設置してもらうなど、民間事業者の力を借りながら保育環境の整備も行っていますし、多世代が住みやすい・利用しやすい街にしていきたいと思います。
武藤さん:ハード面でも街の形成はかなり進んできていますので、NPO法人の小杉駅周辺エリアマネジメントや、元々の住民と新しい住民との触れ合いの機会、イベントなど、コミュニティ施策をはじめとするソフト面の施策を、他事業部と一緒に知恵を絞って推進していきたいです。先ほども申し上げましたが、民間の事業は単発で完結する部分もありますが、我々行政が関わる意味としては、いかに持続性のある街のできるかということが大きいです。日本全国としては人口が減っていく中、住みやすい街としての都市間競争に生き残れるよう、コンパクトな地の利を活かして、小さいなかでのソフト面も含めた充実、成熟と持続を図っていきたいと思います。
川崎市中原区で新たに始動した、約10ヘクタールの大規模な土地利用転換「西加瀬地区のまちづくり」
――続いて、「西加瀬地区」についてお話を伺います。まずはプロジェクトの概要を教えて頂けますでしょうか?
地域整備推進課・課長 小池さん:「西加瀬地区」は小杉駅周辺地区のように、川崎市が一から誘導したまちづくりという位置づけではありませんが、これだけ広大な土地の利用に当たっては、民間事業者だけで計画を進めるのではなく、我々行政も地域の状況などを踏まえた土地利用を誘導していこうという形で現在進行しています。基本的には民間事業者が土地利用をするなかで、付加価値としてどういったものを生み出せるかということを考え、誘導を図っています。
現在の状況としては、事業者である「武蔵小杉特定目的会社(大和ハウス工業が設立した特定目的会社)から土地利用の基本方針として、「地域と共存する物流施設」が示されています。具体的に入るテナントや、地域共存施設がどのようなものになるのかなどは、これから決めていくことになりますが、建物等に関する環境アセスメントの手続きが始まったところです。
川崎市としては、土地利用誘導にあたり「基本的な考え方」を策定し、「1.新たな産業創出の促進」「2.地域の活性化・魅力の向上」「3.憩い・潤いの創出、地域交流の促進」「4.地域の防災力の向上」「5.周辺環境との調和」という視点を挙げさせていただいています。もちろん事業性というところが前提にあるとは思いますが、これに即した形でどこまで地域貢献ができるかというポイントでしっかり話をして進めさせていただいております。
地域の声も取り入れ、できるだけオープンな活用を。地域の防災機能も設置。
小池さん:例えば「地域共存施設」については、単に物流施設がつくられますということだと、地域に開放されずに事業者だけが利用する施設が整備されるだけだと思いますが、現状、利便施設なども比較的少ないエリアに位置するので、周辺エリアの利便性向上にも資する店舗や生活サービス等を整備してくださいという話をしています。また、屋上のスポーツ施設についても具体的な運用方法などはまだ決まっていませんが、地域の方々に利用していただけるものを、とお願いしています。
1,000平方メートル、5,000平方メートルと、かなり大きな2つの「公園広場」の作り込みについては、どういった公園がいいのか地域の声を聞きながら事業者に整備を進めていただく予定です。市としては、できるだけ地域にオープンな空間になるように誘導していくことと、周辺地域の一時的な避難場所等となるよう、マンホールトイレやかまどベンチ等の防災施設もしつらえることを考えています。現時点では、2024(令和6)年度くらいを目途に施設の供用が開始されるスケジュールを想定しています。
川崎市まちづくり局
小杉駅周辺整備推進 担当課長 武藤さん、
地域整備推進課 課長 小池さん
※この情報は2020(令和2年)年1月時点のものです。
まだまだ進化する「小杉駅周辺地区」と大規模土地利用転換が注目の「西加瀬地区」/川崎市まちづくり局
所在地:神奈川県川崎市川崎区宮本町1