“住みたくなるまち”を目指して街の魅力を発信する/板橋区役所 いたばし魅力発信担当課 榎本一郎さん
東京都の北西に位置する板橋区は、人口およそ57万人で、都心に近い良好な住宅地が多い地域として知られている。そんな板橋区が現在目指しているのが「東京で一番住みたくなるまち」と評価される区の実現だ。これは現在4期目となる坂本健(たけし)区長が陣頭指揮をとり、「若い世代に選ばれ魅力あるまち」「健康でいきいきといつまでも暮らせるまち」「スポーツと文化でにぎわう安心なまち」「未来に向けた人づくり・まちづくり」の4つのテーマに沿って、施策を進めているものである。
それと並行して、区の魅力を発信する「シティプロモーション」の戦略にも注力。区役所内に「いたばし魅力発信担当課長」を置き、区内外の人々に向けて板橋区の魅力や、街の最新情報などを積極的に発信している。
今回は、そんな板橋区の未来予想図について、いたばし魅力発信担当課長の榎本一郎さんに詳しくお話を伺った。
“住みたくなるまち”を目指して、多くの人々に向けたプロモーション活動を展開!
――「東京で一番住みたくなるまち板橋」を掲げて、さまざまな方向性から地域プロモーションに取り組んでいらっしゃいますね。その狙いや施策などについてお聞かせください。
榎本さん:「東京で一番住みたくなるまち板橋」というスローガンには、生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人々)の定住を促進したいという狙いが含まれています。これは、今後の日本の超高齢化社会に適応しつつ、区政の持続的発展を可能にするための戦略的な基本方針とも言えます。今まで以上に生産年齢人口が増えれば、区の財政も安定しますので、私達行政も自分たちの役割をしっかりと果たし、板橋区民の皆さんの暮らしもより良くなっていくという好循環を未来につないでいこう、という狙いです。
――「いたばし魅力発信担当課長」は、そういった区の目標のためにどのような面で活動されていらっしゃるのでしょうか?
榎本さん:私どもは区のスローガンのもと、何をすれば「東京で一番住みたくなるまち」になるだろう、ということを具体的に考えている部署になります。まずは、より多くの方に板橋区へ興味・関心をもってもらうことが必要ですので、「いたばし未来創造プラン」という基本構想のもと、目指すべき都市像として「魅力創造発信都市」「安心安全環境都市」という方向性を示し、板橋区の強みや魅力を戦略的にアピールしています。
いたばし魅力発信担当課長が現在担当しているのは、主に「内部プロモーション」と呼ばれるものになります。ここでいう“内部”というのは区の職員たちのことを指しますが、まずは職員が板橋区の魅力を知り尽くさなければ、対外的に板橋区の魅力を発信して伝えることもできないという考え方のもと、職員のプロモーションスキルを向上させて、区全体の発信力を高めるような取り組みをしています。
具体例としては、「板橋」という土地のイメージが統一した形でブランディングされるように、区の情報発信のための広報物に掲載するロゴマーク使用のルール化などが挙げられます。これ以外にも様々な内部プロモーションの強化・改善をしていますし、板橋区民の皆さんに対しても、板橋のいいところを今以上に知ってもらって、“愛着”と“誇り”を持って接してもらいたいということで、様々なイベントにおいてPR活動をしています。
――「魅力創造発信都市」「安心・安全環境都市」というワードが出てきましたが、具体的にはそれぞれどのような街の姿を構想されているのでしょうか?
榎本さん:あらゆる地域には各々、「個性」「にぎわい」「強み」といったものがあるわけですが、板橋区の場合は、多彩な魅力やポテンシャルがあるにも関わらず、これまでこれらについて周囲に十分に発信できていなかったんですね。ですから「魅力創造発信都市」とは、そういった面を創ったり、伸ばしたり、板橋区の魅力をもっと発信し、より多くの方に知っていただき、“選ばれるまち”を目指していこうとしています。
「安心・安全環境都市」については、言葉通りですが、現在板橋区に住まわれている方に「板橋に住んでいてよかった」「いいところだからずっと住み続けたい」と言っていただけるように、安全や環境面にもさらに力を入れて取り組んでいこうというものです。この二つの柱が基本構想の中で軸として決まっていますので、私どももそれに沿って様々な戦略を立てているわけです。
―板橋区民の皆さんが持つ、区に対するイメージアップも図られているんですね。
榎本さん:そうなんです。板橋区には「突出した特徴がないのでは?」と思われている方もいらっしゃるかと思うのですが、これは裏を返せばあらゆる点で「住みやすい」と言えると思うのです。中山道の1番目の宿場町の風情が残る街の文化、石神井川の桜並木やユニークな「こども動物園」などの自然・公園、区内に100カ所もの商店街がある買い物利便、区独自の支援も充実した子育て環境、全国トップクラスの災害対応力などの安全・安心・・・などバランスのとれている住みやすい環境を、大きな魅力と捉えていただけるように、広報活動に取り組んでいます。
――探してみれば、いろんな魅力があふれている板橋区なんですね。そんな知られざる魅力を発信するために、「観光大使」としていろいろな有名人の方が板橋区をアピールしていますよね。
榎本さん:そうなんです。板橋区では観光大使を俳優の杉浦太陽さんと腹話術師のいっこく堂さんにお願いしていまして、色々な場面で協力してくださっています。ほかにも「スポーツ大使」ということで様々なチームや個人の方にご支援をいただいていまして、ボクシングの村田諒太さん、フリースタイルフットボールの徳田耕太郎さんといった方をはじめ、水泳や柔道などの競技でメダルを取られた方々や、小豆沢体育館をホームにしていたバスケットボールチームの「東京エクセレンス」、全日本レスリングの女子チームなど、板橋区とゆかりのある方々にスポーツ大使になっていただいています。
そういった発信力のある方々が情報発信を行うと、やはり区民の皆さんも関心を持って見てくださるんです。そうした活動の延長で、区民の方々皆様にも自ら板橋区をアピールしていただけるようになるといいな、と思っています。
身近にある街の資産や魅力を改めて見つめ直し、発信する
―最近板橋本町付近にあった「板橋宿」の魅力を存分にアピールするため、商店会と一緒に進めている活動があると聞きました。こちらについてご紹介いただけますか?
榎本さん:板橋宿は江戸時代に「江戸四宿」(えどししゅく)のひとつとして栄えた宿場です。せっかくの歴史的な価値ある地域を、もっとしっかりとアピールしていくべきなのではないか、ということで、2019(令和元)年現在、地元の商店街と協力しながらテコ入れをしている最中です。
まさに今動き出しているものとしては、仲宿商店街にある「旧板五米店」のリノベーションです。この米店は1914(大正3)年に建てられたもので、宿場町が栄えた当時の歴史を伝える風貌とレンガの立派な壁が素晴らしい建築物なんです。こちらにリノベーションを施して、カフェやギャラリーを備えた、板橋宿の拠点施設にしたいと考えています。こちらは区の指定文化財への登録も予定されており、将来的には国の指定にもなれるように、しっかりと地域の方々と連携していきたいと思っています。
また、そういった拠点ができれば、そこを中心にさまざまな場所に足を運ぶ動線ができると思うんです。例えば、石神井川沿いの場所に「板橋区史跡公園(仮称)」を整備していますが、こうした公園や、石神井川沿いの桜並木など、魅力的なスポットを巡っていただくにはシェアサイクルも便利だろうということで、事業者との調整なども始めているところです。ほかにも、板橋宿の商店街の中に小さな公園があるんですが、この公園の一角にある倉庫の中に椅子やテーブルを常備して、気軽にイベント会場として使えるように改善したり、ということも考えています。ですので、板橋区本町付近の変化にもぜひ注目していただきたいですね。
また、JRの「板橋」駅前に新しいビルが建てられる計画があり、ここにも板橋区の新しい拠点施設が入ってくるかと思いますので、こういった拠点と拠点がつながって、新しい板橋の連帯というか、これまでになかった方法で街の魅力を味わう形が生まれてくるかと思います。そういった部分にもぜひご期待ください。
―板橋の歴史的資産を、あらためて見直して発信していこうという動きが生まれているんですね。これからが楽しみです!
榎本さん:私たちはこれまで、歴史ある「板橋宿」をはじめ、既存の資産や魅力が身近にあることに慣れてしまっていたのかもしれませんね。それが最近、見直される風潮になり、先述の「旧板五米店」以外にも古い建物のリノベーションなどの動きが出てきています。これからも、もっと「板橋区が持っている魅力」を掘り起こして、皆さんにお伝えして、板橋区民であることに“愛着”と“誇り”を感じていただけるように、頑張っていきたいと思っています!
あらゆる要素がバランスよく揃う住環境を享受できる街
―最後に、生粋の”板橋っ子”という榎本さんから見た板橋の魅力を教えて頂けますか?
榎本さん:まず、板橋は交通の便がいいですよ。都営地下鉄三田線と東武東上線に挟まれるような位置に板橋区があるので、区内でしたらどの地点からでも歩いて20分以内に駅があります。それもあって、徒歩圏内でも十分、さらに自転車もあれば快適に暮らせます。バス便の本数なども多くて非常に便利です。
また、子育てに関しても充実しています。私は昔、児童館の館長をしていたことがあるのですが、現在の児童館(CAP’S)は乳幼児向けの支援サービスを充実させており、小さなお子さんを連れた保護者の方の利用がとても多いと聞いています。また、板橋区内の全ての公立小学校では、登録すれば放課後に午後7時まで過ごせる環境が整えられました(放課後対策事業 あいキッズ)。このようにきちんと年代ごとに住み分けができ、のびのびと安心して子どもたちが過ごせるようになったことは良かったと思います。
小中学校の公教育に関しても、板橋区ではここ数年でいくつかの学校の校舎を建て直して、時代に合わせて教育の構造や配置を工夫したりもしていますし、教育長も非常に熱心な方なので、さまざまな手を打って(板橋区ならではの)個性を出そうとしていますから、そういった意味でも、教育環境も恵まれているではないかと思います。
福祉については、もともと板橋は福祉費の割合が高い区として知られており、自ずと「福祉が充実している」ということが言えるかと思います。
―最後に、板橋区に新たに住む・住んでみたいという方に向けてメッセージをお願いします!
榎本さん:先ほども申し上げた通り、板橋区はあらゆる要素がバランスよく揃っている地域なので、住んでみれば「あ、いいな!」と思っていただけるような魅力がたくさんあると思います。交通の便も、子育ての面も、教育も、福祉も、何から何まで”いいとこどり”ができる、非常に住みやすい街だと思います。来て、住んでみて、初めてわかる特徴でもあると思いますから、まずは実際に板橋区に足を運んでもらい、その良さを知っていただいたうえで、気に入っていただけると嬉しいです。
板橋区政策経営部 いたばし魅力発信担当課長 榎本一郎さん
所在地 :東京都板橋区板橋2-66-1
電話番号:03-3964-1111(代)
URL:http://www.city.itabashi.tokyo.jp
※この情報は2019(令和元)年9月時点のものです。
“住みたくなるまち”を目指して街の魅力を発信する/板橋区役所 いたばし魅力発信担当課 榎本一郎さん
所在地:東京都板橋区板橋2-66-1
電話番号:03-3964-1111
開庁時間:8:30~17:00(火曜日 ~19:00、第2日曜日9:00~17:00)※火曜日17:00〜19:00・第2日曜日は一部の窓口を開庁
閉庁日:土・日曜日、祝日、年末年始(12/29~1/3) ※休日・夜間サービス窓口を除く
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/