湯本校長先生インタビュー

小学校と中学校の“連携”をさらに推進する“施設一体型”小中連携校の現在/江東区立有明中学校


2011(平成23)年4月の開校より6年目を迎え“施設一体型”の小中連携校として、さらなる“連携”を推し進める「江東区立有明中学校」。平成28・29年度の江東区教育委員会「研究開発校」にも指定され、ひとつ屋根の下の「江東区立有明小学校」とともに“小中連携教育”のあり方にまつわる研究が行われています。今回は、品川区で“施設一体型”の小中一貫教育にも携わり、2016(平成28)年4月に校長として着任した湯本敬三先生に、“施設一体型”の小中連携校として運営されている学校の特色や取り組みについてお話を伺いました。

江東区初の“施設一体型”の小中連携校として平成23年4月に開校

「江東区立有明中学校(以下、有明中学校)」は、江東区初の“施設一体型”の小中連携校として「江東区立有明小学校(以下、有明小学校)」とともに平成23年4月に開校しました。新設校だったため開校当初の3年生は1学級のみだったようですが、現在は各学年4学級に加え、特別支援学級も3学級あり、423名の生徒が在籍しています。

今年度の新1年生は151名で、「有明小学校」からの進学者はもちろん、近くの「東雲小学校」や、学校選択制を利用して辰巳や豊洲のほうから通学している子どももいて、10校近くもの小学校から進学の希望がありました。

「学び続ける人」「心豊かで、思いやりの有る人」「明るく、健やかな人」を開校以来変わらぬ教育目標として目指しており、「有明小学校」と同じ教育目標のもと、9年間を通して子どもたちを育てていくと言う基本コンセプトで学校運営を行っています。

江東区立有明中学校
江東区立有明中学校

湯本校長先生
湯本校長先生

有明中学校の教育目標
有明中学校の教育目標

“連携教育”を推進する“アクティブラーニング”への取り組み

今年度は“施設一体型”の小中連携校として6年目を迎える時期にあたり、“連携”をさらに推し進めるため“連携教育の充実”に重点を置いた取り組みを行っています。

具体的な取り組みとしては、各教科における“アクティブラーニング”を引き続き行い、子どもたちの主体的、能動的に学ぶ意欲を高め、学ぶ姿勢や態度を身につけさせたいと考えています。平成28・29年度の2年間の取り組みとして、江東区教育委員会の「研究開発校」に指定されたこともあり、「有明小学校」とともに“小中連携教育”に取り組んで参ります。

本校における研究の成果は、2018(平成30)年4月に開校する予定の江東区初の“小中一貫校”「(仮称)第二有明小・中学校」にも参考事例として生かされる予定で、それぞれ独立した施設のあいだで連携教育を行っている区内の他の小学校、中学校にとっても多様化する教育ニーズに応え得るひとつの指針となるよう研究を進めています。

施設一体型の教育を行う
施設一体型の教育を行う

有明小学校との連携を取っている
有明小学校との連携を取っている

“施設一体型”の小中連携校と“小中一貫校”の違いとは?

今後、小学校から中学校までの義務教育を一貫して行う「(仮称)第二有明小・中学校」のような“小中一貫校”が新設されると、おそらく本校のような“施設一体型”の小中連携校との違いに関心を抱かれる保護者や地域の方も増えて来ると思います。そもそも“施設一体型”の小中連携校として新設された本校には、中学校には中学校の教育課程、小学校には小学校の教育課程がそれぞれあり、学校の運営組織もそれぞれ異なるなかで“連携”が図られています。

江東区の他の小学校、中学校でも同様に、中学校の教員が小学校に出向いて授業を行う“乗り入れ授業”を行うなどして小中連携に取り組んでいますが、“施設一体型”の本校では、小学校と中学校の物理的な距離が近いためコミュニケーションがよりスムースに行われているというのが特徴だと思います。いわゆる小学校文化、中学校文化と呼ばれるような、異なる文化でそれぞれ教育を行って来た教員同士が出会うとおたがいの意識も変わり、おたがいの文化を知ることによって理解が深められていきます。

木が使われ明るい廊下と教室
木が使われ明るい廊下と教室

小中連携のこの取り組みは、小学生が中学一年生になったときに、新しい環境に馴染めないことから不登校になったり、いじめが急増したりする、いわゆる“中1ギャップ”の解消にも効果的で、一昨年に研究発表としてまとめられた報告では、「有明小学校」から「有明中学校」へ進学した子どものなかで、不登校になった生徒がひとりもいないことが成果のひとつとして挙げられています。

今回の「研究開発校」としての取り組みでは、より具体的な手だてを示すことが求められており、私個人の想いとしては、小学校の先生が教え子の様子を見に中学校のクラスをふらっと訪れたり、小学校の先生が中学校のクラスで“乗り入れ授業”を行えるような、「ちょっと行って来ます!」という感覚でおたがいの交流が育まれることに期待しています。

※「江東区立(仮称)第二有明小・中学校」は「江東区立有明西学園」に名称変更し、2018(平成30)年4月に開校しました。

今年で開校6年目
今年で開校6年目

様々な形で連携が図られている
様々な形で連携が図られている

様々な形で連携が図られている
様々な形で連携が図られている

地域のたくさんの目で子どもたちを見守り育てる恵まれた環境

“小中連携教育”に関する取り組みの他には、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えた計画的な取り組みは引き続き行っていきたいと思います。

競技の開催地に近く、全国各地から多くの人が集まることも予想され、有明地区全体にとっても情報発信の拠点となることは明らかです。アスリートを招いて講義をしていただいたり、国際理解を深める勉強会、マナー教室も充実させていきたいと考えています。また近隣に学校や教育機関が集まる環境を生かして、「東京有明医療大学」や「有明教育芸術短期大学」とも引き続き関係を深めて、地域や保護者はもちろん、さまざまな連携を通じて、たくさんの目で子どもたちを見守り、子どもの持っているチカラや才能を伸ばし、社会の一員として活躍できる人を育てていきたいと思います。

チームティーチングで柔道を教えてくださる「東京有明医療大学」の皆さんは、通常学級だけでなく特別学級もすべて見てくださる頼りになる存在で、本校の教員の育成にも役立っています。

また、三味線の指導にあたってくださっていた講師の先生が異動した後も、和楽器に精通したさまざまな専門家を招いてくださる「有明教育芸術短期大学」の音楽科の皆さまにもお世話になっており、大変恵まれた貴重な環境だと思います。

昨今の新しい取り組みとしては、有明地区のマンションの自治会が連携して発足した「有明マンション連合自治会」が企画・運営する「有明祭(ありあけまつり)」も本校の校庭で開催されるようになったばかりで、これまで無かった地域と学校とのつながりにも期待したいと思います。

地域との連携も図られている
地域との連携も図られている

特色のある勉強会や講義も開催している
特色のある勉強会や講義も開催している

これからどう発展するのか、未来に対する期待感にあふれた街

私はもともと江東区の市街地で生まれ育ち、門前仲町や深川で教鞭をとっていたこともあるのですが、この有明地区に足を運んだことはプライベートでもほとんどありませんでした。新橋からモノレールに乗ってこの地域をはじめて歩いたときは、車のディーラーや物流センターといった会社は目にしたものの、日々の生活に根ざしたいわゆるお店が無いことに驚き、どこをどう歩いて良いのかさえ分かりませんでした。

しかし、市街地とは対照的に広い土地があって、緑化された街並や、海が近い環境など、時間はかかるとは思いますが、これから新しい街ができるんだろうなという未来に対する期待感も大きく、これからどういうかたちで発展していくのかが楽しみな街です。

タワーマンションと有明中学校
タワーマンションと有明中学校

江東区立有明中学校

坂口栄二校長先生
所在地:東京都江東区有明2-10-1
電話番号:03-3527-8261
URL:http://ariake-chu.koto.ed.jp/
※この情報は2017(平成29)年3月時点のものです。

小学校と中学校の“連携”をさらに推進する“施設一体型”小中連携校の現在/江東区立有明中学校
所在地:東京都江東区有明2-10-1 
電話番号:03-3527-8261
http://ariake-chu.koto.ed.jp/