まちと自然のバランスを保ちながら発展を遂げる/日進市総合政策部企画政策課市政戦略係 犬飼さん
長い歴史や文化がありながらも、新しいまちへと変化している日進市。40年ほど前から人口が伸び続けているが、今後も住宅地が整備されていくことで、さらに人口は伸びていくでしょう。なぜ、日進市に人が集まるのか、また、まちがどのように変わり続けるのか、まちの魅力や行政の施策を日進市 総合政策部 企画政策課 市政戦略係の犬飼さんにお話を伺った。
人口増加への対応と「暮らしやすさ」が全国的な評価に
――日進市の特徴を教えてください。
犬飼さん:日進市は愛知県のほぼ中央にあり、丘陵地に形成されています。1958(昭和33)年に日進町となり、1994(平成6)年に日進市となりました。大きな特徴は2つあります。1つ目は住宅地が広がり、人口増加を続けていることです。名古屋市や豊田市のベッドタウンとして昭和40年代から急速に宅地開発が進み、1980(昭和55)年頃に4万人ほどだった人口が現在は9万人ほどと、40年間で2倍以上になっています。もともと農村地帯でしたが、土地区画整理が行われ、戸建てが建てられる環境に変化してきました。そのためか、若い方が多く転入されてきますが、本市は平均余命が男女とも長く、高齢で活躍されている方も多く、偏りなく、幅広い年齢の方がお住まいです。
2つ目は学園都市であることです。さまざまな学部の大学があり、本市に住まわれている学生さんも、通学されている学生さんも多くいます。こうした理由から、ベッドタウンではありますが、昼夜人口の差が大きくないという特徴もあります。
――「東洋経済」の「住みよさランキング2012年版」で、日進市は全国第9位、愛知県では第3位にランクインされていました。全国からみても、満足度が高い暮らしができるエリアと言えます。どのような部分が評価を受けていると考えられていますか。
犬飼さん:2012(平成24)年度の指標をみてみると、快適度と富裕度について高い評価をいただいています。さらに細かくみていくと、転出よりも転入される方が多く、また、新設住宅着工戸数が多いとの評価も受けています。つまり、転入されてくる方が戸建てを建てられたり、新しいマンションやアパートに転入されているということです。また、全国的にみても課税対象所得額が高く、そこが富裕度につながっているのではないかと考えています。
また、人口増加にどのような要因があるのかAIを活用して評価する「中部圏社会研究所」による「地域力 フロー指標」では、生活基盤とコミュニティに高い評価をいただき、愛知県内第2位となっています。
――市民から日進市についての意見などはありますでしょうか。
犬飼さん:2年に1度、無作為抽出で市民に「日進市市民意識調査」を行っており、この調査によると、転入された理由に「手ごろな価格の土地や住宅があった」「通学・通勤に便利」「自然環境に恵まれている」が挙げられています。本市で行われてきた住宅や公共施設の整備が、多くの方の希望に合ったのだと考えています。実際に暮らしてからも市民活動の支援など、ソフト面でも住環境を整えてきました。
まちにも近い、自然にも近い、バランスが取れた落ち着いた風景が広がるイメージが日進市の住み良さにつながっているのだと思います。
――人口増加が続いていますが、人口増のための取り組み、施策等をお聞かせください。
犬飼さん:人口増加に伴い、土地区画整備事業を行っていますが、未利用地もまだあるため、これから整備を計画している場所もあり、まだまだ住宅や必要な施設の建設が続いていく予定です。
転入される方は子育て世帯が多く、子育て支援の施策については常に意識をしています。幼稚園や保育園、小中学校の整備はもちろん、妊娠期から子育て期まで、切れ目のない支援を行っています。お子さんが小学生になってからも家族と関わりながら学べる市民講座なども実施しています。
何世代にもわたってお住まいの方もいる一方、転入されてきた方も多くなりました。新しいコミュニティとかつてからのコミュニティが混在しているような状態です。地域のみなさんがコミュニティに入りやすい工夫をし、協力しながらまちづくりができるように、わたしたちもお手伝いをしています。
本市では、全ての方が過ごしやすい日進市になるように、また、愛着と誇りをもっていただけるようにと、「日進市自治基本条例」を定めています。
――「日進市自治基本条例」とはどのような条例でしょうか?
犬飼さん:市内に居住する方はもちろん、通学されている学生さんや市内で働く方も市民として考えた市民主体の自治を推進する条例です。例えば、市民活動に関しては、「にぎわい交流館」の会議室やスペースを活動の場として貸し出したり、情報提供をしたり、補助金制度も設け、活発に活動していただけるよう支援しています。
――全国で策定されている「人口ビジョン・総合戦略」ですが、「日進市人口ビジョン・総合戦略」についてお聞かせください。
犬飼さん:日進市では3本柱として、「未来を担う次世代を支えるまちを創生する」、「健康長寿を支えるまちを創生する」、「大都市近郊における働きを支えるまちを創生する」を掲げています。
具体的には、子育て支援、生涯活躍ができる健康寿命のまちづくり、地域内での多様な働き方のそれぞれについて、施策を計画しています。「総合戦略」に関しては、全国的には第二期の計画期間に入っている時期ですが、本市は「日進市総合計画」との一体化に向けて、計画期間を一年延長し、2020(令和2)年までとしています。市の最上位計画「日進市総合計画」に沿って、さらに効率的かつ効果的な計画に変わっていく予定です。
また、現在の「人口ビジョン」では2060年まで人口が伸びるとしていますが、国立社会保障・人口問題研究所の最新の推計では、日本全体の出生率が下がると見込まれていることから、本市の人口増加率はもう少し緩やかになる方向で修正する予定です。それに伴い、少しでも人口が維持できるように、学業や就職で市外へ出られても、Uターンしていただけるような施策も考えていければと思います。まだ構想段階ですが、「企業型ふるさと納税」にも取り組み、市外企業との積極的な接触もしていきたいと考えています。
歴史が長く、民俗芸能などの文化が残る
――日進市にある歴史・文化の魅力について教えてください。
犬飼さん:歴史的なハイライトは奈良時代まで遡ります。この辺りは窯業が盛んで、猿投山西南麓古窯群(さなげやませいなんろくこようぐん)として、窯跡がいくつもあります。当時は、灰釉(かいゆう)・緑釉陶器(りょくゆうとうき)が作られており、国内の最高級品として扱われていました。ここで磨かれた技術が瀬戸焼や常滑焼へ流れていったと考えられています。
ほかにも、桜の名所ともなっている「岩崎城」がありますが、ここは、小牧・長久手の戦いのターニングポイントとなった中入作戦の失敗につながった岩崎城の戦いが行われた場所です。岩崎城は公園として整備されており、イベントや歴史講座の開催も行っています。
昔ながらの行事が行われているのも特徴です。その一つが「オマント」と言われるもので、神社の例祭に着飾った馬を引き連れて奉納する行事です。この行事と合わせて若者による「棒の手」も行われています。また、一時期途絶えていた「お月見どろぼう」が地域の方の手によって、行われるようになっています。中秋の名月の日に、子どもたちが、お供物をこっそり持っていく行事です。転入者が多い地域ですが、昔ながらの風習や行事も大切にしています。
――ファミリーで楽しめる施設や観光施設などはありますか。
犬飼さん:先ほどの「岩崎城」をはじめ、自然とふれあえるレジャー施設「愛知牧場」、浅野祥雲氏が制作した親鸞聖人の塑像が配置された中で自然も楽しめる「五色園」、陶磁器や浮世絵が鑑賞できる「マスプロ美術館」、江戸時代の庄屋を見学できる「旧市川家住宅」、懐かしい車両が展示されている「レトロでんしゃ館」などがあります。自然、歴史、文化、さまざまなジャンルのレジャーを楽しんでいただけます。
市民の一員として活躍できる土壌
――アクセスの良さ、学習に専念できる環境の良さ、地元との連携が相まって大学が集結しています。学園都市としての日進市についてお聞かせください。
犬飼さん:名古屋市からのアクセスがよく、主要駅からスクールバスを出されている大学もあり、県外の方も多く通学しています。都市圏であるにも関わらず学習に集中できる環境が整っているほか、学生が多いため、交流や切磋琢磨しながら学べるところもメリットではないでしょうか。
――大学との関係はいかがでしょうか。
犬飼さん:日進市は大学連携を進めており、例えば、大学の図書館が市民の方に開放されていますし、生涯学習の一つとして市民講座を開催し、市民に学ぶ場を提供してくださっています。また、市の行事や障害者施設のイベントなどのボランティアに協力していただいているほか、オープンデータを利用しながらまちの魅力を発掘する「シビックパワーバトル」や、日進市総合計画の策定をするためのワークショップに学生さんにも参加していただき、市政に関わってくださっています。先ほども申しました「日進市自治基本条例」の通り、通学されている学生さんも「市民」として、一緒にまちづくりに参加していただいています。
赤池エリアの開発で、さらに進化する
――「日進赤池箕ノ手土地区画整理事業」が2015(平成27)年頃から実施され、プライムツリー赤池や日進赤池ヒルズなど、住宅が整備され、街が魅力的になりました。今後、赤池エリアのさらなる動きがあれば教えてください。
犬飼さん:現在、ショッピングモール「プライムツリー赤池」を中心に住宅地が整備されており、周辺の様子が大きく変わった、という印象です。直近では、大きな公園の整備が予定されていて、「日進赤池箕ノ手土地区画整理事業」は2023(令和5)年度まで施行されますが、その後も開発が進んでいくのではないでしょうか。箕ノ手地区の最寄駅となる名古屋市営地下鉄「赤池」駅周辺の再整備について検討が始められています。実現すれば、駅前の風景が変わり、また、それに続くような箕ノ手地区への街並みもさらに変わっていくかもしれません。「赤池」駅は本市の西の玄関口にもなるので、本市全体からのアクセスも考え、幅広く駅周辺を利用できるよう、検討されていきます。
――日進市は名古屋市に隣接していることから、今後、リニア開業も意識されていますか?
犬飼さん:さまざまな影響があると考えています。今よりもぐっと関東や関西が近くなるため、通勤圏に名古屋市が入ってきます。本市にお住まいの方は近隣の都市で働く方が多くいますが、もしかしたら、ここから関東、関西へ通勤される方もいらっしゃるかもしれません。また、全国規模の店舗が開店するかもしれません。まちが大きくなることで、整備事業のハード面だけでなく、子育て支援やまちづくり政策等のソフト面も充実させていきたいと考えています。
――日進市の中でも大きく変わりつつある赤池エリアの魅力について教えてください。
犬飼さん:名古屋市に隣接するエリアであり、まちへのアクセスが良く、都市的な雰囲気がある場所です。一方で、少し歩くだけで田園風景が広がり、「農家レストラン たまねぎ」のような、日進市で生産される農作物を半分以上、使用している飲食店があるほど農業も盛んです。都市と自然のバランスがとれたエリアだと思います。若い世代が多く、公園では子どもたちの声が聞こえてきます。暮らしやすくて、土地の価格も手頃であるため、転入しやすいエリアではないでしょうか。
日進市 総合政策部 企画政策課
市政戦略係 犬飼さん
所在地:愛知県日進市蟹甲町池下268
電話番号:0561-73-3176
URL:http://www.city.nisshin.lg.jp/http://www.city.nisshin.lg.jp/
※この情報は2020(令和2)年8月時点のものです。
まちと自然のバランスを保ちながら発展を遂げる/日進市総合政策部企画政策課市政戦略係 犬飼さん
所在地:愛知県日進市蟹甲町池下268
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