独自の教科「日本語」を設置する伝統校。地域の力が“砧小らしさ”に欠かせない存在/世田谷区立砧小学校 寺村尚彦校長先生
砧公園の近くにある「世田谷区立砧小学校」は、2019(令和元)年で創立117年を迎える歴史ある学校だ。校庭に植えられた樹齢100年を超えるソメイヨシノは、今でも春になると美しい花を咲かせる。ご自身も同校の卒業生であり、2019(平成31)年4月に着任した寺村校長先生に、同校の取り組みや砧エリアの魅力について話を聞いた。
砧エリアで最も歴史ある学校、2020年(令和2)年以降に全棟改築予定
――まずは貴校の今日までの歩みと概要をお聞かせください。
寺村校長:砧小学校は今年(2019年度)で創立117年になります。前身の「研精学舎」などから考えると、さらに古くからになりますね。砧エリアにある計8校の小中学校の中では最初にできた学校です。現在は計474名の児童が通っており、各学年2~3クラスあります。
――昔からある学校なのですね。設備や児童数など今後の展望はいかがでしょうか?
寺村校長:現在の校舎は築50年ほど経っています。次期改築校として選定され、2020(令和2)年以降に全棟を改築する基本構想が練られています。隣接する「世田谷区立砧幼稚園」も併せて改築して認定子ども園とし、本校と複合化するようです。まだ具体的なスケジュールはわかりませんが、少なくとも10年以内には新校舎に生まれ変わると思います。近くにある大蔵住宅という団地が建て替えなどもあるので、若い世帯が入居すれば本校に入学する児童もさらに増えるでしょう。新校舎は、その点も考慮して設計されると思います。
――教育目標やそのための取り組みを教えていただけますか?
寺村校長:「思いやりのある子ども」「すすんで仕事をする子ども」「からだをきたえる子ども」を教育目標に、知・徳・体をバランスよく育むよう指導しています。朝学習の定着で学力向上を図り、縦割り班活動により思いやりの心を育てている他、朝ラン、外遊び、食育を充実させて健康維持と体力の向上を目指しています。また、清掃活動や挨拶を通じてコミュニケーション力や社会的マナーを学んでいます。
大きな変化にも対応できる力を育む
――世田谷区では、小学校6年・中学校3年を一つの「学び舎」として連携する「世田谷9年教育の推進」についてはどのようにお考えでしょう?
寺村校長:子どもたちの中学での成長は、小学校での学びがあってこそ。だから小学校の教員は、教え子を中学卒業まで見届けるべきだと思います。そんな視点を大切に、「世田谷9年教育」に取り組んでいます。昨今は中1ギャップが問題視されていますが、小学校と中学校の差はあって良いのではないでしょうか。環境が大きく変わることは、自分を見直すチャンスです。だから変化を小さくして接続をなだらかにするより、大きな変化に対応できる力を小学校で身につけることを重視したいと思います。
――特徴ある課外活動があればご紹介ください
寺村校長:本校では、6年生が鼓笛隊をやるのが伝統です。活躍の場は運動会や地域のお祭りなど。私の在校当時は児童が多かったので5・6年生の選抜でしたが、私が通っていた頃にも鼓笛隊がありました。音や動きを合わせなければならないので、学年の結束力が高まるんですよね。子どもたちも楽しんでやっているので、今後も続けられればと思います。
――食育にも力を入れてらっしゃるそうですね?
寺村校長:グリーンピースのさやむきなど給食作りの下ごしらえ体験を積極的に行っています。また、世田谷のブランド野菜である「大蔵大根」など、地のものを多く使って地産地消を心がける一方、ボルシチなど外国の料理を出して世界の食に関心を持たせる工夫もしています。子どもたちが敷地内で育てている野菜を地域のお祭りなどでふるまおうと、以前の校長が作ったピザ窯などもあります。今年度はまだ利用する機会がありませんが、今後、夏祭りなどで利用する機会があるそうなので楽しみにしています。
地域の人々が“砧小らしさ”を支える
――世田谷区では地域が学校の運営をサポートする「地域運営学校」という取り組みが進められていますが、砧小ではどんなことが実践されていますか?
寺村校長:登下校の見守りをはじめ、さまざまな場面でサポートいただいています。特に大きなイベントの運営は大変なので、学校だけではどうにもなりません。本校が会場の一つとなる「砧っ子夏祭り」など、子どもたちが楽しみにしている行事が続けられているのは、地域の人々のおかげです。
――砧小学校にとって、地域の方々はどんな存在でしょうか。
寺村校長:公立学校の職員は5~6年も経てば異動してしまいます。でも、住民はそんなに短いスパンでは変わりません。ずっとそこにいるから、過去の出来事を踏まえながら、いろいろなことを継続できます。だから、学校の職員が入れ替わっても砧小の魂や砧小らしさは失われないんです。砧に住む人々は、砧の子どもを育てるために欠かせない存在です。
――近隣の学校や子育て施設と交流はありますか?
寺村校長:この学校には砧幼稚園が併設されているので、園児とふれあう機会は多いです。先日も幼小交流の一環として、「次大夫堀公園」で5年生と年長クラスの子たちが一緒に田植え体験をしました。ちなみに砧幼稚園の園長は砧小の校長が兼務することになっていて、現在は私が務めています。もちろん砧中との交流も盛んで、「世田谷子ども駅伝」にも、本校を含む小学校の5・6年生と砧中学校の1・2年生がチームを組んで参加しています。
――寺村先生が思う砧エリアの魅力をお聞かせいただけますか?
寺村校長:この辺の町会の方々の多くは、この学校の卒業生。初対面でも、卒業生という共通点だけで簡単に親しくなれるところが良いですね。一般的には、世田谷というと都会的なイメージがあるのでしょうが、実際は下町っぽいあたたかさもある土地柄。地域への愛着が強く、「自分たちの街のことは自分たちでやる」という考えが根付いています。砧エリアもそこが魅力だと思います。
世田谷区立砧小学校
校長 寺村尚彦先生
所在地 :東京都世田谷区喜多見6-9-1
電話番号:03-3417-4477
URL:http://www.setagaya.ed.jp/kita/
※この情報は2019(令和元)年6月時点のものです。
独自の教科「日本語」を設置する伝統校。地域の力が“砧小らしさ”に欠かせない存在/世田谷区立砧小学校 寺村尚彦校長先生
所在地:東京都世田谷区喜多見6-9-1
電話番号:03-3417-4477
https://school.setagaya.ed.jp/kita/