さいたま市立常盤小学校 校長三島先生インタビュー

地域や保護者とのより深いつながりを育む/さいたま市立常盤小学校(埼玉県)


1930(昭和5)年の開校より90周年を迎える「さいたま市立常盤小学校」は、埼玉県さいたま市浦和区にある小学校。児童数940名で、「知」「徳」「体」「コミュニケーション」のバランスのとれた子どもの育成を目指した取り組みがおこなわれています。文教都市浦和の名にふさわしく、地域や保護者の学校に対するつながりも深く、歴史と伝統のある学校ならではの充実した教育環境が整っている。今回は、2019(令和元)年11月に同行へ校長として着任した三島校長先生を訪ね、『常盤小学校』の特色ある取り組みや地域の魅力についてお話を伺いました。

常盤小学校 三島公夫校長先生
常盤小学校 三島公夫校長先生

――まず『常盤小学校』の概要・沿革について教えてください。

三島校長先生:  『常盤(ときわ)小学校』は、1930(昭和5)年に開校してから90周年を迎える歴史と伝統のある学校です。児童数は940名で微増の傾向にあり、市内でも規模の大きい学校のひとつです。 JR「北浦和」駅から歩いて10分もかからない駅近の学校ですが、隣接する「北浦和公園」の自然と穏やかな雰囲気の住宅地に囲まれ、落ち着いた学習環境に恵まれています。また学校のあるこの土地は、かつての旧制浦和高等学校つまり埼玉大学の前身となる学校があった場所で、古くから熱心な教育活動が行われてきたという歴史があります。

長年にわたる熱心な教育・研究活動
長年にわたる熱心な教育・研究活動

数々の受賞歴も誇る
数々の受賞歴も誇る

「知」「徳」「体」「コミュニケーション」のバランスのとれた子どもの育成を目指す

――学校の教育目標についてお聞かせください。 

三島校長先生:  学校のHPからもご覧いただけますが、学校教育目標の目指す児童像としては、「心身ともに健康で 思いやりの心をもち 主体的に学ぶ常盤っ子の育成」としています。また学校経営のグランドデザインにも示してありますが、「知」「徳」「体」「コミュニケーション」のバランスのとれた子どもを育んでまいります。前任の校長が取り組んでいた「ていねいに字を書く」、「あたたかい言葉をつかう」ことの指導にも引き続き重点的に取り組み、この2学期は「ていねいに字を書く」から「見てもらいたくなるノートを作ろう」へ、また「あたたかい言葉をつかう」は「人から言われてうれしい言葉をつかおう」というメッセージで子どもたちと家庭に伝えています。 

”ときわっ子”の目標
”ときわっ子”の目標

「体験」を通じて心がアクティブになるような教育を目指して

――着任後の12月の学校だよりで「体験」という言葉を使っていましたが、どのような意図がありましたか? 

三島校長先生:  「体験」とは文字どおり、自分の身体を通して実地に経験する活動のことで、子どもたちがいわば身体全体で直接対象に働きかけたり、関わったりする活動のことです。しかし、ただ実際にやればよいとか見学に行けばよいというものではありません。

授業で「〇年に△△という戦いがあって…」と聞いただけのことはすぐに忘れてしまいますし、年表を見て覚えたとしてもそれ以上知識が深まったり応用が利いたりはしません。目指すところは理解することだと思うんです。その喩えとして修学旅行を挙げましたが、もちろん教科書で習って知ってはいると思うのですが、日光東照宮の壮大な建物を見て、当時の権力の大きさというのも、その場に行って、見て、初めて「うわー、すごいな!」という驚きとともに理解につながるのだと思います。これは、教科書で学んだ知識について実際に「体験」することで、真に生きた知識として再構成されたことになります。これからの学習指導において、アクティブ・ラーニングというのがひとつのテーマになりますが、そこで重要になる体験学習はただ見れば良いんだろうとか、観察すれば良いんだろうということではなくて、為す(なす)ことによって学んで理解するというところが大切なんです。

心がアクティブになる教育を推進
心がアクティブになる教育を推進

三島校長先生: 繰り返しになりますが、見ただけじゃダメ。頭をアクティブにして、いっぱい頭を働かせて、それが理解につながると、やがて最後は心がアクティブになるんです。「世の中ってすごいな」とか、「科学ってすごい」とか、「自分もやってみよう」と、心がアクティブになるような教育を目指していこうと思っています。2学期の末に発行した学校だよりでは、「プロセス」について触れています。

通知票をひとつの喩えにしたのですが、当然評価なので良いとか悪いとか数字はついてしまうんですけど、結果は結果として受け止めていただいて、そこに至る「プロセス」を大切にして欲しいと思います。「プロセス」に注目すると、結果が良ければ「よかったのは何をしたからか」、それを引き続きやってもらえば良いし、結果が悪ければ「芳しくなかったのはなぜか」、「よりよくするためにはどこを改善したらよいか」ということが具体的にわかってきます。何よりも、どのようなことでもそのプロセスには必ず頑張った自分を見付けることができます。

これからの学びには、自分の学習を振り返り、学習の仕方に癖があったのか、また弱点があったのか、必要に応じてその進め方を修正していく力が求められています。そしてこの繰り返しが粘り強さに変わるんです。「学校だより」はHPからもご覧いただけるので、保護者はもちろん地域の方に向けてもメッセージを発信し続けて行こうと思っています。

校長先生のメッセージは「学校だより」で地域の方へも発信
校長先生のメッセージは「学校だより」で地域の方へも発信

独自の取り組み「ときわっ子まつり」&「ときわっ子コンサート」

――「常盤小学校」ならではの独自の取り組みについてお聞かせください。 

三島校長先生:  世代を超えて親しまれているのは、10月に実施される「ときわっ子まつり」と「ときわっ子コンサート」です。

まず「ときわっ子まつり」では、6年生が自ら企画した商品を保護者や地域の方に販売します。これは平成20年度から総合的な学習の時間の一環として取り組んでいる、さいたま市早期起業家教育事業「“さいたま”あんとれすくーる」のビジネス体験に基づくもので、この学習では6年生が会社づくりから、商品企画・調達・販売・決算及び振り返りまでを学び、今年度は、2グループ(各4社)に分かれて、パン、大福、どら焼き、クッキーなど、自ら企画した商品を販売しました。

次に「ときわっ子コンサート」ですが、作曲家の橋本祥路さんに合唱指導をいただいて、本校の全児童が保護者や地域の方の前で歌を披露します。例年1,000人以上もの来校があるようで、本校独自の取り組みになっています。

音楽室
音楽室

三島校長先生: また「常盤小学校」は健康教育が盛んで、「学校保健優良学校」、「学校歯科保健優良校」として毎年表彰されているんです。その背景として、保護者の意識が高いというのもありますし、学校歯科医との連携もしっかりとれているのだと思います。 

その他にも「金管バンド」の活動も熱心に行われていて、現在、4年生から6年生まで41名の部員が放課後や土曜日に練習しています。入学式や運動会、「ときわっ子コンサート」といった学校行事での演奏はもちろん、浦和まつりや自治会の夏祭り、北浦和阿波踊り大会といった地域行事にも参加して活動の場を広げています。

これは取り組みではありませんが、学校の敷地内に樹齢97年のヒマラヤスギがあります。旧制浦和高校の敷地にあったものを移植してずっと根付いているのですが、校舎の4階を超える高さで本校のシンボルツリーになっています。

シンボルツリー「ヒマラヤスギ」
シンボルツリー「ヒマラヤスギ」

児童数約940人の大規模校で、仲間もいっぱいできる魅力的な環境

――着任した際に感じた「常盤小学校」の魅力についてお聞かせください。 

三島校長先生:  まず、児童が940人いるのでいっぱい仲間ができます。クラブ活動も盛んですし、大規模校ならではの魅力だと思います。またこれは個人的な印象なんですけど、おじいちゃん、おばあちゃんも常盤に住んでいるというご家庭が多くて、駅近でありながら“故郷”という意識がある地域だなと思いました。90周年の記念事業をやった時も、「昭和〇年の同級生なんです」といった方々が参加してくださいましたが、何年経っても地域に仲間がいるというのは大きな魅力だと思いますね。

また、地域や保護者とのつながりも本校の魅力のひとつで、経営的なところでアドバイスをいただくところもありますし、朝の登校時の見守りが多いんです。通学班での登校をしていないのもありますが、保護者の方が子どもたちと一緒に学校まで来てくれます。さらに保護者による校内のパトロールというのもあって、防犯面の対策もありますが、調子の悪そうな子どもがいたら声をかけてもらったり、現場の教員をフォローしてくれたり、いろんな大人の目があるというのは学校としても安心です。

目指す学校像
目指す学校像

一人ひとりが“自問自答”できる子どもになって欲しい

――今後、よりいっそう力を入れていきたい取り組みやメッセージはありますか? 

三島校長先生:  私がこれからぜひ子どもたちに伝えていきたいなと思っているのは、“自問自答”ができる子どもになって欲しいということです。教育委員会の指導1課長時代にも発信したメッセージですが、「本気で授業、本気の授業」をスローガンに、本校でもこれからその取り組みを進めて行きたいと考えています。今の授業は、ある課題に対してどういう解き方があるんだろうとまずは自分ひとりで調べて、次にそれを周りの人とちょっと話し合って、さらに大きなクラス単位で話し合って、自分の考えを広げたり深めたりするという流れなんですが、それを一人で、あるいは子どもたちだけでできるようになるのが理想じゃないかと思っています。

教員がそういう授業の流れを作らなくても、課題が出たら、まず自分で考えて、隣の人と「ねぇねぇ、これって・・・」と話が始まって、その輪が広がってクラス全体で意見交換をする。特定の教科に限らず、音楽や体育もそう。一人ひとりが自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、判断して行動できるようになるのが理想だと思っていて、“自問自答”できる子どもがたくさん育ってくれたら良いなと願ってそれを「本気の授業」と名付けました。 

”本気の授業”に取り組む子どもたち
”本気の授業”に取り組む子どもたち

将来、子どもたちにとっても“故郷”と呼べるような魅力のある街

――最後に、地域の方やこれから新しく街に住まわれる方に向けてメッセージをお願いします。 

三島校長先生:  開校90周年を記念して、地域の皆さまから贈っていただいた記念碑があるんですけど、正門の前に設置させていただきました。一般的に記念碑は敷地内に設置されることが多いのですが、正門の外側に設置したので、お散歩の時や嬉しいお知らせ、あるいは悩んだ時も訪ねていただいて、記念碑を通して故郷を想い、また未来への希望を覗いていただければと思います。保護者はもちろん地域の方にもぜひ学校に足を運んでいただいて、ますます刺激を与えてくださればと思います。 

また、これから新しくこの地域に住まわれる方に向けては、先ほども触れましたが、駅に近い環境でありながら代々この地域に住み続けている方も多いので、将来、お子さんたちにとっても“故郷”と呼べるような魅力のある街だと思います。  

校門
校門

開校90周年記念碑
開校90周年記念碑

まとめ

いかがでしたでしょうか。埼玉県さいたま市でも特に人口が多く集中しており、人気のエリアでもある浦和常盤の『常盤小学校』の教育や取り組みについて、三島校長先生からのお話でした。特徴的な取り組み事例としては、民間企業が大型商業施設などで有償でおこなっている、実際の社会や経済活動を模した催しです。商品企画・調達・販売・決算まで子どもうちから体験することで、将来は偉大な企業家が生まれるかもしれないと感じました。勉学も商売も、自問自答することから始まりますので、校長の教育に掲げるメッセージもきっと子どもたちの深い部分に届くと思いました。これから、浦和常盤への転居や移住をお考えの方の参考になれば幸いです。

 

さいたま市立常盤小学校
さいたま市立常盤小学校

さいたま市立常盤小学校
三島校長先生

所在地:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-9
URL:http://tokiwa-e.saitama-city.ed.jp/
※この情報は2019(令和元)年12月時点のものです。

地域や保護者とのより深いつながりを育む/さいたま市立常盤小学校(埼玉県)
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