校長 高津原洋一郎先生インタビュー

地域に愛され、自然豊かな環境で「かしこく、やさしく、たくましい子」を育てる/川崎市立西生田小学校(神奈川県)


神奈川県川崎市多摩区「よみうりランド」のある小高い丘の中腹にある「川崎市立西生田小学校」は、遊園地ができるずっと以前、ここが生田村だった時代から続いている、非常に古い歴史をもつ学校。現在は平成に入ってから建てられた新しい校舎で、およそ850人の子どもたちが学んでいます。

この緑豊かな自然に囲まれた場所にある小学校を訪ね、学校の特徴と子どもたちの様子、地域との関わり、学区のエリアの魅力などについて、校長の高津原洋一郎先生にお話を伺いました。

「川崎市立西生田小学校」の高津原校長先生
「川崎市立西生田小学校」の高津原校長先生

――まずは、小学校の歴史と概要をお聞かせください。

高津原校長:本校は1875年、明治8年ですね、近くにある「香林寺」というお寺の本堂を借りて、現在の生田小学校の前身である「生田学校」の「細山分教場」という形でスタートいたしました。2021(令和3)年で創立146年を迎えるという、長い歴史をもつ学校になります。

現在の「川崎市立西生田小学校」という名称になったのは、1947(昭和22)年のことで、その時には、児童数274名からスタートしたということです。

学校の立地については、当初は別の場所にありましたが、1960(昭和35)年に現在の場所に移転、2000(平成12)年に校舎の建て替えが行われ、現在のこの校舎となりました。

「川崎市立西生田小学校」正門
「川崎市立西生田小学校」正門

――教育目標と、特に力を入れている教育活動について教えてください。

高津原校長:教育目標は、「自ら考える子」「思いやりのある子」「たくましい子」という3つの柱を掲げています。子どもたちの間では、「かしこく、やさしく、たくましく」が合言葉になっていますね。

この目標のもとで、「目指す学校像」については、「やさしい気持ちと明るい笑顔で、夢ひろがる、楽しい学校の創造」という言葉を掲げています。これは教職員の共通認識の部分になりますね。この学校像のもとに、3つの柱を具現化できるように、さまざまな取り組みを行っています。

――具体的にはどのような取り組みでしょうか?

高津原校長:「かしこく」に関しては、「たしかな学力を身につけること」を第一とし、基礎・基本の定着、みずから進んで学習に取り組む態度、より良く問題を解決することができる資質や能力の育成、というところに取り組んでいます。

「やさしく」に関しては、川崎市に「キャリア在り方生き方教育」という指針がありますので、これに沿って生き方教育を推進し、人権尊重教育を柱として、学習に取り組んでいます。

「たくましく」については、健やかな身体を作るために、運動や遊びの時間をしっかり確保することと、体育の授業の中で、体力向上の取り組みも積極的に取り入れています。

新入生を迎えた春の校内
新入生を迎えた春の校内

――気象観測がとても有名な小学校だと聞きました。これはなぜでしょうか。また、現在どのような観測を行っていますか?

高津原校長:気象観測については、西生田小学校としてスタートした1947(昭和22)年に、当時の職員が手作りの気象観測所を作ったことに始まるそうです。当時、そういった取り組みをしている小学校は無く、非常に珍しいことだったようですね。

その翌年には、東京天文台による、日本最初の「流星写真二点観測」という特殊な観測法が、約7キロ離れた東京天文台と、この西生田小の校庭を使って行われたそうです。また、1950(昭和25)年には、本校の観測所が横浜測候所内の観測所のひとつに指定された、ということもありました。

校内には気象に関する展示のコーナーも
校内には気象に関する展示のコーナーも

高津原校長:それ以降もずっと継続して、毎日、教職員と子どもたちが欠かさず気象観測を行っているという、たいへん珍しく、歴史のあるものになります。

本校には「自然科学委員会」という委員会があります。この委員が毎日交代で、百葉箱で気象観測をし、お昼に「今日の気象観測」として、放送で全校にその観測結果を知らせるという取り組みを、現在も行っています。

最新の気象状況が表示されたパネル
最新の気象状況が表示されたパネル

――放課後の時間を活用した「寺子屋」という事業があるそうですね。どのような事業なのでしょうか?

高津原校長:これは川崎市内のあちこちの小学校でも行われているものなのですが、希望者で放課後に行っている学習教室になります。毎週火曜日の放課後に、2年生から6年生を対象として行っておりまして、誰でも参加することがでます。

現在は約50名の子どもたちが参加していますが、計算や漢字などの基礎的な学習をしたり、時には、昔遊びの体験などもしながら、楽しく学習を行っています。また、寺子屋では月に1回ほど、土曜日に体験教室も行っていまして、こちらはその都度申し込みをしますので、たくさんの子どもたちが参加しています。外部から専門の講師の方を招いて、スポーツを楽しんだり、科学や工作の体験をしたり、音楽を楽しんだりしていますね。

教室
教室

――麻生区では3番目に児童数の多い学校とのことですが、大規模校ならではの工夫や、人数の多さによる子どもたちのメリットについてお聞かせください。

高津原校長:現在の児童数は867名です。本校では以前から「関わり」ということをすごく大切にしています。異学年交流を積極的に行ったり、集会はもちろん、普段から「関わりあう」という要素を多く取り入れています。現在は感染防止の観点から実践でないことも多いのですが、それでも、異学年なのにとても仲が良かったり、異学年同士で声を掛け合うという場面がよく見られますので、クラスや学年の枠を超えた交流は多い学校かと思います。

大人数のメリットについては、やはり、さまざま子と関わりあえるという部分はあるでしょうし、行事を何かひとつやるにしても、人数が多い分活気が出ますね。

また、本校は毎年クラス替えをしていますので、学年が変わった時にも、つねに新しい出会いがあり、そういった部分は子どもたちの情操にも、大きな影響を与えていると思います。

運動会
運動会

――年間行事にはどのようなものがありますか?

高津原校長:運動会が最も大きな行事です。子どもたちの意見も取り入れ、思いをすごく大切にして作り上げる運動会にしています。ひとりひとりの子どもたちが必ず活躍できる、そんな場になっていると思います。
もうひとつ、11月に1週間行っている「オープンスクールデー」というのもユニークな行事です。平日の5日間に、いつもよりも長めの休み時間を使って、子どもたちが考えたイベントを楽しみ、土曜日には、午前中に授参参観、午後はPTAのバザーを行って、保護者にも楽しんでいただくものになります。

オータムフェスタ PK大会
オータムフェスタ PK大会

――図書館が充実しているそうですね。特徴を教えてください。

高津原校長:たしかに、本校は図書がかなり充実していまして、図書館にももちろん閲覧スペースはありますが、それ以外に、図書館の隣に「どくしょのもり」という広いスペースを設けてあります。

また、読書活動にはすごく力を入れていまして、朝の読書タイムを週に2回取っていたり、PTAのボランティアの方に図書の整理をしていただいたり、貸出しのお手伝いをしていただくという取り組みもしています。PTAのボランティアの方に読み聞かせ等もしていただいています。こういった読書関連の取り組みも、本校の特徴のひとつかもしれません。

図書室
図書室

――「わくわくプラザ」という施設が学校内にあるそうですね。これは何でしょうか?

高津原校長:これはかつて「学童」と言われていたものを、川崎市では「わくわくプラザ」という名称にしているもので、市内の各学校にあるものです。西生田小では校庭の一部のところに施設がありまして、外部団体の方に管理をしていただいて、平日の放課後は19時まで、それから土曜日にも、登録したお子さんだけになりますが、中でいろんな活動をしたり、宿題をしたり、校庭で遊んだり、いろいろな過ごし方をしています。

畳も気持ちのよい「どくしょのもり」
畳も気持ちのよい「どくしょのもり」

――卒業後の進路は、公立、私立とどれくらいの割合ですか?また、中学校との連携などはありますか?

高津原校長:進路はその年によって変わりますので、何とも言えないのですが、もちろん、私立に進学するお子さんもたくさんいらっしゃいます。それ以外の子どもたちは、本校の学区はすべて、お隣の「西生田中学校」の学区に含まれていますので、全員が隣に進学することになります。ですから、中学校との連携も取りやすく、さまざまな活動がしやすい環境になっているかと思います。小中学校同士、顔見知りばかりなんですね。

例えば、いまはコロナで実現できていませんが、中学生に来てもらって、中学校のことを教えてもらうという機会もありますし、歌や演奏を披露してもらったりという交流も例年行っています。逆に、こちらから中学校に見学に行くということも行っています。

校内
校内

高津原校長:また、卒業生の話が出たのでついでにお話しますと、本校には警備員さんが2名、常駐でいらっしゃるんですね。これも非常に珍しいことで、朝から放課後まで、警備員さんが見守ってくれるという安心感があります。これは本校の大きな特徴ですね。
この警備員さんがすごく長くやっている方たちなので校門の前を通る、中学生(卒業生)とも毎朝挨拶したり、という光景が見られます。安全・安心ということでは、警備員さんの存在は心強いなと思っております。

――たしかに、警備員さんが常駐している小学校は珍しいですね。

高津原校長:私自身も、ほかの学校で常駐しているという話は聞いたことがありません。これはPTAの方が、子どものためを思ってということで、警備員さんをPTAの予算の中で配置してくださっているんですね。学校としても本当に助かっています。

――警備員さんの話もその一つかと思いますが、保護者や地域の方との協力、連携体制についてお聞かせください。

高津原校長:ひとつは、ボランティアとして、さまざまな場面でおいでいただいています。図書ボランティアや読み聞かせボランティアもそうですし、ほかにも、美化ボランティアとしての校庭の植栽、登下校の見守りなどと、いろんなご協力をいただいています。
また、近くに「多摩美の森」という場所がありまして、ここが本当に、自然がそのまま残された素晴らしい森なのですが、そこを使って、「麻生多摩美の森の会」という組織の方が、自然のことや、自然を守るという活動について教えてくださったりしています。

あと、正門の横に池がありますが、ここにある水車も、地域の方が設置してくださったものです。かつてこの地域にも水車が多く見られたということで、ふるさとを意識してもらえるように、と作ってくださったものです。これも学校のシンボルのひとつになっています。

ふるさとを感じられる水車
ふるさとを感じられる水車

――地域の方からとても評判が良い学校と聞きました。校長先生ご自身は、その評判の理由をどのようにお考えですか?

高津原校長:ひとつは、この学校自体が幹線道路から離れていて、閑静な住宅街の中にあるということ、さらに、校舎が比較的新しく、校庭もそこそこ広いので、子どもたちがのびのびとできる環境があることだと思っています。

あとは、先ほどお話した異学年交流をはじめ、交流をすごく大事にしている学校ですので、友達もたくさんできやすく、そこも子どもたちにとって魅力的なんじゃないかな、と思っています。もちろん、地域もPTAも本当に協力的な地域なので、その素晴らしさもありますね。

――学区である細山エリアの魅力について、校長先生の意見をお聞かせください。

高津原校長:やはり、細山エリアというところは、自然環境にかなり恵まれているところですので、そこが第一の魅力だと思います。エリア全体が閑静な住宅地ですので、静かに暮らせるところですね。学校にいても、小鳥のさえずりがよく聞こえてきて、耳を澄ませばいろんな鳥の声が聞こえてきます。

もちろん、新百合ヶ丘にすぐ出られたり、「よみうりランド」がすぐ近くにあったり、という点も魅力に感じる方は多いと思います。子どもたちの中には、よみうりランドの年間パスポートを買って、ひと夏、毎日のようにプールに行ったという子もいました。そういった意味では、森があって、広い学校があって、よみうりランドもあって、子どもたちがいろんな活動をできる、可能性が広がるところだと思います。

――細山エリアのおすすめスポットは、ズバリ、どこですか?

高津原校長:いちばんは、この学校じゃないですかね。こういう学校があるから、子どもたちも、素直に、素朴に、ざっくばらんでいられるんだと思います。にこやかに挨拶してくれる子が多い、すごくいい学校だと思っています。

広々とした校庭でのびのびと
広々とした校庭でのびのびと

「川崎市立西生田小学校」の高津原校長先生
「川崎市立西生田小学校」の高津原校長先生

川崎市立西生田小学校

高津原洋一郎 校長先生
所在地:神奈川県川崎市麻生区細山2-2-1
電話番号:044-966-5161
URL:https://kawasaki-edu.jp/2/502nisiikuta/
※この情報は2021(令和3)年4月時点のものです。

地域に愛され、自然豊かな環境で「かしこく、やさしく、たくましい子」を育てる/川崎市立西生田小学校(神奈川県)
所在地:神奈川県川崎市麻生区細山2-2-1 
電話番号:044-966-5161
http://www.keins.city.kawasaki.jp/2/ke21..