校長 岩佐秀高先生インタビュー

子どもが輝き、地域とともに歩む/横浜市立荏田西小学校(神奈川県)


「荏田西小学校」は、閑静な住宅街や緑豊かな公園に囲まれており、横浜市青葉区の中で最も児童数が多い小学校。地域交流や国際交流もさかんで、先生や地域の人によって子どもたちの成長を温かく見守る取り組みも大きな特徴です。そんな「荏田西小学校」の岩佐校長を訪ね、同校の取り組みや地域の魅力について、お話を伺いました。

岩佐校長先生
岩佐校長先生

――まず、荏田西小学校の歴史について教えてください

岩佐校長先生: 荏田西小学校は、1993(平成5)年に開校した学校で、横浜市の中では比較的若い学校になります。当時この辺りに子どもが増えて、もともとあった「東市ヶ尾小学校」から分かれてできた学校です。各学年4クラスと個別支援級の4学級を合わせて、全28学級807名の児童が通っています。児童数で見れば、青葉区内でいちばん多い学校です。

校舎
校舎

――学校全体の目標や、独自の取り組みなどについて教えてください

岩佐校長先生: 学校の目標としては、「子どもが輝き、地域とともに歩む学校」というのが大きな目標になっており、その中で、「心豊かにかかわり、互いに高め合いながら、学び続ける子に育てます」ということで、日々教育活動に取り組んでいます。

独自の取り組みで特徴的なのは、4年生から6年生で取り入れている「教科担任制」です。これは、従来の小学校の仕組みでは、担任の先生が全教科を教えるというのが基本で、家庭科や音楽については専科の先生が教えるという形になっていましたが、本校ではそれ以外の教科でも、たとえば理科や社会などについても、かわるがわるに別のクラスの担任が入りながら、より専門的に学習していこう、ということでやっています。

――校舎の特徴について教えてください。

岩佐校長先生:体育館が広いので、一度に多くの人が利用できます。エレベーターやスロープなどのバリアフリー設備もあって、必要な時に必要な方が使えるようになっているのも、比較的新しい学校ならではの部分です。実は開校から今までの間に、周りにずいぶんと宅地が増えましたので、校舎も一度増築をしています。

体育館
体育館

――教科担任制のメリットは何でしょうか?

岩佐校長先生:やはり、クラス担任ひとりが全部の教科を担っていると、どうしても充実した指導がしにくくなってしまいます。教科担任制では、本校はいま各学年4クラスですから、社会を担当する先生は4回、同じ内容の勉強を、子どもたちと一緒にするわけですね。そうすると、その間に先生にも学びがあるし、もちろん子どもたちとも、学びが深められていきます。子どもたちにより分かりやすく、充実した内容を指導できる、ということになり、これは学力向上にも大きく寄与していると思います。

また、4人の担任が4つのクラスにかわるがわる入っていきますので、学年の全員を4人の先生で見守る、という形が自然な流れでできていきます。そうすると、児童指導や生活指導の面でも、担任の間で情報を共有できるので、クラスの垣根を超えて、学年全体を一緒に、同じ学年の教員が見る、ということができるかと思います。

一方で、子どもたちから見ても、時間によって先生が替わることで気分が変わりますし、複数の先生と親密な関係ができることで、「相談をしやすくなった」「質問をしやすくなった」という声も挙がっています。学力の向上だけではなく、心の安定にもつながるということで、メリットは大きいと思います。

校内
校内

――そのほかにも、荏田西小独自の取り組みがあれば教えてください

岩佐校長先生:最近新しく作ったものでは、「学習室」というものがあります。これは昇降口を入ってすぐのところにある、小さな部屋なんですが、これだけの児童数がいるとどうしても、登校ができない、渋ってしまう、という子が出てくるわけですが、現在この部屋は、そういう子の居場所としても使っています。まず、学習室に入って、そこでクールダウンをして、自分の教室に入っていくという感じですね。ここには午前中を中心に教員を配置して、子どもの気持ちによりそえるようにしています。

ただ、ここは本来「学習にちょっと不安がある」という児童を、別のところで補習をしていけるように、という位置づけの部屋ですので、将来的にはひとりひとりの進度に対応した取り組みを、この部屋を通して充実していければと思っています。

学習室
学習室

岩佐校長先生:もうひとつ、独自ということでは国際交流がさかんです。国際交流はこの6年間ほど、オーストラリアのビクトリア州にあるセール小学校という小学校と、姉妹校としての交流をしています。昨年は本校の教員が夏休みにあちらに行って、現地の子どもたちと交流をして、そこで撮影したビデオを、外国語活動の中で素材として活かしています。

――セール小学校との国際交流に関して、子ども同士の交流はありますか?

岩佐校長先生:直接というのはなかなか難しいのですが、クリスマスカードや年賀状の交換は毎年やっています。ここにあるのが、オーストラリアの子どもたちがくれたものですね。こういったことを通じて、国際理解のひとつのきっかけになれば、と思っています。

実はこのほかに、テレビ会議システムを使った交流をしたことがあるのですが、これは回線の問題などがあってまだ理想とする姿にはできておらず、これからの課題となります。交流を継続して、世界に目を向けていける子どもたちを育てていければ、と思っています。

オーストラリアのセール小学校から届いたクリスマスカードや年賀状
オーストラリアのセール小学校から届いたクリスマスカードや年賀状

――青葉区で最も児童数の多い学校ということですが、ひとりひとりに目を届かせるための工夫があれば教えてください

岩佐校長先生:先ほどのふたつ、「教科担任制」と「学習室」もそうなんですが、特に教科担任制はクラス数が少ない学校だと、交代する先生も足りないですし、分担するメリットも少なくなります。その点うちは人数が多い分、メリットも多くなりますから、デメリットになりがちな「数が多い」ということを上手にメリットに転換できているのかな、と思います。

――「えだにし学援隊」について教えてください

岩佐校長先生:「えだにし学援隊」というのは、地域の方々が、13年前の2006(平成18)年から、登下校の見守りをするために立ち上げてくださった組織で、朝も帰りも毎日見守りをしてくださりながら、安全な街づくり、子どもたちの安全確保というところで、活動をしてくださっています。毎朝、20人から25人くらいが立ってくださっていて、本当に有り難いですね。

えだにし学援隊
えだにし学援隊

学援隊の旗
学援隊の旗

――ほかにも、子どもたちの登下校の安全確保に関して、工夫されている点はありますか? 

岩佐校長先生:来年度から東急セキュリティさんの「みまもる目」というシステムを導入する予定です。これは、校門を出た時などに、保護者の携帯電話にメールが届く、というシステムで、2020(令和2)年4月稼働という方向で動いています。これは特に独自というわけではなく、青葉区内では10校くらいがやっているものです。

――学童クラブなど、放課後の居場所について教えてください

岩佐校長先生:もともと、学校内に横浜市による「はまっ子ふれあいスクール」というものがあったんですが、現在はこれがさらに進んだ形で、「放課後キッズクラブ」というものになり、最大午後7時まで、子どもを預かってくれるというシステムになりました。これは登録制で利用できるものなんですが、現在、低学年を中心に百人以上の児童が登録をしていて、体育館やグラウンドで遊んだり、教室で工作などをしたりしながら、お迎えを待っています。 

ほかにも、「市が尾」駅などの近辺にも、放課後の活動をさまざまな形で充実させてくれるような、青葉区や、民間の施設もあるので、放課後の過ごし方については、かなり充実している地域ではないでしょうか。

校内
校内

――地域の方々との交流や、学校や保育園、幼稚園との連携について教えてください

岩佐校長先生:まず、小中の連携については、英語や社会などの先生が「市ケ尾中学校」から来て本校の6年生に授業をしてくれたり、6年生が中学校に行って合唱コンクールの練習を見せてもらったり、部活動の体験をさせてもらったりといった交流もしています。特別支援学級についても、同じ中学校区の小・中学校で交流をしています。もちろん、教員同士でも、小学校の先生が中学校に行って授業を見学したり、その後に研修会を開いたりしながら、連携を図っています。 

地域の方々については、先ほどの「えだにし学援隊」もひとつなんですが、もうひとつ、「ステップ国際理解」というのもユニークな取り組みかと思います。

「ステップ国際理解」というのは、国際交流教室として、地域の方が毎回海外の講師を招いて、子どもたちのために授業をしてくださるんです。先生を呼ぶところから、すべてやってくださるんです。たとえば、3年生の国語に「三年とうげ」という単元があるんですけれど、これはもともと、韓国の民話なのですが、この時には韓国の方を講師にお招きして、韓国語の絵本を韓国語で読んでもらったり、いろんな民族衣装や、伝統的な韓国の遊びなども教えてもらいました。 

同じように、1年生の「おおきなかぶ」はロシアの話なので、その時にはロシア出身の方に来ていただきましたし、ほかにも、リトアニア、インドネシア、中国など、いろんな国の方を講師にお迎えしながらやっています。これはまさに、地域の方の力によるものです。

図書館
図書館

――地域に対して、小学校が何かを提供するというシーンはありますか?

岩佐校長先生:いちばん大きなものは、夏祭りですね。8月のお盆の次の土曜日にやっているんですが、地域の夏祭りということで、連合自治会の方々が中心になって、かなりの屋台を出すようなイベントなんですが、この時には、会場として校庭を提供しています。教員たちもフランクフルトの店を出店したり、中学校の吹奏楽部が来て、演奏を披露したりもします。

このお祭りはずいぶん前からあって、もう20年以上は続いていますが、「地域のふるさとづくり」に役立っているそうなんです。そういう中心として、小学校をかわいがっていただいているので、うちの学校の目標である「地域とともに歩む学校」という意味でも、いい形ができているのかな、と思います。

荏田西は比較的新しい住宅地ですから、昔からのお祭りというものも無いんです。ですから、地域にお住まいの方々が、「ふるさと」を感じられるようなお祭りを、学校と地域が一緒になって、運営しているということなんです。

――私立に進学する児童の割合はどのくらいですか?

岩佐校長先生:年によって違いますが、毎年1割以上は行っていると思います。本校が4クラス、東市ケ尾小が3クラスですから、全員が市ケ尾中に進学したら7クラスになるわけですけれど、実際は5クラスですから、そこから逆算すると1割ちょっと、となります。

――校長先生が子どもたちと関わるうえで大事にしていること、先生方で共有している共通認識について教えてください

岩佐校長先生:まずは、「笑顔」と「あいさつ」ですね。「笑顔とあいさつがあふれる学区」を目指していて、私も毎朝、校門で挨拶に立っています。最近はだいぶ定着してきたかな、と感じています。あと、あいさつ以外に、「あったか言葉」ということも大事にしています。「ありがとう」や「大丈夫?」といった声かけですね。こういうものは、自然に任せてもできるものかもしれないけれども、それだと時間がかかってしまうので、率先してあいさつをする、「あったか言葉」をかける、ということは大事にしています。

荏田西 あったか言葉
荏田西 あったか言葉

――「荏田西小っていいな」と思う瞬間は、どんな時でしょうか?

岩佐校長先生:最近だとやっぱり、運動会が良かったですね。とても盛り上がりました。800人が一丸となって、声を枯らして応援をする姿は、素晴らしかったです。一生懸命やるときはやって、素直で、優しい気持ちを持っていて、本当にいい子たちですよ。

――運動会で一番盛り上がる競技は何ですか?

岩佐校長先生:リレーは盛り上がりますね。2色に分かれて競っているんですが、応援団の6年生をはじめとして、声を枯らして一生懸命応援する姿も素晴らしいです。今年は騎馬戦も盛り上がりましたね。

「表現」という、ダンスや踊りの部分も見事でした。6年生はソーラン節、5年生は「フラッグ」という、旗を使う表現で、かっこよかったですし、ほかの学年もそれぞれの表現をしていて、見ごたえがありました。

――将来「こういう学校にしていきたい」というビジョンがあれば教えてください

岩佐校長先生:子どもが輝き、地域とともに歩む学校にしていきたいという点ももちろんですし、中学校のほうでは、「ユネスコスクール」として、持続可能な開発のための教育を積極的に進めているので、本校も3年ほど前から、それに関する取り組みを始めています。新しい教育課程では「持続可能な社会」が大切な視点になっていますから、この取り組みも、中学校と連携しながら充実させていきたいです。 

省エネルギーに配慮した環境への取り組み
省エネルギーに配慮した環境への取り組み

――新しい指導要領では英語の教科化や、プログラミング授業など、新しい取り組みも始まりますね。そちらへの対応はいかがですか?

岩佐校長先生:プログラミングはすでに図工の時間に取り入れていて、ipadを使って自分たちの考えたキャラクターに動きをつける、ということをやっています。理科で応用したらこうなる、社会で応用したらこうなる、という部分も研究しながら、プログラミング教育につなげていきたいと思っています。

外国語については、現在、外国人講師の方に、週に3、4回くらい来ていただき、国際理解の先生ということで、全学年で授業に入ってもらっています。今後は5、6年生で英語が教科化されますので、今までの外国人による指導と、日本人の担任による指導とを合わせて、よりしっかりとした授業を展開できるように、いままさに、研修をしているところです。

国際交流を楽しみ 異文化理解を深める
国際交流を楽しみ 異文化理解を深める

――周辺の生活環境と子育て環境の魅力について、また、校長先生のおすすめのスポットについてお聞かせください

岩佐校長先生:広くて整然とした街並みで、落ち着いた生活環境がある地区だと思っています。「江田」駅のほうに行くと、大山街道の宿場町だったところですから、宿場の跡なども残っていますし、歴史も感じられる街ですね。「荏田猿田公園」などは、大昔の遺跡が発掘された場所なんですよ。そのほかにも公園がいっぱいあって、子どもたちも遊び場には困らないと思います。そして何より、地域の方々ですね。学校に協力的な方が多くいらっしゃって、あたたかい地域だなあ、と日々思っています。

児童の作品
児童の作品

――最後に、これからお住まいになりたい方に対して、一言メッセージをお願いします。

岩佐校長先生:荏田西は地域の方々が本当に子どもたちのために心を尽くして協力してくださっている素晴らしい地区だと思っています。ここに新しくお住まいになられる方についても、ぜひ、子どもたちのために、そういう素晴らしい環境を受け継いでいただければ、と思っています。

岩佐校長先生
岩佐校長先生

横浜市立荏田西小学校

校長 岩佐秀高先生
所在地:横浜市青葉区荏田西4-5-1
電話番号:045-911-4481
URL:https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/es/edanishi/
※この情報は2019(令和元)年12月時点のものです。最新情報は学校ホームページをご参照ください。

子どもが輝き、地域とともに歩む/横浜市立荏田西小学校(神奈川県)
所在地:神奈川県横浜市青葉区荏田西4-5-1 
電話番号:045-911-4481
https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/scho..