タブレット端末を利用した先進教育にも取り組む/新潟大学附属新潟小学校(新潟県)
新潟市中央区にある「新潟大学附属新潟小学校(以下、附属新潟小)」。2020(令和2)年で開校144周年を迎えた、新潟県内屈指の歴史をもつ学校です。教育現場へのタブレット端末の導入(BYOD)など、先進的な取り組みを行なっている学校としても知られます。今回は、山田浩之校長先生に附属新潟小の取り組みや、教育で大切にしていること等をお聞きしました。
――まずはじめに、附属新潟小学校の概要を教えてください。
山田校長:本校は1875(明治8)年、旧制官立新潟第一師範学校の附属小学校として開校しました。その後、新潟大学教育学部附属小学校などを経て、2020(令和2)年4月から現在の「新潟大学附属新潟小学校」に改称をし、現在に至ります。
――とくに力を入れているご活動があれば教えてください。
山田校長:1995(平成7)年のコンピュータ教育の実施など、教育における導入と活用は比較的早いほうだったのではないかと思います。2020(令和2)年現在は、端末を利用した教育を推進しています。本校独自の取り組みとして、「BYOD(Bring Your Own Device:(個人所有のタブレット端末活用)」というものを実施しています。学校で端末を購入して児童に貸し出すのではなく、あくまでも「自分の端末(Own Device)」としてタブレット端末を使用し、勉強をするというものです。
習字の道具や、リコーダー、鍵盤ハーモニカなど、保護者が購入して子どもたちに使ってもらうのと同じイメージですね。あくまでも「自分のデバイス」だからこそ、家に帰っても振り返りができる強みがあります。
2017年度から段階的に運用を開始し、2020年度に完成しました。2020(令和2)年入学の子どもたちは、1年生時から自分のタブレット端末を持って学んでおり、小学校生活6年間における自分の記録、足あとが端末上にしっかりと残ることになります。
――「BYOD」を運用してみての効果はいかがでしょうか。
山田校長:2020(令和2)年はコロナウイルス感染症拡大の影響があり、当校も臨時休校を行ないました。その際にオンライン教育をスムーズに実施できたと感じています。これは、日頃からタブレット端末を使用した授業を行なっていることによる利点とも言えます。
普段の授業では、授業の内容をタブレット端末に直接書き込んだり、写真を撮ったりします。瞬間的に一覧にでき、子どもたちにすぐ配信できます。それにより、「他の子はどう考えたのだろう?」ということが一目瞭然になるわけですね。子どもたち同士が自分たちの考えをその場ですぐシェアできたり、検索機能を活用して情報を集めたり、整理したり。
具体的な例では、社会科の授業では、子どもたちが外に出かけて録音や録画をして取材するといった授業があります。タブレット端末を活用することで、よりスムーズに学びが進む、といったメリットもあると感じています。また、先生と子どもたちの間でのフィードバックもやりやすくなったと感じています。
――附属新潟小に通っているお子さん、保護者の特徴をお聞かせください。
山田校長:大学の附属小学校ということで、校区のある公立学校とは異なり、特定の地域から子どもたちが集まるわけではありません。新潟市内全域から集まります。保護者は、学校に対してとても協力的な保護者が多いと実感しています。ボランティア活動など一生懸命に学校に協力しようという姿がみられ、大変ありがたいことだと感謝しています。
――附属新潟小学校として大事にされていることをお聞かせください。
山田校長:大きく3つの使命があると考えています。ひとつは、普通の初等教育を実施すること。他の小学校と同じく、文部科学省が示した教育内容を普通に教えることです。
2つめは、教員養成。「新潟大学」の附属学校ですので、未来の先生となる方たちの学習に協力する。分かりやすいのは、教育実習の実施ですね。他にも、当校の職員が大学の教員養成講義に出向いて、学生さんたちに指導をする。「新潟大学」の教員養成に協力しています。
3つめは、教育実践研究の実施です。具体的には、授業のやり方、どういうことを目指して授業をしていくと良いのか、どのような工夫が必要なのかなどを研究します。例年だと2月の上旬に「初等教育研究会」を実施しています。新潟県内はもとより、全国から先生方にお越しいただき、協議をおこなうという内容です。例年およそ1,300人ほどの教育関係者が集まる、大きな研究会です。
――研究成果を県内の小学校にフィードバックすることも重要な役割なのですね。
山田校長:本校では、定員35人の学級が各学年に2学級ずつあります。そのほかに、1年生が8人、2年生が8人といったように、各学年間に定員16人からなる複式学級を設置しています。
以前よりは少なくなったとはいえ、新潟県内には複式学校が存在しています。そうした学校に対し、研究成果を示していくという意図から複式学級を設置しています。2つの学年をまたぐ複式学級の指導の仕方は、単式学級とは違った工夫が必要なため、本校での研究成果を提供することは意義のある取り組みだと考えています。
――複式学級は、教育研究以外にもメリットがあると伺いました。
山田校長:少子化の影響もあり、きょうだいが少なくなっている昨今、年代の違う子ども同士が接する機会が減少傾向にあります。「学年を超えた学び合い」は今後も需要が高まっていくと考えています。
学齢が違う子どもたちを一緒に勉強させ、生活させることは、教育的効果・意義があるとも思います。分かりやすく言えば、上の学年の子たちは、下の学年の子にいろいろ教えてあげたりお世話をしたりすることで、リーダーシップが養われていきます。逆に、下の学年の子たちは、お兄ちゃんお姉ちゃんの言うことをよく聞くことで、フォロワーシップを養うことにつながります。
次の年になれば、今度は自分たちが下の子たちに対し、お兄ちゃんお姉ちゃん的役割を果たす…というように、世代間のコミュニケーションを深めることにも繋がっています。
――最後に、教育現場がどのように変化していくか、展望をお聞かせください。
山田校長:ひとつはICT(Information and Communication Technology…情報通信技術)の活用がこれから増えてくると予想されます。
全国的に「GIGAスクール構想(※)」が示されています。数年かけて日本中のICT環境を充実させるという方針で計画が進んでいましたが、今般のコロナウイルスの影響により、計画が前倒しで進んでいます。
本校では今年(2020(令和2)年)、コロナウイルス感染症拡大の関係でオンラインでの授業を実施しました。先にご紹介した「BYOD」の取り組みを活用することで、学校に行くことができないという状況が続く中、オンライン上で学びを保障し、一定の成果が上げられたという手応えがあります。
しかし、やはり子どもが学校に来て、先生、子ども同士で関わり合いながら学ぶと言うことの必要性をあらためて感じました。今後、変わらず大切だと思うことは、「子どもが自分でしっかりと考え、関わり合いの中で学んでいく」ということです。
教室の中で子どもたちが互いに関係し合いながら学びを進めていくというかたちを整えること。ICTを積極的に活用しながらも、大事にしていかねばならないことだと感じています。
※GIGAスクール構想…Global and Innovation Gateway for Allの略。 義務教育を受ける児童・生徒に対し、1人1台の学習用PCと高速ネットワーク環境などを整備する計画。
今回、お話を聞いた人
新潟大学附属新潟小学校 山田浩之校長先生
所在地:新潟県新潟市中央区西大畑町5214
電話番号:025-223-8321
URL:https://www.fusho.ngt.niigata-u.ac.jp/
※この情報は2020(令和2)年7月時点のものです。
タブレット端末を利用した先進教育にも取り組む/新潟大学附属新潟小学校(新潟県)
所在地:新潟県新潟市中央区西大畑町5214
電話番号:025-223-8321(小学校)、025-223-8341(中学校)
https://www.fusho.ngt.niigata-u.ac.jp/(小学校)
http://jhs.niigata.ed.niigata-u.ac.jp/(中学校)