校長 三村悟先生インタビュー

学校・保護者・地域のみんなが共に願い、子どもたちの豊かな心を育む/さいたま市立北浦和小学校(埼玉県)


「北浦和」駅東口を出て徒歩約8分程の場所に位置する「さいたま市立北浦和小学校」。落ち着きある住宅地に囲まれた立地と穏やかな雰囲気の校風で、現在約800名の児童が学校生活を送っている。今年度から新しいグランドデザインのもとで教育活動が進められているほか、「さいたまSTEAMS教育」の研究指定校として先進的な取り組みも行われている。
今回は三村悟校長先生を訪ね、同校の特色ある教育活動や地域とのつながりについてお話を伺った。

「さいたま市立北浦和小学校」三村 悟校長先生
「さいたま市立北浦和小学校」三村 悟校長先生

1947(昭和22)年創立の歴史ある学校

――まずは、これまでの学校の歩みと、現在の学校概要をご紹介ください。

三村校長先生:「さいたま市立北浦和小学校」は、1947(昭和22)年に創立され、今年76年目を迎えます。現在の児童数は809名で、ここ数年は毎年約40名ずつ増えています。学区域にマンションなどが新しく建設されているのもあり、今後も微増傾向にあるようです。

本校の校章には、ハトがあしらわれています。創立当時は、まだ戦争の傷跡が町にも人の心にも残っていた時代です。ハトには、これから平和な時代を築いて行こう、そのための人材を育てていこう、という願いが込められています。正門を入ったところに「はと広場」と呼んでいる場所があり、子どもたちにとっての憩いの場になっています。こちらは創立40周年を迎えた時に校地を大幅に整備してつくった広場だと聞いており、「若い芽の像」というブロンズ像や地面に描かれたハトのモザイクタイルなどがデザインされています。

子どもたちも憩う「はと広場」にある「若い芽の像」にもハトが留まっている
子どもたちも憩う「はと広場」にある「若い芽の像」にもハトが留まっている

――卒業生には、さまざまな分野で活躍されている著名人やスポーツ選手も多いようですね。

三村校長先生:そうですね。東京大学農学部名誉教授の丸尾文治先生や、漫画家としてご活躍の赤石路代先生、校医を務めてくださっている登坂英明先生も本校の出身です。またJリーグで活躍されている矢島慎也選手(大宮アルディージャ所属)やオランダのクラブチームで活躍中の前田直輝選手(エールディヴィジ・FCユトレヒト所属)など、本校出身のサッカー選手も多くおられます。

歴史の長い学校ですので卒業生も多く、さまざまな分野で活躍していらっしゃると思います。

卒業生には各界で活躍する著名人も多い(写真は、丸尾文治先生からの一筆)
卒業生には各界で活躍する著名人も多い(写真は、丸尾文治先生からの一筆)

2022(令和4)年度から新しいグランドデザインのもと教育活動を展開

――特色ある教育活動や、力を入れている取り組みについて教えてください。

三村校長先生:本校のホームページからもご覧いただけますが、今年度から新しいグランドデザインのもとで教育活動に取り組んでいます。

昨年度までは、大きく6つの重点目標を掲げていたのですが、さいたま市の教育振興計画が改定されたこともあり、取り組むべき内容についてもう少し重点化して見直すことにしました。

「さいたま市立北浦和小学校」外観
「さいたま市立北浦和小学校」外観

新しいグランドデザインをつくるにあたって教職員とも話し合い、現代的課題を取り入れた「SDGs」、「STEAMS」、「Well-being」という3つの視点を設定することにしました。

また、さいたま市内のすべての公立学校がコミュニティ・スクール(学校と保護者・地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組む仕組み、学校運営協議会制度とも呼ぶ)に移行するにあたって、子どもたちにどんな力を身につけさせたいかということについて地域の方や保護者とも熟議しました。 そのなかで、本校は学力も大事だが、豊かな心を育ててあげたいと。学校・家庭・地域みんなの共通の願いということで「豊かな心を育む」という言葉をグランドデザインの中に盛り込みました。

創立以来続いてきた“願い”が中核に据えられた「グランドデザイン」
創立以来続いてきた“願い”が中核に据えられた「グランドデザイン」

本校の校歌にも謳われている「日本の若い力を育てる」という、創立以来大事にしてきた願いと「豊かな心を育む」という現在の願いを中核に据えたグランドデザインになっています。ちなみにグランドデザインに用いられているイラストは去年の6年生が描いてくれたもので、子どもたちの思いも込められた内容になっていると思います。

「さいたまSTEAMS教育」の研究に取り組む

――重点目標のひとつに掲げられている「STEAMS」についても教えていただけますでしょうか。

三村校長先生:Science(科学)、Technology(技術)、 Engineering(工学)、 Art(芸術)、 Mathematics(数学)の頭文字をとった「STEAM教育」という言葉はお聞きになったことがあるかと思いますが、さいたま市ではこれに独自に Sports(スポーツ)の「S」を加え、それぞれの教科で獲得した資質・能力を教科横断的に活用する「さいたまSTEAMS教育」の研究を2020(令和2)年度から進めておりまして、本校は研究校に指定されています。

この「STEAMS教育」の概要や取り組みについては、これまで学校だよりなどを通して情報発信をしてきましたが、今年度の研究発表がひとつの大きな節目になるかと思っています。簡単に説明させていただくと、現代社会において必要とされる自ら課題を見つけて協働的に解決していく力を身につけさせることを目標に、「教科横断的な学び」と「STEAMS TIME」に取り組んでいます。

ハトがモチーフの校章
ハトがモチーフの校章

「教科横断的な学び」というのは国語や算数といったひとつの教科について学ぶのではなく、複数の教科をまたいで自分たちの社会の中にある課題を捉えていけるような力を育てていくものです。本校では国語を中心とした教科横断的な学びについて研究を進めているところです。

もうひとつの「STEAMS TIME」は、今年度から総合的な学習の時間の中で取り組むことになり、プロジェクト型学習(Project Based Learning:PBL)を6時間、プログラミングを3時間とることになりました。今年度の研究発表では「STEAMS TIME」の取り組みをメインに、国語を中心とした教科横断的な学びについても発表したいと思っています。

「北浦和地域連絡協議会」など、地域コミュニティが学校運営を心強くサポート

――保護者や地域の方との取り組みやエピソードについてお聞かせください。

三村校長先生:私どもの地域には、地域とともに歩んできたこの学校を大事にしてくださっている方が多くいるように思います。

たとえば、「北浦和地域連絡協議会(略:地連協)」が中心になって行われる「北浦和フェスティバル」もそのひとつです。 「地連協」にはスポーツ少年団や学習ボランティアの会、交通安全指導の方など普段から学校運営を支えてくださっている地域のみなさまもたくさんいらっしゃいまして、年に1度、学校の校庭などを使って模擬店、バザー、ゲームなどの催しが盛りだくさんの楽しいお祭りを開催してくださいます。

学校ホームページに掲載されている「バルーンリリース」の様子
学校ホームページに掲載されている「バルーンリリース」の様子

また本校のホームページのトップページに掲載されている昨年度の運動会での「バルーンリリース」も、「地連協」のみなさまの御協力によるものです。コロナ禍でいろいろな事ができなかった昨年の6年生に何か思い出に残ることをしてあげたいという思いから実施してくださいました。

保護者や地域とのつながりは他にも、登下校時の見守りや、放課後の「ふれあいプレイランド」も10年以上続く取り組みです。「ふれあいプレイランド」は放課後チャレンジスクールの一環として行われている取り組みで、本校では「ふれプレ」と呼んで特色ある取り組みのひとつです。総合型地域スポーツクラブのひとつとして、さまざまなスポーツや遊びを通じて、子ども、保護者、シニア世代をも含めた多世代間の交流を図っています。

10年以上続く地域との取り組みのひとつ「ふれあいプレイランド」の様子
10年以上続く地域との取り組みのひとつ「ふれあいプレイランド」の様子

通常は保険の関係で事前登録制なのですが、本校では回数券を事前に購入いただくシステムをとり、子どもたちも参加しやすく、多いときで100名近い子どもたちが放課後の校庭に集まります。 現在は週3回「ふれプレ」が行われ、さまざまな遊びや活動を通して地域の方と一緒に楽しい時間を過ごしています。

――コミュニティ・スクールに移行して大きく変わったことなどはありますか。

三村校長先生:本校の場合は、もともと保護者や地域の方が学校のことを大事に思ってくださる地域だったので、コミュニティ・スクールに移行したことで何かが大きく変わったということはありません。しかしながらこの2年間は、コロナ禍で地域に学校を開きたくても現実的には学校に来ていただくことができない状況が続いていましたので、せめて子どもたちの学校での様子をお伝えしようと保護者や地域のみなさまに向けた手紙を書くようにしました。

活発な活動の様子は、ホームページなどからも情報発信されている
活発な活動の様子は、ホームページなどからも情報発信されている

いつも子どもたちのことを気遣って心配してくださる地域のみなさまへ、何らかのかたちで情報発信することが学校としては大事かなと思い、どんな内容にしようか毎回考えながら10日に1回くらいのペースで書いています。学校ホームページ内にある「NEWS 新着情報」の「保護者・地域の皆様へ」というリンクからもご覧いただけます。

「県立浦和高等学校」や「浦和レッズダイヤモンズ」などとの、地元ならではの交流

――「埼玉県立浦和高等学校(略:浦和高校)」やJリーグチーム「浦和レッズダイヤモンズ(略:浦和レッズ)」との交流もあるそうですね。

三村校長先生:はい、「浦和高校」は本校から歩いて3分程と近くにありまして、資料によると2000(平成12)年頃から交流事業が行われているようです。例年、秋頃になると生徒さんたちが本校に来てくださって子どもたちの前でオリジナルの授業をしてくれます。

高校生2〜3人が一組になって授業をしてくれるのですが、低学年の子どもたちを前にして授業をする生徒さんたちもいれば、高学年向けの授業を担当する生徒さんもいて、あらかじめ考えたオリジナルの授業プランをもとに本校の教員と相談しながら当日の授業に臨んでいます。 これは本校の子どもたちにとって大変有り難い機会になっているのはもちろん、「浦和高校」の生徒さんたちにとっても良い経験になっているようです。

スポーツ活動も盛んに行われている
スポーツ活動も盛んに行われている

また「浦和レッズ」ともさまざま交流があります。本校を拠点に活動する「北浦和サッカースポーツ少年団」からレッズの選手として活躍されている方もいますし、イベント開催のときには声をかけていただくこともあります。たとえば、「埼玉スタジアム2002」で浦和レッズの主催試合が行われる際に、本校のマーチングバンドが演奏させていただく「ハートフルコンサート」があります。演奏後はスタジアムの中に入れていただいて試合を観戦させていただく機会もあり、子どもたちはとっても喜んでいました。

子どもたちを地域のみんなで育てて行きたいと願う

――浦和は文教地区として知られていますが、北浦和地区の教育環境についてどのような印象がありますか?

三村校長先生:本校の児童は「本太中学校」に進学するのですが、学校運営協議会に参加した際、地域の方から中学生の挨拶がとても素敵だというお話がありました。おそらく登下校時のことかと思いますが、中学生になっても地域の方にきちんと挨拶ができるというのは素晴らしいことだなと思いました。 学習面で優秀なのはもちろん、スポーツも盛んですし、地域の中で大事に見守られながら子どもたちが育っているのを感じます。

――学校周辺の北浦和の魅力について教えてください。

三村校長先生:学校周辺にお住まいの方は、地域のことを大切に思っている方が多いように感じます。北浦和で育ったことを誇りに思っていらっしゃるし、ご自身のご家族や親戚だけではなくて、地域の子どもたちみんなを大事に思っていらっしゃるというところが素敵だなと思います。教育についても前向きで熱心ですし、学校運営にも協力的で校長としても大変有り難く思っていますし、ハートフルな地域だなと感じます。

地域に愛されながら、長年歴史を紡いできた
地域に愛されながら、長年歴史を紡いできた

今年の「北浦和フェスティバル」は、子どもたちの心を豊かにするというテーマで行いたい、と「地連協」の皆さまとも話し合いを進めています。今年こそは開催しましょうと。「北浦和フェスティバル」をご覧いただければ、良い街だなときっと実感していただけると思いますよ!

学校・保護者・地域のみんなが共に願い、子どもたちの豊かな心を育む「さいたま市立北浦和小学校」
学校・保護者・地域のみんなが共に願い、子どもたちの豊かな心を育む「さいたま市立北浦和小学校」

さいたま市立北浦和小学校

三村悟校長先生
所在地 :埼玉県さいたま市浦和区北浦和2-18-3
電話番号:048-831-2463
URL:https://kitaurawa-e.saitama-city.ed.jp/
※この情報は2022(令和4)年6月時点のものです。

学校・保護者・地域のみんなが共に願い、子どもたちの豊かな心を育む/さいたま市立北浦和小学校(埼玉県)
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