富士見市の魅力と、「シティゾーン」の将来像を富士見市まちづくり推進部の担当者にインタビュー!/富士見市まちづくり推進部 高橋一弥さん、新井健司さん
東武東上線「みずほ台」駅、「鶴瀬」駅、「ふじみ野」駅の3駅を市域にもち、東京のベッドタウンとして発展してきた埼玉県富士見市。近年は「ららぽーと富士見」の開業が大きな話題となり、埼玉県内のみならず広範囲から人々が訪れる街となっている。その富士見市では、「ららぽーと富士見」を含むおよそ100ヘクタールの地域を「シティゾーン」と位置づけて、将来の街のコアエリアとして、現在進行形で開発を行っている。今後、この地区はどのように変わっていくのだろうか。この「シティゾーン」の街づくりを担当されている、富士見市まちづくり推進部市街地整備担当課の高橋一弥さんと、現在は第一線から引退してアドバイザー的な役割を務められている、元部長の新井健司さんのお二人にお話を伺った。
――そもそも、「シティゾーン」とはどういった地区なのでしょうか?
高橋さん:「シティゾーン」は東武東上線「鶴瀬」駅の東口から1.5キロほどの位置に広がる、およそ100ヘクタールの土地で、富士見市のほぼ中央に位置している地域でもあります。「シティゾーン」は、国道254号のバイパスも地区内にあるので、アクセスの良さを活かして、行政・文化・業務等の機能を有する、新しい市の中心拠点を作っていこう、という計画になります。
市では10年ごとに「総合計画」というものを定めていて、それを“上位計画”として政策を進めていますが、この「シティゾーン」という言葉は1991(平成3)年に作られた「第3次総合計画」で示され、そこで計画に位置づけられました。その後、第4次、現在の第5次の総合計画の中でも、引き続き「シティゾーン」という名称が使われています。
「シティゾーン」が定められた当時は、景気も社会情勢も比較的良好な時代でしたので、当初は住居系を主体とした計画でしたが、その後の社会情勢の変化を受けて、住宅ではなく産業系の利用を主にしていこう、という方針に見直されました。
地区内は「A」「B」「C」「D」と4つのゾーンにゾーニングされていますが、この4つのゾーンのうち、Aゾーン(「ららぽーと富士見」の一帯)と、Cゾーン(市役所、図書館、体育館、病院などのエリア)の2つのゾーンが先行して整備され、こちらはおおむね整備が完了している状況です。
残る「B」と「D」の地区については「産業利用」を主にしていく方針となっており、現在、関係者と検討を重ねているという段階です。
――「産業利用」ということは、企業などが誘致されるわけですね。すでに決まっている企業はあるのでしょうか?
高橋さん:上位計画の中で土地利用の方向性が決められますので、第5次総合計画で「産業的な土地利用を中心的に行う」という方向性は決まりましたが、今はその実現に向けて、関係者の中で調整を進めているという段階です。具体的な企業が決まっていくのは、早くても来年度以降になってくるかと思います。
――国道254号バイパスの延伸も進んでいるようですが、「シティゾーン」の開発と連携しているのでしょうか?
新井さん:国道254号バイパスの延伸については、現在、早期の完了を目指して、関連市町で構成している「254バイパス建設促進期成同盟会」が中心となって、県や国にも要望活動を行いながら工事を進めているというところです。橋脚の整備等にも入ってきていますので、我々も期待しながら見ているところです。
連携をしているというわけではありませんが、「シティゾーン」についても、そういった新たな交通利便性をうまく活用できるような施策を考えていきたいと思っています。「シティゾーン」は現時点でも交通の便はかなり良い地区ですので、産業系の立地としては魅力がある場所だと思っています。今後のバイパス延伸を踏まえれば、ますます魅力のある土地になっていくのかな、と期待しています。
――シティゾーン内には産業系の施設だけではなく、緑地や農地も配置される予定されていますね
高橋さん:もともとこの地区は「市街化調整区域」という、法律の面で開発へのハードルが高い地区です。既存の集落や豊かな自然環境といったものはできるだけ残しながら、そのほかの場所を整備していこう、という性質の開発を考えていますので、地区すべてが産業系の施設になるというわけではありません。
――B、Dエリアに関して、なぜ、当初の住居系から産業系に方向転換されたのでしょうか?
高橋さん:もともと富士見市は、昭和40年代の宅地化で一気に人口が増えた街ですので、特に駅周辺に関しては、住宅が密集した市街地になっています。そういった環境の中で、駅の整備も含めた区画整備事業の展開なども行ってきましたので、優良な住宅地という点では、かなり魅力的な環境があるのかな、と思っています。
一方で、市内には商業施設や産業系の施設がほとんど立地していないため、通勤や買い物などについては、市外に出ていく、という方がほとんどを占めていました。かつては埼玉県内でも、「昼間人口」という指標で見るとワーストという時代もあったようです。このことが、以前から大きな課題となっていたんです。
また、今後は日本全体で人口が減っていくという社会になりますから、住民税に依存した財政には限界があります。子育て支援や、これからの市街地整備にあたる予算をしっかり確保するには、やはり、市内に産業系の施設を立地させ、雇用を確保するということが重要になってくるんです。
そういった時代の変化も踏まえますと、シティゾーンは産業系を主体にした開発として、そこに企業にお越しいただいて、雇用をしっかり確保し市の税収をアップすると同時に地域のにぎわいの拠点を作る。そういった展開が、より時代に見合っていると考えました。
――富士見市では流入人口を増やすことを目的に、ファミリー世代にとって魅力的な街づくりに力を入れているとお聞きしました
高橋さん:ファミリー世帯向けの施策では、富士見市は「妊娠から出産まで、切れ目のない子育て支援」ということで、「子育てのしやすい街」というところに重点を置いている市ですので、そういった点ではさまざまな施策があるかと思います。
「健康増進センター」という施設が市内にあるのですが、この中に「子育て未来応援センター」というものが併設されています。妊娠・出産・子育ての相談に対応したり、それに関するさまざまな事業の展開など行っている点などは、特徴のひとつかなと思います。
また、昨今は共働きの世帯が非常に増えておりますので、保育所の整備にも力を入れていますし、小学校に上がってからの放課後のお子さんの居場所として、「放課後児童クラブ」の施設整備なども充実させていますので、共働きの方々にとっても、住みやすい街となっています。
市長がみずから市内の各地区の公民館等に出向いて、市民の皆様から直接意見を聞く「タウンミーティング」も、前市長の時代から継続されており、現市長も非常に力を入れているところですので、富士見市の特徴のひとつになっているかと思います。
――シティゾーンにある代表的な施設といえば「ららぽーと富士見」ですが、ここはほかの「ららぽーと」と比べても、特に行政や住民との距離感が近い施設だと聞きました。なぜ、そういう距離感が実現したのでしょうか?
新井さん:「ららぽーと富士見」は、招致時に富士見市が、三井不動産さんと住民の間に入って調整を進めた経緯があります。何度も何度も説明会を開いて、合意にたどりついて開業に至りました。このことが逆に、施設と地元の相互理解を深めることになったのだと思います。
高橋さん:こういった大規模商業施設の場合、通常だと、地元の商工会のメンバーになるということは無いそうですが、「ららぽーと富士見」は商工会のメンバーに入ってもらっています。地元と意見交換をしながら、商工会とタイアップできる事業があれば共同で行ったりもしています。
――「ららぽーと富士見」と連携して、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか?
新井さん:ひとつは、災害時の対応についての協力体制です。協定を結んでおり、このあたりで万一水害が発生した場合には、ららぽーと内の駐車場を車の一時退避場所として開放してくれる計画になっています。地下にある調節池についても、通常の規格以上の物を作っていただいています。
イベントについては、11月23日の「いい富士見の日」のイベントなどは、「ららぽーと富士見」の駐車場を会場として使わせてもらっていますし、市民祭りにも協賛していただいています。
秋には「ららぽーと富士見」にも協力いただいて、芋掘りもやっています。これはJAさんが主になってやっているんですが、建物のすぐ横に生産緑地があってそこを会場にして、芋や枝豆を植えて、収穫体験を行っています。
高橋さん:各種事業や施策の啓発活動のスペースとしても有効に使わせてもらっています。館内には市民文化祭のPR活動をしたり、市の広報のためのスペースも作っていただいています。中学生の職業体験の場として、積極的に機会も提供してくださっています。また、富士見市では、市内在住・在学の小学4~6年生を対象に、子ども達の知的好奇心を育み、考える力をのばしていくプログラム「子ども大学☆ふじみ」を実施しているのですが、そのなかで、「ららぽーと富士見」内にある「チームラボ 学ぶ!未来の遊園地」の裏側を学習するプログラムを実施したこともあります。
民間が作った商業施設ではあるのですが、「ららぽーと富士見」の場合は「新しい交流拠点」が生まれたような感覚があります。まさに「シティゾーン」が目指すところのひとつなので、今後もさらに、連携を深めていきたいと思っています。
――富士見市内のおすすめのスポットを教えてください
高橋さん:歴史を感じられるものとしては、「難波田城公園」という公園があります。ここにはもともとお城のあった城跡のゾーンと、立派な古民家があるゾーンがあるのですが、そういったものから歴史を学んでいただいても楽しいかと思います。市街地の近くでは、「水子貝塚公園」もいいですね。国の史跡にも指定されている貝塚があり、公園の中に考古館も併設されていますから、富士見市の歴史を知っていただけるような場所になっています。縄文時代の竪穴(たてあな)式住居が復元されていて、その外周が遊歩道になっているのですが、そこで「縄文マラソン」というイベントもあって、これも非常に人気が高いです。
「シティゾーン」では、「キラリ☆ふじみ」という市民文化会館が面白いと思います。「キラリ☆ふじみ」は、様々な文化・芸術の発信拠点になっており、特に舞台の公演が多く、演出家の多田淳之介氏を芸術監督に迎えて、舞台演出をしていただいております。また、市民のサークル活動の発表の場としても、活用していただいています。
高橋さん:市役所近辺では「ふるさと祭り」が大きなイベントですし、水子貝塚の「星空シアター」も人気です。「鶴瀬」駅の近くだと、「諏訪神社」の例大祭も有名ですし、「つるせよさこい祭り」も毎年恒例になっていて、とても賑わいます。
新井さん:「つるせよさこい祭り」は、だいたいその年の最後に開かれるよさこいということで、かなり注目されているんです。ほかの地区からも、「今年最後の締め」ということで踊りに来てくれています。
高橋さん:駅前に行くと古くから続く商店街もありますから、そういったところでは、地元の力も借りながら、地域を盛り上げるためのイベントがいろいろと開催されています。こうして見ると、イベントがとても多い街といえるかもしれません。
――最後に、富士見市の魅力、今後の抱負についてお聞かせください
新井さん:一言でいうと「暮らしてみるとすごくいい街」でしょうか。市内には駅が3つもあり都心に出やすく、市内のバスの便なども良いです。水も緑も豊富ですし、災害も非常に少ない地域とも言えるかと思います。今後も「シティゾーン」を含め、そういった特徴を生かした街づくりを進めていきたいと思っていますので、ぜひ一度、富士見市にお越しいただきたいです。
高橋さん:富士見市は「これから作っていく」ということができる街なので、より多くの人に富士見市に住んでいただけるように、今後も魅力的な街づくりをしていきたいと思っています。
富士見市役所
富士見市まちづくり推進部 市街地整備担当課長 高橋一弥さん
富士見市まちづくり推進部 まちづくり推進課 専門員 新井健司さん
>URL:http://www.city.fujimi.saitama.jp/
※この情報は2018(平成30)年11月時点のものです。
富士見市の魅力と、「シティゾーン」の将来像を富士見市まちづくり推進部の担当者にインタビュー!/富士見市まちづくり推進部 高橋一弥さん、新井健司さん
所在地:埼玉県富士見市鶴馬1800-1
電話番号:049-251-2711
開庁時間:8:30~17:15(祝日と年末年始を除く)
※第1土曜日8:30~12:30に一部窓口を開庁(3月最終土曜日と4月第1土曜日は開設窓口を追加して17:15まで開庁)
休庁日:土曜日(第1土曜日・3月最終土曜日を除く)、日曜日、祝日、年末年始(12/29~1/3)
https://www.city.fujimi.saitama.jp/