宣伝部長 山田章博さんインタビュー

時代のニーズを汲み取り発展しつづける『日暮里繊維街』/東京日暮里繊維卸協同組合(東京都)


およそ90店舗ものお店が集まる、東京都荒川区の繊維問屋街『日暮里繊維街』。小物や付属品に至るまで生地織物に関するあらゆるものが揃う全国でも有数の地域で、プロ・アマ問わず、学生から若者、年配の方まで幅広い層の買い物客で賑わっています。昨今はSNS、CtoCの個人間取引や、コスプレなどで手工芸に親しむ人も多く、国内はもとより海外からも注目を集めています。 今回は、『日暮里繊維街』の歴史や街の魅力について、令和2年(2020年)1月より「東京日暮里繊維卸協同組合」の宣伝部長を務め、ご自身も生地・手芸材料の店『やまよ』を営む山田章博さんにお話を伺いました。

「東京日暮里繊維卸協同組合」宣伝部長 山田さん
「東京日暮里繊維卸協同組合」宣伝部長 山田さん

組合の設立より50周年のを迎えた『日暮里繊維街』の歴史

――『日暮里繊維街』の歴史、また組合の成り立ちについて教えていただけますでしょうか?

山田さん:『日暮里繊維街』の歴史は、当組合ホームページの「日暮里繊維街とは」にも詳しくまとめているのでぜひご覧頂きたいのですが、大正時代の始め頃に工場で要らなくなった古繊維を扱う業者が日暮里、三河島周辺に集まったのがはじまりと言われています。
その後、昭和に入り街の区画整理が進むと、店売りの業者も増えて街としての賑わいを見せるようになっていったそうです。

日暮里繊維街のかつての街並み
日暮里繊維街のかつての街並み

山田さん:当時、神田(岩本町)や浅草(寿町)には工場や大問屋から出る2等品や見切り品を扱うハギレ問屋が多く、日暮里の業者もそういった問屋からハギレや裁落、2等品を仕入れて販売していたそうです。一時、戦争による物資不足などで営業できない時期もあったようですが、戦後の復興とともに発展、拡大を遂げて現在の街の基盤を築きました。

組合の成り立ちとしては、昭和23年(1948年)に結成された『東京フェンツ協同組合』と、昭和31年(1956年)結成の『荒川羅紗裏地卸商睦会』という2つの団体を前身として、昭和44年(1969年)に合併し、『東京日暮里繊維卸協同組合』が誕生しました。

この街と共に歩んできた歴史あるお店も多い
この街と共に歩んできた歴史あるお店も多い

山田さん:設立より50年を迎える歴史のある組合ですが、現在もおよそ60社、90店舗が加盟しています。全国有数の繊維問屋街『日暮里繊維街』としての発展はもとより、ファッションショーなどの開催を通じて日暮里地域の活性化を図る事業にも取り組んでいます。

専門の卸から、一般客を対象にした小売への転換。海外の観光客にも人気。

――近年の動向や変化などについてお聞かせください。

山田さん:私が『日暮里繊維街』で勤め始めたのは20数年前のことですが、当時は卸のお客様もまだ多くいらっしゃいました。扱う商品の量も多く、かなり大きな数の注文もしばしばありましたね。

しかし時代の変化とともに生産拠点を海外に移すメーカーさんが増えると、国内の縫製工場に納めることも少なくなり、10年ほど前からは現在のような小売業の形態としてお客様をお迎えする店舗が増えてきたように記憶しています。当時の変化として今もよく覚えているのは、商品の値札付けですね。もともと卸としてやってきたので、生地に値段をつけていないところがほとんどだったんです。

年代も目的も、幅広い客層
年代も目的も、幅広い客層

山田さん:そこで、私のお店でも一般の方がお買い求めやすいように商品に値札を付けるようにしました。他にも、以前は1メートル以下のサイズでは売らなかった生地を、10センチ単位で購入していただけるようにしたり、Webを使ったインターネット販売も大きな変化だと思います。

山田さんのお店で取り扱っている手芸材料の例
山田さんのお店で取り扱っている手芸材料の例

山田さん:また最近の動向としては、フリマアプリなどのCtoCのサイトや、インスタグラムなどのSNSが発展し、個人で作って販売する、あるいは発表する手軽な媒体が増えたこともあり購買の意欲が高まっている気がします。さらに国内のお客様だけではなく海外からのお客様も増えており、観光客の方も多くいらっしゃるようになりました。

「にっぽり繊維街まっぷ」も多言語版を用意しておりますし、去年はお店で使える英会話というテーマで勉強会もやりました。

「日暮里繊維街」インタビュー
「日暮里繊維街」インタビュー

日暮里地域の活性化を図る目的で開催されるファッションショー

――加盟店同士の交流やイベントなど、『日暮里繊維街』独自の取り組みについてご紹介ください。

山田さん:加盟店の交流に関しては、月1回の定例会と、45歳以下のメンバーを中心に構成される青年部会で加盟店同士の交流を図っています。また各々ご近所の店舗と情報交換をする機会も多々あると思います。特に組合の約束事というものではないのですが、どの店舗も自分のお店で取り扱いの無い商品があれば仲間の店舗を紹介するようにしています。

昨年11月に開催された「日暮里コレクション2019」
昨年11月に開催された「日暮里コレクション2019」

山田さん:またイベントに関しては、季節ごとの加盟店一斉の大売り出しセールのほか、日暮里地域の活性化を図る目的でファッションショーを開催しており、昨年11月に15回目となる「日暮里コレクション2019」を実施しました。

 

「日暮里繊維街」インタビュー
「日暮里繊維街」インタビュー

海外からのお客様も増え、多様なニーズに応える現状

――『日暮里繊維街』に訪れる方の客層や目的などについて、また地元の方の利用状況はいかがでしょうか。

山田さん:以前は中小の既製服メーカーさんやオーダー屋さん、洋裁教室の先生など、生業とされている方がほとんどでしたが、現在は劇場の舞台衣裳を作成される方やコスプレをされる方、ネットで作品を販売される方など、挙げればきりがないくらい多様な方がお見えになります。年齢も専門学校に通う学生さんから若者、高齢の方まで幅広くいらっしゃいますし、女性の方だけではなく男性の方も多くお見えになります。

またお客様がいらっしゃるエリアも、区内はもとより国内でも遠方からいらっしゃる方や、海外のお客様もアジア圏、欧米と多方面からいらっしゃるようになりました。気がつくと店内にいる日本人は私たちスタッフだけという状況もよくあります。地元の方に関しては、小さいお子様がいらっしゃるお母さまが通園用のバッグやお遊戯会の衣装などを作成する際にご利用いただいていると思います。

最近は海外からのお客様も多い
最近は海外からのお客様も多い

日暮里地域の発展に寄与する施設になってくれることに期待

――2020年度に開設予定の『日暮里地域活性化施設』について、今後の街の展望についてもお聞かせください。

山田さん:『日暮里繊維街』のメインストリートになる日暮里中央通り沿いに『日暮里地域活性化施設』の整備が進められています。以前、区民事務所があった場所で、5階建の建物になるようです。1階は区民事務所として、4階、5階にはそれぞれ創作スペースや創業を支援するためのインキュベーション施設を予定しているそうです。組合としてどうお手伝いできるかはまだ詳しいお話を伺っていないのですが、「繊維の街・ファッションの街」として注目されている日暮里地域のさらなる発展に寄与する施設になってくれればありがたいなと思っています。

お客様の多様なニーズに応える新しいWebサイトをリリース

――最後に、宣伝部長ならではの『日暮里繊維街』の楽しみ方や魅力、その他メッセージをお願いいたします。

山田さん:このたび『日暮里繊維街』のHPが新しくなりました! 大きく変わったのは中国語版、英語版にも表示を変えられるようになり、多言語対応のグローバルなサイトへ一新いたしました。

リニューアルした「日暮里繊維街」HP
リニューアルした「日暮里繊維街」HP

山田さん:また、街の回遊、観光という観点から「お食事」というカテゴリーで近隣の飲食店様の情報を初めて掲載させていただきました。買い物をするお客様から、ひと休みできる場所が欲しいといった声は以前からお聞きしていたので、ぜひご活用いただければと思います。また「日暮里繊維街」の楽しみ方ですが、ものづくりをされる方にはお店を一軒一軒まわっていただいて、可能であれば店員さんにお話を聞いていただけると、より深く「日暮里繊維街」を知っていただくきっかけになると思います。

山田さんのお店で取り扱っている手芸材料の例
山田さんのお店で取り扱っている手芸材料の例

山田さん:例えば仮縫い用のシーチング。洋裁をしない方には馴染みが無い生地だと思いますが、多くの方がこれを求めて当店にいらっしゃいます。他にも生産されていないビンテージのボタンやタイで生産されているブレードと呼ばれる装飾用の商品も人気で、お店ごとにいろんな発見や出会いがあると思います。

「日暮里繊維街」のマスコットキャラクター にっぽりん
「日暮里繊維街」のマスコットキャラクター にっぽりん

山田さん:一方、初心者の方でものづくりに興味があるといった方には、HPの下にある「SEARCH KEYWORDS」のところから「教室」をご覧いただければと思います。洋裁教室やミシン講習会、ワークショップなどを開催しているお店を集めてみました。お店でこのような教室を開くようになったのはここ数年の新しい取り組みです。

今後もお客様のニーズをくみ取りながら、充実した情報を発信していきたいと思っていますので、手芸が好きな方や気になる方はHPや実際の繊維街にもぜひいらしてください!

まとめ

いかがでしたでしょうか。東京都荒川区の日暮里駅から日暮里中央通りを中心に、ファッション・手芸・ものづくりを楽しむ方々が材料を探しに訪れる街『日暮里遷移街』。その歴史は古く、大正12年の震災、昭和13年の日暮里大火を経て、日暮里地区の区画整理から始まったものとされています。東京は、区や市によって特徴が異なり、趣も雰囲気もまた異なり、荒川区では、本記事のようなファッションとともに歩んできた歴史のある町です。ふとした東京観光のタイミングや、これから、荒川区への転居や移住をお考えの方の参考になれば幸いです。

「東京日暮里繊維卸協同組合」宣伝部長 山田章博さん
「東京日暮里繊維卸協同組合」宣伝部長 山田章博さん

東京日暮里繊維卸協同組合

所在地: 東京都荒川区東日暮里4-33-3
電話番号:03-3803-4007
URL:https://www.nippori-senigai.com/
※この情報は2020(令和2年)年3月時点のものです。