校長 山口早苗先生インタビュー

ゆたかな自然がのびやかな心を育てる小学校/日野市立旭が丘小学校(東京都)


日野市の西の端、旭が丘地区にある「日野市立旭が丘小学校」は、この地が宅地開発された1970年代に誕生した小学校。もともと「平山台」といわれていたこの地域は、浅川の河岸段丘上にある眺望の良い地で、地区でもっとも背が高い建物である小学校から初日の出を眺める「元旦マラソン」が、開校以来の名物イベントとして根付いているという。

現在、この学校に通う子どもたちは約500名。段丘崖にある自然林が学校施設の一部として利用されており、雑木林を授業の中で活用する場面も多く、学校を特色づけている。今回は2021年の春から校長として着任された、山口早苗先生に学校の特徴と地域の魅力をうかがった。

「日野市立旭が丘小学校」山口校長先生
「日野市立旭が丘小学校」山口校長先生

豊かな自然が子どもたちを育む

―まずは、「旭が丘小学校」の歴史と概要について教えてください。

本校は、「日野第六小学校」と「滝合小学校」の児童増加にともない、日野市内18番目の小学校として、昭和52(1977)年に開校した小学校です。ちょうど今年の春に卒業生が5千名を超えまして、現在は17学級493名の児童が元気に通っております。

立地については、この旭が丘という地域は日野市の南西部、八王子市との境目に位置しておりますので、学校の周辺には畑や雑木林が多く、近くに広い公園もあり、市内でも自然が豊かに残っているという環境にあります。

畑や雑木林に囲まれた緑豊かな環境
畑や雑木林に囲まれた緑豊かな環境

旭ヶ丘小学校の3つの特徴

―教育活動の中で、特に力を入れて取り組んでいることを教えてください。

まず基本的なこととして、「すべての子どもたちが元気に、日々安心して楽しく学校に通って、“明日もがんばろう”と思えるような学校を目指しています。「子どもも大人もみんなの笑顔が輝く学校」ですね。

それから、地域や保護者の方々と心が通いあって、ともに子どもたちをはぐくんでいく、「地域の風が行きかう学校」というものも目指しています。

具体的には、本校には大きな柱として、3つの特徴があると思っております。まず1点目は、「運動がさかんな学校」であるということですね。

本校は日野市から長らく「アクティブライフ研究実践校」として指定されており、体育の研究をしていました。月に1回の「全校体育朝会」、また週に2回の「アクティブスポーツの時間」というものが設定されていて、子どもたちはさまざまな運動に挑戦しています。

実際に体力テストの結果を見ても、ほとんどの種目で東京都の平均以上の数値ですし、日野市の「ロープジャンプ大会」でも何回も優勝をしています。また、「日野市民陸上競技大会」という市民の大会で、学校対抗の部で優勝をしたこともあります。全体的に、スポーツのさかんな学校だということが、特徴の一つです。

週2回の「アクティブスポーツの時間」で体力づくり
週2回の「アクティブスポーツの時間」で体力づくり

2つ目の特徴は、「雑木林」の存在です。学校の敷地の南側に雑木林があり、その雑木林を活用した教育活動も数多く行っています。自然が多く残っている日野市内でも、学校の中に雑木林があるというのは、本校だけかと思います。

―学校の隣に雑木林があるのではなく、学校の敷地の一部が雑木林なのですね。

そうなんです。雑木林があるのは段丘の斜面のところですが、ここも学校の敷地の一部で、校庭から簡単に入れるようになっていまして、授業の中でもいろいろな活用をしています。朝会をする時も、雑木林に向かって並ぶような感じになりますので、子どもたちにとっても身近な存在なんですね。この朝会の時に立つ台も、実は雑木林の木を活用して作ってあります。

また、この雑木林の手入れには、地域の方や保護者の方々にもご協力をいただいて、年に2回ほど手入れをしていただいていますので、いつでも安全できれいな状態に保たれています。

学校の敷地内にある雑木林
学校の敷地内にある雑木林

―3つ目の特徴は何でしょうか?

3点目は「合唱団」です。本校の合唱団は、過去には「NHK全国学校音楽コンクール」地区大会で銀賞を受賞するなどの活躍をしております。コンクール以外でも、地域の病院や、福祉施設、近隣の老人ホームなどを訪問して、合唱を披露しております。また、毎年3月に「花びらコンサート」を開催していまして、感染症の前までは、たくさんの地域の方においでいただいていました。

この3点が本校の大きな特徴になりますが、もっとも特徴的なのは、「雑木林」かもしれませんね。

環境を生かしたユニークな取組

―雑木林や、周辺の自然環境を生かした教育活動について教えてください。また、その自然を使った地域との交流活動などもありましたら教えてください。

雑木林については、生活科や総合的な学習の時間をはじめ、さまざまな教科で活用しております。たとえば四季折々の植物を観察したり、生き物とふれ合ったり、図工の時間に雑木林で絵を描いたり、といった活用をしています。

また、昨年度は初めて、展覧会の会場としても利用しました。雑木林に子どもたちの絵画などを展示して、保護者の方に見ていただきました。私は今年の着任なので写真でしか知りませんけれども、とても好評だったと聞いております。

雑木林を活用した教育活動
雑木林を活用した教育活動

地域との交流に関しては、この旭が丘地区は、童謡「たきび」の作詞家で有名な巽聖歌(たつみせいか)氏が晩年を過ごした地域でもありますので、この歌にちなんだ「たきび祭」というお祭りが、地域の人の手によって行われています。この「たきび祭り」に本校の子どもたちも参加しています。

実は本校の敷地内では、1・2年生が「旭が丘商工連合会」や「たきび会」の方々に協力を頂きながら、サツマイモを育てています。この「たきび祭」にはその収穫祭という意味もありますので、毎年、このお祭りの時には本校の合唱団がステージに立って、「たきび」の歌を披露しています。また、1・2年生は「いもいも音頭」を踊って、これも地域の方々に楽しんでいただいています。

「いもいも音頭」を楽しむ行事「たきび祭」は地域の人々とのふれ合いの場
「いもいも音頭」を楽しむ行事「たきび祭」は地域の人々とのふれ合いの場

―「いもいも音頭」とはユニークな踊りですね。ほかにも「元旦マラソン」など、独特な伝統行事があると聞きました。これはどのような内容でしょうか?

「元旦マラソン」については、本校の開校の年からの伝統行事としてずっと続いているもので、これは元旦の早朝に行われています。日の出前に保護者の方と子どもたちが学校に集まって、学区域内をランニングして、走った後にちょうど日の出くらいの時間になりますので、学校の屋上に上がって初日の出を見るという素敵なイベントです。ここは旭が丘という地名のとおり、朝日が非常にきれいに見えるところです。昨年度はこれも中止になってしまいましたが、毎年楽しみにされている方が多いと聞いています。

元旦の早朝に行われる伝統行事「元旦マラソン」
元旦の早朝に行われる伝統行事「元旦マラソン」

「元旦マラソン」後、学校の屋上で初日の出を見るのも楽しみの一つ
「元旦マラソン」後、学校の屋上で初日の出を見るのも楽しみの一つ

もうひとつ、地域の方の協力を得ながら行っている行事に、夏休み期間中の「サマースクール」というものがあります。これは3年ほど前に始まった新しい行事ですが、普段から学校をサポートしてくれている「旭が丘サポートボランティア」の方々が主催してくださって、1回目と2回目の時には、学校で飯ごう炊さんをして、カレーライスを作って食べる、という企画をしました。これも感染症の関連で、本年度はちょっと難しそうですが、今後根付いていけば良いなと思っております。

「サマースクール」でカレーライスづくりを体験
「サマースクール」でカレーライスづくりを体験

校内で栽培している野菜
校内で栽培している野菜

―冬に行われている「旭小まつり」とは何でしょうか?

「旭小まつり」は学校行事のひとつでして、毎年1回、土曜日に開催しています。各学級で創意工夫をしたお店を開いて、子どもたちの半分が「お店屋さん」に、もう半分が「お客さん」になって、お祭りを楽しむというものです。学校行事ですので、外から人が来ることはありませんが、子どもたちがとても楽しみにしているイベントのひとつですね。

毎年1回開催される「旭小まつり」
毎年1回開催される「旭小まつり」

地域との連携で視野が広がる

―近隣には平山工業団地もあり、企業の研究所等が集積していますね。そういった企業等との連携はありますか?

企業との連携については、まずひとつは、5年生の社会見学の時に訪問をさせていただいています。ほかの学校ですと、バスなどを使って移動するのが普通だと思いますけれども、本校は徒歩で行ける範囲内に企業の工場や研究所がありますので、毎年徒歩で行っています。

また、今年度から、豊田に本社がある「GEヘルスケアジャパン」という企業のご協力を得まして、「発明家になろうプロジェクト」という授業を行う予定で進めています。

こちらは「未来の日本や世界を支える、想像力豊かな人材をはぐくむ」ことを目的にしていて、子どもたちが、自分の住む地域や社会の課題を自分たちで見つ出して、それを解決するための発明品を作る、ということを目的にしています。

こちらは今年度初めての取り組みですが、子どもたちがどんな発明品を作るか、今から非常に楽しみな取り組みで、今後も継続できればいいなと思っております。

教室
教室

―周辺には学校や福祉施設なども多くあるそうですね。こういった学校や施設等との交流はありますか?

本校の近くには障がい者施設や福祉施設が幾つかありますので、こういった施設の方々との交流も、感染症が広がる前には頻繁に行っていました。

今後も終息後には交流を復活させて、子どもたちの視野が広がる機会にできればと思っております。

学校との交流に関しても、この辺りには公立私立の保育園・幼稚園、小中学校、高校、大学まで、非常に多くの教育施設が集まっていますので、子どもたちはいろんな方と関わることができています。

一例では、幼稚園・保育園に関しては、1年生と5年生が一緒に活動を行っていますし、八王子東高等学校の生徒さんには、夏の補習講座の時に本校に来ていただいて、関わりを持っていただいています。

校内
校内

笑顔あふれる学校を目指して

―先生方が日々、子どもたちと関わる中で大切にしていることは何ですか?

最初に申し上げたとおり、すべての子どもたちが元気に、日々安心して、楽しく、学校に通えるように、ということはつねに考えていますね。

また、日野市全体としては、「第3次日野市学校教育基本構想」に沿って、すべての小学校が教育活動を進めておりますので、そこに描かれている、「すべての“いのち”がよろこびあふれる未来をつくっていく力」というものを意識しながら、学校、家庭、地域、そして子どもたちと、みんなで協力して、笑顔のあふれる学校を作っていけたらなと思っております。

地域の特色を活かした教育活動を推進
地域の特色を活かした教育活動を推進

教育目標
教育目標

豊田・旭が丘エリアの魅力

―最後に、ここ豊田・旭が丘地域の魅力を教えてください!

この学校も含めて、緑がすごく多い地域だということですね。近くに大きな公園もありますし、少し行けば浅川もありますので、本当に豊かな自然の中で、のびのびと子育てをできる環境があると思います。また、教育施設も非常に整っていますし、病院や福祉関係も充実している点も、子育て中の方には魅力的だと思います。

買い物に関しても、豊田駅前にイオンモールがあり、反対側にはすぐに八王子の街がありますので、利便性が高い地域だと思います。

駅からは少し遠い地区かもしれませんが、そのぶん緑が多くて、静かで、並木も美しく、街並みもきれいですから、歩いているととっても気持ちがいい街ですね。

「日野市立旭が丘小学校」校門
「日野市立旭が丘小学校」校門

「日野市立旭が丘小学校」
「日野市立旭が丘小学校」

「日野市立旭が丘小学校」
山口校長先生

所在地 :東京都日野市旭が丘5-21-1
電話番号:042-583-3733
URL:http://www.e-asahigaoka.hino-tky.ed.jp/
※この情報は2021(令和3)年7月時点のものです。

ゆたかな自然がのびやかな心を育てる小学校/日野市立旭が丘小学校(東京都)
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