市街地整備課 まちなか未来創生室 板垣充さんインタビュー

地域の豊かな資源を未来につなぎ、エリア全体の活性化を目指す/盛岡市役所 まちなか未来創生室(岩手県)


2022(令和4)年秋までに開業予定の盛岡バスセンター※施設の外観はイメージであり、実際の建物とは異なる部分があります。
2022(令和4)年秋までに開業予定の盛岡バスセンター※施設の外観はイメージであり、実際の建物とは異なる部分があります。

岩手県の内陸中心部に位置する盛岡市は、豊かな自然環境と都市の快適さが調和するエリアです。街の中心に川が流れ、岩手県のシンボルである岩手山が街を見守っており、四季の移ろいが感じられる美しい景観を保持しています。また、県都として多くの都市機能が集積しており、新幹線や電車、バスなど交通の便も良く、快適な暮らしを支えています。来年度には、中心市街地の河南エリアに新たな拠点施設がオープンする予定。街の賑わいを創出すべく、行政と民間が一体となって協働してまちづくりに取り組んでいます。今回は、盛岡市都市整備部市街地整備課まちなか未来創生室の主任・板垣充(いたがき みつる)さんにお話を伺いました。

豊かな自然と都市機能が調和する盛岡市

まちなか未来創生室の板垣充さん
まちなか未来創生室の板垣充さん

――はじめに、盛岡市の概要について教えてください。

板垣さん:岩手県内陸中心部にある、人口およそ29万人の都市です。もともとは16世紀末に南部氏によって築城された盛岡城のもとに、城下町として発展してきたエリアが今も中心市街地となっていて、先人たちが築いてきた歴史文化が今も街に息づいています。自然景観に恵まれた土地であり、都市機能も集約されているので、住み心地が良いという声をよく聞きます。また、「冷麺」「じゃじゃ麺」「わんこそば」の三大麺をはじめ、日本酒や地ビール、野菜、魚介など、美味しい食に恵まれた土地です。

――盛岡のまちづくりのコンセプトについて教えてください。

板垣さん:「心を育む、歴史と風格のあるまち 盛岡の形成」を基本理念に、「都市計画マスタープラン」で策定した構想に沿って進めています。キャッチフレーズは「みどり、にぎわい、なつかしさ」。これまで培ってきた盛岡らしい文化を守り、育み、開花させることを狙いとしています。そのためには、本市の財産である自然や歴史を次の世代へ継承していくことが大切になると考え、人や環境に優しいまちづくりを市民協働で行なっています。

長年愛された施設を新たな賑わいの場所へ

旧盛岡バスセンター
旧盛岡バスセンター

――現在取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。

板垣さん:中心市街地の東側にある河南エリアの活性化を目指したプロジェクトを進めています。このエリアに、昭和30年代から市民の生活に寄り添ってきた「盛岡バスセンター」という施設があったのですが、建物の老朽化などの事情から2016(平成28)年に営業を終了しました。その時から、長年利用してきた市民の皆さんから「復活させてほしい」と強い要望があり、「新盛岡バスセンター整備事業」として公民連携で整備することになりました。来年の秋までに開業する予定で工事を進めているところです。

――バスセンターは、もともとは民間企業が運営していたそうですね。

板垣さん:「株式会社盛岡バスセンター」が運営していました。昭和30年代にできた建物だったので老朽化と耐震性の課題を抱えていましたが、建て替えるには負担が大きすぎることから営業終了に至ったそうです。私たちもそのお知らせを見て驚きましたし、市民の皆さんにとっても衝撃的な出来事だったと思います。

――市民の方々に愛されてきた場所だったんですね。

板垣さん:そうですね。昭和レトロな風情ある建物だったので、建物を残して欲しいという声もありました。リノベーションなども検討されてきたのですが、やはり建物の老朽化が進みすぎていたので、新築する必要があるという判断に辿り着きました。公共施設であるバスターミナルと、民間による賑わい施設の2本立てで整備しようという基本方針を2018(平成30)年9月に出しました。現在は公民連携方式で事業を進めているところです。

開業予定の盛岡バスセンターの施設内イメージ※施設の内観はイメージであり、実際の建物とは異なる部分があります。
開業予定の盛岡バスセンターの施設内イメージ※施設の内観はイメージであり、実際の建物とは異なる部分があります。

――どのような施設になる予定ですか。

板垣さん:以前のバスセンターに似た形状の、3階建の建物になる予定です。1階はバスロータリーと待合室のほか、マルシェが入る予定です。2階には子育て支援施設と飲食店、3階には、福祉実験ユニット「株式会社ヘラルボニー」がアートデザイン等をプロデュースするホテル「MAZARIUM」や、サウナ付きの温浴施設などができる予定です。また、現在盛岡駅近くにお店を構えるジャズバー「開運橋ジョニー」が3階のラウンジとしてテナントを出店される予定で、世界的に有名なジャズピアニスト・穐吉敏子さんのミュージアムをラウンジに併設しようと準備を進めており、クラウドファンディングによる資金調達にも挑戦する予定です。

1階に整備される予定のバスロータリーのイメージ※施設の外観はイメージであり、実際の建物とは異なる部分があります。
1階に整備される予定のバスロータリーのイメージ※施設の外観はイメージであり、実際の建物とは異なる部分があります。

――プロジェクトを進める中で大切にしていることを教えてください。

板垣さん:コンセプトを「ローカルハブ」として、地域の魅力や人、資源や情報などを結びつけて、そこからにぎわい創出を図ることを目指しています。世界的ジャズピアニストの穐吉さんを通じて世界中と盛岡をつないだり、ホテルには障がいのあるアーティストが制作したアートを取り入れたりと、多様で広がりのある場所にしていきたいという思いで取り組んでいます。もともと河南地区はさまざまな人が行き交うエリアです。仕事で来ている人もいれば、住んでいる人もいる。遊びに来る人もいれば、学習塾に通っている人もいる。住宅地というわけでも、単なる繁華街というわけでもなく、さまざまな人が行き交っている。そういった土地が持つバックグラウンドを、新しいものに反映してつなげていくことを大切にしています。例えば昔はこのあたりに銭湯があったことを受け継いで新たに温浴施設を作ろうとかもありますし、近くにゲストハウスもあるため、バスセンターのホテル宿泊者だけでなく、そういったところに宿泊する方々の需要もあると思います。テナントも県外の大手ではなく、基本は地元のお店に入っていただく予定です。

――このプロジェクトからどんな変化や効果が見込まれるでしょうか。

板垣さん:実はこのプロジェクトが始まってから、空き店舗や空き地を見つけて商売を始める人がでてきています。地域が大きく変わる時だからこそ、自分がやりたいことや地域に貢献できることをビジネスとして始めたいという声もあります。大きなプロジェクトだけでなく、それに連動した小さなプロジェクトが連鎖して、エリア全体のリノベーションにつながっていくといいなと思っています。それを実現することで、人が交流し、地元の経済が回り、県内各地の農・畜・海産物などが満遍なく消費されるようになり、生産者に還元されるというように、経済循環していくのが理想です。県民の所得水準の向上にもつながるでしょうし、職の選択肢があって収入を得られることから若者が地元に留まることも増えるのではないかと思っています。

河南エリアを盛り上げる新たな商業施設「monaka」

バスセンター向かいに整備予定の「monaka」のイメージ※施設の外観はイメージであり、実際の建物とは異なる場合があります。
バスセンター向かいに整備予定の「monaka」のイメージ※施設の外観はイメージであり、実際の建物とは異なる場合があります。

――バスセンターの向かいにも新たな施設ができると伺いました。

板垣さん:はい。民間の事業で「monaka(もなか)」という商業施設が開業予定です。経緯はバスセンターの状況と似ていて、もともと「Nanak(ななっく)」という商業施設があったのですが、2019(令和元)の6月に突然閉店となりました。河南エリアの賑わいの一端を担っていた施設だったので、残って欲しいという気持ちがあったのですが、経営判断もあって閉店に至ったようでした。市としてもなんとかできないかと思っていたのですが、建物が大きく、老朽化が進んでいたため、建て直しにはかなりの費用がかかることでした。そんな中で、市内の企業が立ち上がり、Nanakの土地と建物を買って、周りの地権者の方々と一緒に再開発準備組合を作りました。Nanakの跡地一帯を開発したいということで、市に支援をして欲しいという要望があり、準備組合と一緒に市街地再開発事業としてプロジェクトを進めることになりました。

向かいに開業するバスセンターと合わせてエリアの活性化を図る※施設の外観はイメージであり、実際の建物とは異なる場合があります。
向かいに開業するバスセンターと合わせてエリアの活性化を図る※施設の外観はイメージであり、実際の建物とは異なる場合があります。

――monakaはどのような施設になる予定ですか。

板垣さん:地上4階建ての商業施設となる予定で、2024(令和6)年4月中旬の開業を目指して準備を進めています。1、2階を商業施設、3階を医療・教育関連施設、4階をオフィスで構成し、隣接する「肴町商店街」から直接2階へアクセスできる階段およびデッキを付けるほか、2階部分東側にオープンデッキを設置し、休憩スペースを設けるなどの計画が発表されています。また、monakaとは別の建物ですが、再開発エリア内の東側には22階建ての高層マンションの建設が予定されています。バスセンターには入らない機能がmonakaに入っていると相乗効果を図ることができるという意図を汲んで進めていただいていると思います。

歩いて楽しい盛岡市中心市街地の魅力

盛岡駅付近に整備され、賑わっている「木伏緑地」
盛岡駅付近に整備され、賑わっている「木伏緑地」

――盛岡中心市街地の魅力をお聞かせください。

板垣さん:駅周辺は、4月から11月までの毎週土曜日に開かれる「材木町よ市」や、2019(令和元)年に完成して賑わいを見せている「木伏緑地」などが魅力的ですね。繁華街である大通周辺は、昔からある商店や老舗百貨店のバルクアベニューカワトクなど、大小の小売店舗が集まったエリアで、ショッピングを楽しめます。また、昔映画館がたくさん集まっていたことから名付けられた「映画館通り」には、今も複数の映画館が残っています。盛岡城跡公園周辺には、「もりおか歴史文化館」があったり、中心市街地全体が音楽に包まれる「いしがきミュージックフェスティバル」が開催されたりと、文化と歴史を感じられるエリアになっています。現在バスセンターとmonakaのプロジェクトを進めている河南エリアも今後大きな魅力になっていくと思います。コンパクトながらエリアごとに違った魅力があるので、歩いているだけでも楽しい街だと思います。

――最後に、これから新しく盛岡に住まれる方々に向けてひと言お願いします。

板垣さん:私は県南の花巻市出身なのですが、盛岡で過ごすようになって、四季が感じられる川が街中を流れているのが良いなと思います。都会過ぎず、田舎すぎず、住むにはとても良い土地柄だなと感じています。市ではU・Iターンや移住定住の支援にも取り組んでいるので、相談していただけたらと思います。

岩手山と開運橋(提供:盛岡市役所)
岩手山と開運橋(提供:盛岡市役所)

盛岡市役所

市街地整備課 まちなか未来創生室 板垣充さん
所在地:岩手県盛岡市津志田14-37-2 都南総合支所2階
電話番号:019-651-4111
URL:city.morioka.iwate.jp
※この情報は2021(令和3)年8月時点のものです。

地域の豊かな資源を未来につなぎ、エリア全体の活性化を目指す/盛岡市役所 まちなか未来創生室(岩手県)
所在地:岩手県盛岡市内丸12-2 
電話番号:019-651-4111
https://www.city.morioka.iwate.jp/shisei..