子育て支援部育成課長 横山雄司さんインタビュー

区民目線で幅広く、きめ細かく整備された子育て支援施策を行う葛飾区/葛飾区役所(東京都)


葛飾区は、その多くは下町情緒あふれる街並みが広がる閑静なエリアだが、最近は大型の商業施設やマンションも次々と建ち、子育て中のファミリー層の人気を集めている。加えてさらに、毎年着実に増え続けている子ども人口を受けて、子育てに関する施策も年々よりきめ細やかに拡充され、保育所の定員も年々確実に増やされるなど、行政が積極的に子育て支援に乗り出している点も、人気の理由の一つである。今回は葛飾区子育て支援部育成課長の横山雄司さんに、区の子育て支援策と将来像についてお話を伺った。

――葛飾区の子育て支援についてお教えください

区民の方のご要望に応じながら、幅広く対応していますが、よく注目されるという意味ですと「0歳児の予約入園」や、多子世帯に対しての幅広い支援、所得制限の無い保育園・幼稚園の保育料の負担軽減などがあります。昨年、とある媒体で全国147自治体の「共働き子育てしやすい街ランキング」というものを行った際、葛飾区は第8位という評価をいただきました。その中でも、これらの施策を評価してくださる意見が多く見られました。

「予約入園」は、0歳のお子さんの保育園入園を、育児休業明けの時期に合わせて予約できるという制度です。定員57名に対して毎年3倍くらいの申込みがある非常に人気がある制度で、育児休業を取られる保護者の方にとって、安心してお使いいただいているかと思います。

多子世帯の支援は、ほかの自治体でもやっていますが、葛飾区では兄弟姉妹間の年齢がどのくらい空くかということを幅広く想定して、多子世帯の認定をしています。たとえば2人目、3人目の保育料の負担軽減を算定する時に、お子さんの対象範囲を、中学までを含めたりと、非常に幅広い範囲で捉えているため、多くの方が軽減の対象となります。医療費等にも関わってくる部分ですが、多子世帯のご家庭が少しでも負担が少なく子育てをできるような施策を実施しているというのは、葛飾区の特徴の一つかと思います。

保育料の負担軽減については、低所得者の方への経済支援の加え、子育て期を通じた支援という視点から、所得の高い方についても、保育所だけではなく、幼稚園利用者への支援として、いわゆる「所得制限なし」で、少しでも負担軽減をできるような仕組みになっています。また、今は幼稚園が預かり保育を一緒にやっている場合もあり、そういった預かり保育の利用者に対しても、利用料が軽減されるよう幼稚園への支援もしています。

また、ご家庭の支援だけではなく、やはり、「お子さんが一番大事」ですから、「質の担保」ということも重視しており、保育園等をチェックする権限を持った「認可指導係」という組織を先駆的に立ち上げて、改善のためのチェックや指導、苦情への対応などについて機能を集約させています。区民の方のいろいろな声を聞きやすい、事業者の状況も掴みやすい、横断的な組織づくりをしている点も特徴です。

「子どもたちに、元気に町で育ってほしい」というのが、現在の区長の方針でもありますから、子育て支援の施策は、葛飾区の中でも重要な位置づけになっています。

横山雄司さん
横山雄司さん

葛飾区子育て支援部
葛飾区子育て支援部

――待機児童の現状と対策について教えてください

待機児童は平成27年が252人、28年が106人、29年の4月の時点では76人となっています。毎年500人から600人単位で定員を増やしていますが、新規申込者も毎年増えていますので、なかなか整備が追い付いていないのが現状です。現在、地域別、年齢別に需要を分析しまして、重点的に対処していけるように努力をしているところです。やみくもに数が足りないからと作り過ぎてしまえば、それが将来逆に、区民の“負の負担”になりかねないところもありますので、必要な方がきちんと利用できるよう慎重に判断しているというところです。

葛飾区は乳幼児人口のうち、保育サービス利用者が5割を超えているという、23区内でも指折りの区なのですが、その割には入りやすいのかとは思いますし、認可保育所の利用者数が保育施設全体の94%を超えていますから、希望されている認可保育所に入所しやすいともいえると思います。あとは一時も早く待機児童ゼロを達成したいと頑張っています。

育児支援ガイドブック2017
育児支援ガイドブック2017

葛飾区科学教育センター 未来わくわく館
葛飾区科学教育センター 未来わくわく館

――今後、新しく予定されている子育て支援施策などはありますか

具体的に決まっているものとしては、妊婦さんが健診に行く時等に使える、外出支援事業を準備中です。妊婦時代から、不安や負担を和らげる支援や取り組みは増やしていきたいと思います。こうした機会を通して、私たち行政や、医療関係の方々との接点を持っていただきたい、という思いも含んでいます。今後、より不安なく妊娠、出産、子育てができるような、妊娠・子育て家庭に寄り添える仕組みづくりを目指していきたいと考えています。

将来的な話ですと、乳幼児のサービスをできるだけ身近な場所で利用できる施設の準備を検討しているところです。母子健康手帳の交付からスタートし、気軽にさまざまな相談ができ、各種講座なども受講できて、同時に遊びの場ともなる、子育て支援の拠点施設を作りたいと考えております。建物をともなう話ですので、すぐに区内全域に整備することはできませんが、少しずつ、そういった施設を増やしていきたいと考えています。

サービスの面で積極的に取り組んでいるのは、妊娠期からの接点づくりと、切れ目のない継続的な相談体制づくりです。たとえば母子健康手帳の交付の際には、必ず面接を行うということをの徹底に取り組んでいますが、これはスタート段階で面談を行い、支援者と一緒に子育て期までを見通すところにポイントがあります。赤ちゃんと家族が困った事態になる前にサポートを開始しようという、“転ばぬ先の杖”のような支援体制を構築していきます。妊娠期は健康面のニーズが高いため、保健師、助産師、栄養士等の医療の専門職種が中心となって専門的な支援を行いますし、出産後についてはどちらかと言えば「育ち」に比重が移りますので、保育士などが加わるようにしています。区民の目線で切れ目なく相談に乗る態勢を整えることが、健やかで安心できる子育て環境につながると思っておりますので、今後もさらに拡充していきたいところです。

認可保育園ガイドブック
認可保育園ガイドブック

――子育て支援拠点施設はどんな形で整備されていくのでしょうか?

区内にはすでに「基幹型児童館」という児童館がありますので、そこの役割をだんだん変えながら、将来的に子育て支援の拠点にできるように、将来的な建て替えを含めて、検討を始めている段階です。相談などはすぐに始められますが、健診については相応のスペースも必要になるので、建て替えの後になっていくかと思います。

葛飾区役所
葛飾区役所

葛飾区金町地区センター
葛飾区金町地区センター

――子育てという視点から見て、葛飾区の魅力はどんな点ですか?

一つは、「子どもらしく遊べる場所」が多い点でしょうか。葛飾区は、データ的には緑化率がそれほど高いわけではないのですが、「水元公園」のように非常に大きな公園がありますから、自然とふれあう機会も多く、いろいろなイベントも大規模に行われています。

「地域の子育て力」も魅力です。葛飾区では、区内すべての小学校で「わくわくチャレンジ広場」という、放課後子ども事業を実施していますが、これはほかの自治体さんに先がけて、もう10年以上も前から、地域の人によって運営されているんです。それだけ葛飾区は、子どもたちに対して温かい地域なんです。私も個人的に、葛飾区は全国的に誇りにできるくらいの“あったかい町”だと思っていますから、特にお子さんをお持ちのご家庭にとっては、とても居心地の良い地域だと思います。

水元公園
水元公園

江戸川河川敷
江戸川河川敷

葛飾区子育て支援部
葛飾区子育て支援部

葛飾区立飯塚小学校
葛飾区立飯塚小学校

区民目線で幅広く、きめ細かく整備された子育て支援施策を行う葛飾区/葛飾区役所(東京都)
所在地:東京都葛飾区立石5-13-1
電話番号:03-3695-1111
開庁時間:8:30~17:00 ※水曜日は一部業務のみ19:30まで開庁
閉庁日:土・日曜日、祝日、年末年始 ※毎月1回日曜日は一部業務のみ開庁(9:00~12:00)
https://www.city.katsushika.lg.jp/