工場の廃材は宝の山 地域交流を活性化させる「物づくり」の輪/配財プロジェクト 斉藤靖之さん

配財プロジェクト 斉藤靖之さん

工場の廃材は宝の山
地域交流を活性化させる「物づくり」の輪

墨田区の町工場から出た廃材を利用して、万華鏡、人形、楽器など、さまざまな物を作り出す活動をしている「配財プロジェクト」。墨田区をはじめ、下町の「ものづくり」に気軽に楽しく触れてもらえる試みとして、イベント会場などで廃材を使ったワークショップを行い、人気を集めている。今回はプロジェクトのスタートメンバーの一人であり、風船工場の社長でもある、斉藤靖之さんにお話をうかがった。

「配財プロジェクト」とはどのようなものでしょうか?

配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー
配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー

僕らがこのプロジェクトを正式に始めたのは2012(平成24)年の2月なんですが、実はその1年半ぐらい前から、仲間で集まって、活動を始めていたんですね。プロジェクトのメンバーの大半は墨田区やその周辺の、製造業に関わっている人間でして、墨田区が製造業の後継者を育成するという目的で作った「フロンティアすみだ塾」の卒業生が多いです。ですから町工場の若手の経営者や、後継者が中心になっています。

配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー
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そもそも製造業をして日々生産していますと、どうしても「廃材」というものが出てしまうんですね。僕らはそれを普段、当たり前のように業者に持って行ってもらって、お金を払って捨てていたんですが、時々、工場見学に来て下さった方が、「これ何ですか?くれませんか?」って言うんですよ。特にデザイナーさんなどに多いんですね。

「配財」という言葉はどのように生まれたのですか?

配財プロジェクト
配財プロジェクト

工場見学に来て頂いた方に廃材をあげているうちに、ふと考えてみると、昔、僕らが子どもだった頃というのは、身近なところに「廃材」がありましたから、それを工場のおじちゃんにもらって、自分たちで工夫して遊んでいたんです。工場は宝の山だったんです。それを思い出して、「この廃材はすごく価値のある、宝の山なのかもしれない」ということに気がついたんですね。それならば、価値を分かってくれる人にこの廃材を還元しようということで、「配財」という文字ができたんですよ。

代表的な“配財”製品には、糸巻きを使った万華鏡があるということですね。

配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー
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実は、墨田区は縫製関係の工場も多くて、糸を使い終わった後の「糸巻き」が多く余っていたんです。たまたま仲間のひとりがニット工場をやっているのですが、別の方で万華鏡作家さんと知り合いの仲間もいまして、その縁で糸巻きで万華鏡ができないかと思って作家さんに見せたら「面白いね」と言われたんです。そこから、こういう糸巻きを使った万華鏡が生まれたんです。

配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー
配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー

万華鏡を作るにあたって、いろいろな製造業の仲間から廃材を集めたんですが、それがこれです。縫製工場のボタンがあって、ねじ工場のねじがあって、メッキ屋さんのメッキ部品があって、屏風屋さんの余った紙があって、サトウ化成さんの緩衝材があって、プラスチックの部品があって、ブラシ屋さんのブラシの切れ端があって、僕の会社の風船のハギレがあって。この万華鏡に入っているものが、墨田区の縮図なんです。

これって一見ゴミなんですが、万華鏡に入れた途端、別の物になりますよね。僕らにとっても、ふだんゴミだと思っていたものを、こうやって見方を変えると違ったものに見えるということで、この万華鏡は、「配財プロジェクト」そのものを表しているものだと思っています。

「配財」からはどのようなものが生まれるのでしょうか?

配財プロジェクト
配財プロジェクト

一番いろんな廃材を使っている作品はこの万華鏡ですけれど、その他ですと、緩衝材を使ったハンコを作ったり、僕のところで出た、商品としては使えなくなった風船で風船人形を作ったりしていますし、ほかにも、その時にある廃材に合わせていろんな作品を作り、ワークショップを開催しています。 本当はこれを商品として売れればいいんですが、廃材はいつも決まった量だけ材料が入るわけではないですから、大量生産ができず、なかなか商業ベースにはならないんですね。何しろ小さな町工場ばかりですから、今は糸巻きの万華鏡だけを商品にして、東京スカイツリーのショップなどに置いてもらっています。

配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー
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工場としても、まだまだ再利用できている廃材はごく一部だけですから、処分代が減るメリットはほとんどないんですね。でも廃材を通して会社のことや製品のことを地域にPRできるということは、お金には変えられないメリットになっていると思います。僕は風船の裾野をもっと広げていきたいと思っていますから、このプロジェクトを通していろんな方に工場のことを知っていただいたり、メディアに取り上げていただけていることは、本当に良かったと思っています。

「配財」が地域と町工場を結びつける媒体になっているのですね。

そうなんですね。僕が小さいころって、友達の家のことを、「何々ちゃんの家は何屋さん」とか、みんな知っていたから、「物づくり」がとても身近にありました。でも、今は人が増えてきて昔から続く、自分たちの街にある「物づくり」を知らない方も徐々に多くなってきています。工場の側としても、最近は騒音の問題などもありますから、稼働中も工場を閉めきっていることが多くて、工場で何を作っているか、ということまでは分からないのが現状です。

配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー
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でも、この「配財」を媒体にすることで、地域に「物づくり」があることを知ってもらうことができますし、地域交流を活性化するきっかけにもできると思うんです。ですから「配財プロジェクト」では、僕らのような「物づくり」の人たちと、それを表現するデザイナーさんやクリエイターさんをつなぐハブの役割を果たして行きたいと思っています。

実際に製作体験をできるワークショップが人気ということですが、これはいつ、どこで行われているのでしょうか?

配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー
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ワークショップは「東京ソラマチ」の中でやることもありますし、いろんな地域のイベントやお祭り、コンサート会場などでやったりします。また、参加しているメンバーの工場でやったり、一般の店舗、大学の文化祭などに呼ばれて、やらせていただいたりもします。

墨田の「墨田区立八広小学校」の6年生の卒業製作では、八広の地域の工場の廃材を集めて、その地域の万華鏡を作る、というワークショップも行いましたね。特にいつ行うとは決まっていないので、詳しくはホームページやFacebookを見ていただければと思います。

配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー
配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー

大きなものですと、毎年秋に「スミファ」という、墨田区の町工場をオープンファクトリーにして、街歩きをしてもらうというイベントがあるんですが、そちらには毎回参加させていただいています。

墨田から始まって、全国的に「配財」の動きが広がっているとお聞きました。

僕たちの事業はただワークショップを行うだけではなくて、廃材を通して、地域の活性化や、企業のCSR(企業の社会的責任)の問題を解決するような、企画やイベントのプロデュースをするという一面もあります。ですから最近は色々な企業さんとコラボレーションしながら、ビジネスとしてCSRのお手伝いなどもしていますし、全国のいろんな自治体の方に声をかけていただいて、地域とのコラボレーションもさせていただきました。

配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー
配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー

たとえば島根県の浜田市、福島県の南相馬市、大分県の佐伯市、富山県の高岡市などに、廃材を使った地域のアピールのお手伝いに行って、地場の業者さんの廃材で、万華鏡を作ったりしましたので、これが全国的に根付いてきているのだと思います。

「配財プロジェクト」の今後の展開についてお聞かせください。

配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー
配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー

やっぱり、「物づくり」の魅力を知ってもらって、次世代につなげていきたいという思いがありますから、子どもの教育に関わる場面で、何かをしたいというのは、いつも思っています。 もうひとつは、企業のCSRのお手伝いを今も少しさせていただいているんですが、少しでも世の中の役に立つという意味では、企業との関わり方も増やしていきたいです。あとは、自分たちで仕掛けるイベントなどもやっていきたいと思っています。

最後に、錦糸町エリアの魅力についてお聞かせください

隅田川
隅田川

私は実は墨田区で生まれて小学校2年生まで住んでいたんですが、その後は品川区に暮らして、10年ぐらい前にまた戻ってきたんですね。山手の暮らしと下町の暮らしを両方知っている立場から言いますと、やはり、「人と人との距離が近い」というのは大きな魅力だと思います。 下町だと、都心での暮らしと比べると、地域の中でお互いにバンバン、干渉するんです(笑)。

配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー
配財プロジェクト 斉藤靖之さんインタビュー

外から来た人たちにとって、いきなりずいっと踏み込まれると「面倒くさい」と思う人もいるかもしれないですけれど、それがだんだん気持ちよくなっていくと思うんです。そういう「あったかさ」というのは、あると思いますね。なので、新しくこの街に住むことになったとしても、住みやすいし溶け込みやすいし、すぐに居心地がよくなると思います。

新しく引っ越して来られた方同士のコミュニティもしっかりとできてきていて、何かをしようと思った時にも、活動をしやすい場所ですね。 また、最近はこの地域もけっこうオシャレになってきましたよね。若いクリエイターさんなんかも多く住むようになっていて、いろんな新しい工房やお店、カフェ、レストランなどがオープンしているんですよ。

斉藤靖之
斉藤靖之

今回、話を聞いた人

配財プロジェクトメンバー
株式会社マルサ斉藤ゴム 代表取締役社長 斉藤靖之さん

配財プロジェクト http://www.haizai.jp/
Facebook:https://ja-jp.facebook.com/haizai.jp

※記事内容は2014(平成26)年4月時点の情報です。

工場の廃材は宝の山 地域交流を活性化させる「物づくり」の輪/配財プロジェクト 斉藤靖之さん
http://www.haizai.jp/