緑と文化を掲げる区の中心的存在

区民の一声から始まったまちづくり 20年の歳月を経て生まれ変わった「成増」の姿とは/板橋区都市整備部 月間英昭さん


板橋区都市整備部 拠点整備課計画グループ
拠点整備担当係長 月間英昭さん

区民の一声から始まったまちづくり
20年の歳月を経て生まれ変わった「成増」の姿とは

東武東上線「成増」駅の北口側、「アクト1」「アクト2」「アリエス」という愛称で親しまれる複合ビル群を中心に、駅前広場、周囲を囲む駐輪場と公園、街路など、北口一帯の再開発が進められたのは、今から20年以上も前のこと。それまで有効利用がされていなかった北口側に新しい街が創られ、成増エリアの人の流れは大きく変わったという。
今回は少し過去にさかのぼりながら、「成増」駅北口再開発の概要とねらい、その後20年余りの街の変化について、板橋区都市整備部の拠点整備担当係長 月間さんにお話を聞いた。

「成増駅北口地区」事業の概要、コンセプトについて教えてください。

成増 第1期
成増 第1期

「成増」駅北口の再開発に関しては、1991(平成3)年に第一地区が完了した事業ということで、なにぶん古いお話になってしまうのですが、当時のパンフレット等を見ながら振り返ってみますと、もともと、昭和40年代くらいから再開発の話が出てきており、再開発の「準備会」が1972(昭和47)年に立ち上がりました。

板橋区都市整備部 拠点整備課計画グループ 拠点整備担当係長 月間英明さん
板橋区都市整備部 拠点整備課計画グループ 拠点整備担当係長 月間英明さん

もともと、東武東上線「成増」駅が開業したのが、1914(大正3)年です。その当時から、南口側には駅前広場を含めた駅の顔づくりが進められてきたのですが、それに対して駅北側は、線路のすぐ近くに7~8メートルの高低差の傾斜面があったということもあり、駅前にもかかわらず、ほとんどが空地か住宅地で、有効利用されているとはいえない状況でした。

成増工事 第二期
成増工事 第二期

そんな駅北側にも、1965(昭和40)年に新しい出口ができ、一応バス路線も幾つか出るようになったのですが、駅舎からは鉄砲階段(直線状の狭い階段)で地上面に降りる構造で、バス道路を横断しないと、反対側に行けないという状況だったそうです。
そういった土地活用の不足を改善しようと、地元の地権者の方が中心となって「準備会」が設置され、個人施行による「第一種市街地再開発事業」として進められました。
再開発は1991(平成3)年に完了した「第一地区」の事業と、1995(平成7)年に完了した「第二地区」の事業がありまして、第一地区については、複合ビル「アクト」と駅前広場を中心とした再開発が行われ、第二地区については、複合ビル「アリエス」の再開発が主となっていました。

まず、第一地区の再開発概要について、詳しく教えてください。

成増 アクト
成増 アクト

第一地区の再開発に関しては、「駅前に広場を作る」ということが大きな目的になっており、駅前広場と、そこを起点とした都市計画道路がまず計画されました。「成増」駅は東武東上線の中でも、準急・急行が停車する駅ですから、区としても「北の玄関口」を呼んで大きな期待を寄せていましたので、「交通の結束点」としての駅づくりを目指しました。

板橋区都市整備部 拠点整備課計画グループ 拠点整備担当係長 月間英明さん
板橋区都市整備部 拠点整備課計画グループ 拠点整備担当係長 月間英明さん

商業施設を作って「にぎわい」を作り出す、ということ第一に、「アクト」の建物が造られました。地下から3階まではテナントで埋めるということになり、その際に(以前からあった)「西友 成増店」が拡張して移転したいという意向がありましたので、地下1階から3階までの大部分を占めるキーテナントとして入っていただきました。その他にも、従前からあった「巣鴨信用金庫」や近隣にあった商店などにも、ひとつの建物の中に入っていただきました。
「アクト」の上層階については、駅前の一等地ですので住宅地を配置しようということで、「アクト1」(大きな建物)の一部と、「アクト2」(道路向かいの小さな建物)の全部が分譲住宅となりました。

ACTホール
ACTホール

このほか、板橋区として文化施設を配置したいという意向があり、「成増地域センター」を4階と5階に入れるということが当初から決まっていましたそうです。このうち核となるのが「アクトホール」ですね。
「アクトホール」は多目的に使えるホールで、椅子も可動式のものとなっておりますので、フラットにして使うこともできます。これは当時は画期的なものだったということで、現在に至るまで、レセプションなどはもちろん、劇や音楽鑑賞などにも幅広く使っていただいています。このほか、集会施設、会議室、茶室といった施設もあります。
地区内に従来からあった「成増公園」につきましても、従前は高低差が大きくて鬱蒼とした公園になってしまっていましたから、かさ上げをして、明るい雰囲気の公園にリニューアルを図りました。
自転車駐輪場についても、従来は路上に駐輪場が設けられたていたという状況でしたので、そこを大きく整備して、複数の駐輪施設を新設したということです。

第二地区再開発で造られた「アリエス」について、詳しく教えてください。

板橋区都市整備部 拠点整備課計画グループ 拠点整備担当係長 月間英明さん
板橋区都市整備部 拠点整備課計画グループ 拠点整備担当係長 月間英明さん

こちらはもともと駅前にあった「西友 成増店」が「アクト」内に移転したことから、その跡地を再開発するということで計画され、地下1階地上8階建ての建物として、「アリエス」が造られました。こちらは地下1階から2階までが中小のさまざまな店舗、3階が図書館とアートギャラリー、上層部が賃貸住居ということになっております。

板橋区都市整備部 拠点整備課計画グループ 拠点整備担当係長 月間英明さん
板橋区都市整備部 拠点整備課計画グループ 拠点整備担当係長 月間英明さん

特に図書館については、この再開発で新たに設置され、駅前立地の図書館ということもあり、区内でも非常に利用者が多い館となっております。アートギャラリーは図書館の一部として設置されているもので、区民向けの貸しギャラリーとなっています。

第二地区の開発が終了してすでに23年が経過しましたが、その間、北口付近の様子はどのように変わりましたか?

成増 ペデストリアンデッキ
成増 ペデストリアンデッキ

この再開発事業によって、「アクト」の建物と駅がペデストリアンデッキで直結しましたし、建物の中を通って、後背地にもエレベーターやエスカレーターを使って移動できるようになりましたので、駅利用者の利便性は飛躍的に高まったかと思います。また、新たに駅前広場ができたことで、バスやタクシーの数も大幅に増えまして、「交通の結束」という位置づけが補強されました。ここを起点に、バスでの移動が便利になり、北口を利用する方が大幅に増えたということは聞いております。

板橋区役所 月間さん
板橋区役所 月間さん

南口側や川越街道界隈については、もともと商店の数も、住民の数も多かった地域なのですが、再開発が終了してからは、北口のイメージもがらっと変わりましたので、近隣にどんどんマンションが建ち、北口側にも新しい住民の方が増えてきました。人が増えれば当然人の「動線」も変わってきますので、北口を利用する方は大幅に増えましたし、南口側との行き来についても、増えたかと思います。

板橋区都市整備部 拠点整備課計画グループ 拠点整備担当係長 月間英明さん
板橋区都市整備部 拠点整備課計画グループ 拠点整備担当係長 月間英明さん

また、計画のひとつの大きな目的として「歩行者の安全確保」ということもあったのですが、これも飛躍的に向上したかと思います。デッキができたことで歩行者と車が分離され、安全に駅を利用していただけるようになりました。
さらに、駅前広場を作ったことは防災力の向上にもつながっております。そもそも周囲にできた新しい建築物は自然災害や火災に強いものですが、こうして広場が置かれることで、延焼も抑えられますし、大型の消防車も入れるようになりました。一時避難場所としても活用していただけますから、交通機能の中心にこうして広い敷地ができたことは、災害時の安心にもつながっているのかと思います。

南口側を含め、「成増」駅周辺には昔から親しまれている街の情景、商店街といったものが多くありますが、特別な配慮などはされたのでしょうか?

なりますスキップ村
なりますスキップ村

従前からあった地元の商店街さんに関しては、「共存・共栄」ということで、今も良い形にできているのかと思います。開発にあたって、特別な何かをしたということはありません。と言いますのも、もともと、北口側には「西友 成増店」、南口側には「ダイエー成増店」という大きなお店があって、その周辺に商店が広がっていて、そういうバランスがとれていた中での再開発ということでしたので、再開発によって極端にバランスが変わったということは無いかと思います。
逆に、利便性が高まって新しいマンションなどが増えたことで、店舗の利用者も駅の利用者も増えましたので、全体的に底上げがなされ、商店街にとっても大規模店舗にとっても、いい効果が現れてきているのかと思います。

最後に、成増エリアの魅力について教えてください。

成増駅前広場
成増駅前広場

そもそも板橋区全体として、住居が多く、ベッドタウンとも言えるような地域なのですが、特に成増エリアについては、東武東上線の準急・急行の停車駅で利便性が高く、駅から近い場所に教育施設や文化施設など、公共施設が良く整っているエリアですから、非常に暮らしやすい地域だと思います。

東京都立赤塚公園 城址地区
東京都立赤塚公園 城址地区

環境としても、駅から北のほうに行きますと、ちょっと離れてはいるのですが、「赤塚公園 城址地区」、「東京大仏(乗蓮寺)」、「板橋区立美術館」といった場所もありますし、「赤塚公園 城址地区」については、将来的にはより大きな公園になっていく予定もあります。ですので、家族で暮らす場所としても、非常に居心地のいいエリアかと思います。
そういった快適な環境の中で、商店や大型店舗も沢山揃っておりますし、利便の部分とにぎわい・憩いといった部分がバランスよく充足しているのが、成増エリアの魅力かと思います。「住みやすさ」ということでは、板橋区内でも1、2を争う地域ではないでしょうか。

板橋区役所 月間さん
板橋区役所 月間さん

今回、話を聞いた人

板橋区都市整備部 拠点整備課計画グループ 

拠点整備担当係長 月間英昭さん

区民の一声から始まったまちづくり 20年の歳月を経て生まれ変わった「成増」の姿とは/板橋区都市整備部 月間英昭さん
所在地:東京都板橋区板橋2-66-1 
電話番号:03-3964-1111
開庁時間:8:30~17:00(火曜日 ~19:00、第2日曜日9:00~17:00)※火曜日17:00〜19:00・第2日曜日は一部の窓口を開庁
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