小規模校のメリットを生かし、地域と共に歩む/調布市立緑ヶ丘小学校 校長 鈴木祐介先生
調布市の東部に位置している仙川エリアは、「白百合女子大学」や「桐朋学園」などがあり、教育意識が高く地域に密着した商店街が形成された、活気のある街です。2015(平成27)年度に開校50周年を迎えた「調布市立緑ヶ丘小学校」は、この仙川エリアにあり地域の人々に愛されている歴史ある学校です。今回は、同校の教育の特色や地域との関わりについて、鈴木祐介校長先生に話を伺いました。
開校50周年を迎えた歴史ある学校
――まず、学校の概要・沿革をお聞かせください。
鈴木校長先生:本校は、2015(平成27)年度に開校50周年を迎えた、緑豊かな自然に囲まれた学校です。本校が開校した1965(昭和40)年は、日本が高度経済成長の真っ只中にあった頃で、ここ調布市の人口も大きく増えた時でした。現在の調布市は、建物や道路が建設されて大変便利な街ですが、開校当初は周囲に建物は無く、本校だけが「ぽつん」とあった状態だったそうです。その後、東側校舎や体育館、プールが次々と整備され、一時は児童数が1,000人を超えることもありました。開校当時より地域の皆様が学校を大切にしてくださり、地域と共に本校は発展し、今の姿があります。
徳・知・体の調和のとれた教育を
――貴校の教育理念や目標を教えて頂けますでしょうか。
鈴木校長先生:本校は教育目標に「明るい心とじょうぶな体の子」、「礼儀正しくきまりを守る子」、「よく考え進んでやりぬく子」を掲げ、「学問・体育・道徳」のバランスの良い成長・教育環境を目指した育成に取り組んでいます。
特に、本校では「徳」の教育が重要だと考えています。身近で何気ないことですが、「花」がある生活と無い生活は大きく違うと思います。「花」は人の心を耕します。本校では、校舎内外に「花」のある環境整備をしており、「花」に多く触れ合うことで子どもたちの心を耕す場面を取り入れて、「心の育成」をすすめています。今年は学校にコスモスを植えましたので、秋にはたくさんのコスモスの花が咲くと思います。子どもたちもみんな楽しみにしています。近年、子どもたちの不登校問題やトラブルをよく耳にしますが、教員がていねいに話を聞いたり、カウンセラーが対応したりすることで問題の発生を未然に防いでいます。このようなことも子どもたちの心を学校全体で育んでいるひとつの表れではないかと思います。
また、地域の方々との交流を大事にしており、子どもたちが高齢者施設や幼稚園・保育園に訪問して、ダンスや歌の発表、楽器の演奏をする活動を行っています。発表することによって憧れられたり、頼られたりすることで子どもたちは自分に自信が持てるようになりますし、小さい子は「お兄さん、お姉さんのようになりたい」と努力する心が芽生えます。練習にもその気持ちが表れ熱心に取り組んでくれるので、とても良い作用になっていると思います。
もう一つ重要なのは、規則正しい生活が子どもたちの未来を創る「体」の育成です。本校では体づくりの日常化、体育授業の充実に力を入れています。また、調布市からの指定を受けて、様々な遊びや運動に親しむ子、友達と関わり合い、学び合う子の育成を目指して体育研究を積極的にしています。「大縄跳び」や校庭をみんなで走る「ペースランニング」など、一人一人が関わりあって、喜び・分かる喜びを味わい、それを「面白い」「楽しい」と感じることができる工夫をしています。
小規模校だからこそできる指導・活動
――「緑ヶ丘小学校」の環境ならではのメリットや特色はございますか?
鈴木校長先生:調布市内には1,000人規模の学校もありますので、本校はその1/3程度の規模といえます。メリットとしては、教員が全ての子どもたちに目が行き届くということが大きいと思います。1クラス30名から35名編成ですので、教員と子どもたちが家族的な雰囲気で接して、教員が気になったことを一人一人きめ細かく指導できているのが利点です。また、1年生から6年生までが一斉に参加する全校遠足も少人数の学校だからこそできる取り組みです。このことにより異学年交流を盛んにして、大人数の学校にはできない、より良い人間関係の構築ができるように指導しています。
また、小学校周辺には繁華街はなく、学校の名前の通り緑が大変多い街です。そして、地域の方々がみんなで子どもたちを育てていこうという意識があり、安心して住むことができる環境下にあります。毎年、校庭で開催される「みどりんキャンプ」(校庭にテントを張り一泊し、飯ごう炊飯やキャンプファイヤーなども体験する課外活動)は、児童館と地域の健全育成委員会の皆さんとが協力して行っており、この規模だからこそできる行事であり、地域と共に歩む本校の代表的な活動です。
――教科教育(学習活動)の取り組みや特徴についてもお聞きできますでしょうか。
鈴木校長先生:本校では、学校全体の学力向上の為に、課題解決型授業の展開で思考力・判断力・表現力を育成する取り組みを行っています。家庭学習の習慣もとても大事ですので、その日に学んだことを定着させる為に、宿題は毎日必ず出すようにしています。また、読書環境を整え、読書習慣が身につく指導や算数授業の充実、自分の考えを表現したり、図を使って論理的に説明したりできる言語活動の充実、英語に親しむ外国語活動の充実など「知」の成長を促進できるような学習環境を整えています。勉強が苦手な子を作らない、それが学校全体の学力を上げていくことだと思いますし、それが小学校の役目だと考えています。
教育意識の高いご家庭が多く、子どもたちの学力も高い水準にあります。毎年、2割程度の児童が都立中高一貫校や私立中学校を受験しています。
――放課後に行われている「緑ケ丘小学校ユーフォー」について教えてください。
鈴木校長先生:放課後の学校施設を利用して、自由で安全な「遊び場・居場所」を提供し、楽しく遊びながら社会性や創造力を養うことを目的としている事業が「緑ケ丘小学校ユーフォー」です。(※「ユーフォ―」は、調布市が行う放課後遊び場対策事業で、保護者の就労などによる家庭の代わりの場所として児童の健全育成を図る「学童クラブ」とは別に、全ての児童が無料で参加できる。)
運営は市や民間スタッフが行っており、子どもたちは放課後に遊具で遊んだり、本を読んだり、学校の宿題をしたり、校庭ではサッカーや一輪車をしたり、思い思いの活動をしています。
地域の方々に支えられる恵まれた環境
――保護者や地域との協力体制はいかがでしょう?
鈴木校長先生:多くの地域の人に支えられ、見守られて、子どもたちは安心して通学し、この街で暮らしています。地域の方々やPTAなど保護者のみなさまには、いつもご協力頂き大変感謝しています。先ほどお話しした「みどりんキャンプ」や運動会など地域・PTAと連携した交流を本校では多く行っています。「みどりんキャンプ」は、約200人の子どもたちが毎年参加するイベントなのですが、それと同じ数の地域の方々が、子どもたちを見守ってくださいます。学校の研究発表会などでは基本的に教員は常に子どもたちを指導していますので、来賓の方への対応や安全確保などをPTAの皆さまにお願いしています。
また、もうひとつ地域との協力体制の代表的な例ですが、本校では「親子そば体験」という活動を毎年行っています。そばの種を蒔き、土寄せから始めて、収穫、脱穀、そして深大事水車館で石臼を使っての粉挽き、そば打ちまで一切機械を使わずに地域のみなさまの助けを借りて全て手作業で行います。厳選したそばと水、だし、獲れたてのねぎを使って最高に贅沢な日本一美味しいそばが食べられますし、親子で体験できるので毎回抽選で参加者を決めるほどの人気で大変好評です。このような活動は、地域の方々と連携して子どもたちを育てることができるので、今後も続けていきたいと思います。
その他、ベルマークを集めて学校に必要な用具を買って頂いたり、学校行事に参加できなかった家庭への業務連絡、PTA同士での打ち合わせなどをして頂いたり、子どもたちの為にいつもご尽力頂いています。
都会の良さと田舎の良さが共存する街
――周辺エリアの魅力を教えてください
鈴木校長先生:「緑ヶ丘小学校」は、昔も今も保護者、地域の方々から大切にされている学校です。ここ緑ヶ丘エリアは、地域全体で子どもを育てていこうという意識がとても高いです。そのような良い環境に恵まれて本校には「よい子」が集まっています。そしてその「よい子」を更に「様々な資質を備えた子」に育てていくのが本校の役割であると考えています。
地域にお住いの方の中には「一度は他の地域に転出したけど、また緑ヶ丘に戻ってきました」という方もいらっしゃいます。子どもたちが大きくなった時に、また戻って来たくなる「子どもたちの心のふるさと」になるような魅力がここにはあると思います。都心からも近く、東京外環道路と中央高速道路を連結するジャンクションも建設されますます便利になる一方、昔ながらの自然が多く残っており、都会の良さと田舎の良さがうまく共存した街だと思いますよ。
調布市立緑ヶ丘小学校
校長 鈴木祐介先生
住所:調布市緑ヶ丘2-16-1
TEL:03-3308-6166
URL:https://www.chofu-schools.jp/midorigaoka-sho/
※この情報は2016(平成28)年9月時点のものです。
小規模校のメリットを生かし、地域と共に歩む/調布市立緑ヶ丘小学校 校長 鈴木祐介先生
所在地:東京都調布市緑ケ丘2-16-1
電話番号:03-3308-6166
https://www.chofu-schools.jp/midorigaoka..