漫画の神様ゆかりの地で語り継がれる手塚治虫と宝塚の歴史/手塚治虫記念館インタビュー
宝塚といえば、宝塚歌劇と思い浮かべる人が多いだろう。しかし、近年では歌劇に引けを取らない知名度となりつつあるのが、この宝塚市が運営する「手塚治虫記念館」。宝塚市は現在、歌劇とアニメという2本柱で観光の街づくりを行っており、手塚治虫記念館はアニメの柱の象徴ともいえる。今回、館長である小坂さんに記念館の魅力を伺ってきた。
――手塚治虫記念館の概要について教えてください
小坂館長:漫画、アニメの巨匠として知られる手塚治虫ですが、5才から20年間暮らした宝塚で、その間の戦争体験も含めた経験を基に手塚治虫が唱え続けてきた「自然への愛」「生命の尊さ」をテーマに、夢と希望を未来へ広げていく施設として設立されました。
手塚作品と宝塚という場所は、実はいろんな繋がりがあり、作品にもその影響が大きいのです。たとえば、『リボンの騎士』のサファイアは宝塚歌劇の演目のなかのキャラクターから着想を得たと言われています。
手塚作品のテーマとして数々の作品のモチーフとされている「自然への愛」「生命の尊さ」に関しても、自然が豊かな宝塚御殿山で多感な時期を過ごしたことが大きく影響していると、ご本人の存命中のインタビューでも語っておられます。当館ではそういった手塚の軌跡を多くの人に知ってもらおうと宝塚市が手塚治虫のご親族や多くのご協賛者様のご協力のもとに開設されています。
――宝塚という場所が、作品への影響にも及んでいたということなんですね。沿革やこれからの取り組みについて教えていただけますか
小坂館長:1989(平成元)年に、宝塚ゆかりの「手塚治虫記念館」を建設する計画を構想して、1994(平成6)年4月に完成に至りました。当初は手塚治虫の奥様の悦子様に名誉館長を務めていただいておりました。ご高齢になられたということもあり、現在ではご子息の眞さんに名誉館長を交代していただいております。
当館の北側に隣接している「宝塚ガーデンフィールズ」の跡地ですが、一部は既に宝塚市が購入し、新たに庭園と文化芸術施設を整備する計画を進めています。文化芸術施設では美術作品を展示するギャラリー、絵本や手塚治虫の漫画が自由に読めるライブラリー、イベントホールなどを設け、子どもや家族で楽しんでいただける施設にしていきます。新たな施設との相乗効果でより魅力的な観光スポットとなるような構想を考えております。
――館のみどころや特色などを教えてください
小坂館長:手塚治虫の歴史といえば、漫画・アニメの歴史と言っても過言ではありません。そんなわけで、記念館では手塚作品を紹介するのはもちろんのこと、アニメ映写の仕組みなどを、観るだけでなく、来館されるお客様自身でアニメ制作の作業を体験できる「アニメ工房」コーナーを設けており、非常に好評を得ています。コンピューターを使ったガイダンス付きのトレース作業(合成)などを体験できる専用台を14台設置しており、ここで、自分で描いた絵をトレースしてミニアニメを自作することができます。
小坂館長:2階のライブラリーでは約2,000冊に及ぶほとんどの手塚作品を取り揃えており、読むこともできます。また『ジャングル大帝』をイメージした「ジャングルカフェ」の営業もしております。
また、企画展示室では年3回の入れ替えで期間限定の展示も行っており、現在は「ウルトラマン」の特別展が開設されています。(2016年7/1〜10/24)現在行っているウルトラマンの特別展は、ちょうどウルトラマンのテレビ放映が始まって50周年を迎えたことと、手塚の『マグマ大使』のテレビ放映の開始が同時期であったことにちなんで開設されています。
――来館される方は子供連れのファミリー層が多いのでしょうか
小坂館長:ファミリー層ももちろん多いですが、ほんとうに様々な年齢層の方が来館されます。手塚治虫の影響の大きさを感じるのですが、ここ数年では年間10万人を超える来館者数のなかの1割にあたる来館者が海外の方になります。
――1万人が海外からですか!海外向けのPRにも力を入れておられるのですか
小坂館長:実は海外向けのPRはこれまでほとんど行っていないのです。しかし、海外からの来館者も多いということから、PRや外国語表記などの充実も取り組みのひとつとして考えています。ライブラリーでは一部に英語、中国語、ハングル語等の外国語版や点字書籍も揃えています。
――手塚治虫は宝塚の御殿山に住んで、作品に影響を与えるほどの様々な体験をしたそうですが、現在の御殿山の街にもその軌跡を辿れるような場所はありますか
小坂館長:当時と変わらない姿を残しているのは「猫神社」ですね。後は開発や震災の影響で様変わりしているところが多いです。
記念館では手塚治虫が子供時代を過ごした昭和15年頃のジオラママップを設置しています。
――小坂さんから観た宝塚の魅力について教えていただけますか
小坂館長:開発が進んだとはいえ、宝塚はまだまだ緑が多く自然が豊かです。「清荒神」や「中山寺」など有名な寺社もあり、手塚治虫ゆかりの現存の場所は少ないですが、手塚の数々のエピソードを想像できる、そういう雰囲気を残している場所は御殿山周辺には今でもたくさんあります。そんな自然豊かな雰囲気を残しつつ、大阪、神戸に30分ほどで行けるベッドタウンというのは、全国的に見てもなかなか少ないのでは、と思っています。
――最後になりますが、これから宝塚に住まわれる方に一言、メッセージをお願いします。
小坂館長:自然と住みよい環境が調和した宝塚で「宝塚文化」を創造する宝塚市民として、この宝塚を我々と一緒にもっと魅力的にしていきましょう。
手塚治虫記念館
館長 小坂悦朗さん
所在地:兵庫県宝塚市武庫川町7-65
TEL : 0797-81-2970 FAX:0797-81-3660
URL:http://www.city.takarazuka.hyogo.jp/tezuka/
※この情報は2016(平成28)年8月時点のものです。
漫画の神様ゆかりの地で語り継がれる手塚治虫と宝塚の歴史/手塚治虫記念館インタビュー
所在地:兵庫県宝塚市武庫川町7-65
電話番号:0797-81-2970
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:水曜日(祝日・春・夏休みの場合は開館)、年末(12月29日~12月31日)、2月21日~2月末日 ※臨時休館・臨時開館あり
http://www.city.takarazuka.hyogo.jp/tezu..